記事制作:税経システム研究所

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2017/09/03

質問

時代の流れに乗って低価格路線に切り替えた洋食チェーン「キッチンみろく」。ところがさらなる業績悪化を招くことに……。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

低価格でも経営できるような薄利多売型の店舗にする。

パターン2

多少お金を払っても来たいと思ってもらえるお店を目指す。

パターン3

お客さまを呼び込むためのキャンペーンなど、プロモーションに力を入れる。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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にぎわいを取り戻した店内

「キッチンみろく」は関西地方を中心に5店舗を展開する洋食レストランチェーンです。

駅から少し離れた場所に出店していますが、他のチェーン店と比較すると座席数は少なく、その分テーブル間に余裕があり、ゆったりとしたソファー席が中心です。落ち着いて食事ができるということで、主に家族連れや、高齢のお客さまから大きな支持を得て、店内はいつもにぎわっています。
 
競合ひしめく外食業界において、ようやく安定してお客さまに選んでもらえるレストランへと復活しつつあるキッチンみろくですが、さかのぼること2代目社長が就任した6年前から2年前までの約4年間は、悪化し続ける業績をどうすれば食い止めることができるのか、現状を打開する術が見つからず迷走を続けている状況でした。

2代目社長の改革は失敗続き

キッチンみろくは、本格的な洋食料理とレストランサービスをゆったりと落ち着いた雰囲気で提供しつつも、それなりの価格に抑えることにより、多くの方に洋食レストランの良さを体験してもらいたいという、創業者の想いからスタートしました。

そのコンセプトは時代の共感を得て、梅田でオープンした第1号店から、一代で5店舗を構えるレストランチェーンへと順調に成長していきました。

しかし、低価格路線を推し進めるレストランチェーンの台頭、景気悪化に伴うデフレの影響などによって、じりじりと業績が悪化してきたキッチンみろくは、創業社長から息子へとバトンタッチすることで、若返りを図り、時代の変化に対応しようと考えました。

キッチンみろくに戻ってくる前は、大手ITベンダーでシステム導入によるコスト削減を推進していた2代目社長は、キッチンみろくの財務諸表を見ながら早速、コスト削減案について考えを巡らせていました。

2代目社長 <このご時世、システマチックなサービスで効率化するなど、できるだけコストを削減して低価格なメニューを提供しているところが勝っている。うちもシステムを導入して無駄に高い人件費を削減していけば、他のチェーンと戦える価格帯にできるかもしれない……>
キッチンみろくの利益を圧迫している理由が、高すぎる人件費にあると考えた2代目社長は、早速、人件費の削減に着手しました。

まず、ホール業務の効率化を狙って、スタッフの呼び出しボタンとドリンクバーを各店舗に設置することにしました。この取り組みにより、システム導入や機材設置のための初期費用はかかったものの予定どおり人件費を削減することができました。

メニューの価格は据え置きにしていたため、これで少しは利益が改善するはずだと思っていたのですが、次第に常連だったお客さまの来店頻度が減り、利益はさらに悪化することになってしまいました。
 
思いもよらないまさかの結果に直面した2代目社長は、利益改善のためにはもっとコストを削減することで価格を安くして、来店客数が増えるようにしていくしかないと、さらなる人件費削減に乗り出しました。

メニューの種類を減らし調理のオペレーションも単純化することで、このレストランの肝とも言える各店舗に配置していたコックの削減にも着手してさらなるコスト削減を推進しました。

そうしたコスト削減の取り組みによって、低価格化は推進できましたが、いつからか来店していただけるお客さまの層が変わってきました。学生や主婦がメインとなり、客単価が下がった結果、状況は好転するどころか、業績悪化に拍車がかかるという散々な結果でした……。

結果を出そうとあれやこれやと改革に着手するも、全て空回りに終わっていた2代目社長ですが、2年前、これで業績が改善しなければもうもたないという状況で、長いトンネルから抜け出す一歩となる選択を行うのです。

質問

時代の流れに乗って低価格路線に切り替えた洋食チェーン「キッチンみろく」。ところがさらなる業績悪化を招くことに……。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

低価格でも経営できるような薄利多売型の店舗にする。

パターン2

多少お金を払っても来たいと思ってもらえるお店を目指す。

パターン3

お客さまを呼び込むためのキャンペーンなど、プロモーションに力を入れる。

確かに薄利多売型であれば低価格でもやっていけるかもしれません。そのためには席数を増やす、回転率を高めるなど客数を増やす必要がありますが、そもそも店舗の立地や店内の作りなどが客数を増やすのに適しているか考える必要があるでしょう。

実は2代目社長が選択したのはパターン2でした。低価格路線を強める競合他社に負けないように、コスト削減による低価格路線を突き進んできた2代目社長が、なぜ真逆とも言える高付加価値戦略をとったのでしょうか……

確かにお客さまに来店していただかないことには、何も始まりません。よって、キャンペーンなどのプロモーションに力を入れることは、とても重要です。ただ、一度来店したお客さまがリピーターになってくださらなければ、せっかくプロモーションを頑張っても効果が高いとは言えません。キッチンみろくの場合、プロモーションに力を入れる前にやるべきことがありそうです。

失敗の原因は戦略と経営資源のミスマッチだった!?

会計数値による分析を行い、競合他社や世の中の動きも考えて利益改善のための改革を行ったものの、それらがうまくいかず、2代目社長は自宅の書斎でこれからどうしたものかと悩んでいました。

気分転換しようと2階の書斎からリビングへおりていくと、大学生になった娘とたまたま遊びに来ていた叔母(2代目社長の妹)がガールズトークに花を咲かせているところでした。

叔母は学生時代から、なぜか意中の相手を振り向かせることにたけており、年頃の娘はその極意を学びたいようで、よく叔母に相談しています。

なんで叔母さんみたいにうまくいかないんだろ……
叔母 何、あなた? 私のめいなのに、大学でモテてないわけ?
うーん、言い寄ってきてくれる男の子はいるんだけどね
叔母 なるほど、言いたいことはわかったわ。ようは意中の相手が来てくれないわけね
そう。ぶっちゃけ、あなたじゃないんだけどって人ばかり。でも、なんでそうなるのかわかんなくて
叔母 簡単な話よ。今のあなたは、意中の相手が好むような女の子じゃなくて、言い寄ってくる男の子が好む子に近いってことよ
えー。でも、好きなタレントとか調べて、髪型とか近づけたりしてるんだけどなー
叔母 自分に合ってないのに、無理やり合わせても、そんなのはダメよ。例えば、背が低いのにロングスカートをはいても似合わないでしょ?
そっかー。自分が持ってる素材も意識しないといけないんだ。意中の相手に振り向いてもらうのって大変なんだね……
 
2代目社長 <寄ってくる人の好みに近くなっている……。自分が持ってる素材に合ってないと、ダメ……>

2代目社長は、2人のやり取りを聞いてハッとしました。

キッチンみろくは創業者の本格的な料理とサービスを妥当な価格帯で提供するお店という戦略のもと、立地、設備、雰囲気、スタッフなど、全ての面において一貫性を保ったお店作りをしていました。お客さまもそうしたキッチンみろくのコンセプトに共感して、多少お金を払っても来店してくれていたのです。
 
ところが、呼び出しボタンを設置したことで、お客さまの状況をよく観察し、呼ばれなくてもオーダーを確認しに来てくれるホールスタッフはいなくなりました。そして、ドリンクバーの設置により、ドリンクの質が下がるとともに、お客さまの飲食状況に合わせてドリンクのお替わりを伺うような、気の利いたスタッフも姿を消しました。また、腕利きのコックによる店舗での調理もなくなってしまいました。
 
それとともに、こうしたスタッフのおもてなしやコックが作る本格的な洋食を期待していたお客さまの足が遠のき、代わりに学生や主婦たちがメインの客層となりました。

つまり2代目社長が行った改革により、キッチンみろくは料理やサービスの質は気にせず、お金を使わずに長い時間おしゃべりを楽しむ客層から喜ばれる店舗になっていたのです。
 
それでも、座席の回転率を上げるなど客数を増やしていくことができれば、薄利多売型として成り立っていたかもしれませんが、席数も少なくゆったりと落ち着いた雰囲気を感じてもらうことを重視した作りになっているキッチンみろくは、回転率を上げることにも向いていなかったのです。
 
ようやく、低価格路線がキッチンみろくの戦略としてなじまないことに気づいた2代目社長は、急いで辞めていったスタッフに会いに行きました。そこで、自分のミスを心からわびるとともに、お店に戻ってきてくれるように説得しました。

最初は拒否反応を示していたスタッフたちも、ようやく何をすべきか悟った2代目社長の粘り強く誠意ある態度に負けて、もう一度だけ力を貸してくれることになりました。ただし、これまで以上に高いお金を払ってでもお客さまが喜んできてくれるようなこだわりのあるお店にしていくという条件付きですが。
 
こうして、キッチンみろくがまた変わり、今度は昔よりもさらに高い料金体系になったけれど、それだけの価値を提供できるように頑張っているといううわさは、元常連のお客さまの耳にも入るようになりました。ありがたいことに、それを聞いてまた応援してくれるお客さまも増えてきました。また、こだわりの洋食が食べられ、きめ細かなサービスを受けられるお店というコンセプトに共感するお客さまが新たに遠方からも少しずつ訪れてくださるようになり、今では人気店として復活を遂げつつあるようです。

【ワンポイント解説】
「戦略と経営資源のミスマッチ」
緻密な分析を行い、データに基づいた論理的で素晴らしい戦略を立案しても、それを実行するための資源が整っていなければ、戦略の実現は難しいでしょう。
戦略と経営資源のミスマッチが起こらないよう、「ヒト」・「モノ」・「カネ」・「情報」など自社の経営資源を把握したうえで、戦略を立案することをおすすめします。
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