ABC分析がメリハリのある費用管理や経費削減に役立つ! ところでABC分析とは?
2025年9月13日
質問
費用(販売費及び一般管理費=販管費)が増加傾向にあり、利益を圧迫するおそれが生じている「ミロクショップ」。メリハリを付けた費用管理や経費削減などに「ABC分析」が役に立つようですが、ABC分析とは一体何でしょうか?
パターン1
内訳項目をアルファベット順に並べたリストのこと。
パターン2
重要度に応じてA・B・Cにランク分けする手法のこと。
パターン3
Annual Budget Controlの略で、年間予算を管理する手法のこと。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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ABC分析で費用(販管費)を最適化!
多数の商品を取り扱う小売店「ミロクショップ」。最近、費用(販売費及び一般管理費=販管費)が増加傾向にあり、経営を圧迫していました。そこで、社長は販管費のABC分析を行うことを決断しました。
社長
最近、販管費が増えているが、ABC分析を使ってしっかり対策を打っていこう!
はい! ABC分析について理解できたので、しっかり実践していきます
経理スタッフ
今ではABC分析を活用できるようになったミロクショップですが、半年前はそうではありませんでした。
半年前 ~費用(販管費)の増加に悩む
半年前、ミロクショップの社長は、費用(販管費)の増加に悩んでいました。各費用の詳細が把握できておらず、どの費用が特に大きいのかが分からなかったのです。
社長
確かに一部の費用は増えているように見えるが、全体の中でどれが特に大きいのかが分からない。的確なコスト削減策を立てるためにもしっかりと分析したい。各費用の詳細を分析できる資料を作成してもらえるかな?
どんな資料を作ればいいでしょうか?
経理スタッフ
社長
そう言えば先日、他社の社長と話をした時に、『ABC分析』という分析方法が便利だと聞いたな。当社もその分析をしたいから、どんなものなのか調べて、必要なデータを用意してくれないか
はい、分かりました(『ABC分析』って、一体どんなものなのだろう? 今は想像が付かないな……)
経理スタッフ
質問
費用(販売費及び一般管理費=販管費)が増加傾向にあり、利益を圧迫するおそれが生じている「ミロクショップ」。メリハリを付けた費用管理や経費削減などに「ABC分析」が役に立つようですが、ABC分析とは一体何でしょうか?
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パターン1
内訳項目をアルファベット順に並べたリストのこと。
パターン2
重要度に応じてA・B・Cにランク分けする手法のこと。
パターン3
Annual Budget Controlの略で、年間予算を管理する手法のこと。
費用の内訳項目がアルファベット順に並んでいれば内訳項目がたくさんあっても見つけやすいかもしれませんが、重要度は分かりません。ABC分析とは、費用などを重要度に応じてランク分けする手法です。
ABC分析とは、費用などを重要度に応じてA・B・Cにランク分けする手法ですが、一体どんなものなのでしょうか?
年間予算で費用を管理することは有効ですが、ABC分析は年間予算を管理する手法のことではありません。ABC分析とは、費用などを重要度に応じてランク分けする手法です。
ABC分析とは ~メリハリを付けずに費用(販管費)を管理しても失敗する!
単に販管費と言っても、給料手当、広告宣伝費、旅費交通費、水道光熱費、賃借料、租税公課などさまざまな内訳項目が含まれ、その金額も大小さまざまです。こうした販管費の項目をメリハリを付けずに、満遍なく同じように管理しようとしたらどうなるでしょうか? 重要性の低い項目の管理に必要以上に多くの時間や労力をかけることになりかねません。その一方で重要性の高い項目も他の項目と同レベルの管理にとどまり、管理が手薄になってしまうかもしれません。そんなことにならないためにも、ABC分析を実施して、重要性の違いをしっかりつかむようにしたいところです。それでは、ABC分析とは具体的にはどのようなものなのでしょうか?
ABC分析の手順
販管費のABC分析を例に分析の手順を説明しましょう。
手順1.対象項目の選定並びにデータの収集
販管費の各内訳項目をリストアップし、過去1年間のデータを収集します。
手順2.データのランキング(並べ替え)
販管費の内訳項目を金額の大きい順に並べ替えます。
手順3.全体に占める構成比率並びに累積比率の計算
各項目の費用が販管費全体に占める割合を計算し、累積比率も算出します。
【図表1】構成比率並びに累積比率の計算

(注)上表の費用の内訳項目は、金額下位のものは記載を省略している。
なお、販管費の合計金額は774,869円である。
販管費の合計金額(774,869円)に対して金額が最も大きい給料手当(357,218円)は46.1%を占め、2番目に大きい販売手数料(99,564円)は12.8%を占めています。この2つの合計で456,782円(357,218円+99,564円)となり、販管費の合計金額(774,869円)の58.9%を占めています(累積比率の欄)。同様に、3番目に大きい賃借料(64,440円)は8.3%を占めており、この3つの合計で販管費の67.3%を占めています。
手順4.ABCランクの設定とランク分け
費用の重要性に応じて、A(最も重要)、B(中程度の重要性)、C(あまり重要でない)にランク分けします。
今回の事例では、累積比率が70%に達するまでの内訳項目をAランク、70%を超え90%に達するまでの内訳項目をBランク、
それ以外をCランクに分けています。
手順5.ABC分析用のグラフ(パレート図)の作成と分析
パレート図を作成し、どの費用が最も影響を与えているかを視覚的に分析します。
【図表2】パレート図

(注)横軸は販管費の内訳項目で、【図表1】に対応している。
縦軸は金額である。
【図表2】のパレート図の棒グラフの長さを比べれば、販管費の各内訳項目の金額的重要性の違いが一目瞭然です。Aランク(ピンク表示)が3項目、Bランク(青表示)が4項目で、それ以外がCランク(黄色表示)となっています。
販管費にはさまざまな内訳項目がありますが、重要性の違いをしっかり意識することができるでしょう。
ABC分析の分析結果と対応策の検討
分析の結果、Aランクにランク分けされた「給料手当」「販売手数料」「賃借料」の3つの内訳項目だけで販管費の合計金額の70%を占めていることが分かりました
経理スタッフ
社長
なんと! 内訳項目はこんなにたくさんあるのに、たった3つの内訳項目だけで70%も占めているとは
そして、Bランクにランク分けされた「広告宣伝費」「水道光熱費」「販売促進費」「雑給」の4つの内訳項目まで加えると、実に販管費の合計金額の90%を占めていることが分かりました
経理スタッフ
社長
おー、そうだったのか! この結果を基に、Aランクは最重要の項目と位置付け、重点的に分析して、ムダが発生していないか、削減の余地がないかなどを検討してみると、効果は大きそうだね
はい
経理スタッフ
社長
Bランクも比較的重要性が高いので、それを踏まえて管理方法や対応を検討することにしよう。逆にCランクの項目の管理にはあまり時間と労力をかけないようにした方が良さそうだ
分かりました。具体的な管理方法や経費削減策などの検討を始めるようにします
経理スタッフ
財務会計システムで効率的にABC分析グラフを作成
財務会計システムの中には、簡単にABC分析を行い、パレート図まで作成してくれるものもあります。こういったシステムを使えば、定期的かつ効率的にABC分析を行うことができます。
ABC分析のメリットと適用例
ABC分析の主なメリットは、重要な項目に焦点を当てることで、効率的な管理や経営判断ができる点です。
適用例としては次のようなものが考えられます。
(適用例)
販管費のABC分析:
販管費の中の重要な費用項目を重点的に分析・管理したり、削減策を検討したりできます。
売上高のABC分析:
売上の主要な部分を占める商品や得意先(顧客)を特定し、リソースを集中させることで売上や利益の増大を図ったりすることができます。
在庫のABC分析:
重要な商品を特定し、それらの商品に対する適切な発注や在庫管理が可能になります。
ABC分析の注意点
ABC分析は便利な分析手法ですが、次のような点には注意しましょう。
✓金額的重要性だけで判断しない
ABC分析は、金額的な重要性に基づいて判定され、質的な重要性は考慮されません。売上額が大きくなくても顧客満足度の維持・向上につながっている商品や、長期にわたって安定して売れる商品などもあり得るので、質的な重要性にも目を向けましょう。
✓変化にも注意する
市場環境の変化や季節的な変動など、外部環境の変化によって重要性が変化することがあります。定期的にデータを更新し、時系列での分析を行うことが重要です。
✓複数の指標を用いる
金額だけでなく比率も分析してみるなど、複数の指標を用いて分析することで、より精度の高い結果を得ることができます。
「ABC分析」
ABC分析は、費用や売上、在庫などの項目を重要度に応じてA・B・Cの3つのランクに分類する手法です。具体的には、全体の中で最も重要な項目をAランク、中程度の重要性を持つ項目をBランク、そして比較的重要性の低い項目をCランクに分けます。この分析により、重要な項目にリソースを集中させ、効率的な管理や経費削減などを実現することができます。
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