記事制作:税経システム研究所

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2017/10/23

質問

地元ではよく知られている老舗の造り酒屋「酒蔵弥勒」では、ここ数年業績が低迷し、このままでは将来、酒造りの伝統を守っていくこともできなくなりそうです。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

高級志向に切り替えて、お酒の付加価値を高める。

パターン2

空いているスペースを活用して、地酒をそろえた簡易な飲食施設を始める。

パターン3

醸造したお酒に売れ残りが生じない程度に、事業規模を縮小する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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にぎわいのある造り酒屋

現在の「酒蔵弥勒」は、昔ながらの酒蔵の雰囲気を残していますが、家族連れや若者のグループなども出入りしており、にぎわいを感じさせる造り酒屋となっています。

しかし、3年前は今とはだいぶ違う状況でした。ちょっとその頃の様子を見てみましょう。

3年前 ~十分な利益を獲得できない状況

酒蔵弥勒は現在の社長が7代目となります。観光スポットの比較的近くに位置し、地元ではよく知られた老舗の造り酒屋です。しかし、ここ数年間でわずかな利益しか計上できていないために、これまでと全く同じことを継続していては、じり貧となっていき、造り酒屋の伝統も守れないのではないかと危機感を募らせていました。

社長は、長く続いてきた造り酒屋を今後も継続したいと考えていました。そんな中、ある講習会で「伝統は、絶え間ない革新によってのみ維持される」という言葉を聞き、「何とか次の世代に向けて貢献できるような革新をしたい、そのためには持てる資源を活かして効率性の高い事業経営を行うことが大切だ」と考え始めました。

質問

地元ではよく知られている老舗の造り酒屋「酒蔵弥勒」では、ここ数年業績が低迷し、このままでは将来、酒造りの伝統を守っていくこともできなくなりそうです。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

高級志向に切り替えて、お酒の付加価値を高める。

パターン2

空いているスペースを活用して、地酒をそろえた簡易な飲食施設を始める。

パターン3

醸造したお酒に売れ残りが生じない程度に、事業規模を縮小する。

これは、醸造しているお酒の付加価値を高める案であり、同じ量を醸造するとしても、より多くの売上高を目指すものです。それまでよりも高級志向の酒を製造するとともに、ブランディングにも注力し、付加価値を一層高める努力をすることになります。この案の場合、お酒の改良等の努力は行えるとしても、同様の戦略を採用している他社との競争が重要な課題となってきます。

酒蔵弥勒が選択したのはパターン2の方法でした。空きスペースを有効活用して新たな収益源を確立することを目指しますが、簡易な飲食施設にとどめることでできるだけ追加支出を抑えるようにしました。日本酒造りの伝統を活かして集客し、さらに観光客に飲食施設を利用してもらうことで新たな収益を上げることができれば、利益の増加につながると見込んだのです。

これは、事業規模の縮小により、効率的な経営を図る案です。この案は、売上高も減りますが、売上原価や営業費等の費用も減少し、結果的に利益の増加を図ることになります。固定客等により継続的に一定量の販売が確保されるのであれば有効な方法となるかもしれません。しかし、一度事業を縮小してしまうと、その後の拡大は難しくなり、酒造りの伝統が薄れてしまうかもしれません。事業規模を縮小する前に、まだできることがありそうです。

きっかけは、他の醸造会社を見学したことだった

今後の事業展開に悩んでいた3年前、酒蔵弥勒と同様に小規模の酒造会社はどのようにしているのかと、日本各地の造り酒屋さんを見学して回ることにしました。その中で、いくつかの酒造会社が、夏の閑散期の利用を念頭に、クラフトビールの製造を行っていることを知りました。クラフトビールは一般に「地ビール」とも呼ばれており、広く流通している多くのビールとは異なり、ビール酵母を抜かないため、賞味期限が短く、主として地元で販売をしているとのことでした。日本酒の醸造に近い事業でもあり、また全国的に広く流通しているビールとは異なる戦略をとることができることも知りました。具体的には、多種類のビール製造や地元との連携などです。

このとき酒蔵弥勒の社長は思いました。

社長 <なるほど……、かなり多角化してるんだなぁ。でも、うちは私を筆頭に社員皆も、日本酒へのこだわりが強い。さすがにビールまでは手を出せそうもない。うーん、今ある日本酒をもっと活かす方法はないものかなぁ……>

後日、日本酒をもっと活かす方法がないか、社員皆と考えてみることにしました。そんな中で皆が目を付けたのが観光客です。酒蔵弥勒は観光スポットの比較的近くに位置しているため、観光客に来てもらえないかというわけです。まずは日本酒のきき酒コーナーを作ったり、酒造見学コースを設けたりし、徐々に観光客が集まってきました。これにともない、日本酒の売上もじわじわと上昇し始めたのです。

改めて社長は思いました。

社長 <日本酒からビールへの多角化じゃなくて、日本酒の出し方を多角化していけばよかったんだ! 事業の多角化の方向性にもいろいろあったんだな>

検討を進めたところ、この地域の地酒をそろえ、それを引き立てる酒のさかななども提供する、簡易な食堂とバーが一緒になった日本酒バルをやってみようということになりました。空きスペースや使っていない資材などを有効活用することで、できる限り追加支出を抑えるとともに、造り酒屋の新しいスタイルを積極的にSNS(Social Networking Service)で発信していくことにしました。酒かすを利用したまんじゅうなど酒造りに関連した商品、地元の食材を使ったおみやげなどもそろえていきました。酒蔵弥勒の酒で作った化粧水は、最近の美容ブームにも乗って人気商品になっています。

新規事業が若い従業員のやる気を巻き起こしてくれた!

社長にとって一番うれしかったことは、日本酒バルを開業したことにより、若い従業員が主体的にいろいろなアイデアを出してくれており、しかも楽しそうに働いてくれていることでした。

また、できるだけ地元で採れる野菜を利用するようにしていることで、地域ブランドの構築にも協力でき、これまで以上に地域に根ざした企業になってきているようです。

【ワンポイント解説】
「事業の多角化の方向性」
多角化というと、企業が成長するために新商品を開発して事業分野を拡大するケースだけでありません。今回のケースの酒蔵弥勒のように、商品の提供の仕方を広げることによる多角化などもあります。
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