導入事例

近藤税理士事務所

2016年6月17日

近藤税理士事務所 様

近藤税理士事務所(愛媛県松山市)は、税務だけではなく中小企業の利益計画の策定や資産税案件などに積極的に取り組む会計事務所である。その歴史は長く、同事務所の所長である近藤猛氏(写真)が開業してから、今年で既に32年目に突入している。近藤氏は「急激にお客様が増えることはなかった」と謙遜するが、着実に顧客を開拓してきた取り組みは大いに注目に値するといえるであろう。そこで今回は、近藤氏に同事務所のこれまでの取り組み、利用してきたシステム、今後の展望についてお話を伺った。

6万円の家賃と10万円の売上

―― 近藤税理士事務所は、愛媛県松山市を中心に展開している会計事務所です。同事務所は税務のなかでもとりわけ、資産税案件など付加価値の高い業務に取り組んでいることで広く知られています。
本日は、近藤税理士事務所の所長である近藤猛先生に、これまでの取り組みや今後の展望について伺います。まず、近藤先生の足跡を教えてください。

近藤 私が税理士を志すことになったきっかけは父の勧めです。
私の父は田舎の山の中で製作所を営んでいました。父は税務署に苦しめられた経験もあり、「税理士はいいよ」と言っていたのを覚えています。
私は東京の大学へ進学したのですが、長男だったこともありまして、「卒業しても宮仕えするな、愛媛に戻ってこい」と言われていました。ですから、資格を持っていないとまずいと考え、士業へ進もうと思いました。そのなかでも、自分で事業を行っている父と税務署とのやりとりを見ていたこともあり、中小企業の経営者を支援できる税理士を目指したわけです。

―― 試験はいつ受けられたのですか。

近藤 大学在学中に簿記論・財務諸表論を取りまして、大学を卒業した昭和53年に国税三法のうち法人税に合格しました。
その翌年、昭和54年には愛媛に戻り、地元の会計事務所に入所しました。そこで勤務しながら残りの2科目の勉強をしたわけですが、合格するまでに4年ほどの時間がかかっています。
結局、昭和58年の12月に試験に合格しまして、昭和59年に税理士登録をしました。そして、昭和60年の6月に近藤税理士事務所を開業しました。

―― 開業から既に30年以上になるのですね。

近藤 丸31年を過ぎ、32年目に入りました。
開業した昭和60年はまだバブルの真っ只中でした。いい時期ではありましたが、私自身はバブルの恩恵にあずかった記憶は全くありません。
さまざまなやり方があったのでしょうが、今振り返ってみると私自身の実力が足りなかったのだと思います。

―― 開業当時、顧客はいらっしゃったのですか。

近藤 勤務していた時代に担当していたお客様で「ついていってもいい」と言ってくださったところが5件くらいありました。そのうち1件は、私の父なのですが(笑)。
月の売上は10万くらいでしたね。実家は大洲という田舎にありましたので、家賃3万円ほどの自宅を借りていました。事務所の家賃も3万円でしたので、10万円の売上でどのように生活していたのか不思議なほどです。サラリーマン並みの収入が得られるようになったのは、開業から3年くらい経ってからでしたね。

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体力勝負の創業期

―― 当時、経営理念のようなものはありましたか。

近藤 残念ながら、まずは売上を上げたいという一心でした。
私には負けず嫌いなところがあり、確定申告の繁忙期には夜中の3時、4時まで仕事をして、そのまま事務所のソファで寝たりしていました。1週間に1度くらいお風呂に入るためだけに家へ帰っていましたが、そのような状態が1カ月くらい続いたりもしました。
当時、事務員を1人置いていたのですが、開業したてですから2人とも資産税には詳しくありません。そこで、真夜中に友人に電話でよく相談していました。3時に電話がかかってきて、「これから寝るからもう電話するなよ」とよく言われましたね。
創業から数年はこういった体力で乗り切るようなやり方をしていました。そうしているうちに、徐々にお客様が増えてきた印象です。

―― 人材の育成や採用はどのようにされていたのでしょうか。

近藤 ギリギリまではその時点の体制でやってみて、どうしても回らなくなると新たに職員を雇用するという形でした。いわゆる泥縄の状態です。

―― どのような人材を採用されたのですか。

近藤 簿記くらいの知識しかない若い子を採用して、毎朝必死に研修して育てたのです。しかし、3年くらい経ってようやく戦力になってきた頃に、辞められてしまったりもしました。そのようなことが何度かありましたね。
今になって考えれば、もう少し先行投資が必要だったと思います。

―― 現在はどのくらいの人数がいらっしゃるのでしょうか。

近藤 12名ほどですね。

―― 現在の事務所に移転されたのはいつ頃ですか。

近藤 この事務所に移ってきたのは12年前、平成16年ですね。
松山市の中心街からは少し西に離れていますので、どうしても車が必要な土地です。ですから、ある程度の駐車スペースも確保しまして、土地面積は150坪弱になると思います。

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事務所運営を支える統合システム

―― 着実に一歩ずつ成長を続けてこられた印象ですが、事務所の内部ではどのようなシステムを利用されてきたのでしょうか。

近藤 開業して間もない頃から今までずっとミロク情報サービス(以下、MJS)を利用しています。

―― MJSを導入したきっかけを教えていただけますか。

近藤 先ほど開業時に電話で相談した友人がいるとお伝えしましたが、彼がMJSを使っていました。それより以前からMJSには魅力を感じていたのですが、彼が使うのをデモとして見ていたのです。
当時、他のシステムにはなかったと思うのですが、MJSには利益計画を行うシステムがありました。それがとても魅力的でMJSに決めたわけです。
その頃からMJSとのお付き合いがあります。

―― MJSとの長い付き合いのなかで感じたことをご紹介ください。

近藤 MJSは柔軟性があると思います。パッケージソフトながらも会計ソフトに高い柔軟性を感じます。

―― 現在使っているシステムについて教えてください。

近藤 顧問先の都合で他社のソフトも一部使っていたりするのですが、基本的にはMJSの最新統合システムである「ACELINK NX-Pro」を活用しています。
「ACELINK NX-Pro」は、税務や財務だけではなく、顧問先の経営計画策定の支援が行えたり、事務所の業務を管理して効率化が図れたり、顧問先の自計化を促進したりするさまざまなアプリケーションをひとつのデータで利用できるシステムです。

―― 自計化率はどのくらいですか。

近藤 昔からのお客様も多いので、あまり高くありません。5割弱だと思います。
最近、製造業で20億円くらいの売上があるお客様が他の事務所から移ってこられたのですが、その理由は前の事務所で記帳代行を扱ってくれなかったからです。記帳代行のニーズは今でも少なからずあると思います。

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職員の幸せがなければ意味がない

―― 現在、事務所はどのような理念で運営されているのでしょうか。

近藤 開業当時は理念がなかったと申し上げましたが、そのような私を変えてくれたのは実業家の稲盛和夫さんです。
あるお客様に「若い人もいるから行ってみないか?」と稲盛さんが主催する盛和塾に誘われて入会しました。私は稲盛さんについてあまり詳しくありませんでしたし、初めは自分とは別の世界の方だと思っていました。
しかし、稲盛さんは生き方そのものを説かれていて、大変感銘を受けまして、自身の中でも大きな変化がありました。稲森さんが説かれる「経営の原点12カ条」は、私たちのホームページにも掲載しています。

―― 事務所を運営していくうえで大切にしているものを教えてください。

近藤 一番大切なのは、やっぱり職員です。
どのような事業でも職員の幸せがなければやっている意味がないとさえ私は考えています。職員の幸せがないとお客様の役にも立てませんし、会社の発展もありえないと思います。

―― 自分が満足していないのに、顧客の満足度を上げるのは難しいですね。

近藤 2年ほど前、職員3名が同時期に事務所の近くに家を建ててくれました。それがとてもうれしかったですね。

―― 事務所の強みはどこにあると思いますか。

近藤 地方の大きくもない事務所ですが、専門性がどんどん高まっていると思います。
実は、どんなに忙しい確定申告の時期でも毎朝30分全員で研修を実施しています。税法と会計を中心とした研修なのですが、それを今でも毎日続けているのです。
税理士の登録はしていないのですが、有資格者も1名おりますので、組織として専門性はかなり高くなっていると感じますね。
この専門性を活かして、相続税の案件も多く扱っています。

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資産税案件と利益計画に特化

―― 資産税(相続税)のニーズに応えられるような専門性は、差別化としてとても有効です。どのくらいの案件数があるのでしょうか。

近藤 ニーズはかなりありまして、ありがたいことに毎年複数件の実績があります。今年は相続税だけで既に10件を超える案件を担当しています。ノウハウはかなりたまったと思いますね。

―― 全国の会計事務所の平均で、年間あたりの相続案件数は0.7件しかありませんから、大変多くの結果を残されていますね。

近藤 どこの事務所も法人の案件で人が足りないのだと思います。
私たちは中心地から少し離れたところに事務所がありますので、地元の農家さんのお手伝いも当初からかなり行っています。総資産1億円前後の相続税案件もかなりの数を担当させてもらったのです。
こういった活動や、事業承継に関しても積極的に取り組んでいきたいと考えています。

―― 他に現在の取り組みがあればご紹介いただけますか。

近藤 利益計画の策定には力を入れていまして、現在10件くらいのお客様のものを手掛けています。
お客様に年1回は事務所にお越しいただき、半日くらいの時間をかけて一緒に経営計画を作成します。「売上の目標はこれくらいですか?」「利益率はこのくらいですか?」「人は増やしますか?」など意思決定をしてもらい、その結果としてどのような利益が予想されるかが分かるわけです。

―― 皆さんの反応はいかがですか。

近藤 好評ですね。お客様によっては、毎月予実の対比を一緒に行う企業もあります。売上が40億円くらいの規模の企業ですが、経営者を含めて4~5人にお越しいただき、半日かけて前月の予実の対比を部門ごとに行っています。その資料を基に経営会議を行うのですが、その経営会議に私も出席しています。
他にも予実の対比はお客様自身で行っていますが、毎月2回ほど経営会議に出席している企業もあります。

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職員が成長できる事務所に

―― 最後に今後の成長戦略をお聞かせいただけますか。

近藤 事業に関しては2つの展望があります。
まずひとつは、先ほども述べましたが、専門性をさらに高めていくことです。具体的には、資産税に特に力を入れた人材教育を行っていきたいと考えています。将来的には資産税専門の部隊を作りたいですね。
それともうひとつが、こちらも先ほど述べましたが、利益計画の策定により力を入れていくことです。中小企業の経営者にアドバイスができ、寄り添える存在になっていきたいですね。
また、抽象的な言葉にはなりますが、職員の幸せを追求するだけではなく、職員が仕事を通して人間として成長できる事務所でありたいと思います。具体的に戦略化までは行っていませんが、M&Aも数件手掛けた実績がありますので、組織再編のような専門性が高い業務を全員ができる事務所になりたいのです。
人材を確保することはなかなか難しいですが、これが本当に実現できれば、組織としての規模も大きくなるのではないでしょうか。ですから、規模を求めるのではなく、結果として規模が大きくなっていけたらいいと思います。

―― 本日は貴重なお話をありがとうございました。近藤税理士事務所のますますのご発展を祈念しています。

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導入事務所様のご紹介

近藤 猛(こんどう・たけし)

近藤 猛(こんどう・たけし)

近藤税理士事務所 所長。税理士。昭和29年生まれ。愛媛県出身。昭和53年、慶應義塾大学商学部卒業。昭和54年、愛媛県の会計事務所に入所。昭和58年、税理士資格取得。昭和60年、近藤税理士事務所開業。

近藤税理士事務所

所在地 愛媛県松山市高岡町127-8
代表者 近藤 猛
創業 昭和60年6月
職員数 12名
業務内容 利益計画の策定、月次監査、パソコン経理、資産税の相談および申告、決算および申告、記帳代行
URL http://www.kondo-zeiri.co.jp/
  • 本事例の掲載内容は取材当時のものです。

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