有効活用したのは何? 固定費負担で採算割れの家具店を救った、あるものとは?

2021年10月23日

小売業

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2021/10/23

質問

個人顧客向けに家具の製造販売店を営む「MJSファーニチャー」は、家具の量販店に押されるなど、客足が遠のき、固定費負担で採算が取れなくなっています。この状況を改善するため、あなたが経営者なら次のうち何の有効活用を優先しますか?

パターン1

個人客だけでなく、企業からも受注して、熟練工のスキルの有効活用を優先する。

パターン2

忙しめの従業員の仕事を暇そうな従業員に振り替え、時間の有効活用を優先する。

パターン3

工場の一部を賃貸し、スペースの有効活用を優先する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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経営資源の有効活用

「MJSファーニチャー」は、顧客ごとのニーズに応じて家具をセミオーダーで別加工することで評判の家具の製造販売店を営んできましたが、最近では、経営資源の有効活用策を実施した効果が現れているようです。

しかし、1年前のMJSファーニチャーでは、固定費負担で採算が取れなくなり、対応策に悩んでいたのです。

1年前 ~事業の抜本的見直しの必要性

「MJSファーニチャー」は、先代社長の頃から、個人顧客の要望に応えた家具作りを中心に事業を展開してきました。家具の量販店とは一線を画し、高い技術を有する熟練工が、顧客のニーズに応じてセミオーダーにて別加工してくれる家具店としてSNSで徐々に評判となり、近年ではメールでの問い合わせやネットを通じた注文が増えてきていました。

しかし、最近では家具の量販店に押され、さらに新型コロナウイルス感染症の拡がりのために客足が遠のき、この傾向はコロナ後も続くと予想しています。テレワークが普及し、家具の量販店では、テレワークに対応するための机やパーテーション等はよく売れたようですが、MJSファーニチャーが取り扱うような一点物ないしはそれに準じる家具に対する個人顧客の需要は、むしろ縮小してしまいました。そんな中、他社ではセミオーダーで業務用に家具を別加工するといった需要は見込まれるものの、スキルがないために需要に応えられていないといった状況があります。

顧客ニーズに応じてセミオーダーで別加工することを売りにしているMJSファーニチャーの場合、従業員には、高い技術を有する熟練工が多いものの、その分人件費負担が重くなっています。注文が減少しているため、どの熟練工も、勤務中にも暇を持て余す時間が多くなっています。しかしなんとしても解雇だけは避けたいと社長は考えています。

また自社保有の工場には、家具の製造に不可欠な機械装置や工具類、材料等が所狭しと置かれています。減価償却費などの固定費負担が重いものの、事業を続ける上では不可欠なため、工場を処分することは考えていません。

固定費負担で採算が取れなくなっているMJSファーニチャーの社長は、どうすればいいか悩んでいます。

質問

個人顧客向けに家具の製造販売店を営む「MJSファーニチャー」は、家具の量販店に押されるなど、客足が遠のき、固定費負担で採算が取れなくなっています。この状況を改善するため、あなたが経営者なら次のうち何の有効活用を優先しますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

個人客だけでなく、企業からも受注して、熟練工のスキルの有効活用を優先する。

パターン2

忙しめの従業員の仕事を暇そうな従業員に振り替え、時間の有効活用を優先する。

パターン3

工場の一部を賃貸し、スペースの有効活用を優先する。

MJSファーニチャーが選択したのはパターン1で、スキル・シェアリングの考え方を取り入れる方法です。この方法により、売上高の減少を、他店からの受託事業により補うことになります。言わば、熟練工のスキルを他店と共有することと同様になります。この方法の前提として、同業種の中小企業間での連携を強めることが必要となります。

これは、ワーク・シェアリングを取り入れる方法です。この方法の導入により、人件費の削減を目指すことになります。言い換えますと、仕事の減少を従業員でシェアすることを意味します。ただし、MJSファーニチャーの場合、どの熟練工も、勤務時間中も暇を持て余す時間の割合が高くなっていますので、残業代の削減などのコスト削減効果は期待できそうもありません。

これは、スペース・シェリングを取り入れる方法です。近所の住民に工場を一部開放し、DIYのブームにも対応することになります。この方法の導入により、固定資産の有効利用を導き、賃貸料収入を得ることを目指すことになります。ただし、MJSファーニチャーの場合、工場には、家具の製造に不可欠な機械装置や工具類、材料等が所狭しと置かれている状況ですので、十分な賃貸料収入を得られるほどのスペースはなさそうです。

きっかけは、シェアリング・エコノミーに関する新聞記事

社長が今後の事業の有り様について悩んでいた時に、シェアリング・エコノミーが拡がっているという新聞記事を読み、それを幹部社員と共有しました。

幹部社員 個人所有の住居の駐車場を、空いている時間帯だけ他の人に貸し出してるんですね
社長 それだけじゃないんだ。マンションの管理組合が自転車を複数台購入し、それらを住民が一緒に利用するようにしてるんだよ
幹部社員 親の介護や子供の送り迎え等ができないときに、限定された地域内で時間の空いている人にお願いできる仕組みも紹介されていますね
社長 そうなんだ。引き受けた人にはその地域でしか使用できないチケット(地域コイン)が渡されるシステムがあることも紹介されている
幹部社員 本当ですね
社長 うちでも何かシェアリングできないかを考えてみたいんだ


MJSファーニチャーでは、家具製造の仕事量が減少しているため、熟練工が提供できるサービスに余裕が生じていました。そこで、社長は、熟練工の持つスキルをシェアできないかと考えました。ただし、従来の個人顧客からの注文が減少してしまい、なかなか回復が期待できない状況で、個人顧客以外の新たな需要を見つけることも必要ではないかと考えられました。

MJSファーニチャーの熟練工のスキルは、同業他社にないスキルも多いことから、同業他社向けに活かす道があるのではないかということが、検討の過程で浮かびました。そして、同業他社では対応できない別加工のオーダーについて、MJSファーニチャーがその会社から加工を受託することができるのではないかということになったのです。

こうして、自社のスキルを有効活用できる新たな収益源を見出したのです。

ワンポイント解説

「シェアリング・エコノミー」(sharing economy)

総務省のホームページによれば、「個人等が保有する活用可能な遊休資産等(資産(空間、モノ、カネ等)や能力(スキル、知識等))を他の個人等も利用可能とする経済活動」と説明されています。
総務省|地域力の創造・地方の再生|シェアリング・エコノミー活用推進事業 (soumu.go.jp)

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