第13回 コロナ禍における労務管理

2021年2月3日

新型コロナウイルスの感染者が昨年末から急激に増加したことを受けて、2021年1月8日に東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県に再び緊急事態宣言が発出されました。その後、対象が2021年1月15日までに11都府県にまで広がりました。さらに、2021年2月2日に10都府県で延長となりました。今回は、今のところ主に飲食業を中心とした午後8時以降の営業自粛要請、及び外出自粛要請となっていますが、それに伴い影響を受ける企業も多く、弊社にも労務管理等の対応に関しての問い合わせが急増しています。こうした状況を踏まえて、今回は、Q&A方式で労務管理のポイントを述べたいと思います。

<Q1>会社として新型コロナウイルス対策をすべきか?

A.「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」(労働契約法第5条)という配慮義務が定められています。使用者、つまり会社は、新型コロナウイルスに対して会社内の感染防止策を講じる必要があります。以下のような対策例を参考にしてください。

  1. 発熱等の症状がある場合は、大事な商談等があっても出勤させない
  2. 出勤時には手洗い、うがい等を徹底させる
  3. 社外においても「3つの密」を避けるように促す
  4. 当面の事業に差し障りがない客先訪問は控える
  5. 「3つの密」に該当するような場所での会議や会食は控える
  6. 従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、その後の対応策を検討しておく
  7. テレワークが可能な場合は積極的に取り組む

※「3つの密」は次の図のとおり

<Q2>行政からの休業要請により休業となった場合は、従業員へ給与を支払う必要はあるのか?

A.休業要請等による休業は、本来「使用者の責に帰すべき事由による休業」ではないため、給与休業手当(平均賃金の60%以上)の支払い義務はないと解するのが妥当かと考えます。ところが、今回の新型コロナウイルス感染症に伴う休業措置等については、休業要請はあくまで「要請」であり強制力があるものではないことや、リモートワークによる業務が可能であるケースも考えられることから、休業手当等を要するか否かについては、当該企業の業種・事業内容、休業する従業員の地位・業務内容、休業する必要性を踏まえて個別的に判断する必要があります。以上のことからも、直ちに賃金支払い義務から免れる訳ではないので、特例措置の雇用調整助成金を最大限に活用しつつ、休業手当等を支払う方が望ましいといえます。

<Q3>自社の店舗がある商業施設が、休業や営業時間が短縮になった場合、休業手当の支払いが必要か?

A.商業施設の判断により休業等になった場合は、給与または休業手当の支払いが必要です。また、休業要請により商業施設が休業になった場合は、Q2と同じ扱いとなります。

<Q4>従業員に休業・自宅待機を命じる場合に、有給休暇の取得を強制できるか?

A.年次有給休暇は、原則として従業員が希望する時季に与えるものなので、会社が強制取得させることはできません。

<Q5>従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、どうすればよいか?

A.「事業者は、伝染病の疫病その他の疫病で、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない。」(労働安全衛生法第68条)とあります。令和2年2月1日付で、新型コロナウイルス感染症が指定感染症として定められたことにより、感染した場合は就業禁止となります。原則欠勤扱いとなり無給です。その後の手当等の扱いは以下の(1)~(3)に分かれます。また、感染した従業員の濃厚接触者と考えられるその他の従業員等は、念のため在宅勤務を命じる、不可能な場合は一定期間の自宅待機を命じて、休業手当を支払うことが望ましいです。

  1. 社外(業務外)で感染した場合
    プライベートな会食、旅行先等で感染したケースです。健康保険の被保険者で一定の要件を満たせば傷病手当金を受給できます。
  2. 社内(業務中)で感染したことが明らかな場合
    取引先や顧客等が感染していたケースで、労災が認定されると考えられます。その場合は休業初日から3日目までは、事業主が休業手当を支払い、4日目以降は労災の休業補償給付が支給されます。
  3. 感染経路が不明な場合(通勤途上の感染、出張中の感染等も疑われる場合)
    (1)(2)のいずれか明確でないケースです。労災に認定される可能性もありますが、業務中または通勤途上、出張先で感染したと考えることが合理的だと立証する必要があります。
    ただし、医療従事者に関しては感染経路が不明でも、労災認定されることになっています。
    ※乗車していた通勤電車の車内で多数の感染者が発生した、出張先の業務中に限られた空間等で集団感染(クラスター)したなど

<Q6>従業員が発熱等で新型コロナウイルスに感染した疑いがある場合はどうすればよいか?

A.Q5(1)と同じ扱いになり、健康保険の被保険者は医師の診断等がなくても特例的に傷病手当金の対象となります。会社としては無給で欠勤扱いで問題ありません。

<Q7>従業員の同居の家族が新型コロナウイルスに感染した疑いがある場合はどうすればよいか?

A.出勤させずに在宅勤務が可能な場合は在宅勤務を命じる、不可能な場合は一定期間の自宅待機を命じる等の措置が望ましいです。自宅待機を命じた場合は、休業手当の支給が必要となります。

<Q8>従業員の同居の家族が新型コロナウイルスに感染した場合はどうすればよいか?

A.従業員は濃厚接触者となり保健所による健康観察の対象となります。原則として自宅待機でQ7の扱いと同様ですが、保健所等の判断で「当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者」となった場合は、外出自粛要請を行うこととなり、休業手当は不要となります。無給で欠勤扱いとなり、実際には年次有給休暇を取得する等が考えられます。

<Q9>新型コロナウイルスに感染した従業員が、宿泊療養又は自宅療養の解除の要件を満たし、療養を終了して職場復帰する際に、陰性証明書等の提出を求めることはできるか?

A.厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象者並びに自治体における対応に向けた準備について」によると、「宿泊療養・自宅療養中は、毎日、保健所(又は委託を受けたもの)による健康フォローアップが行われ、必要に応じて、医師の判断も踏まえた上で、保健所が解除基準を満たしているかどうかを確認します。このように、医療保険関係者による健康状態の確認を経て、宿泊療養・自宅療養を終えるものであるため、療養終了後に勤務等を再開するにあたって、職場等に、陰性照明を提出する必要はありません。この扱いは、厚生労働省から各都道府県労働局にも周知しています。」と記されています。さらに「PCR検査を実施した医療機関や保健所において、各種証明がされるかどうかは、医療機関や保健所によって取り扱いは異なりますが、国内での感染者数が増える中で、医療機関や保健所への各種証明の請求についてはお控えいただくよう、お願いします。」と記されていることからも、職場復帰を控えた従業員へ陰性照明書等の提出を求めることは避けた方が良いといえます。

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