第17回 フリーランスガイドライン1

2021年6月2日

長引くコロナ禍において、「仕事の依頼が激減したので何か補償はないか?」「突然、契約を打ち切られたが違法ではないか?」など、フリーランスの方々からの労務相談が増えてきました。実際のところ、フリーランスにどのような法律が関わるのか意外と知られていません。

フリーランスは、多様な働き方の一つとしてではなく、ギグ・エコノミー(=インターネットを通じて短期・単発の仕事を請け負い、個人で働く就業形態)の拡大による経験ある高齢者の雇用の拡大、健康寿命の延伸、社会保障の支え手・働き手の増加などに貢献することが期待されています。

このような中で政府は、昨年の2月から3月にかけてフリーランスの実態を把握するための調査を実施し、その結果を踏まえて令和3年3月26日、内閣官房を中心に、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省が連名で「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(以下「フリーランスガイドライン」という)を公表しました。そこで今回は、このフリーランスガイドラインの中の「フリーランス」の定義や関係法令について説明いたします。

フリーランスの定義

そもそも「フリーランス」は、各種法令上で定義されたものではありません。簡単に言えば、会社や団体などに所属せず、仕事に応じて自由に契約する人のことを示します。

主な職種としては、カメラマン、ライター、デザイナー、プログラマー、通訳、芸術家、音楽家、スポーツインストラクターなどですが、最近ではクリエイティブな職種も多く見受けられます。

フリーランスガイドラインでは「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」と明確に定義づけられています。「実店舗がなく」ということは、店舗を構えている個人事業主(飲食店など個人商店を持つ者)は、このガイドラインの対象にはなりません。つまり、いわゆる「個人事業主」よりも狭い範囲であるということになります。(図1参照)

また、専用の事務所・店舗を設けず、自宅の一部で小規模に事業を行う場合や、共有型のオープンスペースであるコワーキングスペースやネット上の店舗などは、フリーランスガイドライン上の「実店舗」としないとされています。その他、耕地や漁船を有して、耕作や漁業をする農林漁業従事者は「フリーランス」とはしないとされています。

(図1)フリーランスガイドラインでの「フリーランス」の定義

ただし、ここでの「フリーランス」の定義は、あくまでもガイドライン上でのものであり、前述の通り、各種法令上ではどこにも「フリーランス」の定義が見当たらないことから、法的根拠を有するものではないということに留意する必要があります。

フリーランスの関係法令

フリーランスガイドラインの「フリーランスと取引を行う事業者が遵守すべき事項」では、事業者とフリーランスとの取引については、「独占禁止法」「下請代金支払遅延等防止法」「労働法」の適用関係が示されています。(図2参照)

(図2※)事業者とフリーランスとの取引に適用される法律関係

※出典「フリーランスガイドライン」

図2で示す通り、フリーランスが事業者と取引をする際には、その取引全般に「独占禁止法」が適用され、相手の事業者の資本金が1,000万円を超えている場合は「下請代金支払遅延等防止法」が適用されます。また、雇用契約を締結せずにフリーランスとして請負契約などの契約で仕事をする場合であっても、実質的に取引業者の指揮命令を受けて仕事に従事している場合など、業務の実態から判断して「労働者」と認められる場合は「労働関係諸法令」が適用されます。そして「労働者」と認められるかどうかは、労働基準法の側面と、労働組合法の側面の両方から判断されることになります。

次回はこの「労働者」の判断基準について詳しく説明したいと思います。

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