利益に対するインパクトの大小を理解しよう! ~経営レバレッジ係数の求め方と利用法

2025年8月23日

質問

決算書を会計事務所の先生に分析してもらったところ、「経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)が「8」倍もあり、営業利益の増減に対するインパクトが大きそうなので、改善策を検討してはどうか」と言われました。経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)が「8」倍とはどんな状況でしょうか?

パターン1

売上が10%増減すると営業利益が80%(=8倍)増減する。

パターン2

広告宣伝費が10%増減すると営業利益が80%(=8倍)増減する。

パターン3

投資額(設備や人への投資額)が10%増減すると営業利益が80%(=8倍)増減する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

決算書
栓抜き

ビジネスの特徴を理解して、安定的な利益を実現

イベントの企画・運営を請け負う「ミロク・ワークス」。手がけるビジネスの性質上、ある項目(※三択クイズの正解が分からないよう、項目名は伏せています)が変動することもあるものの、近年は安定して利益を計上しています。


社長

利益をなるべく安定させるには、自社のビジネスの特徴を理解することが大切だな

利益に対するインパクトの大小って企業によってだいぶ違うようですからね。経営レバレッジ係数の把握が役立ちましたね


経理スタッフ

現在は安定的な利益を実現するミロク・ワークスですが、2年前は、営業利益が激減してしまい、社内に焦りが広がっていました。

2年前 ~ある項目の金額が10%減っただけで、利益は80%も減!?

2年前、ミロク・ワークスの社長は、その期の営業利益を見て驚きを隠せずにいました。


社長

営業利益が前期と比べて80%減になってしまった!

前期はオンラインによるイベントの需要が多かったんですが、当期はその需要が一段落したので、それが影響したのでしょうか……


経理スタッフ


社長

それにしても営業利益が80%も減ったのはなぜだ?

後日、会計事務所の先生に相談してみると、どうやら、ミロク・ワークスは『経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)』が高めであることが影響しているようです。

経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)とは一体どういう指標なのでしょうか? 

質問

決算書を会計事務所の先生に分析してもらったところ、「経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)が「8」倍もあり、営業利益の増減に対するインパクトが大きそうなので、改善策を検討してはどうか」と言われました。経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)が「8」倍とはどんな状況でしょうか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

売上が10%増減すると営業利益が80%(=8倍)増減する。

パターン2

広告宣伝費が10%増減すると営業利益が80%(=8倍)増減する。

パターン3

投資額(設備や人への投資額)が10%増減すると営業利益が80%(=8倍)増減する。

経営レバレッジ係数は、売上高の変化率に対する営業利益の変化率の大きさを指す指標です。経営レバレッジ係数が8倍ということは、売上高が10%増減しただけでも、営業利益が80%(=8倍)も増減する状況を意味します。

経営レバレッジ係数は、広告宣伝費の変化率に対する営業利益の変化率の大きさを指す指標ではありません。経営レバレッジ係数は、売上高の変化率に対する営業利益の変化率の大きさを指す指標です。

経営レバレッジ係数は、投資額(設備や人への投資額)の変化率に対する営業利益の変化率の大きさを指す指標ではありません。経営レバレッジ係数は、売上高の変化率に対する営業利益の変化率の大きさを指す指標です。

経営レバレッジ(営業レバレッジ係数)とは ~テコの原理との共通点

会計事務所の先生に相談したときのことです。


社長

難しい話になりそうだから、休憩室で飲み物でも飲みながら話しましょう。頂きもののジュースがありますので

おや、今どき珍しい瓶のタイプですね。


先生


社長

栓抜きはあったかな……。ここにあったぞ

これはレバレッジ係数(営業レバレッジ係数)の説明をするのにちょうどいい


先生


社長

???

この栓抜き、実は「テコの原理」を利用した道具です。栓抜きに少しの力を加えるだけでも、大きな力を栓に与えることができますよね。社長、経営レバレッジ(営業レバレッジ係数)は、栓抜きのしくみと似たようなものなんです。昨日、資料を作成しました


先生

会計事務所の先生が取り出したのは、ミロク・ワークスの費用を変動費と固定費に分けた資料です。

変動費は、売上高の増減に応じて増減する費用です。一方、固定費は、売上高の増減に左右されずに一定額が生じる費用を指します。売上高から変動費を差し引いたものを、限界利益と呼びます。先生はこの資料を使いながら、ミロク・ワークスの状況について説明したのです。

【費用を変動費と固定費に分けた資料】(単位:百万円)

図表1


社長

財務会計の決算書からは分からなかったが、当社は固定費の割合が高めなんですね

固定費の割合が高い場合、売上高が少し変化するだけでも、営業利益を大きく変化させるんです


先生


社長

つまり、それがテコの原理のような現象ということなんですね

固定費は売上高に連動せずに常に一定額が発生します。費用全体に占める固定費の割合が高い場合、固定費がテコのような働きをして、売上高が少し変化するだけでも営業利益が大きく変化します。この現象が「経営レバレッジ(営業レバレッジ)」です。

費用全体に占める固定費の割合が低いケースと比較してみましょう。

【前期の売上高と営業利益は「ミロク・ワークス」と同じだが、固定費割合が低いケース】(単位:百万円)

図表2


社長

固定費の割合が低い場合は、売上高の変動が営業利益の変動に与える影響は小さめですね

経営レバレッジ係数の求め方(計算式と計算例)

この経営レバレッジの現象を数値化した指標が、『経営レバレッジ係数』です


先生

経営レバレッジ係数は、「売上高の変化率に対する営業利益の変化率の大きさ」を指す指標で、次の計算式で簡単に求めることができます(計算式の導出過程は割愛します)。

経営レバレッジ係数=限界利益÷営業利益

【費用を変動費と固定費に分けた資料(再掲)】(単位:百万円)

図表3

前期データに基づく経営レバレッジ係数=160百万円÷20百万円=8

経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)が高い場合の留意点

経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)が高い場合、どんな点に留意する必要があるでしょうか。


社長

経営レバレッジ係数が「8」倍だから、売上高が10%減少しただけで、営業利益は10%×8=80%も減少したんですね

はい。反対の方向でも同じことが言えるので、仮に売上高を10%だけ増加させることができたなら、営業利益は80%増になります


先生


社長

経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)が高い状況は、ハイリスク・ハイリターンというわけですか!

経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)が高いほど、売上高が少し変動しただけで、営業利益が大きく変動することを意味するため、利益の不確実性は高いと言えます。

経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)が高い場合の対応策

経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)が高い場合、どんな対応策が考えられるでしょうか。

御社はイベントの企画・運営というビジネスを行うので、人件費などの固定費が多いのはやむを得ませんが、他の固定費をもう少し削って経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)を低くできれば、利益の安定化を図ることができそうです


先生


社長

なるほど……。最近はリモートでの作業が増えているから、コンパクトなオフィスに引っ越して賃料を削減することを考えてもいいかもしれないですね。固定費を削って、利益をなるべく安定できるように検討してみます

経営レバレッジ係数が高くなりやすい業種

ミロク・ワークスのような会社以外にも、設備投資が必要な製造業や情報通信業などを営む会社では、相対的に固定費が多く、経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)が高くなりやすい傾向があります。

ビジネスの性質上、経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)が高めになる場合、売上の変動をなるべく抑える経営戦略をとることも重要です。業種にもよりますが、たとえば、定期的な契約を増やして安定収入を確保する、トレンドに左右されにくいサービスや製品を複数手がける、顧客の継続購入を促すためにポイント制度を導入する、などのアイデアが考えられます。


社長

ジュースを飲んだら、利益の安定化につながる具体案の検討を早速進めましょう

「経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)」

売上高の変化率に対する営業利益の変化率の大きさを指す指標で、「限界利益÷営業利益」で求められます。経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)が高い場合、売上高が少し変化しただけで、営業利益が大きく変化することを意味します。固定費を削減することで、経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)を低くすることができます。

なお、経営レバレッジ係数(営業レバレッジ係数)の逆数、すなわち、「営業利益÷限界利益」をパーセント表示した指標は安全余裕率(経営安全率)にあたります。
安全余裕率(経営安全率)についても詳しく知りたい方はコチラもご覧ください。
「損益分岐点とは? 経理スタッフ必見! 損益分岐点の計算方法と活用例(経営センスチェック2023年1月13日号)

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