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卸売業

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2017/02/03

質問

”乾いたぞうきん”をさらに絞るようなコスト削減を続ける事業部長。利益率が改善せずに悩んでいる彼に対して、あなたが経営者ならどのような指示をしますか?

パターン1

目標値を設定して、さらなるコスト削減の努力をするよう指示する。
 

パターン2

コスト削減の努力を一旦やめて売上アップのための努力をするよう指示する。

パターン3

人件費など今まで手を付けられずにいたコストにも聖域なく切り込むよう指示する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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利益率トップで表彰された事業部長

「MJS物産」は関西地方を中心に機械部品関連の製品を扱う専門商社です。3代目にあたる現社長が経営会議で前期の業績を発表しています。

社長 この1年、本当にお疲れさまでした。皆の努力のおかげで今日はいい発表ができるよ。まず当社の重点項目である営業利益率、トップは、……第3事業部!

経営幹部や事業部長が大きな拍手をして祝福しています。

社長 第3事業部はよく頑張ったな。実は第3事業部は売上高の前年比成長率も全事業部の中でトップだったんだ

感嘆の声とともに、事業部長たちが顔を見合わせてつぶやいています。

事業部長たち 売上成長と営業利益率アップを同時に達成するなんて大したものだな

そして社長が第3事業部のS事業部長にコメントを求めました。彼は目を潤ませながら立ち上がりました。

S事業部長 今回の結果は部員の皆が努力した成果です。彼らにも今の皆さんの拍手を聞かせてあげたいです! それから、営業利益率を改善するために新しい道を示してくれた社長に感謝しています

MJS物産では、3年ほど前から事業部の評価指標として「営業利益率」を重視していますが、第3事業部は今回素晴らしい業績を残すことができたようです。しかし、実は1年前は全く違っていました。その頃の様子を見てみましょう。

1年前 ~“乾いたぞうきん”をさらに絞り続ける事業部長

それは1年前の4月に開催された経営会議でのことでした。事業部長が順番に1年間の総括を話しているときのことです。第3事業部のS事業部長の順番になりましたが、彼はじっとうつむいて、資料を見ながらゆっくり話し始めました。

S事業部長 この1年、頑張ってコスト削減の努力をしてきたのですが……、資料のとおり、売上高の前年成長率はマイナス。コスト削減でカバーしきれず、営業利益率が前期より悪化してしまいました。本当に申し訳ありませんでした……
社長 そんなに肩を落とさなくていいよ。君のコスト削減の努力は私もよく見ていた。まるで“乾いたぞうきん”をさらに絞るような、そんな努力をしていたじゃないか!
S事業部長 ありがとうございます。でも……、今の私には何をどうしたらいいのか、もう分からなくなってしまいました……
社長 大丈夫。部下の皆も君と一緒に随分と努力していたから、きっともうすぐその結果が出ると信じてるよ
社長はそのとき、S事業部長に何も適切な指示ができない自分を恥ずかしく感じていました。

質問

”乾いたぞうきん”をさらに絞るようなコスト削減を続ける事業部長。利益率が改善せずに悩んでいる彼に対して、あなたが経営者ならどのような指示をしますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

目標値を設定して、さらなるコスト削減の努力をするよう指示する。

パターン2

コスト削減の努力を一旦やめて売上アップのための努力をするよう指示する。

パターン3

人件費など今まで手を付けられずにいたコストにも聖域なく切り込むよう指示する。

ただ漫然とコスト削減の努力をするよりも、目標値を持つほうが成果が出やすいのは確かです。しかし第3事業部はすでに相当なコストカットを行っているようですから、営業利益率を改善するためには何か違うことを考えなければいけないかもしれません。

実は社長が行ったアドバイスはパターン2でした。社長は第3事業部にこれ以上のコスト削減努力は一度やめて、とにかく売上アップのための施策を徹底的に考えさせるようにしたのです。では、なぜ売上が上がれば営業利益率が良くなるのでしょうか……

確かに人件費など手を付けにくい費用についても削減すれば一時的には利益率は改善するかもしれません。しかし人件費に手を付けることで社員のモチベーションが大きく低下し、取り返しのつかない結果になってしまう危険性もありますから注意が必要です。

ポイントは、「コストと売上の対応関係を考える」ということにあった!

その日の経営会議が終わり、社長はS事業部長に指示を出せなかったことが悔しくてたまりませんでした。自分には社長としての力があるのだろうか? そのときアイデアが浮かびました。「そうだ! 今夜久しぶりに会う友人に話を聞いてみよう」。彼は社長の高校時代からの友人ですが、大学を卒業してすぐに起業し、ついに先月、株式上場を果たしたのです。

彼の会社の売上高はわずか10億程度しかありませんが、毎年20%も売上高が成長しています。しかも営業利益率が何と30%を超えているのです。彼ならコスト削減のための良いアイデアを知っているに違いない、と社長は思ったのです。

社長 上場おめでとう! どうだい? 上場企業の社長の気分は?
友人 大変だよ~。毎日、投資家説明会だ、銀行訪問だ、株主総会だって。会社の役員に指示を出す暇もないよ! それよりお前はどうだい? 調子は?
社長 お前のように“飛ぶ鳥を落とす勢い”ってわけにはいかないが、何とかやっているよ。そうだ、教えてもらいたいことがあるんだ。お前の会社は確か営業利益率が30%もあるだろう。相当なコストカットをしているんじゃないかと思うけど、秘訣(ひけつ)ってあるのかい?
友人 コストカット? そんなこと特に考えていないな~。うちのようなベンチャー企業はそもそも無駄なコストなんてないから。売上が増えたことで営業利益率が良くなっただけのことさ
社長 えっ、どういう意味だ?
友人は近くの紙ナプキンにボールペンで書き始めました(下表)。
友人 俺も最初は意味が分からなかったんだけど、顧問税理士に教えてもらって分かったんだ。例えば、売上が100、売上原価が50の場合、売上総利益は50になるだろ。その場合、販管費が40とすると、営業利益は10となる
社長 つまり売上総利益率が50%、営業利益率が10%ってことだな
友人 そうだ。もしこの会社の売上が倍の200になったらどうなると思う? 売上は倍の200、売上原価も倍の100、売上総利益も倍の100だ。ところが売上が倍になっても、一般的に販管費の多くは固定費だから倍までは増えない。そこで例えば、販管費が60までしか増えなかったとする。すると営業利益は100-60で40。営業利益率は10%から20%に跳ね上がるんだ
≪紙ナプキンに書いた表≫
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社長 なるほど……。私は、コスト削減ばかり考えていたが、コストと収益の関係に目を向けなければいけなかったということか。販管費の多くは固定費だから、売上が増えれば、コスト削減しなくても営業利益率が良くなることがあるわけだ

次の日、社長はすぐにS事業部長のもとへ行き指示しました。

社長 第3事業部にはまだ開拓できる市場があるはずだ。今期はもうコスト削減は考えなくていいから、とにかく売上を増やすためにどうしたらいいか、徹底的に対策を考えてみてくれ!
コスト削減というちょっと後ろ向きなことから、売上増大という前向きな方向へ視点が転じたことで、第3事業部のメンバーからは不思議なほどいろいろなアイデアが出始めました。そうした中から、ある程度コストをかけてでも売上拡大につながる施策に取り組んでいったことで、売上が大きく拡大し、営業利益率改善へとつながっていったのでした。
 
【ワンポイント解説】
「営業利益率」
売上高に対する営業利益(売上高から売上原価と販管費を差し引いた金額)の割合をいいます。営業利益率は本業での収益性を表します。
中小企業の営業利益率の平均値(平成26年実績)は、製造業3.2%、卸売業1.5%、小売業1.2%、全体2.6%となっています。
(「中小企業実態基本調査」(中小企業庁)より)
http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/kihon/index.htm
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