経営センスチェック

記事制作:税経システム研究所

飲食業

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2016/07/13

質問

売上予算を与えても、「待ちの姿勢」を変えられない店長に、行動を変えさせるにはどうしたら良いでしょうか?あなたが「割烹みろく」の経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

店長に社外のモチベーション研修を受けてもらう。

パターン2

売上努力ができないなら、経費削減の努力をしてもらう。

パターン3

店長や店員がとるべき行動を目標に設定してもらう。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
飲食店イメージ01
飲食店イメージ02

やる気に満ちあふれた店内

「割烹みろく」は関東地方を中心に10店舗を展開する料亭です。企業の接待などにも使われるそこそこの高級料亭ですが、一般の方もちょっとした記念日などには来店されます。堅苦しさのない、アットホームなお店を目指して創業されました。現社長は3代目で、以前は大手メーカーに勤務していたのですが、父親である前社長が体調を崩したことで3年前より社長として経営の指揮をとっています。

ある日のランチタイムとディナータイムの中休みの午後3時、社長がある店舗を突然訪問したところ、まだ30半ばのA店長が社員とバイトさんを集めて大きな声で指示を出していました。
「皆さん、今日も自分のやるべき仕事は分かってますね! KさんとFさんは会員登録してくれているお客さまへの直筆手紙を50枚お願いしますね。それからMさんは店内の掃除をお願いします。調味料の確認も忘れないように、ちゃんとチェックリストを埋めながらお願いしますよ。では、私はお得意さまのX社さんとY社さんを訪問してきますから、あとはお願いします。では、解散!」

社長の手前に立っていた年配のバイトさんがこっそりと話している声が社長に聞こえました。
「ほんと、A店長ってこの3カ月で変わったよね」
「随分とリーダーらしくなったじゃない」
社長が来たことに誰も気付かず、A店長の話に皆が集中している姿に社長はうれしそうな顔をしてそのまま店をあとにしました。

3カ月前 ~待ちの姿勢を変えられない店長

実は3カ月前の同じく午後3時、社長がこの店舗を訪問したときは全く今とは違っていました。A店長とバイトさんたちはお座敷でお茶をしながら話をし、調理場には誰もおらず、完全な無法地帯になっていました。

社長 A店長、これは一体どういうことですか? 先月は売上予算の達成率が90%という低迷ぶりで、今月も出だしから売上が振るわない状況なのに、なぜみんなで楽しくおしゃべりしているんですか?
A店長 社長、ただ無駄にしゃべっているんじゃないんです。バイトさんに頑張って働いてもらわないとお客さんに良いサービスができないから、こうしてコミュニケーションをとっているんです。実はバイトさん同士でちょっとしたもめ事もありまして……
社長 バイトさんとコミュニケーションをとるのは確かに大切ですが、もっと売上を増やすための努力はできないんですか?
A店長 売上を増やすといっても、われわれが店舗でできることは限られています。具体的に何をすれば売上を増やせるかちょっと考え付きません……。やっぱり売上は水物ですから……

要するに、店長の言い訳はこうです。ランチ後の準備時間は売上アップの努力もできないので、バイトさんのモチベーションアップのための時間にしているというわけです。
実はこのような言い訳は、A店長に限った話ではありませんでした。社長はどの店長もこのように「売上は自分たちではどうにもできない」「売上は水物」「われわれは来てくれたお客さまにリピートしたいと思っていただけるように頑張るしかない」。こういった固定観念がはびこっていました。社長は何とか店長たちのこの「待ちの姿勢」を変えられないものかと悩んでいました。

質問

売上予算を与えても、「待ちの姿勢」を変えられない店長に、行動を変えさせるにはどうしたら良いでしょうか? あなたが「割烹みろく」の経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

店長に社外のモチベーション研修を受けてもらう。

パターン2

売上努力ができないなら、経費削減の努力をしてもらう。

パターン3

店長や店員がとるべき行動を目標に設定してもらう。

研修会社がさまざまなモチベーション研修やマネジメント研修を行っています。社長が店長に必要と考える研修を見つけ出し、店長たちに受講してもらうのも良い方法かもしれません。しかしこのような研修を受ければ勝手にモチベーションを高めて帰ってきてくれるわけではありませんから、あまり期待しすぎてはいけないでしょう。
またそもそも店長のモチベーションが下がっているとは限りません。やる気はあるけれど、ただ何をすれば良いかが分からないだけかもしれないのです。モチベーションが足りないのか、それとも方法が分からないだけなのか、しっかり見極めることが必要です。

店舗が最終的に目標とすべきは売上ではなく利益です。ですから、売上を増やすことができないのであれば、コスト削減策を考えるべきでしょう。しかし今、社長が悩んでいるのは店長の待ちの姿勢を変えたいという点です。安易にコスト削減に走らずに、もう一度、店長の待ちの姿勢を変えさせる方法を考えてみましょう。

実は「割烹みろく」の社長が選択したのはパターン3でした。社長が「割烹みろく」に入る前に働いていたメーカーは猛烈社員が多く、営業マンは皆、与えられた売上予算を必死に追いかけていました。社長は「割烹みろく」でも売上予算を与えれば必死に動くと思い込んでいたのですが……。

ターニングポイントは金額ではなく行動に注目したことだった

ある日、社長が自宅で家族そろって夕飯を食べているとき、妻が小学6年生の息子をしかり始めました。

あなた。この子またテストで30点をとってきたのよ。前回より下がってるわ
息子 今回はもっと点数とれると思ったんだけど……。おかしいな……
社長 もっとちゃんと勉強しないとだめだぞ。次は目標100点で頑張れよ!
息子 分かったよ。ちゃんと100点とるよ……
息子の不安げな回答を聞いて、社長はふと気になり息子に尋ねました。
社長 100点とるように頑張るって、具体的に何をするんだい?
息子 具体的に、っていわれても……
社長 例えば、どの問題集をどこまでやる、とか、毎日何時間勉強するとか
息子 そうだな~。学校の教科書にある復習問題を全部2回ずつやって……。その後、塾の問題集も2回ずつやるよ! 分からなかった問題は塾の先生に聞いて3回繰り返すよ。どう? いけそうな気がしない?

ついさっきまで嫌々でやる気のなかった息子が、目を輝かせている姿を見て、社長は思いました。「これだ! 店長に足りなかったのは具体的な行動だったんだ」

社長は店長会議でいいました。
「店長の皆さん、私は今まで売上予算を達成することを気にしすぎていました。今日からは、店長の皆さんが考えている、お客さまの満足のためにするべきこと、一人でも多くのお客さまに来店していただくためにするべきこと、その“具体的な行動”を聞かせてください。そして来月からはその行動を実際にできたか、できなかったか、その行動で何が変わったか、翌月はどのような行動をするか、そこを聞かせてください」

「割烹みろく」の社長が行ったことは予算管理の改善でした。3カ月前の「割烹みろく」は売上予算を作成し、その達成率ばかりを見ていました。子供のテストの点数という結果ばかりを見ていて、どのような勉強をどの程度するべきかを見ていなかったようなものです。
しかし社長は気付いたのです。売上予算という「金額」で目標を与えられても、店長は何をすれば良いか分からないということに。「割烹みろく」のようにB to Cのビジネスの場合、お客さまが来てくれるのを祈るだけ、という待ちの姿勢になってしまう傾向があるのです。
そこで社長は店長に対し損益予算とは別に、社員の行動計画を作るよう指示を出しました。店長は自分や他の社員、バイトさんが何をするべきか、洗い出し、それを担当者ごとのチェックリストのようにしたのです。

損益予算を作成し、実績と比較するという予算管理は管理会計の基本的な理論です。しかし売上は結果の数字ですから、その売上自体を予算化して追い求めても、具体的な行動には結び付きません。つまり損益予算だけでは社員は何をするべきかが分からないのです。

予算管理において本当に大切なことは、予算を割り振ることではなく、割り当てられた予算を達成するためにどのような行動が必要なのかを検討し、それを確実に実行し、その結果を振り返って、今後の行動に反映させるというPDCAサイクル(注)を回すことなのです。

注:PDCAサイクルとは、PLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(評価)、ACTION(改善)という企業における一連の管理・改善活動をいう。

 
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