記事制作:税経システム研究所

卸売業

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2016/11/13

質問

事業部の赤字を本社費のせいにする新任事業部長。そんな新任事業部長に対して、あなたが経営者ならどの行動をとりますか?

パターン1

事業部長を交代させて、モチベーションの高い人材を事業部長に任命する。

パターン2

新任事業部長の事業部だけ本社費の配賦額を減らす。

パターン3

各事業部内に本社を設けたら必要になる費用を算出してみる。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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新任事業部長が事業部長としての利益責任を感じている会社

「ミロク商事」は関東地方を中心に繊維関連の製品を扱う専門商社です。先代の社長が、多様化した事業ごとに迅速に意思決定ができるように「事業部制」を採用して以来、事業部ごとに意思決定の権限が与えられるとともに業績責任を負うしくみである事業部制がすっかり定着していました。現社長は3代目にあたります。若手でも積極的に意見やアイデアを出すことを高く評価することで、より成長力のある会社を目指していました。
 
さて、ある月の経営会議でのことです。6カ月前に営業課長から事業部長に昇進したばかりの新任事業部長が前月の業績の報告をしています。その事業部の営業損益はまだ数百万円の赤字ですが、6カ月前より確実に赤字幅が縮小しています。

新任事業部長 ご覧のとおり営業利益はまだマイナスですが、新しい営業施策が定着しつつありますし、経費の削減も順調ですから、来月こそは黒字化のご報告ができると思います!

社長は大きくうなずきましたが、半年前のこの新任事業部長は全く違っていました。

半年前 ~本社費を言い訳に使う新任の事業部長

5月の経営会議でのことです。4月の人事異動による新体制のもと、4月度の業績報告が行われました。各事業部からの業績報告が終わり、最後にこの4月に事業部長になったばかりの新任事業部長の順番になりました。

新任事業部長 当事業部の4月の売上高は前年同月比5%の増加となりました。事業部長になっての初月ですから黒字の報告をしたかったのですが、本社費を負担したせいで赤字になってしまいました
社長 売上が伸びたことは素晴らしいことですが、事業部長には売上だけでなく営業利益にも責任があります。経費削減も含めて目標利益達成のための施策をよく考えてくださいね
新任事業部長 はい、社長、ですが、……、私は以前から売上や粗利目標を達成することに必死に取り組んできましたが、本社費の配賦額がこんなに大きいとは事業部長になるまで知りませんでした。そもそもの話にはなりますが、本当にこんなに本社費を負担しなければならないんでしょうか?
この新任事業部長は、昇進してもなお、気後れせずに自分の考えをはっきりと伝えるように心掛けているようです。
社長 つまり、営業利益が赤字なのは本社費が多過ぎるせいだと言うのですか?
新任事業部長 はっきり言えばそういうことです。当事業部では頑張って売上を伸ばしているのに、こんなに本社費を負担しなければならないなんて……。全社的な観点からは本社費を徹底的に減らすことも必要だと思います
社長 本社のメンバーも少数精鋭で頑張ってくれていると思うが……
社長は、新任事業部長が着任早々、本社費にかみついてきたことに驚きながら、他の事業部長の様子を見ましたが、誰も新任事業部長に反論するものはいません。社長は思いました。「もしかしたらこの新任事業部長のように、本社費が多過ぎるというのが事業部長の総意なのかもしれない」と。本社費負担に納得していない様子の事業部長に対して、どう対応したものか思案しつつ、いったんその場での話を終えました。
 

質問

事業部の赤字を本社費のせいにする新任事業部長。そんな新任事業部長に対して、あなたが経営者ならどの行動をとりますか?

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パターン1

事業部長を交代させて、モチベーションの高い人材を事業部長に任命する。

パターン2

新任事業部長の事業部だけ本社費の配賦額を減らす。

パターン3

各事業部内に本社を設けたら必要になる費用を算出してみる。

事業部長のモチベーションが低いために赤字に陥っているのであれば、モチベーションの高い人材を事業部長にすることも考えられます。しかし、今回の新任事業部長の発言はモチベーションの問題というよりむしろ本社費の理解に関する問題のようです。事業部長に本社費の意義を理解してもらう方法を考える必要がありそうです。

新規事業をスムーズに立ち上げるために、新規事業を担当する事業部などに対してあえて本社費の配賦額を少なくし、黒字化しやすくする方法もあります。しかし、今回は新任事業部長の事業部だけ本社費負担を減らす特段の事情はないかもしれません。

実はミロク商事の社長が選択したのはパターン3でした。本社費の配賦額に対する新任事業部長の不満にどう対応したか見てみましょう。
 

カギは、“本社費にも規模の経済が働く”ということだった

事業部が本社費を負担するのは当たり前と考えていた社長は、納得していない様子の事業部長にどう対応したら良いものかと、その日帰宅してから家のソファでぼんやりと考えていました。すると、社会人3年目の娘と妻が大きな声で言い争っている様子が聞こえてきました。

なんで、このワンピースをちゃんとクリーニングに出しておいてくれなかったの!? 今日着ようと思ってたのに~
仕方ないでしょ。毎日クリーニング屋さんに行ってるわけじゃないんだから! そんなに文句があるならあなたももう一人暮らししなさいよ
ちゃんと毎月家計にお金を入れてるんだから、文句ないでしょ
何言ってるのよ! お金を入れているって言っても、3万円じゃないのよ。今どき一人暮らししたらいくらかかると思ってるの。これじゃあ家賃も払えないわよ!
社長は妻の言葉を聞き、思いました。「そうだ、“一人暮らししたらいくらかかるのか”、それと比較すればいいんだ。事業部だって同じじゃないか!」

翌月の経営会議での様子です。
社長 先月の経営会議で本社費が多過ぎるのではないか、という意見がありましたので、経理部長にお願いして、皆さんの事業部が独立した一つの会社だったら、どの程度の本社費用が発生するかを試算してもらいました
経理部長 試算は、各事業部に経理・総務・人事の担当者として2名、役員も1名おき、この3名の人件費とスペース代、そのほかに広告費や消耗品、通信費やもろもろの雑費を積み上げて計算してみました
新任事業部長 うーん、改めてこうして数字を見てみると、事業部が負担している本社費って実はかなり少なくなっているんですね
経理部長 そうなんです。複数の事業部がそれぞれ本社機能をもったらコストが高くつきますが、それを一括して本社が行うことで、実際には“規模の経済”が働き、割安になっているのです
新任事業部長 こんなに割安になっているとは知りませんでした……。私はその本社費さえも回収できていなかったということですね……
社長 まぁ、そういうことです。でも、非難しているわけじゃないんです。事業部の利益で本社費の配賦額を回収できなければ、会社は生き残れない。会社の命は各事業部の利益にかかっているんです。だから事業部長には売上だけではなく、事業部の営業利益が黒字になることに責任をもって努力してほしいのです
経理部長 もちろん、本社機能が膨れ過ぎることがないように歯止めをかけることも必要ですから、本社におけるさらなる経費削減ができないか検討しつつ、経理部では顧問税理士に他社の本社費と比較してもらうなどの分析もしてみようと思います

この日から新任事業部長は経営会議で本社費の配賦額についての文句は言わなくなり、営業黒字化のためのアイデアや意見を積極的に出し、全力で利益目標達成のための努力をするようになりました。

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