経営に活かすデータの見方 ~「平均値と中央値」活用の注意点と対応策

2025年7月13日

質問

スポーツ用品を仕入れて販売している「ミロクスポーツ」は、2店舗を構えており、営業担当者の生産性を向上させる施策を考えています。2店舗について、「営業担当者1人当たりの平均売上高はほぼ同じ」というデータが得られた場合、最も適切な行動はどれでしょうか?

パターン1

2店舗に対して同じ施策を行う。

パターン2

データの分布を参考にして、施策を決める。

パターン3

2店舗に差が出るといけないので、何もしない。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

戦略
スポーツ用品

データの平均値と中央値の違いを理解したら、営業担当者の生産性がアップした

この1年で「ミロクスポーツ」の営業担当者の生産性はアップしました。それは、2店舗の売上データを分析し、各店舗の状況を把握し、各店舗に対して最適な施策を行ったからです。しかし、1年前は違いました。データの平均値と中央値の違いも分からず、間違った施策を考えることもしばしば。そのときの様子を見てみましょう。

1年前―安易に平均値を使っていた

営業担当者の能力をアップさせて、生産性を向上させたいのだが、ここ最近の2店舗の状況はどうだね?


社長


営業部長

A店舗、B店舗とも営業担当者1人当たりの平均売上高はほぼ同じでしたよ

じゃあ、2店舗の営業成績の傾向はほとんど同じってことか。では、2店舗の営業担当者の能力もほぼ同じだろうから、2店舗に共通の施策を考えよう


社長


営業部長

ちょっとお待ちください。確かに1人当たりの平均売上高はほぼ同じですが、それだけで共通の施策をとってしまっていいのでしょうか……

質問

スポーツ用品を仕入れて販売している「ミロクスポーツ」は、2店舗を構えており、営業担当者の生産性を向上させる施策を考えています。2店舗について、「営業担当者1人当たりの平均売上高はほぼ同じ」というデータが得られた場合に、最も適切な行動はどれでしょうか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

2店舗に対して同じ施策を行う。

パターン2

データの分布を参考にして、施策を決める。

パターン3

2店舗に差が出るといけないので、何もしない。

データの分布によってはこれで良い場合もあります。しかし、平均だけでは、必ずしも2店舗が同じ傾向といえないこともあります。

社長が選択したのは、このパターンでした。各店舗について、営業担当者1人当たり売上高の分布を調べてから、生産性アップの施策を考えることにしました。

もし「現状維持」というのが目標でしたら、このパターンもあり得ます。しかし、生産性の向上は望めないでしょう。

平均値だけ見ていたら実態を見誤る!?


営業部長

今日は、英語のテスト日だったよね。どうだった?

100点満点で77点、クラス41人の平均点は75点だった



営業部長

平均より高いから、上位半分には入っているのか。塾に通うとしたら、中レベルの標準クラスかな

そうじゃないよ。先生が言ってたけど、今回は問題が簡単だったから、高い点数の人が多く、真ん中の点数は81点だって



営業部長

えっ? 平均点以上なのに、上位半分に入っていないだって?

うん。数学で習ったんだけど、データの分布によっては、そういうこともあるんだって



営業部長

実際は、クラスで何位だ?

28位!!



営業部長

はー(溜息)。簡単な問題でこれじゃあ、塾は標準クラスどころか基礎クラスだな。間違った選択をするところだった

このとき営業部長は思いました。


営業部長

点数分布を把握したうえで受講クラスを変える……。この考えって、生産性アップの施策に使えないかな

分布を把握することの大切さに気付いた営業部長は、分布について調べてみることにしました。

平均値と中央値の違いを理解し、戦略計画を再検討

営業部長は、分布の大切さについて社長に伝えようと、先日の娘とのやりとりのことを話しました。

最初、娘さんが平均値とご自身の点数を意図的に言ったのなら、大したものだね


社長


営業部長

笑い事じゃないですよ。危うく、実力に不相応な受講クラスに申し込むところだったんですから。まあ、おかげで平均値だけでは判断できないかもって気づいたんですが、この考えは、今直面している生産性アップの施策にも使えます

でも、施策を考える上でなぜ平均値だけではいけないのか、腑に落ちないんだ。集めたデータの平均値だったら、全体的な傾向を表すには最適だと思うのだが


社長


営業部長

そうではありません。平均値は必ずしも全体的な傾向を表しているわけではありません

どうもピンと来ないので、数値例を使って、もう少し詳しく教えてくれないかね


社長


営業部長

分かりました。簡単な数値例で説明します。A店舗には営業担当者が5人いて、各人の売上高が92万円、85万円、80万円、77万円、71万円だとします。このとき、5人の平均値は81万円です

続けてくれ


社長


営業部長

B店舗も同様に、各人の売上高が160万円、145万円、40万円、32万円、28万円だとすると、5人の平均値は81万円です

図表1

あれ。営業担当者ごとの売上高の傾向は2店舗でまったく異なるのに、平均値は同じになってしまった


社長


営業部長

そうなんです。データの分布が大きく異なっていても、平均値は同じということが起こるんです

では、施策を考える際には、どうすればよいのかね?


社長


営業部長

2店舗の中央値を見るのも一つの手です

中央値とは何かね?


社長


営業部長

中央値は、データを大きさ順にならべたときに、ちょうど真ん中の順位にあるものです。A店舗なら80万円、B店舗なら40万円です

A店舗の平均値と中央値は近いが、B店舗は大きな差があるな


社長


営業部長

ですので、A店舗の5人の営業成績はほぼ同じ中程度とみなせば、全員に対して同じような生産性アップの施策を行うことが可能です

一方、B店舗は優秀な営業担当者が2人、だいぶ劣っているのが3人とも考えられるな。A店舗と同じ施策を全員に行うよりも、2人をさらに上げるための施策と3人を底上げするための施策ごとに分けることも良さそうだな


社長


営業部長

それは良案だと思います

平均値だけに頼るのではなく、データの分布を見ることの重要性が分かったよ


社長

「中央値」

中央値は、データを大きさ順にならべたときに、ちょうど真ん中の順位にあるものです(データが偶数個の場合は、真ん中に最も近い2つの数値を足して、2で割った数値とします)。データの分布状況によっては、平均値と中央値は大きく乖離することもあります。なお、データの中で最も観測数が多いものを最頻値といい、需要予測やマーケティング戦略の立案などにも役立ちます。

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