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第79回 就活等セクハラ対策
2026年8月5日
2026年10月1日から、男女雇用機会均等法の改正により、企業には就職活動中やインターンシップ等におけるセクシュアルハラスメント(以下「就活等セクハラ」という。)を防止するための雇用管理上の措置を講じることが義務付けられます。
これまでも求職者への配慮や相談対応は「望ましい取組」とされていましたが、就職活動中やインターンシップ中に約3割の求職者がセクハラを経験していることを踏まえ、法改正により企業の対応が法的義務となりました。
今回は、就活等セクハラの概要と法改正のポイント、企業が講ずべき措置や実務上の対応について解説します。
就活等セクハラの特徴
就活等セクハラには、通常の職場におけるセクハラとは異なる特徴があります。
第一に、求職者が企業に対して弱い立場にあることです。採用されるかどうかが決まっていない求職者は、「断ったら不採用になるのではないか」「相談すると採用に影響するのではないか」と考え、不適切な言動を受けても拒否や相談をしにくい傾向があります。特に新卒者や第二新卒者など社会経験の少ない求職者ほど、その傾向は強くなります。
第二に、被害が発生する場面が広範囲に及ぶことです。採用面接や会社説明会だけでなく、OB・OG訪問、インターンシップ、実習、SNSによるやり取り、オンライン面接など、採用活動に関わる様々な場面が対象となります。特に会社の管理が及びにくいOB・OG訪問や個人SNSによる連絡は、公私の境界が曖昧になりやすく、トラブルが発生しやすい場面として注意が必要です。
企業に義務付けられる対応
今回の改正では、企業は就活等セクハラを防止するため、次の4つの措置を講じることが義務付けられます。
-
方針の明確化と周知・啓発
企業は、就活等セクハラを禁止する方針を明確にするとともに、違反した場合には厳正に対処することを従業員へ周知しなければなりません。また、面談時間や場所、SNSの利用方法など、採用活動に関するルールを定め、従業員だけでなく求職者にも周知することが求められます。 -
相談体制の整備
企業は相談窓口を設置し、その利用方法を求職者にも周知する必要があります。相談担当者が適切に対応できるよう教育することも必要であり、人事担当者以外や外部専門家を相談窓口とすることも有効とされています。 -
相談後の迅速かつ適切な対応
相談があった場合には、速やかに事実関係を確認し、被害者への配慮、行為者への適切な措置、再発防止策まで実施しなければなりません。単に相談を受けるだけではなく、その後の対応まで含めて体制を整備することが必要です。 -
その他必要な措置
相談者や調査協力者のプライバシーを保護するとともに、相談や調査への協力を理由として解雇や採用見送りなどの不利益な取扱いをしてはならないことを社内へ周知する必要があります。
採用活動に関するルール整備
就活等セクハラを防止するためには、採用活動に関する具体的なルールを整備することが不可欠です。例えば、
- 面接では不要なプライベートな質問をしない
- 個人SNSで連絡を取らない
- OB・OG訪問は会社へ事前届出を行う
- 個室や飲酒を伴う面談を避ける
- インターンシップでは可能な限り複数名で指導する
- 面談後に個人的な誘いをしない
など、自社の採用活動に応じた具体的なルールを定めることが望まれます。
また、2023年の刑法改正により、経済的・社会的な立場の優位性を利用して相手が拒否や同意の意思表示をできない状況で行われた性的行為も犯罪となり得ます。「嫌と言われなかったから問題ない」という考え方は通用しないことも、採用担当者への教育で十分理解させる必要があります。
求職者への周知
今回の改正では、従業員への教育だけでなく、求職者への周知も重視されています。 企業はホームページや採用パンフレットなどで、
- ハラスメント防止方針
- 採用活動のルール
- 相談窓口
- 守秘義務
- 不利益取扱いの禁止
などを公表することが望ましいとされています。
求職者自身が会社のルールを理解することで、ルールに反する行為を「会社のルール違反」と認識し、早期の相談や被害防止につながることが期待されます。
企業・労働者の責務
法改正では、企業が措置を講じるだけではなく、企業と労働者双方に努力義務も課されています。
企業には、就活等セクハラ問題への理解を深め、採用担当者等への研修を実施し、必要な配慮を行うことが求められます。一方、労働者についても、求職者に対する言動に十分注意を払い、企業が講ずる防止措置に協力することが責務とされています。
まとめ
今回の法改正により、企業は「従業員」だけではなく、「これから採用しようとする求職者」についても保護対象として、就活等セクハラ防止措置を講じることが義務となりました。
その対応は、就業規則の改定だけにとどまりません。防止方針の策定、採用活動ルールの整備、採用担当者やリクルーターへの教育、求職者への周知、相談窓口の設置、相談後の迅速な対応、さらには再発防止までを含めた一連の体制整備が求められます。
企業にとって採用活動は、将来の人材を確保するための重要な経営活動です。安心して応募できる採用環境を整備することは、法令遵守だけでなく、企業の信頼性や採用ブランドの向上にもつながります。今後は、自社の採用実態に応じたルールづくりと継続的な従業員教育を進めることが、企業に求められる重要な課題といえるでしょう。
筆者紹介
MJS税経システム研究所 客員研究員
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/
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