記事制作:税経システム研究所

卸売業

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2020/09/13

質問

不運にも販売量が減少してしまった「みろく青果」は、大量の在庫を抱えることになってしまいました。あなたが経営者なら次のうちどの選択をしますか?

パターン1

生産者からの仕入を大幅に減らし、これ以上在庫を抱えないようにする。

パターン2

これまで以上に価格を下げて、取引先に購入してもらう。

パターン3

卸売りに加えて自分たちで一般消費者向けに直接小売りする。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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強固な生産者とのつながり

「みろく青果」は青果卸売業を営んでおり、主に生産者から直接買い付けた高級な果物を、ホテルやレストランに納入しています。
 
久しぶりに懇意にしているマンゴー生産者の元を訪れた社長は、にこやかな顔で生産者Xさんに手を振りました。

社長 お~いXさん、久しぶりですね
Xさん 社長、お元気そうですね
社長 いつも美味しいマンゴーをありがとうございます。お客さんからもとっても評判いいですよ
Xさん そう言ってもらえると嬉しいですね
社長 最近は美味しいマンゴーを生産しているところを探すのも大変でしてね。Xさんとは末永く取引させていただけたらと思っています。今後ともよろしくお願いします
Xさん こちらこそ。社長にはあの時随分お世話になりましたから


社長は、こうして生産者の元を頻繁に訪れては、挨拶をして回ります。作物の育つ環境や品質のチェックは勿論のこと、自社と気持ちよく取引しているかどうかも、社長自らが足を運んで確認しています。おかげさまで生産者のみなさんとはつつがなく取引できており、知り合いの良い生産者を紹介してくれることもあります。国内の生産者が徐々に減少傾向にある中でも、みろく青果の調達網は万全です。

3年前 ~急な販売量の減少による過剰在庫

この年、世界規模で未知の感染症が蔓延しました。国民は外出自粛を余儀なくされ、みろく青果の取引先であるホテルやレストランの利用客は激減しました。その影響は当然みろく青果にまで及び、みろく青果の受注量もめっきり減ってしまいました。

急に経済活動が止まってしまったために、現在みろく青果の冷蔵庫にはいつも以上にマンゴーが山積みになっている状況です。これから旬を迎えるマンゴーは、夏が近づくにつれてますます収穫量が増えるので、生産者からも心配する声が寄せられています。
 
しかし、納入先のマンゴーの消費量が減少している以上、このまま生産者からの仕入を止めない限り、在庫は増えていく一方です。

社長 このままじゃいずれ大量のマンゴーを処分しなければならなくなってしまう。何とか対策を考えなくては
 

質問

不運にも販売量が減少してしまった「みろく青果」は、大量の在庫を抱えることになってしまいました。あなたが経営者なら次のうちどの選択をしますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

生産者からの仕入を大幅に減らし、これ以上在庫を抱えないようにする。

パターン2

これまで以上に価格を下げて、取引先に購入してもらう。

パターン3

卸売りに加えて自分たちで一般消費者向けに直接小売りする。

販売量が減少している以上、仕入量を減らすというのは、最も容易に在庫を抑えられる方法ですが、それではずっと取引してくれている生産者が窮地に立たされ、安定的な仕入れができなくなるかもしれません。
 

確かに、一般的には値下げをすれば買ってくれる可能性は高くなります。しかし、そもそも販売先であるホテルやレストランにお客さんがいないのですから、いくら値下げをしたからと言って、なかなか買ってはもらえないでしょう。

実はみろく青果の社長が選択したのはパターン3でした。臨時でテントを設営したり接客したり、社員の手を煩わせることに躊躇はありました。しかし、社長はそれ以上の損失を被ることになるのを懸念して選んだのです。その損失とは……。

仕入先確保の重要性

ある日、社長は機械メーカーに勤める大学時代の友人とオンライン飲み会を実施しました。久々に友人の顔を見た社長はつい愚痴をこぼしてしまいます。

社長 いやあ今回の感染症には本当にまいったよ。納入先にお客さんが来ないものだから、結局うちの会社の受注もほぼ無くなってしまったよ
友人 今は我慢の時だな
社長 しかし冷蔵庫に在庫が山積みで本当に困ってるんだ。このままじゃ生産者に一時的な取引中止を申し出るしか……
友人 それはやめておけ! 仕入先は大事にしておいた方がいいぞ。今は確かに大変かもしれないが、将来的にもっと困ったことになるからな

友人が突然強い口調で諫めるので、社長は首を傾げました。

社長 どういうことだ?
友人 俺の働いている会社は、以前部品メーカーにかなり安い値段で発注していたんだ。そしたら、どんどんと部品メーカーが倒産していってしまって、部品調達に結構苦労するようになったんだ。死活問題だよ
社長 そうなのか?
友人 上司もかなり問題視してなあ、今はこちらから値上げ交渉してでも取引を続けてもらって仕入先を確保しようという方針だよ。お前の会社も同じ目に合うかもしれないぞ。無理はしなくていいが、よく考えた方がいいよ

確かに、ただでさえ生産者は減少傾向にあります。尚且つ良質な果物の生産者となると、余計に探すのに一苦労です。

友人 確かいいレストランに卸してたよな? 余ってるんだったら、俺に安く売ってくれよ。そうだ、普段は買わない高級マンゴーでも安く売ってくれるなら俺みたいに買う人もいるはずだ。直接売ればいいんじゃないか?

翌日、会社では在庫をどうするか、最終的に決める会議が行われました。

社長 じっくり考えたんだが、やはり取引量を減らすのは最低限にとどめて生産者との取引は続けたいと思う
社員A 冷蔵庫に入りきらないマンゴーはどうします?
社長 古い順に処分はやむを得ないだろう。そこで直接消費者に販売したらどうだろうか。そうすれば少しは処分する量を減らせるし、多少の利益にもなる。品質の高さと安全性とを最大限アピールして、近場の人たちに買ってもらえるように努力しよう
社員B いいですね。幸い当社はフルーツの目利きに長けた社員が大勢いますし、当社で扱っているマンゴーの素晴らしさを直接消費者に訴えることができます
社長 生産者は今大変な時だからね。このまま当社が取引を完全にやめてしまったら潰れてしまう。そしたら当社は大事な仕入先を失ってしまうことになる。そちらの方がはるかに損失が大きい。やれるだけのことをやろう

その後社長は、今は損失を被ることになっても、仕入先を守ることがみろく青果の将来につながる、といったことを社員全員に周知しました。
 
社員たちは使命感とやりがいを持って直接販売する手立てを考えました。値段は卸売価格で、スーパーで売られている同等の品質のマンゴーと比較すると、お得感が感じられます。自社ビルの前の空いたスペースに簡易テントを組み立て、通りがかる人の目につくように、派手なのぼりを立てました。
 
すると、スーパーマーケットと家との往復をする人たちの中には「普段は高級ホテルやレストランにしか卸していないマンゴーを安く購入できる」と喜んで、買ってくれる人がいます。徐々に口コミが広がり、わざわざ遠回りして買いに来てくれる人までいるようでした。こうしてみろく青果は少しずつでも在庫を消費することができ、処分するマンゴーの量を最低限に抑えながら冷蔵庫の在庫量を維持しています。

社員C 社長、生産者Xさんからお電話です
社長 もしもしXさんですか。大丈夫ですか?
Xさん ええ。取引を続けてくださり本当にありがとうございました。厳しい状況に変わりはないですが、それでもみろく青果さんが潰れない程度に取引を残してくれているので何とか踏ん張ろうと思います
社長 いやいや。こちらも小売りはやったことがなかったですが、いい経験になりました。お互い頑張りましょう

みろく青果は、感染症が落ち着いてからも、評判が良かった自社ビル前での小売りを続けました。特に季節の果物詰め合わせセットは安定して売上を上げています。

この件をきっかけに、みろく青果は自社のサプライチェーンを見直すことになりました。仕入先だけでなく配送業者など様々なステークホルダーとの関係性を考えながら、安定した供給ができる体制づくりを考えるようになったのです。

ワンポイント解説「サプライチェーン」サプライチェーンとは、商品や製品が消費者の手元に届くまで、すなわち、商品や原材料の調達、製品の製造、配送、販売など、一連の流れのことを言います。新型コロナウイルス感染症の影響で従来のサプライチェーンが毀損しているところが少なからずある中で、サプライチェーンを維持することの必要性が高まっています。
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