新たな働き方として在宅勤務や分散出社が推進される中、「紙ベースでの年末調整」には苦労が付きまとう。年末調整業務のシステム化で負担削減に成功した人事部門の声を基に、そのメリットを紹介する。
―印刷、郵送、ファイリング……紙にまつわる課題
年末調整の業務を紙の申告書ベースで処理している場合、書類の出力・配布、記入・回収、申告内容の確認といった一連の作業に多大な工数を要する。記入漏れや計算ミスなどが見つかると申告書を申請者に戻し、修正した上で再提出してもらうことになり、時間も手間もさらにかかる。申告期限までに確実に終わらせるために苦労している人事担当者は少なくないだろう。
Edge Tracker年末調整申告はこうした問題の解決策になり得る。ミロク情報サービスの人事グループは2019年度の年末調整業務でEdge Tracker年末調整申告を使用し始めた。その結果、紙ベースの申告書のやりとりがゼロになっただけでなく、コスト削減などさまざまな効果を上げている。
経営管理部 人事グループ
可児 麻実
同社がEdge Tracker年末調整申告を導入する前は、別の支援システムを利用していたものの、データを紙に出力して申請プロセスを進めていた。旧システムの業務フローは、従業員が申告内容をシステムに入力し、申告書を出力して部門ごとに取りまとめ、年末調整の業務を委託している外部企業(以下、アウトソーシング先)へ郵送する必要があった。同社の可児麻実氏(経営管理部人事グループ)は「当然ながらアウトソーシング先は書類が届かないと作業を始められないため、申告書の到着が遅れるほど作業が遅延するのが課題でした」と説明する。旧システムでも管理画面で従業員の入力状況を確認できたが、印刷や郵送状況については管理画面で把握する機能がなかったため「Microsoft Excel」を使って手作業で管理していたという。
アウトソーシング先に申告書を届けた後も人事グループの作業は続く。申告内容の確認が終わったら、申告書を人事グループに返送してもらい、過不足がないことを確認した上でファイリングする必要があった。「この作業は2人がかりで1~2日かかっていました。書類の保管場所を確保するのも、業務量と保管コストの両面で負担を感じていました」と可児氏は振り返る。
旧システムの入力作業に関する機能にも課題があった。旧システムはオンプレミスで稼働していたため、社内の業務用PCからしかアクセスできなかった。そのため人事グループは、営業担当など外出が多い従業員から「期日までに入力できない場合はどうすればいいか」と問い合わせを受けることが頻繁にあったという。ミロク情報サービスの清水 千恵子氏(経営管理部人事グループ)は「年末調整の時期は多数の問い合わせが発生します。『配偶者控除や保険料控除など、自分は申告すべき事項がなさそうな書類も印刷する必要があるのか』といった質問もよくありました」と語る。
―Edge Tracker年末調整申告で申告書の印刷、郵送が不要に
こうした課題を一掃するためにリプレース候補として浮上したのが、自社製品のEdge Tracker年末調整申告だった。人事グループは製品担当者に詳細を確認し、2019年9月から機能を検証し始めた。その結果、改善が期待できそうだと判断したことで同年11月に利用を開始した。「データ移行はスムーズに完了し、利用開始時から前年のデータを基に申告書を作成できる状態を実現できました」と可児氏は語る。
今回の取材はリモートで実施した
Edge Tracker年末調整申告には、従業員の申告内容を保存して翌年以降は前年の記録をあらかじめ入力フォームに反映しておく機能がある。従業員は保険会社や保険の種類、扶養親族などの情報について、前年からの変更箇所のみを修正するだけで申告書を作成できる。今回の事例は旧システムが保持していたデータを移行したことで、前年の申告内容を反映した状態で利用開始できた。
ミロク情報サービスがEdge Tracker年末調整申告導入によって得た大きな成果は、申告書の印刷プロセスが不要になったことだ。従業員の申請から、人事グループおよびアウトソーシング先の確認まで、Edge Tracker年末調整申告のシステムだけで作業を完結できるようになった。書類のやりとりや保管に関わる業務も撤廃できた。清水氏は「人事グループだけでなく、部門ごとに取りまとめを担当する事務スタッフの負担も大きく削減できました」と話す。
クラウドサービスなので、外出の多い従業員でも自宅や外出先でスマートフォンを使って入力できることもEdge Tracker年末調整申告の利点だ。控除証明書をスマートフォンで撮影した画像を提出できる機能も、作業効率の向上につながったという。2019年度は従業員から紙の控除証明書を回収する必要があったものの、画像データによる入力が完了していればアウトソーシング先は原本の到着を待たずにすぐ確認作業に着手できるようになったからだ。
―使いやすさを追求したUIで入力漏れを防ぐ
Edge Tracker年末調整申告は従業員が申告書を作成するユーザーインタフェース(UI)の操作性も追求している。保険料や控除額の自動計算機能で入力をサポートする他、画面構成も分かりやすさと入力しやすさに配慮したデザインになっている。
従業員用のメニュー画面とお知らせ画面《クリックで拡大》
保険料などの自動計算機能は旧システムにも実装されていたものの、画面の見やすさや入力のしやすさについては課題を感じていたという。旧システムは「生命保険」「地震保険」「社会保険」など入力項目がタブで分割されており「切り替えの手間が入力漏れにつながっていました」と清水氏は振り返る。Edge Tracker年末調整申告はこれらの項目が全て同一画面に収まっているため、「上からスクロールしながら入力し、最後に登録ボタンを押せばよいので、入力漏れが発生しにくい構成」と清水氏は評価する。年末調整では毎年のように「どこに何を記入すればよいか分からない」という疑問が従業員から上がっていたが、Edge Tracker年末調整申告に移行した2019年度はこうした問い合わせはほとんどなかったという。「疑問が湧かないうちに入力が終わってしまったのでしょう」(清水氏)
―確認期間短縮、コスト削減などの効果も
Edge Tracker年末調整申告に移行したことで、ミロク情報サービスは年末調整業務の全体スケジュール短縮も達成できた。以前は年末調整の入力開始日と送付期限を従業員に伝え、アウトソーシング先には申告書を受け取った順に確認作業を開始してもらっていた。しかし期限ぎりぎりに申告書を送付する部署もあり、アウトソーシング先は確認作業に着手するのが遅れがちになっていたという。紙の申請プロセスでは避けようがなかった「入力開始から書類到着までのタイムラグ」(約3日)も、Edge Tracker年末調整申告に移行したことで短縮でき、アウトソーシング先は従業員が入力したらすぐに確認作業を開始できるようになった。
紙の回収・確認作業がなくなったことはコストダウンにも貢献した。業務効率化に伴うアウトソーシング費用の削減はもちろんのこと、郵送や保管にかかるコストも発生しなくなったからだ。以前は申告書を書留や特定封筒郵便物などの追跡可能な形態で郵送する必要があり、その費用は小さくなかった。「ファイリングする作業の人件費や保管スペースの場所代まで考えると、相当なコスト削減になりました」と可児氏は付け加える。結果として、今回のシステム移行で一度の年末調整にかかる費用を約15万円削減することに成功したという。
管理者用の受付処理画面《クリックで拡大》
平成30年度税制改正に基づく年末調整手続きの電子化が可能になることを受けて、Edge Tracker年末調整申告は、行政手続き支援サービス「マイナポータル」や保険会社のWebサイトなどと連携し、控除証明書をデータで取得できるよう機能を拡張する予定だ。年末調整の電子化で得られるメリットを最大限に享受するためにも、使い勝手の良い年末調整支援システムを導入することは急務と言えよう。
※TechTargetジャパンへ2020年9月1日、キーマンズネットへ2020年9月3日に掲載されたコンテンツです。