第8回 テレワークにおける労務管理のポイント

労務管理

2020/09/02

世界中で「WITH(ウィズ)コロナ」という言葉が浸透し、人々は新型コロナウイルスとの共存・共生が求められています。我が国においても、各企業は新しい生活様式を基本としたビジネススタイルの確立が急務となり、2020年5月25日に緊急事態宣言が解除されてからも「テレワーク」が推奨されています。すでに第3回労務管理トピックスでも「テレワーク」の話題は取り上げましたが、今回は「テレワークにおける労務管理のポイント」としてもう少し詳しく述べてみようと思います。

具体的な労務管理の方法

厚生労働省が策定した「情報通信技術を利用した事業場外勤務(テレワーク)の適切な導入及び実施のためのガイドライン」によると、テレワーク勤務者にも、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されると明記されています。つまり会社には、テレワークであろうと通常勤務と同等の労務管理が義務付けられているということです。

では、実際には目に見えない場所での出勤・退勤の時刻をどのように管理すればよいのでしょうか?メールやSNSでの 報告、電話等での連絡など、方法は幾通りもあります。ただ、会社も労働者も負担が少ないのは、スマホ等を活用していつでもどこでも出退勤記録が簡単にできるクラウド型の勤怠管理だと思います。そしてそれを、どのように運用するのかを明確にすることが大切です。たとえば、始業・終業の時刻をどのタイミングとするのか、在宅勤務中にこどもの送り迎えをしなければならない場合や休憩時間等、中抜けする場合どのような扱いとするのか、自宅から客先訪問する場合は?など、細かくルールづくりをすることが後々のトラブルを防ぐこととなります。

また、一人で業務に集中しすぎて、ついつい長時間労働に陥ってしまうことを防ぐことも忘れてはなりません。テレワークは、個々の仕事の進み具合等を管理しにくいこともあり、本当に残業が必要なのかどうか会社や上司が判断しにくいので、原則、残業は無しとすることをお勧めいたします。それでもどうしても必要な場合は、事前に残業時間の申告制とし、健康管理の側面からも業務が深夜に及ぶことがないようにすべきです。

テレワーク勤務時の費用負担

在宅勤務の場合など、水道光熱費や通信費の取り扱いをどうするのか、事前に決めておく必要があります。仮に、在宅勤務者に負担が発生する場合は、就業規則またはテレワーク規程にその旨を定めておかなくてはなりません。(労働基準法第89条「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」)

在宅勤務時間がどの程度あるのかによってその負担の度合いも変わりますが、どこまでが個人使用分でどこまでが業務使用分かを区別しにくいので、在宅勤務日数により予め金額を定めて、「在宅勤務手当」等の名称で一定額を支給する会社が多いようです。そのほか、従業員の自宅に新たにwifi環境を整える場合、作業テーブルやモニターを購入する場合などは、その費用を会社が負担することが一般的です。

また、「通勤手当」の扱いはどうすればよいでしょうか?こちらも賃金規程等にその扱いを明記すべきですが、全く通勤が発生しないのであれば、(いかなる時も支給する等の規定がない限り)支給する必要はありません。

金銭に関わる事項は、何かとトラブルの元となりますので、賃金規程やテレワーク規程に細かく規定することをお勧めいたします。

テレワークの作業環境整備

多くのテレワーク勤務者が「上司や同僚とのコミュニケーション不足」「孤独感」を感じているようです。オンラインを通じて少なくとも1日1回はweb会議を実施するなどの工夫も必要です。労働契約法第5条で「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められていることからも、テレワーク勤務者のメンタルヘルス対策も事業主の重要な責務と言えます。

また、厚生労働省が策定した「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に準じて、自宅での作業環境の整備も必要不可欠です。このガイドラインでは、具体的に作業環境管理(机、椅子、照明、パソコン等の機器)と作業管理(作業時間、作業姿勢、ディスプレイ等の機器の調整)について細かく記載されています。

新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、急速に普及したテレワークですが、運用次第では生産性の低下を招いてしまう場合もあります。正しく運用していくために、就業規則の見直しはもとより、会社と従業員の意識改革も必要不可欠です。柔軟な働き方を推し進めるよい機会でもありますので、改めてテレワークの運用方法等を見直してはいかがでしょう。

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筆者紹介

MJS税経システム研究所 客員講師
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/

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