新規出店資金の融資を受けるのにも有効?! 知っておきたい投資評価の方法
2025年6月23日
質問
「MJS商事」では、大型ショッピングセンターの開業に合わせて新たな店舗を出すことを検討しており、銀行から必要資金の融資を受けようと思っています。融資を受けるために銀行に何をアピールして説明しますか?
パターン1
新規出店で顧客数がどの程度増加するかをアピールして説明する。
パターン2
新規出店に費やす資金をいつまでに回収できるかをアピールして説明する。
パターン3
これまで既存店舗で経験や勘が当たってきたことをアピールして説明する。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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必要資金の融資を受けて出店した新店舗、売れ行きは順調に推移!
「MJS商事」は、ある地域でリユース品の販売を行っています。新規出店に必要な資金を銀行から適切なタイミングで融資してもらうことができ、今では新店舗の販売は順調で、同社の業績も伸びています。ただし、1年前まで遡ると、同社では、銀行から新規出店に必要な資金の融資を受ける際のアピールにだいぶ苦労したのです。
1年前のこと ~新規で出店するかどうか社内で議論に~
これまで、MJS商事では自前の店舗で地元の住民を顧客として堅実な経営を行ってきました。ただ、既存の店舗でできることは限られてきており、社長は何か新しい取り組みができないかとも考えていました。ちょうど、近隣の駅周辺に大型のショッピングセンターをつくるという計画があることを聞きました。この情報を知り、社内ではショッピングセンターに店舗を出店するかどうか検討することになりました。
営業チームから、近いうちに開業する大型のショッピングセンターに我が社も出店してはどうかという提案がありました。ショッピングセンターには大勢のお客さんも来るでしょうし、店舗を出せば顧客開拓も見込めるそうです
営業部長
社長
駅周辺ということだし、ビジネスチャンスはありそうだな
でも、新規出店のためには追加の資金も必要になりますよね
財務部長
社長
結構な資金が必要になるよな。ショッピングセンターって最初の数年はものすごくお客さんが来店されるけど、だんだん細っていく傾向があるのが難点だ
その後どうなるか分からないといった話だと、銀行も融資に慎重になるかもしれませんね……
財務部長
社長
銀行にはできるだけ安心して必要資金を融資してもらえるようにしないといけないな。何をアピールして説明したら上手くいくのだろうか……
質問
「MJS商事」では、大型ショッピングセンターの開業に合わせて新たな店舗を出すことを検討しており、銀行から必要資金の融資を受けようと思っています。融資を受けるために銀行に何をアピールして説明しますか?
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パターン1
新規出店で顧客数がどの程度増加するかをアピールして説明する。
パターン2
新規出店に費やす資金をいつまでに回収できるかをアピールして説明する。
パターン3
これまで既存店舗で経験や勘が当たってきたことをアピールして説明する。
新規出店により顧客数がどの程度増えるのかを、銀行にアピールして説明することは重要ですが、融資した資金が回収できるかを重視する銀行としては、その説明だと納得してくれないかもしれません。
経営者が選んだのはパターン2でした。新規出店のため投資する資金をどの程度の期間で回収できるかをアピールすることが、銀行にできるだけ安心して融資してもらう上でのアピールポイントだったのです。
経営者の過去の経験や勘は時として重要ですが、これまで既存店舗で経験や勘が当たってきたことをアピールするだけでは、銀行は安心して融資できないかもしれません。
新規出店資金の融資を受けるためのアピールポイント ~投資評価の方法
これまで自前の店舗で地道に業績を積み上げてきたMJS商事では、新規出店に踏み切るべきかどうか社内でなかなか判断できずにいました。ある日、社長は、会社を経営している友人と食事に行った時、思い切ってこのことを相談してみたのです。
社長
我が社でやってきた経験からしたら、ビジネスチャンスは期待できそうだが……新規出店となるとリスクもあるからなあ。社内でも話がなかなかまとまらないんだよ
お前も地道に経営してきたと思うし、経験と勘を大切にすることは、たしかに大事だ。ただ、新規出店となれば、それなりに資金も準備しなきゃならないよな?
友人
社長
そうそう。財務部長によると追加で資金調達を行うことになりそうだ
それなら、なおさら判断の根拠になるものが必要だろう
友人
社長
お前の会社は、いろいろなところに店舗を出していたよね。何かコツはあるのかい?
以前に、知り合いの税理士から、投資案を評価する方法を教えてもらう機会があってね。実際に我が社でもいろいろと試してみたのだけど、回収期間法が使いやすいかな
友人
社長
何かの“期間”に注目するのかな?
その通り。投資に費やした資金はできだけ早く回収したいよな?
友人
社長
そうだね
回収期間法は、投資した資金がどの程度の期間で回収できるかを評価する手法だ。大雑把に言えば、新規出店の場合、店舗の出店に費やした資金を毎期得られるキャッシュ・フローの平均で割り算して求められる
友人
社長
計算自体は、名称からイメージしていたよりもシンプルだな。この情報をどうやって使うの?
そう、使い方が重要だね。自社としてどの程度の期間で投資資金を回収したいか基準を予め決めておくと、計算の結果を見て判断しやすいよ
友人
社長
我が社は銀行から融資を受ける予定だから、返済期間までにうちが投資資金を回収できることを銀行にしっかりアピールして説明できれば、銀行も安心して融資しやすくなるかな
あと補足になるけど、投資を評価する時点で予測できないこともあるだろうから、実現の可能性が高いプラン、より厳しいプランのように、いくつか投資案を準備して、検討してみると良いね
友人
友人と話をする中で、社長は、銀行へのアピールにも回収期間法を使えるのではないかと思うようになりました。
回収期間法を使った投資評価のために ~自社で投資計画の作成へ
社長は、財務部長や営業部長と協力して、新規出店によって見込まれる売上高の増大等を考慮して投資資金の回収期間を計算しました。その結果、実現の可能性がもっとも高い投資案では、3.5年で投資資金を回収できることが分かりました。また、商品の売れ行きが不調である等、厳しい状況を想定した投資案であっても、5年で投資資金を回収できる見通しがつきました。いずれの投資案も、借入資金の返済期間6年よりも短いものでしたので、銀行にもしっかりアピールできそうです。
そして、同社では、回収期間法による評価の結果を参考に投資計画を立て、銀行に融資を申し出ました。この投資計画は、投資資金を安定的に回収するための根拠が示されているということで、銀行も高く評価してくれました。最終的に、同社では、新規出店に必要な資金の融資を受けることができ、大型ショッピングセンターの開業に合わせて無事出店することができました。
「回収期間法」
店舗や設備等に投資した資金をどの程度の期間で回収できるか評価する手法を、回収期間法と言います。回収期間法では、以下のような計算式を用いて投資の資金を回収するまでに要する期間を求めます。
回収期間=投資額÷毎期得られるキャッシュ・フローの平均
投資の可否は、投資の効果を総合的に判断する必要がありますが、回収期間法は投資額を回収できる期間にスポットを当てた方法であり、この期間が短いほど、安全性が高い投資案であると考えられます。予め投資期間が定まっているような案件(5年間の期限付きの投資案件など)の場合には、回収期間法は特に馴染みやすい評価方法と言えるでしょう。
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