第72回 退職代行サービスへの対応2

2026年1月7日

 前回の労務管理トピックスでは、退職代行サービスの法的位置づけや、企業が取るべき基本的な対応について整理しました。若年層を中心に、「直接会社に言わずに辞める」という選択肢が一般化しつつあり、企業側としてももはや例外的な事象ではなく、通常起こり得る前提事象として捉える必要があります。
 そこで今回は、さらに一歩踏み込み、退職代行を利用された場合でも、企業が法的・実務的に不利益を被らないために、どのような備えをしておくべきかを解説します。

企業が警戒すべきリスク

 まず押さえておくべき最も重要な前提は、退職代行を利用されたこと自体は、違法でも問題行為でもないという点です。
 無期雇用の労働者には、民法上「退職の自由」が認められており、退職の意思表示が会社に到達すれば、原則として2週間後に雇用契約は終了します。その意思表示が本人から直接であれ、第三者を通じたものであれ、到達した時点で効力が生じるという点に変わりはありません。
 企業が不利益を被るケースの多くは、「退職代行を使われたことへの違和感」「引継ぎもせず辞めることへの怒り」といった感情的反応から、行き過ぎた対応をしてしまうことに起因しています。
 退職代行対応で企業が直面しやすいリスクは、次のようなものです。

  • 非弁業者との違法な交渉に巻き込まれる
  • 引継ぎ不履行を理由に懲戒処分を行い、紛争化する
  • 貸与物未返却を理由に賃金を支払わない
  • 退職金不支給などの制裁的対応を取ってしまう

 これらはいずれも、適切な就業規則と運用ルールが整っていれば回避可能なリスクです。

退職代行に備えた運用ルールの構築

 退職代行に強い企業に共通しているのは、「ケースバイケースで考えない」「現場に判断を委ねない」という点です。そのために不可欠なのが、就業規則と社内マニュアルの整備です。たとえば、

  • 退職の意思表示は、第三者経由でも有効であること
  • 退職日は法令に基づき整理すること
  • 交渉窓口は会社が指定すること
  • 退職代行利用を理由に不利益取扱いをしないこと

 といった事項を、あらかじめルールとして明文化しておくことで、感情や属人的判断を排除した「淡々とした処理」が可能になります。

・窓口を一本化し、交渉しないことが最大の防衛策

 退職代行対応で特に注意すべきなのが、「簡単に交渉に応じてしまうこと」です。
 弁護士や適法な労働組合であれば別ですが、一般の退職代行業者には法律上の代理権はありません。未払残業代、退職金の上乗せ、条件付き退職といった交渉に応じてしまうと、企業側が違法行為に加担したり、後の紛争で不利になる可能性があります。
 企業としては、「金銭や条件の交渉には応じられません。請求がある場合は、本人または代理権を有する弁護士からご連絡ください。」という統一した対応を貫くことが重要です。
 そのためにも、交渉窓口は一本化しておくべきです。

  • 第○条(連絡および交渉窓口)

 退職に関する連絡、書類提出、問い合わせ等は、会社が指定する窓口を通じて行うものとし、会社は指定窓口以外からの交渉行為には応じない。

・引継ぎ・貸与物は「権利」と「義務」を分けて考える

 実務上で引継ぎをしないことを理由に退職を妨げることはできません。
 とはいえ、引継ぎをしないまま退職されると、現場としては大きな負担が生じます。そこで少しでもこうしたリスクを軽減させるため、就業規則には、引継ぎは「義務」として必ず規定しておいたほうがよいでしょう。

  • 第○条(退職時の義務)

 従業員は、退職に際し、会社が指定する方法により業務の引継ぎを誠実に行い、会社から貸与された物品、情報、データ等を退職日までに返還または消去しなければならない。

 PCや備品などの貸与物についても、未返却を理由に賃金を支払わないといった対応は認められません。郵送返却など柔軟な方法を認め、金銭処理と切り離して管理することが重要です。

実務対応フロー(企業向けチェックリスト)

 退職代行から連絡が来たら、次の順で対応します。

  1. 受付日時・業者名・内容を記録
  2. 業者の属性確認(弁護士/労組/一般業者)
  3. 本人への直接連絡(書面・メール可)
  4. 退職日・有休処理を法令ベースで確定
  5. 貸与物返却・書類送付を文書で案内
  6. 交渉要求はすべて遮断(弁護士限定)

 以下の点に注意します。

× 叱責・説教・引き止め、感情的なメール・LINE・SNS投稿
× 退職条件(退職日・有休・金銭)の調整や約束
× 懲戒処分・退職金不支給を示唆する発言

 退職代行はトラブルではなく、制度で処理すべき通常業務の一つである。この認識を持つことが、企業を守る最大のポイントといえるでしょう。

筆者紹介

加藤千博

MJS税経システム研究所 客員研究員
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/

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