売掛金の増減はキャッシュ・フローにどう影響する?
2026年1月13日
質問
キャッシュ・フロー計算書で売掛金の増加額が減算されているのを見た社長が、「売掛金が増えているのにキャッシュは減るのか?」と言いました。あなたが経理部長なら、どう説明しますか?
パターン1
売掛金が増えるとキャッシュも増えるので、誤りです。
パターン2
売掛金が増えてもキャッシュが増えていないので、減算するのは正しいです。
パターン3
売掛金の増減は、キャッシュ・フローには無関係です。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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売掛金の増減とキャッシュ・フローの増減関係を理解し、「勘定合って銭足らず」を回避
「ミロク電器」の社長は、利益とキャッシュ・フローの違いも理解し、売掛金の管理もお手の物。おかげで、「勘定合って銭足らず」状態を回避しています。しかし、1年前の社長は、利益とキャッシュ・フローとの違いや、売掛金の増減とキャッシュ・フローの増減関係も分かっていませんでした。
1年前 ~売掛金が増えたのだから、キャッシュも増加しただろ!
キャッシュ・フロー計算書を見て間違いに気づいた社長が、意気揚々と経理部長を訪れました。
経理部長。キャッシュ・フロー計算書が間違っていたぞ

社長

経理部長
社長。それは申し訳ございません。どういったミスでしょうか?
売掛金の増加額が税引前当期純利益から減算されているぞ。うちは売上が好調で売掛金が増加しているのだから、キャッシュ・フローにはプラス要因だろう。しっかりしてくれたまえ

社長
質問
キャッシュ・フロー計算書で売掛金の増加額が減算されているのを見た社長が、「売掛金が増えているのにキャッシュは減るのか?」と言いました。あなたが経理部長なら、どう説明しますか?
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パターン1
売掛金が増えるとキャッシュも増えるので、誤りです。
パターン2
売掛金が増えてもキャッシュが増えていないので、減算するのは正しいです。
パターン3
売掛金の増減は、キャッシュ・フローには無関係です。
売掛金の増加を、キャッシュ・フロー計算書上、減算するのは正しい処理です。利益(売上-費用)は上がっていてもまだキャッシュが増えていない分を減額調整しているのです。
売掛金が増えてもキャッシュはまだ増えていません。「売掛金が増加=未回収分が増えた=キャッシュはまだ増えていない」ため、営業キャッシュ・フローでは利益(売上-費用)からその分を減算して、実際に入ってきたお金に合わせているのです。
売掛金の増加は、キャッシュ・フローに影響します。
大学生の息子との会話 ~お金を貸したら貸付金は増えたがお金は減った!?

経理部長
お言葉ですが、売掛金の増加を、キャッシュ・フロー計算書上、減算するのは正しい処理です
どういうことだ?

社長
そのとき経理部長は、以前、大学生の息子と話したときのことを思い出しました。
*****(以前のエピソード)***************
お父さん、緊急でお小遣いが欲しいんだけど

息子

経理部長
もう全部使ってしまったのか。また無駄遣いか。一体何にお金を使ったんだ
昨日、友達と映画見にいったじゃん。そしたら、友達が財布を忘れたんで、チケット代や昼飯代として5,000円を貸してあげたら、お小遣いなくなっちゃった

息子

経理部長
そういう理由か。いつ返してもらえるんだ
来週会うから、多分その時に返してもらえる

息子

経理部長
お金の貸し借りは人間関係にとって大事だから、ちゃんと返してもらうんだぞ
わかったよ

息子

経理部長
経営用語で貸付金という債権なんだから、『貸したお金を返して』って催促してもいいんだぞ
友達を疑っているみたいで、なんか嫌だな

息子

経理部長
息子にとって貸付金は増えたが、お金は減ったか……。回収するまでお金は増えないんだな
********************
そして、経理部長はこのときのエピソードを社長に伝えました。

経理部長
売掛金も、“商品を引き渡して代金を貸している”状態なんです。だから貸付金と同じで、回収するまではキャッシュは増えません
売掛金の増減とキャッシュ・フローの関係
経理部長、数値例で教えてくれないか

社長

経理部長
分かりました。では、売掛金の期首残高がないシンプルな例で考えてみましょう
そう言うと、経理部長はホワイトボードに次のような表を書き、まず「当期回収額(=キャッシュの増加額)」に着目するよう促しました。

経理部長
キャッシュの増減は「いつお金を受け取ったか」で決まり、損益計算書の売上や利益と一致するとは限りません。代金未回収の売上は、利益には含まれてもキャッシュには含まれません
??

社長

経理部長
例1のように当期の売上分を当期に全額回収できていれば、キャッシュは300万円増えます。一方、例2では80万円が未回収(=売掛金の増加)なので、当期回収額は220万円にとどまります。例3のように全額未回収なら、売掛金が300万円増えるだけで、キャッシュの増加額はゼロになります
うん

社長

経理部長
ここで重要なのは、代金未回収の売上は利益には計上されてもお金はまだ入っていないという点です(つまり、「売掛金の増加=未回収分が増えた=キャッシュはまだ増えていない」ということ)。したがって、営業キャッシュ・フローでは、利益(売上-費用)から未回収分を減算して、実際に入ってきたお金に合わせる処理を行うのです
なるほどー、そう言うことか!

社長

経理部長
ちなみに売掛金の期首残高がある場合も考えてみましょう。『当期回収額(キャッシュ増加額)=期首売掛金+当期の掛売上-期末売掛金』という関係が成り立ちます
そう言うと、経理部長は概ね次のようなことを説明したのです。
売掛金の期首残高が50万円、当期の掛売上が300万円、売掛金の期末残高が80万円の場合、現金回収額は「300万円+50万円-80万円」で270万円になります。したがって、現金回収額は掛売上より売掛金の当期増加額30万円分だけ少なくなっています。したがって、当期の売上高から同額を差し引けば、キャッシュの増加額になるということです。
ポイント:
キャッシュ増加額(=当期回収額)=期首売掛金+当期の掛売上-期末売掛金。
売掛金が当期に増加した分だけ、利益に含まれる金額からキャッシュは少なくなる、という見方ができます。
「勘定合って銭足らず」とならないために ~売掛金の回収状況の管理
いくら売上が上がっても売掛金を回収できるまではキャッシュは増えない。売掛金が適切に回収されていないために売掛金が増えている可能性もあるから、回収状況をチェックする必要があるということになるね

社長

経理部長
おっしゃるとおりです
ちなみに、わが社は売掛金の回収状況をどのように管理しているんだね

社長

経理部長
得意先ごとに売掛金元帳を作成し、データ管理しています。入金予定日が過ぎたものは、未回収案件として別途対応しています
具体的な別途対応を教えてもらえないか

社長

経理部長
まずは、入金が遅れている理由を確認します。単に経理処理上のミスだったら、未払いになっている旨を伝えます。問題なのは、経営難で支払いが遅れている場合です。この場合は、得意先の経営状況を見ながらケースバイケースで慎重に検討しています
よくわかったよ。うちは掛け売りも多いから、引き続き売掛金の管理をしっかり頼むよ

社長
「売掛金の増加とキャッシュ・フローの関係」
売上が上がっても売上代金が回収されるまではキャッシュは増えません。キャッシュ・フロー計算書では、売掛金の増加分を減算することで、実際のキャッシュの増減額に合致するようにしています。
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