ランチ激戦区でも客足を伸ばした定食屋の戦略とは?

2016年12月3日

飲食業

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2016/12/03

質問

味に自信があるのに客足が伸びない「定食みろく」。あなたが「定食みろく」の経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

粗利を重視したヒット商品ができるよう新しいメニュー開発を継続する。

パターン2

粗利が低くても、インパクトのある数量限定メニューを開発する。

パターン3

チラシ配りなどの宣伝により一層力を入れる。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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行列ができる人気店

「定食みろく」は、とあるオフィス街にある和食中心の定食屋です。まわりには大きなビルが立ち並び、今やいつも多くの人でにぎわい行列のできる人気店となっています。

ある日のランチタイム、店内は活気であふれています。その中で、ある二人組のお客さまが、楽しそうに話していました。

客A ここの料理は、なにを食べてもおいしいわ
客B 誘ってくれてありがとう。会社の近くに、こんなにおいしいお店があるなんて知らなかったわ
客A 私もこの前、あるキッカケで知ったのよ
客B 今度、他の人たちも誘ってまた来ましょうよ

その様子を見ていたスタッフも、うれしそうです。

数カ月前 ~客足が伸びないお店

定食みろくは、1年前にオープンした定食屋です。店長は都内の有名店で修業をしたこともある、腕に自信のある料理人です。また、多くの人がいるオフィス街でのオープンということで、当初、店長は自信満々でした。きっと多くのお客さまに来ていただけるだろうと。

しかし、オープンしてからしばらくは、なかなか客足が伸びなかったのです。まわりには多くのレストランがあるし、ランチタイムにはお弁当屋さんも多くやって来ます。ここのオフィス街は、店長が思っていた以上に激戦区だったのです。

ある日の休憩時間のこと、スタッフのCさんとDさんが話しています。

スタッフC 最近、店長ぐちってばかりだよね……
スタッフD 確かに。うちの料理はすごくおいしいのに、なかなかお客さまが来てくれないって、よく言ってるね
スタッフC ほんと、味は抜群よね。店長が作ってくれる、まかないなんて、天下一品だと思うよ
スタッフD そうだよね。メニューも多くて、毎日来ても飽きないと思うんだけどなー
スタッフC それに店長細かいから、どれくらい原価がかかるか、どれくらいの粗利がでるか、全部キチンと計算しているんだって
スタッフD すごいよねー! でも、お客さまがきてくれないことにはね……
スタッフC うちのお店を知ってもらおうと、チラシ配りも頑張っているんだけどね

質問

味に自信があるのに客足が伸びない「定食みろく」。あなたが「定食みろく」の経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

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パターン1

粗利を重視したヒット商品ができるよう新しいメニュー開発を継続する。

パターン2

粗利が低くても、インパクトのある数量限定メニューを開発する。

パターン3

チラシ配りなどの宣伝により一層力を入れる。

これまでのように粗利を重視しつつ、このエリアのお客さまの心に刺さるメニューができるよう、新しいメニュー開発を継続する。確かに、このような方法もありますね。しかし、既に多様なメニューを用意しているのに客足が伸びていない現状を考えると、別のアプローチを検討してみることも必要かもしれません。

定食みろくの店長が選んだのは、パターン2でした。店長はこれまで、食材にかかるコストを見落としたことで経営が苦しくなってしまった、そんな料理仲間たちの苦い経験を見てきました。そのため、粗利を重視してメニューを開発してきました。もちろん、味には自信のあるメニューばかりでしたが……

定食みろくを知ってもらうために、より一層、宣伝に力を入れる。これも方法のひとつでしょう。しかし、既に、お店のチラシを配るなど努力はしています。まわりには多くのレストランもあり、激戦区です。これ以上の宣伝活動を行うにはコストもかかりますし、現時点においても客足が伸びていない中、より一層の宣伝活動がどれだけ効果的か、不透明です。

ターニングポイントはトータルで採算を考えることだった

このランチ激戦区で、これまでのように粗利を重視したメニューだけでは通用しそうにない。しかし、食材にコストをかけると経営が苦しくなるかもしれない。

どうしたものかと悩みながら、店長が重い足取りで家に帰りつくと、ちょうど近所のスーパーでアルバイトをしている娘とそのスーパーで買い物をした妻が一緒に帰ってきたところでした。

お母さん、やっぱり今日はうちのスーパーで買い物したのね
もちろん! 火曜と木曜の大特売日はよそで買う気にならないわ。でも、あんなに安くて大丈夫なの?
大丈夫らしいよ。私も気になって、前に社員さんに聞いたら、折り込みチラシを毎日配るのをやめて浮いた費用を、大特売日の目玉商品の安売り分に充ててるんだって
へー、赤字覚悟ってわけでもないのね。トータルでうまく行くようにちゃんと考えてるんだ
妻のトータルでうまくという発言を聞いて、店長は目からうろこが落ちました。
店長 これまで俺は単品の粗利にこだわり過ぎていたんじゃないか? 効果のないチラシに使っていた広告宣伝費を、インパクトのある目玉商品の原価に充てた方がよっぽど宣伝になるし、お客さまにも喜んでいただけるはずだ!

これまで粗利に強いこだわりを持っていた店長は、料理仲間と同じ失敗を繰り返さないことを意識し過ぎて、少し視野が狭くなっていたようです。
 
トータルで採算がとれるように考えれば良いと気付いた店長は、定番メニューと変わらない価格なのに、定食みろく自慢のさまざまなメニューが味見できる「欲張りさんのお試し幕の内膳」というお得な新メニューを作りました。
 
元々味には自信がありますから、いろいろなメニューを味見してもらえば、定食みろくのクオリティーの高さを知っていただけるはず。次は定番メニューをじっくり味わってもみたいと思っていただこうという作戦です。
 
味見と言っても、一品一品の食材と味にこだわっていますので、粗利はこれまでのメニューよりも格段に悪くなります。そこで、効果のないチラシに使っている広告宣伝費の一部を削り、その金額でまかなえる1日15食の限定メニューとしました。そうすれば、粗利は悪くなりますが、このメニューのせいで営業利益まで悪化させてしまうということもありません。

そして、残りの広告宣伝費を使って「欲張りさんのお試し幕の内膳」を前面に押し出したチラシを配るようにしました。
 
その結果、お手頃価格なのに豪華な中身、それに数量限定というフレーズによる希少性も手伝って、「欲張りさんのお試し幕の内膳」に興味を持ったお客さまが少しずつ来てくれるようになったのです。
 
そして、定食みろくの味を知ったお客さまがリピーターとして定着してくれるとともに、会社の同僚などにも紹介してくれるようになり、定食みろくはランチ激戦区であるこの地区でも毎日行列ができるほどの人気店へと成長していったのです。

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