わが社の人的資本は貸借対照表のどこに計上されているのか?

2025年6月3日

質問

「ミロコン」は、人的資本を大切にしている会社です。ある日のこと。ミロコンの社長は、自社の貸借対照表を見ていました。すると、ある事に気が付きました。人的資本が、見当たらないのです。ミロコンの社長は、どうすればよいのでしょうか?

パターン1

人的資本は貸借対照表に記載する必要はないので、そのままにしておく。

パターン2

人的資本を資産の部に表示する。

パターン3

人的資本を純資産の部に表示する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

コンサル
人材

貸借対照表に人的資本が見当たらないことを理解できた!

「ミロコン」は、従業員を大切にすることで知られるコンサルティングの会社です。従来から人材を人財と考え、従業員を大切にしてきており、良い人材が集まっています。社長は常に社員の成長と幸福を重視しており、その結果、会社は順調に成長してきました。人的資本が豊富な会社と認識しているものの、貸借対照表に人的資本が見当たりません。今ではそのことも正しく理解できていますが、以前はそうではありませんでした。

貸借対照表に人的資本が見当たらない?

数カ月前のある日のこと、社長は会議で、損益計算書と貸借対照表を見ていました。すると、あることに気が付いたのです。

……以上が、今期の業績です


経理部長


社長

今期も増収増益と好調だったなぁ。 皆、よく頑張ってくれた

うちの社員はモチベーションも高く、雰囲気もいいですね


総務部長


社長

まさに、人財だな

そうですね。最近、人的資本に注目が集まっていますけど、うちの会社は昔から、人材を大切にしてきましたもんね


総務部長


社長

ん?

どうされましたか?


総務部長


社長

貸借対照表に、人的資本の項目がないなぁ

確かにそうですね……


総務部長

人的資本とは、企業の成長や価値向上に貢献する従業員の知識、スキル、経験、能力などを指し、例えば以下のようなものが考えられます。
  知 識: 従業員が持つ専門的な知識や情報
  スキル: 業務を遂行するための技術や能力
  経 験: 過去の業務やプロジェクトで得た実績やノウハウ
  能 力: 問題解決能力やリーダーシップなどの個人の特性


社長

人的資本は資産だから、資産の部のなかの、その他の資産とかに含まれているのかなぁ

資本ということなので、純資産の資本金の辺りに含まれているんじゃないですか


総務部長

いやいや。違いますよ


経理部長

どういうことなのでしょうか?

質問

「ミロコン」は、人的資本を大切にしている会社です。ある日のこと。ミロコンの社長は、自社の貸借対照表を見ていました。すると、ある事に気が付きました。人的資本が、見当たらないのです。ミロコンの社長は、どうすればよいのでしょうか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

人的資本は貸借対照表に記載する必要はないので、そのままにしておく。

パターン2

人的資本を資産の部に表示する。

パターン3

人的資本を純資産の部に表示する。

正解は、「人的資本は貸借対照表に記載する必要はないので、そのままにしておく」です。今の日本の会計ルールでは、ヒトは貸借対照表には計上されない、ということになっているからです。

ヒトは会社にとっての財産、つまり、資産というように考えると、貸借対照表の資産の部に計上されるのではないか、と思うかもしれません。しかし、今の日本の会計ルールでは、ヒトは貸借対照表には計上されない、ということになっています。

人的資本という言葉が一般化していますので、なんとなく、資本金と似ているように思い、純資産の部に計上するのでは、と考えてしまうかもしれません。しかし、それは間違っています。

ヒトは貸借対照表には載らない!?

自社の貸借対照表のどこにも人的資本が見当たらないことに疑問を持った社長や総務部長に、経理部長が説明をしてくれました。

まず、人的資本という言葉から間違ってしまうかもしれませんが、貸借対照表における資本金ではないんですよ


経理部長

えっ。あ、そうなんですね。私の間違いですか……


総務部長

次に、ヒトは会社の大切な資産というのは、あながち間違いとはいえません


経理部長


社長

じゃあ、私が合っているということだな!

いえいえ。考え方としては、アリかもしれませんが、そうではないんです


経理部長


社長

???

今の会計ルールでは、ヒトについては、貸借対照表には計上されない、ということになっているんですよ。これは、人的資本が他の資産と異なり、具体的な金額で評価することが難しいためです


経理部長


社長

どういうことだい? もう少し具体例で説明してもらえないかな

例えば、建物や機械などの有形固定資産は購入価額や減価償却費を基に評価できますが、人的資本はその価値を正確に数値化することが困難です


経理部長


社長

確かにそうかもしれないなぁ

また、例えば、ある優秀な社員が会社に大きな貢献をしているとしても、その社員が突然退職することになれば、その人的資本の価値は一瞬で変わってしまいます。こうした不確実性があるため、人的資本を貸借対照表に計上することは難しいようです


経理部長


社長

そういうことか! でも最近、人的資本の開示、とかの話を良く聞くよ

確かに、上場企業では人的資本に関連する情報の一部が有価証券報告書で開示されていますね。でもそれは、貸借対照表において、ではないんですよ


経理部長


社長

そうなのか……

経理部長から説明をうけた社長。会計ルールは、なかなか難しいなぁ、と思いました。

社長は、人的資本が貸借対照表には計上されないことは理解しました。ただし、人的資本の重要性を再認識し、今後は社員のスキルアップや福利厚生の充実にさらに力を入れようと考えています。また、貸借対照表には計上されず価値が見えづらい人的資本について、何らかの指標で定量的に評価できないものかとも考えています。これにより、ミロコンはさらに強固な企業基盤を築き、持続的な成長を目指していこうとしています。

「人的資本」

人的資本とは、企業の成長や価値向上に貢献する従業員の知識、スキル、経験、能力などを指します。これらは貸借対照表には計上されませんが、企業にとって非常に重要なものです。

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