中小企業が連結データを把握するには ~連結財務諸表の簡単な作成法

2026年5月3日

質問

子会社を持つ「ミロク精機」では、グループ全体の経営実態を把握するための社内資料として、連結財務諸表を作成したいと考えています。管理に役立つ連結財務諸表を作成するには、次のうちどの方法が最も適切でしょうか?

パターン1

親会社の財務諸表数値と子会社の財務諸表数値を合算し、両社間の取引により生じたものを消去する。

パターン2

親会社の財務諸表数値と子会社の財務諸表数値を合算したうえで、百万円単位で表示する。

パターン3

親会社の財務諸表数値と子会社の財務諸表数値を横に並べた形で資料を作成する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

会社
会計業務

グループ経営は順調! 連結データを的確に把握

精密機械を製造・販売する「ミロク精機」。確かな技術に支えられたミロク精機の製品は業界で好評です。ミロク精機の製品の一部は、販売子会社である「ミロク・マーケティング」を経由して外部に販売しています。


スタッフのAさん


社長、子会社のミロク・マーケティングから連絡があって、当社製品が大手企業からの大口受注を獲得したそうですよ

グループ全体の業績は右肩上がりだ。今後もグループ一丸となって頑張ろう!


社長

現在は連結データを的確に把握して順調にグループ経営を行うミロク精機ですが、2年前はグループ全体の経営実態を把握していない状況でした。

2年前 ~グループ全体の経営実態がつかめない

2年前のある日、ミロク精機の社長は、自社の決算書と子会社のミロク・マーケティングの決算書を代わる代わる眺めていました。

ミロク・マーケティングは、ミロク精機が数年前に設立した販売子会社です。ミロク精機がその全株式を所有しています。

ミロク・マーケティングを経由して製品を販売することが増えたから、ミロク・マーケティングの規模が大きくなってきたな。当社グループの全体像がつかめなくなってしまった


社長

グループ経営に役立つ連結データ ~連結財務諸表はどう作成する?


Aさん


担当の税理士の先生が、当社グループ全体の経営実態を把握するために大まかな連結財務諸表を作成するとよいとおっしゃっていましたよ

当社は上場企業ではないから連結財務諸表を作成する義務はないが、経営管理のための社内資料として連結財務諸表を作成するとよいということか。早速作ってみてくれないか


社長


Aさん

連結決算は関わったことがないんです。当社には連結会計システムがないですし。どうやって作ればいいかしら……。一晩考えますね

質問

子会社を持つ「ミロク精機」では、グループ全体の経営実態を把握するための社内資料として、連結財務諸表を作成したいと考えています。管理に役立つ連結財務諸表を作成するには、次のうちどの方法が最も適切でしょうか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

親会社の財務諸表数値と子会社の財務諸表数値を合算し、両社間の取引により生じたものを消去する。

パターン2

親会社の財務諸表数値と子会社の財務諸表数値を合算したうえで、百万円単位で表示する。

パターン3

親会社の財務諸表数値と子会社の財務諸表数値を横に並べた形で資料を作成する。

連結財務諸表は、親会社と子会社を合わせたグループをひとつの組織体とみなして作成するものです。親会社の財務諸表数値と子会社の財務諸表数値を合算した値には、親子会社間の取引によるものも含まれるため、これを消去することで、グループをひとつの組織体とみなした連結財務諸表を作成できます。

経営管理のための大まかな資料では、桁の大きい数値を千円単位や百万円単位で表示すると、概要を把握しやすく便利です。ただし、親会社の財務諸表数値と子会社の財務諸表数値を合算した値には、親子会社間の取引によるものも含まれるため、グループ全体の経営実態を把握するための管理資料として十分ではないと考えられます。

親会社の財務諸表の数値と子会社の財務諸表の数値を横に並べて表示すると、各社の財務諸表を一覧できます。しかし、各社の財務諸表数値には、親子会社間の取引によるものも含まれるため、グループ全体の経営実態を把握するための管理資料として十分ではないと考えられます。

全体で考えると、その取引はなかったのと同じ!

帰宅したAさんのもとへ、高校生の息子がやってきました。

お母さ~ん、今日はお小遣いの日だよ!


息子


Aさん


仕方ないわね。はい、5千円

やった~! 収入だ~!


息子


Aさん


我が家全体の家計としては何の収入にもなっていないわよ、親から子に5千円が移動しただけなんだから

ぼやいたAさんですが、連結財務諸表も同じ発想で作成すればよいことに気が付きました。

連結財務諸表とは ~企業集団をひとつの組織とみなして作成する財務諸表

翌日、Aさんはパソコンでの作業を済ませ、資料を印刷して社長のもとに向かいました。


Aさん


通常の財務諸表は、「親会社」・「子会社」という法人単位で作成するものですよね。これに対して、親と子を合わせた家族、すなわち「企業集団」という大きな単位で作成するのが連結財務諸表です

つまり、当社とミロク・マーケティングをひとつの組織とみなして、財務諸表を作成するんだな


社長


Aさん


はい。たとえば、親から子にお小遣いをあげた場合、子ども個人としては収入を得たことになりますが、家計全体としては収入を得たわけではありませんよね

家族の内部でやり取りをしただけだからな


社長


Aさん


それと同じで、当社グループという企業集団をひとつの組織とみなした場合、当社がミロク・マーケティングに製品を販売しても、内部で製品をやり取りしたにすぎません。連結財務諸表では、これを消去する必要があるんです

図1

表計算ソフトを利用した連結財務諸表の作成法

連結財務諸表は、親会社と子会社が作成した財務諸表を基礎として作成します。


Aさん


企業集団をひとつの組織とみなすわけですから、まずは親会社と子会社の財務諸表データを表計算ソフトに取りこみ、単純合算しました。ただし、この単純合算の数値には、企業集団内部の取引により生じたものも含まれます

この単純合算の数値から企業集団内部のやり取りを消去する必要があるね


社長


Aさん


はい。たとえば、当社からミロク・マーケティングへの売上高は消去します。ミロク・マーケティングの側では、売上原価(当期商品仕入高)として処理していますから、これと相殺するんです

図2

連結財務諸表を作成するために単純合算の数値を修正する仕訳を、連結修正仕訳といいます。主な連結修正仕訳は次のとおりです(ここでは、親会社が子会社の株式の全てを所有する場合を想定します)。
 ・投資と資本の相殺消去(※)
 ・グループ内での取引高(例:売上と売上原価)の相殺消去
 ・グループ内での債権債務(例:売掛金と買掛金)の相殺消去
 ・グループ内で売買された在庫に含まれる未実現利益の消去 など
※親会社の側では子会社の株式が資産として計上される一方で、子会社の側ではこれに対応する資本金などが計上されています。これらも企業集団内部でのやり取りで生じたものにすぎないため、連結財務諸表では両者を相殺消去します。

管理用の社内資料として利用する場合は、柔軟な作成も可能

在庫に含まれる未実現利益というのは何だい?


社長


Aさん


当社からミロク・マーケティングへ製品を販売する際、利益を上乗せしますね。でも、期末にミロク・マーケティングがこの在庫を保有したままなら、企業集団の外部に販売されたわけではないので、在庫に上乗せした利益は実現していないんです

なるほど。その利益も消去する必要があるね


社長


Aさん


はい。ただ、当社グループでは在庫に含まれる未実現利益の額は小さいと考えられます。今回は経営管理用の社内資料として連結財務諸表を作成するので、在庫に含まれる未実現利益の額は概算で求めて消去しました

外部に公表する正式な連結財務諸表を作成するには、子会社から正確なデータを入手し、企業集団内部の取引をもれなく消去する必要があります。しかし、中小企業が、経営管理用の社内資料として連結財務諸表を大まかに作成したい場合は、金額的重要性の低い項目の連結修正を省略したり、概算額で修正したりすることも可能です。

大まかな連結データでも、グループ全体の経営実態の概要は十分に把握できるからね


社長

ミロク精機のように子会社の数が少なく、企業集団内のやり取りが複雑ではない場合、表計算ソフトを利用して連結財務諸表を作成できます。
ただし、子会社の数が多い場合や企業集団内のやり取りが複雑な場合は、表計算ソフトによる連結財務諸表作成には限界があるケースもあります。中小企業がグループ経営を行ううえで連結データを利用したい場合、まずは連結財務諸表を大まかに作成することから始め、グループの状況や得たいデータの精度によっては、連結会計システムの導入を検討してもよいでしょう。

「経営管理のための連結財務諸表作成」

企業集団をひとつの組織とみなして作成する財務諸表を連結財務諸表といいます。企業集団内部の取引は、連結財務諸表の作成にあたって消去する必要があります。
中小企業が経営管理用の社内資料とするために連結財務諸表を作成したい場合、手間を考慮して柔軟に作成することも可能です。子会社の数が少なく、企業集団内のやり取りが複雑ではない場合には、表計算ソフトを利用して作成することもできます。

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