営業部長が青ざめた!?架空売上を発見するための方法とは?

2016年12月23日

情報通信業

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2016/12/23

質問

売上は順調に増加しているものの、営業部長が架空売上をしているのではないか、と疑っている経営者。あなたが経営者ならどのような対策をしますか?

パターン1

社内研修によりコンプライアンスの重要性を意識付けする。

パターン2

製品の検収書など帳票類をチェックする。

パターン3

得意先に手紙を出し、当社の売掛金残高を確認してもらう。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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売掛金の残高の正確性に自信をもっている社長

「みろくソフト」は、受託開発のソフトウェアやパッケージソフトの開発・販売を行っています。社長が大企業でのシステムエンジニア(SE)の経験を踏まえて創業し、この10年で業績が急成長しています。

ある日、みろくソフトの社長が経理部長と一緒に、銀行に業績説明の訪問をしたときの会話です。

銀行担当者 今期も売上が20%増ですね! まさに飛ぶ鳥を落とす勢いですね。しかし……、ここ数年、売掛金も増加傾向にあるのが少し気になりますね
社長 売上が増えているので売掛金も増えてしまっていますが、当社では、売掛金の回収を促進したり架空売上が起こらないようにしたりするなど、社内のチェック体制の構築には努力しています。ですから、売掛金の正確性には自信があります
銀行担当者 なるほど。御社のように急成長している会社の場合、営業社員が増収のプレッシャーから架空取引などに手を染めてしまうケースがありますが、御社にはそんな心配は無用ということですね
社長 いえいえ、社内の仕組みをつくっても、何らかの抜け道がないとは限りません。継続的な仕組みの改善と人材育成しかないと思っています

銀行担当者に説明をしながら、社長の頭に1年前の苦い思い出がよみがえっていました。

1年前の1月 ~営業社員に架空売上の疑惑が!?

みろくソフトは毎年20%近い売上成長を続けるなか、営業社員の売上目標も増え続けていました。社長は決して無理な売上目標を課すことがないよう注意していましたが、一方で血気盛んな営業部長たちは互いに売上を競い合っていました。社長は会社の順調な成長に満足していましたが、経理部長からの突然の話に頭を殴られたようなショックを受けました。

経理部長 社長、ここだけの話ですが、営業3部のA部長がもしかしたらですが……、架空売上をしている可能性があります
社長 何てことを言うんですか。A部長は優秀な部長です。毎年、確実に部の売上目標を達成してきたスーパー営業マンですよ。彼に限って……
経理部長 私もそう思いたいのですが、うちの部下が営業部の同期と飲んだときにちらっと聞いたようなのです。営業3部は以前からときどき部署ぐるみで架空売上を行っている疑いがあるのです
社長 しかし、架空売上なんかしても、売掛金が入金されないわけだから、その時点で発覚するじゃないですか
経理部長 それがそうとも限らないのです。例えば、カラ出張や架空の資産購入などで裏金をつくり、それを架空売上の売掛金の入金に使っている可能性も考えられます
社長 なんと手の込んだ……。それは監査役の監査をもってしても発見できないのですか?
経理部長 当社の監査役だけではそこまでは手が回らないようですから、不正の発見までは正直期待できません
社長は信頼しきっていたA部長に初めて不信感を抱きました。しかし架空取引の証拠などありませんから直接追及することもできず、悶々(もんもん)とした日々を送っていました。

質問

売上は順調に増加しているものの、営業部長が架空売上をしているのではないか、と疑っている経営者。あなたが経営者ならどのような対策をしますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

社内研修によりコンプライアンスの重要性を意識付けする。

パターン2

製品の検収書など帳票類をチェックする。

パターン3

得意先に手紙を出し、当社の売掛金残高を確認してもらう。

コンプライアンス(法令順守)研修は、企業の健全性を保つために必須です。ただ、長期的な観点からは有効かもしれませんが、すぐに営業3部のA部長に架空売上をやめさせるほどの効果は期待できません。架空売上を防止・発見するための即効性のある具体策が必要です。

売上の根拠資料となる「検収書」など、取引の実在性を示す資料を確認することは必ず行うべきです。もしこれらの帳票チェックをしていないようであればすぐに行う必要があります。しかし営業部長が架空取引を仕切っている場合、帳票類も部署ぐるみで改ざんされる可能性もありますから注意が必要です。

実は社長が行ったことはパターン3でした。社長は得意先に売掛金の残高を確認する手紙を出すことにしましたが、そこにどのような効果があるかと言うと……

“不正は取引先に教えてもらう”、ということが答えだった!?

それは翌月のある日のことでした。社長室に経理部長が飛び込んできました。

経理部長 社長、大変です。うちの業務提携先のOソフト社が架空売上をやっていたようです
社長 えっ、本当ですか? あの大企業が架空売上なんかするとは……
経理部長 私もびっくりですが、先ほどOソフト社の経理部から電話があり、当社向けに架空売上を計上していたらしいです
社長 そうでしたか……。しかしなぜ架空売上が発覚したのだろう
経理部長 実は前にOソフト社の経理部から売掛金の残高確認書が送られてきたのです。こちらで把握している残高を回答したところ、両社の残高に不一致があったことで発覚したようです
社長 えっ、残高確認書って、何ですか?
社長は経理部長から残高確認書について説明を受けました。ある程度の規模の企業では、経理部が得意先に対し、期末日の売掛金の残高を確認するための手紙(売掛金の残高確認書などと呼ばれます)を出すことがあるのです。この残高確認書を受け取った得意先は自社の買掛金の金額を残高確認書に記載して、直接経理部に返送します。架空売上だけでなく、事務処理上のミスなどがあれば、ここで金額が一致せずに問題が発覚するというわけです。

つまり、企業の経理部同士が営業部を介さずに、直接互いの債権債務の残高を確認し合うのです。

社長は思いました。
<なるほど。社内の不正は得意先に教えてもらうということか!>
 
その後、すぐに社長は経理部長と相談し、今期末から売掛金について残高確認書を発送することにしました。そして期末月である3月最初の経営会議でそのことを発表しました。
社長 今回、当社の業務提携先が架空売上を行っていることが発覚しました。それは、その業務提携先の経理部から当社に来た売掛金の残高確認書がきっかけでした
B部長 残高確認書とやらで架空売上が分かるのですか?
社長 そうです。売掛金の残高確認書は、“取引先が計上している売掛金”と“当社が計上している買掛金”の残高が一致しているかどうかを経理部同士で確認し合うものです。もし不一致があれば、おかしいということになり、調査がはじまるのです
C部長 なるほど、営業部が入らないで経理部同士で確認し合うから不正や間違いが発見できるわけですね。当社でも得意先に残高確認書を送っているのですか?
社長 いいえ、これまではやってきませんでした。私は当社で不正が行われているとは思っていませんが、残高確認書は事務的な間違いの発見にも役立ちます。売掛金の正確性を保つためにも、当社も今期末から得意先へ残高確認書を発送することにしました
D部長 すると……、われわれ営業部は何もしなくて良いのでしょうか?
社長 そういうことです。あっ、一つだけお願いしたいことがありました。得意先から残高確認書についての問い合わせがあった際は、必ず経理部に直接電話していただくよう伝えてください

このとき社長は、営業3部のA部長が一瞬だけ動揺したことを確認しました。同時に社長は心のなかで思いました。
<これでひとまず、架空売上をしたら発覚する仕組みはできた。しかし残高確認書でも発見できないような不正を考えてくるかもしれない。不正なことに手を染めない、また手を染めさせない、そんな社風にするための方法も同時に考えていかなければいけないな>

【ワンポイント解説】

「残高確認書」とは

企業が、取引先等に対して、自社の債権や債務の残高を確認するために送付する書面を言います。上場企業では会計監査の一環として実施されています。非上場企業でも、売掛金や買掛金等の管理のため、一定規模以上の取引先等に対して残高確認を実施することがあります。残高に差異がある場合、その理由を調査することで、処理の誤りや不正などを見つけることができます。なお、残高確認書の様式はインターネット等でも紹介されています。

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