キャッシュ・フロー計算書の基本! お金の流れを見える化する3つの区分とは?

2025年6月13日

質問

キャッシュ・フロー計算書はお金の流れを大きく3つに区分して示しています。その3つとは次のうちのどれでしょうか?

パターン1

売上、費用、利益

パターン2

現金、預金、借入金

パターン3

営業活動、投資活動、財務活動

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

レクチャー
家計簿

キャッシュ・フロー計算書の基本が分かった!

卸売業を営む「MJS物産」では、キャッシュ・フロー計算書を作成しているものの、その見方・使い方が分からず活用されていませんでした。しかし、キャッシュ・フロー計算書は、会社の財務状況をより正確に把握し、適切な経営判断を下すための重要なツールです。新任経理部長が来てから、経理部門のスタッフや経営陣にその見方・使い方を伝授したことで、皆が活用に興味を持つようになりました。

キャッシュ・フロー計算書の初歩について知りたい方はコチラもご覧ください。

「簡単チェック! 会社のお金はちゃんと回っているのか?」(経営センスチェック2018年9月13日号) 

最近のMJS物産では、キャッシュ・フロー計算書が大きく3つに区分されている意味を、経理部門のスタッフや経営陣は理解できています。

数カ月前 ~キャッシュ・フロー計算書はなんで3つに区分されているんだ?

MJS物産は中小企業であり、キャッシュ・フロー計算書の作成義務はないものの、以前からキャッシュ・フロー計算書を作成はしていました。ただし、それを活用できる人が退職して以降、いつしか宝の持ち腐れ状態になってしまっていました。そんな時、新任の経理部長がやってきて、経理部門のスタッフなどに対してキャッシュ・フロー計算書の見方・使い方のレクチャーが始まりました。

経理部長、うちにはせっかくキャッシュ・フロー計算書があるのに、今では誰もその見方・使い方が分からなくなってしまっています。キャッシュ・フロー計算書の基本中の基本の所から教えて欲しいんです


経理スタッフ

そして、ある日のこと。今日は経理部長が経理部のメンバーを集めてキャッシュ・フロー計算書の基本中の基本をレクチャーしてくれることになっています。


経理部長

まず、キャッシュとは何かから説明しよう。キャッシュとは、すぐに使えるお金のこと、つまり、すぐに使える現金や預金のことだと考えてほしい

はい


一同


経理部長

キャッシュ・フロー計算書を理解するためには、家庭の収支に例えると分かりやすいんだ。例えば、家計簿をつけるときに、収入と支出を記録するよね。収入は給料やボーナス、支出は食費や家賃、水道光熱費などだ。これは日常生活にかかる収支と言ってもいい

あっ、うちも家計簿を付けています。家計簿を付けることで、毎月どれだけのお金が入ってきて、どれだけのお金が出ていっているのかが分かります


経理スタッフ


経理部長

でも、時には車を買ったり、家を買ったりと、日常の生活費とは異なる支出もあるよね?

はい! そういったものは日常の生活費と一緒にならないように区分して管理しています


経理スタッフ

さて、キャッシュ・フロー計算書ではお金の流れを大きく3つに区分して示しているのですが、一体どのような3区分なのでしょうか?

質問

キャッシュ・フロー計算書はお金の流れを大きく3つに区分して示しています。その3つとは次のうちのどれでしょうか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

売上、費用、利益

パターン2

現金、預金、借入金

パターン3

営業活動、投資活動、財務活動

売上、費用、利益は損益計算書の項目であり、キャッシュ・フロー計算書におけるお金の流れの区分ではありません。

現金、預金、借入金は貸借対照表の項目であり、キャッシュ・フロー計算書におけるお金の流れの区分ではありません。

キャッシュ・フロー計算書では、お金の流れを大きく「営業活動」、「投資活動」、「財務活動」の3つに分けています。それぞれの区分ごとに、お金の流入と流出を示すことで、お金の流れを明確にしています。

新任経理部長がやってきた ~キャッシュ・フロー計算書の3つの区分の意味が分かった!

経理スタッフが付けている家計簿では、日常の生活費と一緒にならないように次のように区分した上で、日常生活費はさらに主要な支出項目に細分しているようです。

日常生活費:  家賃や食費、光熱費など、毎月の生活に必要な支出
        (主要な支出項目別に区分)
投資・貯蓄:  家や車の購入、貯金や投資など、将来のための支出
ローンの返済: ローンの返済など、借りたお金を返すための支出


経理部長

うまく区分できているね。このように区分しておけば、家計の収支をより正確に把握し、どこでお金を使い過ぎているかがすぐ分かったり、どの支出を切り詰めようと考えることができたりと、適切な家計管理ができるね。実は、同じように企業のキャッシュ・フロー計算書も3つの区分に分けることで、会社の財務状況をより明確に把握することができるんだ

【図表1】キャッシュ・フロー計算書の3つの区分

Ⅰ.営業活動によるキャッシュ・フロー:
 会社の主たる事業活動から生じるキャッシュの流れ。
 (例)商品の販売やサービスの提供による収入や、それに関連する支出が含まれる。

Ⅱ.投資活動によるキャッシュ・フロー:
 会社が長期的に使用または保有する資産を購入したり売却したりする際のキャッシュの流れ。
 (例)設備の購入や不動産の売却などが含まれる。

Ⅲ.財務活動によるキャッシュ・フロー:
 会社が資金を調達したり返済したりする際のキャッシュの流れ。
 (例)借入金の返済や株式の発行などが含まれる。


経理部長

これらの区分を理解することで、会社の財務状況をより正確に把握し、適切な経営判断を下すことにもつながる

なるほど、家計の話から考えると、キャッシュ・フロー計算書の3つの区分がよく分かりますね。ありがとうございます、経理部長


経理スタッフ

営業キャッシュ・フローの内訳表示 ~直接法と間接法


経理部長

次に営業キャッシュ・フローの中身の話をしよう。先程の家計簿の話でいくと、給料などの収入があって、主な支出には家賃や食費、光熱費などがあったよね。これを企業の場合で考えるとどうなるかな?

主な収入には、商品等の販売代金の入金があるでしょうか。主な支出には、商品等の仕入代金の支払い、人件費の支払い、経費の支払い、法人税等の支払いなどでしょうか


経理スタッフ

【図表2】直接法による営業キャッシュ・フローの内訳表示の例


経理部長

そうだね。主な収入項目や支出項目ごとに集計すると、何によってキャッシュが増減したのかがよく分かるよね。直接法によるキャッシュ・フロー計算書というものなんだけど、実際にこれを作ろうとするととっても手間がかかるんだ。家計簿をイメージすればわかると思うけど、1件1件の取引ごとに収入や支出の内訳を区分しておかないといけない

もっと簡単な方法があるということですか?


経理スタッフ


経理部長

そうなんだ。間接法によるキャッシュ・フロー計算書というもので、ほとんどの上場企業はこの方式で開示しているんだ

それはどんなものなんですか?


経理スタッフ


経理部長

ザックリと言うと、2期分の貸借対照表の差額を出して、それに必要な調整を加えてキャッシュ・フロー計算書を作るんだ。出来上がりのイメージはこんな感じだ

【図表3】間接法による営業キャッシュ・フローの内訳表示の例

直接法と間接法、その概要とそれぞれのメリット・デメリット

キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローの表示方法には、直接法と間接法があります。

●直接法によるキャッシュ・フロー計算書
 直接法は、日々家計簿をつけるようなもので、毎日どれだけのお金を使ったか、どれだけのお金を稼いだかを一つ一つ記録し、一定期間の入出金の内容ごとに集計します。主要な取引ごとに収入総額と支出総額を表示する方法です。

<メリット>
 ✓入出金の内容が明瞭:
    どの活動でどれだけのキャッシュを生み出したか、または消費したかが総額で表示され、直感的に理解しやすい。

<デメリット>
 ✓手間がかかる可能性:
       一つ一つの入出金取引の内容を記録した上で、それを集計する必要があるため、財務会計システムと連動して作成対応できない場合には、作成に時間や労力がかかる可能性がある。

●間接法によるキャッシュ・フロー計算書
 間接法は、月末に銀行の残高を確認して、どれだけのお金が増えたかを計算するようなものです。具体的には、利益から始めて、非現金支出項目(例えば減価償却費)や運転資本の変動などの調整項目を加減して表示する方法です。

<メリット>
 ✓簡便:
       一つ一つの入出金取引の内容を記録しなくても、主としてB/SやP/Lから作成できるため、手間が少ない。
 ✓「損益」と「キャッシュの増減」との関係(例えば、利益は出ているのにキャッシュが減っている理由)を分析しやすい。

<デメリット>
 ✓入出金の内容が不明瞭:
       どの活動でどれだけのキャッシュを生み出したか、または消費したかが直感的に理解しにくい。

上場企業のほとんどが間接法によるキャッシュ・フロー計算書を開示している状況にあります。ただし、直接法・間接法とも一長一短がありますので、企業の状況や目的に応じて使い分けることが重要です。

「キャッシュ・フロー計算書の3つの区分」

キャッシュ・フロー計算書は、営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フローの3つに区分されています。それにより、会社の財務状況をより正確に把握し、適切な経営判断を下すことができます。

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MJSシステムでキャッシュ・フロー計算書が作れる! 分析できる!

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