第77回 障害者雇用率の引上げと企業実務

2026年6月3日

 第52回 労務管理トピックスでは、2024年4月より民間企業の法定雇用率が2.3%から2.5%へ引上げられたことを中心に、障害者雇用納付金制度や事業主支援策の強化について解説しました。
 その後、障害者雇用率はさらに段階的に引上げられることとなっており、2026年7月以降は、民間企業の法定雇用率が2.7%となります。
 そこで今回は、法定雇用率のさらなる引上げを踏まえ、企業実務にどのような影響があるのか、企業として今から何を確認し、どのような準備を進めるべきかを整理します。あわせて、障害者雇用を進める際に活用を検討したい助成金についても解説します。

法定雇用率・除外率

 今回の改正により、2026年7月以降、民間企業の法定雇用率は2.7%となり、障害者雇用義務の対象となる企業の範囲も、従業員37.5人以上へ拡大します(図表参照)。そのため、これまで対象外であった従業員37.5人以上40人未満の企業でも、新たに障害者雇用への対応が必要となる場合があります。
 企業は、単純な在籍人数ではなく、週所定労働時間や雇用形態に応じて従業員数を算定し、引上げ後の2.7%基準で不足が生じないかを早めに確認することが重要です。
 さらに、障害者雇用を進める際には、採用活動を始める前に「どのような仕事を任せるのか」を整理しておくことが重要です。

 障害者雇用というと、特別な仕事を新たに用意しなければならないと考えがちですが、実際には、既存業務の棚卸しを行い、書類整理、データ入力、郵送物の準備、社内備品の管理、清掃、軽作業、定型的な確認業務などを切り出すことで、障害のある方が担当しやすい職務を設計できる場合があります。
 重要なのは、「障害者にできる仕事を探す」という発想ではなく、「会社の中にある仕事を分解し、誰がどのように担当すれば最も効果的かを見直す」という発想です。こうした職務の整理は、障害者雇用のためだけでなく、既存社員の負担軽減や業務効率化にもつながります。

受入れ体制と外部支援の活用

 障害者雇用を進めるにあたって、企業だけですべてを抱え込む必要はありません。ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの外部支援機関に加え、障害者雇用の経験やノウハウが不足する事業主を支援する「障害者雇用相談援助事業」の活用も検討できます。
 この制度では、都道府県労働局長の認定を受けた事業者から、経営陣の理解促進、社内体制の構築、職務の創出・選定、採用方針の決定、求人申込みに向けた準備、採用後の雇用管理や職場定着などについて、原則無料で相談援助を受けることができます。
 特に、法定雇用率未達成企業、障害者雇用ゼロ企業、中小企業などにとっては、障害者雇用を進めるうえで有効な支援策といえます。

助成金を活用した採用・定着支援

 障害者雇用率の引上げに向けて、初めて障害者雇用に取り組む企業や、採用後の定着に不安がある企業では、助成金制度を活用しながら段階的に雇用を進めることも有効です。
 まず活用を検討したいのが、障害者トライアル雇用助成金です。これは、障害者を一定期間試行的に雇用し、その期間中に本人の適性や能力、職場への適応状況を確認したうえで、継続雇用につなげることを目的とする制度です。通常は月額最大4万円、最長3か月で最大12万円の助成となりますが、精神障害者については、月額最大8万円が3か月、その後月額最大4万円が3か月支給され、最大36万円の助成を受けられる場合があります。また、精神障害者や発達障害者で、当初から週20時間以上の勤務が難しい場合には、週10時間以上20時間未満から開始する障害者短時間トライアル雇用もあり、月額最大4万円、最長12か月で最大48万円の助成を受けられる場合があります。
 次に、継続雇用を前提として障害者を雇い入れる場合には、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の活用も考えられます。これは、障害者などの就職困難者を、ハローワークや一定の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れた場合に支給される助成金です。中小企業の場合、身体障害者・知的障害者を通常の労働者として雇い入れた場合は最大120万円、重度障害者、45歳以上の障害者、精神障害者を通常の労働者として雇い入れた場合は最大240万円が支給される場合があります。
 ただし、助成金を活用する場合には、採用方法や申請期限に注意が必要です。特定求職者雇用開発助成金は、ハローワーク等の職業紹介を経て雇い入れることが前提であり、企業が直接募集した場合や、求人サイトから応募があった後に形式的に職業紹介を受けた場合は対象外となることがあります。
 助成金を活用する際は、採用後に確認するのではなく、求人提出や紹介の段階から、労働局やハローワークに確認しておくことが重要です。

まとめ

 障害者雇用は、法定雇用率を満たすための人数合わせとして進めると、採用後のミスマッチや定着不良につながりやすくなります。反対に、業務の棚卸しや職場環境の見直しとあわせて進めれば、障害者雇用は企業にとって、人材活用の幅を広げる取組みとなります。
 今回の法定雇用率引上げを、単なる法令対応としてではなく、自社の業務や職場環境を見直す機会として捉え、外部支援機関や助成金制度も活用しながら、計画的に準備を進めることが求められます。

筆者紹介

加藤千博

MJS税経システム研究所 客員研究員
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/

Edge Trackerシリーズ

 Edge Tracker

従業員向けクラウドサービス

エッジ トラッカー

電子帳簿保存法対応

インボイス制度対応

リアルタイム、時短、見える化でビジネスを加速化するツール

「いつでも」「すぐに」「かんたんに」利用できるクラウド型業務管理サービスです。「経費精算」「勤怠管理」「給与明細参照」「年末調整申告」「電子請求書」のサービスから、ご希望に合わせてご利用いただけます。

  • 経費精算
  • 勤怠管理
  • 給与明細参照
  • 年末調整申告
  • 電子請求書
  • SaaS
 Edge Tracker 経費精算

クラウド経費精算システム

エッジトラッカー ケイヒセイサン

電子帳簿保存法対応

インボイス制度対応

「リアルタイム精算」で仕事の効率化を図る
従業員と管理部門の業務効率化を実現するクラウドサービス

PCやスマートフォンを利用して「いつでも」、「どこでも」、経費(交通費・交際費など)の入力や申請が可能です。ICカードやクレジットカードのデータ取込機能や交通費の自動計算機能を使えば入力もラクラク。承認もスムーズに進められます。

  • 財務・会計
  • 給与・人事
  • 経費精算
  • SaaS
 Edge Tracker 勤怠管理

クラウド勤怠管理システム

エッジトラッカー キンタイカンリ

日々の入力により働くの見える化を推進
従業員と管理部門の業務効率化を実現するクラウドサービス

PCやスマートフォンを利用して勤怠の打刻や残業などの申請が可能です。勤怠データは自動集計されるので、管理者はいつでも従業員の勤怠状況を確認することができます。異常な勤怠データがあればアラートも出るので、労務コンプライアンスの強化にも役立ちます。

  • 財務・会計
  • 給与・人事
  • 勤怠管理
  • SaaS
 Edge Tracker 給与明細参照

クラウド給与明細参照システム

エッジトラッカー キュウヨメイサイサンショウ

社員の利便性向上とコストダウンを実現
従業員と管理部門の業務効率化を実現するクラウドサービス

PCやスマートフォンを利用して「いつでも」、「どこでも」、給与明細など各種明細書を閲覧することができます。紙で出力する場合に比べて、印刷・封入・配付にかかる手間やコストを大幅に軽減できます。必要に応じて紙での発行にも対応可能です。

  • 財務・会計
  • 給与・人事
  • 給与明細
  • SaaS
 Edge Tracker 年末調整申告

クラウド年末調整申告システム

エッジトラッカー ネンマツチョウセイシンコク

あわただしい年末調整業務の改善とコストダウンを実現
従業員と管理部門の業務効率化を実現するクラウドサービス

PCやスマートフォンを利用して年末調整における各種申告書を作成することができます。手書きに比べて、各種申告書の配付・記入・回収にかかる手間やコストを大幅に削減できます。PCから用紙の出力が可能です。

  • 財務・会計
  • 給与・人事
  • 年末調整申告
  • SaaS
 Edge Tracker 電子請求書

[デジタルインボイス対応] 電子インボイス送受信・インボイス電子化対応サービス

エッジトラッカー デンシセイキュウショ

電子帳簿保存法対応

インボイス制度対応

デジタルインボイスで経理DXは新たな次元へ

MJSの販売管理、請求管理、財務・会計の各システムとシームレスに連携し、受領した電子インボイスのデータをもとにMJSの財務・会計システムで仕訳の自動作成も可能です。

  • インボイス
  • SaaS

課題や導入に関するご相談など承っております。

まずはお気軽にお問い合わせください。

資料請求はこちら