導入事例

佐藤光生税理士事務所 

2022年7月5日

 60年以上の歴史を誇る老舗会計事務所、佐藤光生税理士事務所(宮城県仙台市)。「お客様が気軽に相談できるパートナー」をモットーに、税務会計のみならず、中小企業の経営支援にも力を注いできた。所長の佐藤光生氏(写真)は、日本税理士会連合会やミロク会計人会において長年にわたり数多くの役職を歴任するなど、税理士業界および地域経済の発展にも大きく貢献してきた。今年(令和4年)10月に開催予定のミロク会計人会の大会「第46回全国統一研修会 いわて盛岡大会」においては、大会準備委員長も務めている。今回の取材では、佐藤氏に事務所の歴史を振り返っていただきつつ、地域密着型会計事務所の経営戦略、税理士業界の発展に向けた取り組みについて伺った。(撮影 市川法子)

創業63年を迎える地域密着型会計事務所

―― 本日は、佐藤光生税理士事務所所長の佐藤光生先生にお話を伺います。同事務所は創業60年を超える、宮城県仙台市の老舗会計事務所です。
 今回の取材では、2代目所長である佐藤先生に、地域で長く愛されてきた事務所の歴史や、経営のコツなどについてお聞きしたいと思います。
 はじめに、貴事務所の成り立ちからお話しいただけますか。

佐藤 当事務所は、私の父である佐藤正雄が昭和34年に、それまで勤めていた税務署を辞めて独立開業したのがスタートになります。父は、陸軍士官学校の最終期にあたる61期生でした。終戦後、税務署の大量募集に応募して職員となり、働きながら勉強して10年で税理士の資格を取って独立しました。
 税務署では法人を担当していたものの、税理士という職業がそれほど認知されていなかった時代で、開業当初は食べていくのがやっとだったそうです。しかし、税務署の元同僚の人たちから紹介してもらったお客様を大事にしながら、少しずつ新規のご紹介を増やしていったと聞いています。
 後に、元同僚の人たちが税理士として独立すると、父は以前応援してくれた恩返しにと、かつて紹介してもらったお客様を逆に紹介したりすることもあったそうです。食べられない苦労を知っていたからでしょう。

―― お父様は律儀な方でいらしたのですね。そのようにして先代が築き上げた事務所をご子息である光生先生が承継されたのは、既定路線だったのでしょうか。

佐藤 既定路線どころか、父が税理士であることは認識していましたが、それがどのような職業かは、長い間全く知りませんでした。住居兼事務所だったため、本当にすぐ横で仕事をしていたのにです。
 税理士という職業を初めて意識したのは、高校で大学進学を考え始めた頃です。周りからは父親の事務所を継ぐように勧められましたが、父と比較されるのが嫌で、進学して逃れようと画策しました。
 そこでひと悶着あり、最終的には「大学院まで行かせてやるから事務所を継げ」と言われ、やむなく税理士の道に進んだというのが正直なところです。

2代目として入所し、税理士の道を進む

―― そこから、お父様の事務所に入所するまでの経緯をお聞かせください。

佐藤 実は、私は他の会計事務所で働いた経験がありません。唯一それに近いのは、大学院時代に師事していた公認会計士の先生の事務所で、確定申告の時期にアルバイトをしたことくらいです。
 最初は、資格を取ったらそのまま東京の事務所で働くつもりでいたのですが、父が体調を崩し、仙台に戻らざるを得なくなりました。帰郷してすぐに、父が救急車で運ばれるような事態になり、そのままこちらの職員になりました。私が27歳のときです。幸い、父はその後、回復しました。

―― 実務経験がないまま、後継ぎとして入所するのは、いろいろな意味で大変だったのではありませんか。

佐藤 当時、ストレスから口内炎が10カ所ぐらいできました。職員の人たちは全員私よりも年上ですから、私のことをどう扱えばよいか、かなり戸惑ったのではないでしょうか。右も左も分からない2代目をどう教えればよいのか、見当もつかなかったと思います。
 結局、初めの頃は電話番くらいしかできず、後は本を読んでいました。そのうち、当時は専従で働いていた母の仕事の手伝いをメインに、分からないことは先輩方に教わりながら、少しずつ仕事を覚えていきました。

―― 正式に、お父様から事務所を引き継いだのはいつですか。

佐藤 東日本大震災の翌年、平成24年1月です。それに合わせて、佐藤正雄税理士事務所から佐藤光生税理士事務所に名称を変更しました。その時点での職員数は、私を除いて8名でした。その後、少し増えましたが、現在は8名に戻って安定しています。コンピュータによって効率化が進み、人が辞めても補充する必要がなくなったからです。

税理士会などの会務を通じて業界全体の発展に貢献

―― 佐藤先生は、税理士会やミロク会計人会のさまざまな役職を歴任されているそうですが、そちらの活動についてもお聞かせください。

佐藤 仙台税理士クラブという試験合格者の勉強会があり、平成3年に入会させていただきました。クラブ会員の先生が、東北税理士会に新設されることになった業務対策部の部長になることが決まり、その先生からお誘いをいただいて、平成5年から会務がスタートしました。その後、平成21年から4年間、東北会公益活動対策特別委員会の特別委員長、平成25年から4年間、東北会業務対策部部長、平成29年から2年間、東北会副会長を務めました。
 日税連では、常務理事就任以前に公益活動対策部・成年後見支援センター、業務対策部に10年間、平成29年から2年間は常務理事研修部長を務めました。

―― 10年以上にわたって、日税連と東北会の双方で活動されているのですね。

佐藤 そうですね。一般の委員から常任委員に格上げされたことで、会務に関わる頻度が高まりました。それに伴い、全国の先生方と出会う機会も増えていきました。
 地域の特性もあって、皆さんそれぞれに仕事のやり方やお客様との付き合い方、事務所の運営方法なども違っていて、とてもよい勉強になりましたし、何より刺激を受けました。人脈もできました。これも日税連という組織のおかげだと感謝しています。

―― 税理士会だけでなく、株式会社ミロク情報サービス(以下、MJS)のシステムのユーザーとして、現在はミロク会計人会東北会の副会長でもいらっしゃいますね。ミロク会計人会には、いつ頃から携わるようになられたのですか。

佐藤 平成20年に、ミロク会計人会連合会のシステム開発委員会委員になったのが最初です。その後、平成21年から8年間、東北会の理事・常務理事を務め、平成29年の改選で東北会の副会長に就任しました。
 今年の10月に開催される「第46回全国統一研修会いわて盛岡大会」では、大会準備委員長も務めています。

常に先端的なシステムを導入し、業務効率化を実現

―― 貴事務所は主にMJSのシステムをお使いだそうですが、MJSとの付き合いはどのくらいになるのでしょうか。

佐藤 MJSさんとは創業当初からのお付き合いになります。もちろん父の代で、計算センターで計算処理サービスを行っていた時代です。

―― そうすると、その後のオフコンビジネスからパソコン用パッケージソフト、サーバーを使ったネットワークソリューションシステム、そして現在のクラウドサービスに至る、MJSの歴史をつぶさに見てこられたわけですね。

佐藤 そうですね。オフコンからパソコン会計に切り替えたのは平成8年になります。ところが、当時はまだパソコンが使える人がとても少なく、キーボードの打ち方から習うという有様で、パソコンへの移行には苦労しました。
 ただ、それも無理はなかったといえます。平成8年に、業務対策部が東北税理士会を対象に行ったアンケート結果によれば、パソコンを触ったことがある税理士は、わずか2%にすぎませんでしたから。

―― これまでに導入してこられたパソコンシステムの変遷を教えていただけますか。

佐藤 平成15年に「ACELINK会計大将」を導入したのが初めになります。そこから「ACELINK Navi会計大将」にリプレースし、平成24年に事務所名を変更した後、「ACELINK NX-Pro会計大将」にリプレースしました。現在も、「ACELINK NX-Pro会計大将」のバージョンアップ版を使っています。
 ただ、全てのお客様がMJSのソフトを使っているわけではないので、お客様に合わせなければならないケースもあります。
 他社のソフトを使っているお客様に対しては、当事務所も同じソフトを導入し、それにお客様の仕訳データを入れて確認した後、MJSのシステムに移すという作業を行っています。MJSのシステムに直接コンバートすることもできるのですが、戻すことができないためです。

―― 顧問先の自計化の進み具合はいかがですか。

佐藤 自計化は、MJSさんの「記帳くん」や「かんたんクラウド会計」を使っています。ただ、自計化を推進しているといっても、当事務所ではまだまだ記帳代行のニーズがあり、自計化に至っていない顧問先様もかなりいらっしゃいます。人手不足の問題を抱えているお客様については、どうしてもこちらでやらざるを得ません。
 とはいえ、やはり時代の流れはデジタル化に向かっていますから、今後は自計化推進へさらに舵を切っていかなければならないだろうと思っています。

―― 中小企業でも、世代交代に伴い端末を扱える経営者や経理担当者が増えてくるでしょう。

佐藤 そうですね。ただ、そうなったとしても、「データを確認してほしい」と送ってこられたりすることがあります。そのようなご要望に応えていくとなると、結局そういった確認作業はなくなりません。逆に、自計化したことで報酬を下げられるような事態にもなりかねないので、そこがジレンマですね。

顧客の気軽な相談相手になる

―― 会計業界では今、顧問先の売上アップのための経営支援、いわゆる高付加価値業務にシフトして、顧問料アップを図ろうという動きが出始めています。佐藤先生は、これについてはどうお考えですか。

佐藤 当事務所では父の代から、経営的なご相談も報酬内で受けてきました。「お客様がもうかれば必然的に報酬は上がる。だから、そういうところで金はとるな」というのが父の考え方だったからです。そういうところで顧問料にプラスアルファすると、お客様の売上が下がったときに、「顧問料を下げてほしい」という話にもなるでしょう。ですから、私自身は父の教えを守っていきたいと思っています。

―― 顧問先の経営者が気軽に相談できる立場を守ることは重要ですね。そのような信頼関係を育んできたからこそ、紹介が紹介を呼んだのだと思います。

佐藤 仰るとおりです。バブルの頃は、その紹介の連鎖によってお客様がかなり増えました。よい時代だったと思います。しかし現在、その当時のお客様が70代、80代になり、ほとんどが商売を縮小されています。ですから、こちらとしては報酬を下げざるを得ません。それは仕方のないことですし、それでよいと思っています。

―― 損得勘定だけで税理士の仕事は務まらないということですね。

佐藤 むしろ、税理士会の仕事に追われ、お客様のところに行けなかった時期が続いたにもかかわらず、これまでずっとお付き合いしてくださってきたのですから、私のほうこそ感謝したいくらいです。

会務で得た人脈が強みに

―― コロナ禍が始まってから2年半の間に、顧問先との関係や会計事務所業務に変化はありましたか。

佐藤 特筆すべき変化はないように思います。それまで定期的に訪問していたお客様に対しては、従来どおり伺っていますし、データのやりとり中心のお客様は、もちろんそのままのやり方で対応しています。
 コロナ禍前に比べ、電話やメールでやりとりする頻度は増したと思いますが、要件の重要度によっては直接お客様とお会いするようにしています。
 私は、お客様の変化に気づくことが何よりも大事だと思っていますから、お客様がどのくらいお困りなのかをきちんと把握し、判断して、必要であればすぐにお伺いして話を聞くようにしています。
 職員にも常々、相手の目を見て話をするようにと言っていますが、対面して話をするのは、とても大事だと思います。「目は口ほどに物を言う」といわれるとおり、相手の目を見れば、その人が理解しているのかしていないのか、納得しているのかしていないのかが分かります。

―― コロナ禍では巨額の制度融資が行われましたが、そろそろその返済が始まります。今後の顧問先の資金繰り支援について、佐藤先生はどのようにお考えですか。

佐藤 私は業務対策部当時、中小企業支援に携わっていた関係もあり、日本政策金融公庫さんとは太いパイプを持っています。ですから、当事務所からは融資先の情報を正確に伝えること、かつ経営状態の改善策などを説明し、また公庫からはアドバイスもしていただけるという関係になっていると思っています。

―― 会務などを通じて、これまで佐藤先生が築いてきた人脈が、今後の事務所の強みとして生きそうですね。

佐藤 3年ほど前まで、会務で自事務所のほうがだいぶおろそかになってしまいました。事務所に腰を落ち着けるようになって、不在がちの時期に起こっていた問題の解決に取り組んでいるところです。

―― すると、現在は事務所運営の見直しを図っているところでしょうか。

佐藤 そうですね。所長税理士が常に見ることができる顧問先の数には、当然ながら限度があります。売上が小さく、仕訳数も少ない小規模なお客様は、MJSさんのシステムを使って試算表をチェックしていれば済みますが、大規模な会社になると部門ごとに分かれていたりしますから、そうもいきません。そのあたりの対応が今後の課題だと思います。
 また、税理士としてどこまでアドバイスすべきかという問題もあります。専門外の分野のご相談には、やはりその道のプロに対応してもらうほうがよいので、それぞれ適切に判断したうえで弁護士や司法書士、社労士の先生をご紹介しています。

10年かけて次代への承継を進める

―― 人手不足の解消は、会計事務所業界においても重要課題のひとつですが、貴事務所の状況はいかがですか。

佐藤 募集をかけても応募者が来なかった時期が1年ほどありましたが、先ほど申し上げたとおり、ここ最近は安定しています。女性が2人、結婚で辞めた以外は、職員数にあまり変動はありません。
 3年ほど前に、簿記論と財務諸表論を取得している女性が入所して以降、新たな職員は採用していませんが、先代からの番頭さんがいますし、今のところ業務に支障はありません。

―― 後継者問題についてはいかがでしょう。

佐藤 後継者も既に決まっており、お客様にもお伝えしています。記憶力のよい、とても優秀な人です。入所時に4科目取得しており、私と同じ年齢で税理士登録をしています。
 引き継ぎは、10年かけて進めるつもりです。10年後、私は70歳になりますが、税務調査など、経験させなければならないことがまだまだあります。優秀な税理士ですが、これからは優秀な経営者としても成長してもらわなければなりません。

―― 経営センスを磨くには、何が重要だとお考えでしょうか。

佐藤 素質としては、人が好きであることが重要だと思います。人と話すことが、一番の勉強になりますから。データのやりとりだけでは見えてこないことがたくさんあります。
 社長さんの目をしっかり見ながら会話をし、相手の本心はどこにあるのか、何を伝えたいのかを正確に把握することで、初めて当意即妙な対応ができるのですから、人と会って話をすることは大事です。
 自戒も込めて言えば、忙しいとおざなりな対応になりがちです。この点は気をつけなければいけません。

―― 3代目を継ぐ方への期待、要望をお聞かせください。

佐藤 ぜひとも継承してほしいと思っているのは、お客様が気軽に相談できる事務所であることです。ただ、何でも相談に乗るといっても、なかには無理難題を押し付けてこられるお客様もいるかもしれませんから、そこはしっかり対応しなければなりません。
 相手の言いなりになっていては、税理士としての役割は果たせません。ダメなものはダメと言える強さを持つこと、ダメな理由を丁寧に説明できることに加え、できることかできないことかを判断する力も必要になります。
 また、例えば無理な節税はダメだからといって、社長の要望を一蹴するのではなく、10%でもよいから合法的に対処できる方法を模索するくらいの優しさ、柔軟性も持ってもらいたいと思います。
 もうひとつ、経営者として職員に頼ることも覚えてほしいですね。ひとりで全て担うことは無理ですから、職員にも分担してもらえるよう教育する必要があります。
 優秀な人は、得てして教えることが苦手なようです。自分ができるから、つい言葉が足りなくなりがちです。しかし、今の若い人たちは丁寧に説明しないと理解できませんし、指示されたことはしっかりやるけれども、その仕事に付随する仕事にまでは気が回りません。
 ですから、職員一人ひとりの特性を見極め、手取り足取り教えながら、その人の力をうまく引き出してあげてほしいですね。

―― 最後に、創業者であるお父様から引き継いだ事務所を、次の世代へと引き渡していく立場からの、佐藤先生の思いをお聞かせください。

佐藤 平成24年に引き継ぐ10年くらい前から、父から教えを請いながら、私が代理として実質的に事務所経営をしていました。その間も出所時間は短くなりましたが、父には事務所に出てもらいました。父がいるだけで、古くからのお客様の安心感が全く違うからです。
 それは、私と事務所にとっても同様でした。それだけ父の存在は大きかったと思います。何よりうれしかったのは、父が亡くなったときにお客様がひとりも離れなかったことです。
 そうして引き継いだこの事務所を、今度は次の世代へと渡していくわけですが、どのような事務所を目指していくかは、私が決めることではないでしょう。彼(宍戸広幸氏)には彼の理想像があると思います。初代、2代目の下で働いてきた経験を基に、あるいは他事務所も参考にしながら、自分で考えてゆけばよいと思います。
 私は、彼を信用して全権を委譲するつもりです。

―― 本日は、大変貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。貴事務所のますますのご発展を祈念しています。

導入事務所様のご紹介

佐藤 光生(さとう・みつお)

佐藤光生税理士事務所所長。税理士。昭和36年生まれ。宮城県出身。拓殖大学大学院修了。昭和63年、佐藤正雄税理士事務所に入所。平成24年、事務所を承継し佐藤光生税理士事務所に名称変更。日本税理士連合会で常務理事研修部長、公益活動対策部常任委員、成年後見支援センター常任委員、業務対策部常任委員、東北税理士会では常務理事、副会長、東北税理士協同組合副理事長、東北税共済会副会長、日本税理士共済会常務理事などを歴任。また、ミロク会計人会連合会システム開発委員会委員、東北会理事・副会長などを歴任。令和4年のミロク会計人会の「第46回全国統一研修会いわて盛岡大会」では、大会準備委員長を務めている。

佐藤光生税理士事務所

所在地

宮城県仙台市青葉区宮町1丁目1番18号

代表者 所長  佐藤 光生
創業 昭和34年
職員数 8名(税理士2名)
得意分野 相続税、贈与税(事業承継税制を含む)、法人税、所得税、資金調達支援、経営支援、事業再生計画 等
  • 本事例の掲載内容は取材当時のものです。

課題や導入に関するご相談など承っております。

まずはお気軽にお問い合わせください。

資料請求はこちら