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記事制作:税経システム研究所

小売業

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2016/08/23

質問

衣料品の余剰在庫を抱えてしまった「スーパー・ミロク」。あなたが経営者ならこの余剰在庫をどうしますか?

パターン1

原価割れしてでも販売する。

パターン2

廃棄する。

パターン3

返品する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
小売店イメージ01
小売店イメージ02

買い物するなら「スーパー・ミロク」

「スーパー・ミロク」は関東地方のある県を中心に15店舗を展開する総合スーパーです。食料品、日用雑貨、衣料品、家電、家具など、生活用品を扱っており、生活に必要なものをほとんどそろえることができます。全店舗3~5階建ての構造で、大きな駐車場を完備しているので、近在から自動車で来店してまとめ買いする顧客も多く、繁盛しています。

先代の社長が30年前に創業したときは、食料品のみを扱うスーパーマーケットでした。創業以来「主力商品」として力を入れている食料品は「売り切れ御免コーナー」を各店舗に設けて、地元産の生鮮食品を中心に商品をそろえていることから、「新鮮である」と評判も上々です。

5年ほど前、創立者の社長が息子に事業を継承したときから、食料品のみではなく、衣料品も扱うことにしたのでした。その当時も、食料品の商品の回転率は高く、ライバル店と比較して売上高に占める食料品の割合も高いことから、「稼ぎ頭」でした。

ところが当時は、新社長の経験が浅いこともあり、衣料品は、余剰在庫が発生してしまい、各店舗でもどのような手を打ったらよいか悩んでいました。

5年前 ~衣料品の在庫に悩む

二代目社長になることを期待され、5年前に就任した新社長は、社長に就任する前に3年間専務として父親の仕事ぶりを学ぶ機会がありました。しかし、父親が経営するスーパーが食料品のみを扱っているのに疑問を抱いていました。

なぜ父親は食料品のみを販売しているのか? アパレル関係で働いていた経験がある二代目は、自分が社長になったら、他の商品、とりわけ衣料品を扱ってみたいと思っていたのでした。

なぜ父親は「売り切れ御免」にこだわっているのか? まだ購入を希望するお客さまがいるのに「売り切れ御免」というのでは、せっかくの販売チャンスを逃しているから、自分が社長になったら、店舗や倉庫に十分な商品を在庫として準備しておきたい、とも二代目は考えていました。

5年前に新社長に就任した二代目は張り切って衣料品の販売をはじめました。しかし、衣料品を仕入れてもすべての商品を売り切ることができず、あちこちの店舗で余剰在庫が発生してしまいました。これを見た二代目は、すっかり自信を無くしてしまいました。やはり、うちのスーパーは食料品しか売ることができないのか? それよりも、この余剰在庫をどのように処分したらいいのか?

質問

衣料品の余剰在庫を抱えてしまった「スーパー・ミロク」。あなたが経営者ならこの余剰在庫をどうしますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

原価割れしてでも販売する。

パターン2

廃棄する。

パターン3

返品する。

二代目社長は、余剰在庫品の原価割れでの販売、つまり、仕入原価や販売費などの合計が適正な販売価格を上回って損が出ることになっても販売するという選択をしたのでした。損が出ても売る、というのには理由があります。なぜ二代目社長はそのような決断をしたのでしょうか……。

余剰在庫の商品を廃棄することも考えられます。パターン1と同様に、店舗や倉庫が余剰在庫であふれかえれば、売れ筋の商品を置く場所さえなくなりかねません。そのために店舗や倉庫のスペースを空けることを考えたのはよいのですが、一方で、商品を廃棄する場合には追加的に廃棄コストがかかることもあります。販売しない商品、つまり、もはや資金を回収できない商品に対して、すでにつぎ込んだ仕入原価と販売費のほかに、さらに廃棄コストが追加的に発生するというのは、二代目社長に追い打ちをかけるみたいです。

余剰在庫の商品を返品することもありうる話です。パターン1やパターン2と同様に、店舗や倉庫が余剰在庫であふれかえれば、売れ筋の商品を置く場所さえなくなりかねません。そのために店舗や倉庫のスペースを空けることを考えたのはよいのですが、商品によっては、初めから買い取りの契約になっていて、メーカーや卸売業が返品を受けつけない場合もあります。この場合には、パターン2の廃棄を選択せざるを得なくなります。

一時的に損失が出ても「資金回収」だけはしておく

二代目社長は、損が出ても販売するという選択をしたのでしたが、なぜそのような決断をしたのでしょうか。

仕入原価として支払った資金は商品につぎ込まれています。さらに、販売費として支払う資金もあります。本来、販売価格はこれら支払った資金を回収しなくてはならない金額にするべきです。その販売価格を、ここでは適正価格といっています。

しかし、もはや適正価格で販売できない商品であると判断した場合には、その商品につぎ込んだ資金を1円でも多く回収する必要があります。なぜかというと、余剰在庫の商品につぎ込んだ資金は、いわば「死に金」となって、まったく働かなくなります。それどころか、余剰在庫を廃棄したとすれば、余剰在庫につぎ込んだ資金は1円も戻って来ず、そのまま捨てることになります。

余剰在庫(これを「死に筋商品」ともいいます)につぎ込んだ資金を1円でも多く回収し、それを「売れ筋商品」を仕入れるのに使う、という考え方が大事です。

二代目社長が衣料品の在庫を目の当たりにして頭を抱えているとき、息子に事業を譲り会長となった先代がいいました。

会長 どうだい、衣料品は売れてるか?
社長 うん、どの商品も半分ぐらいまでは売れるんだけど、後は余剰在庫になってしまうんだよ
会長 では、『売り切れ御免』の極意を教えてやろう
社長 それは、食料品の場合でしょう。衣料品には向かないと思うけど……
会長 まぁ、最後まで話を聞きなさい。なぜ『売り切れ御免』かというと、生鮮食品は毎日毎日が勝負だ。特に魚介類はその日によって入荷状況が変わりやすい。野菜だって、必ずしも安定して入荷できない。とはいえ、商品の性質上、長期間の在庫にできないわけだ。この弱点を逆手にとって、新鮮な商品をお客さんに売るためには、必要最小限しか仕入れない。だから『売り切れ御免』なのさ
社長 だけど、売れ残る場合もあるじゃない?
会長 その場合は、『タイムサービス』や『訳アリ商品』で『売り切る』んだ。うちは生鮮食品をできるだけ在庫で保存しないことを方針にしているんだから
社長 それじゃ、損をして売っていることになるでしょう?
会長 一時的には損が出るかもしれない。それでも、仕入で商品につぎ込んだ資金を1円でも多く回収できればいいんだ。まずは、必要最小限で仕入れること、そして、売り切ること。そうすれば、仕入で商品につぎ込んだ資金はすべて回収できる。もし売れ残ったら、次の仕入のために資金をできるだけ回収しておくことだ
社長 そうか。でも、生鮮食品の場合はそれでいいかもしれないけど、衣料品の場合はどう考えればいいんだろう?
会長 それは、これまで自分がアパレル業界で勉強してきたことを当てはめて考えればいいだろう。生鮮食品のように一日や二日の勝負ではないにしても、衣料品だって季節や流行によって『旬』っていうもんがあるんだろう? 『旬』を過ぎた商品は売れ残るに決まってる。だから、ある程度の期間は在庫として持っていられるんだろうが、いつまでも同じ商品は売れないんじゃないか? まぁ、後は自分で考えろ

父親である会長のアドバイスを聞いて、衣料品についても、「売り切れ御免」の商法を当てはめられないかと、社長はいろいろと思いを巡らせました。そして、次のように具体策を打ち出しました。

まず、今まで販売のチャンスを逃すことを恐れて、必要以上に商品を仕入れていたのを改め、商品を必要最小限の量しか仕入れないこととしました。これによって、余剰在庫は大幅に減ることになりました。

「売り切れ御免」になることもありましたが、だんだんと店舗ごとにお客さんの購買行動も把握できるようになり、適正在庫を予測できるようになりました。

また、時として、余剰在庫が発生した場合には、「タイムサービス」ならぬ「バーゲンセール」を実施して、当初設定した価格よりも割引価格で販売して売り切り、資金の回収に努めました。

その結果、2年足らずで衣料品は食料品と並ぶ「稼ぎ頭」となり、さらに日用雑貨、家電、家具など、さまざまな生活用品を扱うようになり、大きく成長しました。

 
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