テナント・ビルのオーナーが気付いたコンビニ経営との共通点とは?

2016年10月23日

不動産業

  • 不動産業
2016/10/23

質問

オープンから40年が過ぎ、テナント全体の売上が低下したために、テナント料も伸び悩んでいる「ショッピングタウン ミロク」。あなたがこのテナント・ビルのオーナーなら、次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

テナント料がビル経営の採算に合わないお店には退去してもらい、新たなお店を募集する。

パターン2

既存テナントの売上にかかわらず、テナント料を増額して、現状打開のための資金を確保する。

パターン3

レトロな雰囲気をアピールすることで集客力を高め、全体の売上高の増額を目指す。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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いつもお客さんでにぎわうショッピングセンター

「ショッピングタウン ミロク」は、40年ほど前にオープンした多様なお店がテナントとして入っている3階建てのビルです。都心から少し離れたベッドタウンにある商店街の中に建っています。駅からも近い距離にあるとは言えませんが、幅広い年齢層のお客さんでにぎわっています。特に最近では、少しマニアックなお店も入っているせいか、若年層のお客さんも多いようです。

しかし、現在のにぎわいに反して、数年前には古びた印象を与えるビルで、お客さんの足も徐々に遠のいていっていました。ちょっと、その頃の様子をのぞいてみましょう。

数年前  ~なじみのお店になじみのお客さん、でも……

現在のオーナーは、10年ほど前に経営を父親である先代から引き継ぎました。当時は、長い間テナントとして入っているお店が多く、テナント同士も長い付き合いで良好な関係が築かれていました。そのため、個々のテナントや、テナント・ビルのオーナーといった枠を超えて、お客さんが欲しがっている新商品の情報やトレンドをつかんだら皆でそれを共有するなど、ビル全体を活性化させるための取り組みが自然と行われていました。

しかし、ほとんどのお店のご主人が高齢になってくると、新たなお客さんを獲得するためにテナント間で精力的に情報共有を行うということも少なくなりました。また、個々のお店の改装や新たな商品を扱うことに挑戦するお店も減ってきました。なじみのお客さんがいつもの商品をいつもの通りに買っていく。そんな光景が多く見かけられるようになり、ビル全体の活気も失われていきました。

一応「最低保証賃料」を設定して、テナントの売上が少なくても最低限のテナント料収入は確保できるようにしていたのですが、多くのお店が、この最低保証賃料の水準にとどまっていました。

ある日の夜、二代目オーナーは、晩酌をしながら、つい愚痴をこぼしてしまいました。

二代目 テナント料収入が厳しくて、このままだと、ビルの修繕もままならなくなりそうだなぁ。子供の頃から知っている人たちが開いているお店が多いし、まだお店を続けておられるのはうれしいことだけど……

質問

オープンから40年が過ぎ、テナント全体の売上が低下したために、テナント料も伸び悩んでいる「ショッピングタウン ミロク」。あなたがこのテナント・ビルのオーナーなら、次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

テナント料がビル経営の採算に合わないお店には退去してもらい、新たなお店を募集する。

パターン2

既存テナントの売上にかかわらず、テナント料を増額して、現状打開のための資金を確保する。

パターン3

レトロな雰囲気をアピールすることで集客力を高め、全体の売上高の増額を目指す。

「ショッピングタウン ミロク」の二代目オーナーが採用したのは、パターン1でした。パターン1は、「ビルの新陳代謝」を目指すものです。この選択により、結果的に、長い間テナントとして入っていたなじみのお店が出て行くことになりましたが、やる気とアイデアを多く持っている若い人たちに、出店のチャンスを与えることになりました。

パターン2を選択した場合、一時的にテナント料収入が増額することになります。その増額した収入により、ビルの改築や宣伝を行うことで、一時的に集客力を回復することができるかもしれません。しかし、そもそも既存テナントの売上が減少している中、テナント料を引き上げることは現実的ではないかもしれません。また、テナントの店主の考え方が変わらない限り、問題の根本的な解決は難しいと思われます。

パターン3のノスタルジー戦略を選択した場合には、既存のお店が本当に多くの人が見に行きたくなるような外観と内容を備えているのか、について調査しておくことが求められます。調査に要する時間や資金調達など二代目オーナーの力量が大きく問われることにもなるでしょう。またテナント・ビルの方針と既存店の雰囲気や店主の考え方などが合うかどうかも疑問が残ります。

ターニングポイントは、別業態から得たヒントだった

ある日、二代目オーナーが家に帰ると、机の上に並ぶたくさんの商品を眺めてうれしそうにしている妻の姿がありました。

二代目 無駄遣いはやめろって言ってるだろ!
これは私の趣味なの! 自分のお小遣いの範囲でやってるんだからいいでしょ
スナック菓子のパッケージコレクターである妻は、新商品が近くのコンビニで発売されると、そのパッケージ欲しさに新商品を買い集めてくるのです。
二代目 しかし、よくまぁそんなにコンビニには新商品が出るもんだね
あら、知らないの? コンビニはあの限られたスペースで品ぞろえをやり繰りするしかないでしょ。だから、売れない商品はできるだけ早く棚から外して、新しい商品と入れ替えられるように、商品ごとの売上状況などを細かく確認してるのよ。どこにどういう商品をどれくらい配置するか、『棚割り』が店舗の売上を大きく左右するみたいね

まるでコンビニオーナーであるかのような口ぶりで妻が話すのを聞いて、二代目社長はハッとしました。「テナント・ビルってコンビニそのものじゃないか!」と。細かく確認するまでもなく、多くのテナントの売上状況は悪化しているため、まずは新商品ならぬ新規テナントへの入れ替えを一刻も早く検討したいところです。

しかし、長年付き合いのあるテナントに対して、一方的に出て行けというのも心が痛みます。そこで、二代目オーナーは高齢になっている既存テナントの店主たちを集め、事業継続の意思を確認してみることにしました。

すると、大きな抵抗にあうかもと考えていた二代目オーナーの予想に反して、高齢の店主たちの大半が次の世代にバトンタッチをしたいと思っていたようです。資金はないけれどもやる気とアイデアを多く持っている若い人たちを中心に、新規テナントを募集したいと思っていることを伝えると、新しいお店が決まったらいつでも退去すると言ってくれたのです。

もちろん、すんなり入れ替えに応じてくれないテナントもありました。そんな場合は、限られたテナント・ビルの貴重なスペースを無駄にしないためにも、6カ月継続して最低保証賃料の水準にとどまっている場合には退去してもらうなど、テナント継続のための最低条件を設定するようにしました。

こうしてテナントの新陳代謝を進めた結果、やる気とアイデアを持った店主が増えてきて、ビル全体にも徐々に熱気が戻ってきたのです。皆のやる気を無駄にしないためにも、二代目オーナーは売れ筋テナントをできるだけ多く作りだせるような仕組みを考え、積極的に取り組んでいくようにしました。例えば、昔ながらの人間関係に基づく情報共有の仕組みを復活させるとともに、テナントごとの売上データ等を活用して売れ筋テナントの分析を行うといったことを取り入れました。

テナント・ビルの場合、一つ一つの小売店の集合体となるため、テナント単体の視点で売れている商品や、お客さんの利便性が高まる商品棚のレイアウトなどを考えるだけでは十分とは言えません。売上が好調なテナントとそうでないテナントが扱っている商品カテゴリーや接客方法の違い、またビル内の各テナントの場所や導線など、テナント・ビル全体の視点からも分析する必要があります。

また、偶発的な事象で判断しないように、単月だけでなく複数月の状況を追いかけてみる月次推移比較や、単年度だけでなく複数年度で比較するといった経年比較を行うように心がけました。

当然、最初は全てが手探り状態です。分析すると言っても何を分析すれば良いかもわかりません。そんな時もコンビニなど他の業態で行っていることを参考に、試行錯誤を繰り返すことで、自分たちの場合、どのような分析項目を重視すべきか、といったことも徐々につかんでいったのです。

また、これもコンビニからヒントを得たのですが、最近では、単体でも売れるテナントは店舗面積を拡大し、そうでないテナントは1店当たりの規模を縮小する代わりに、いくつかのテナントを組み合わせて品ぞろえを豊富にするなど、限られたスペースでより多くのお客さんのニーズに応えられるような取り組みを行っているそうです。

ちなみに、今は24時間営業が実現できないかも検討しているようです。
 

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