決算書の読み方 ~貸借対照表の資産の区分③:流動資産と固定資産を区分する基準
2026年7月23日
質問
「貸借対照表の流動資産と固定資産を区分する基準は何か?」と聞かれたら、次のうちどの回答が最も適切でしょうか?
パターン1
商品を仕入れて売って代金を回収するまでの流れに入る資産は、流動資産になる。それ以外は1年以内に現金になるかどうか等で判断する。
パターン2
容易に持ち運びできないものが固定資産で、それ以外は流動資産になる。
パターン3
保有していると税金がかかる資産が固定資産で、それ以外は流動資産になる。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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貸借対照表における「流動資産」と「固定資産」の区分とは?
「スーパー・ミロク」の二代目社長である弥勒松太郎氏は、大学在学中の3人の息子のうち1人を将来の三代目社長にしようと考えています。自分の後継者を決めるにあたっては、経営センスを最も重要視する方針です。そこで松太郎社長は折に触れて息子たちに試験を課すことにしました。
これまで、「貸借対照表の資産は流動資産と固定資産に区分される」こと、「資産を流動資産と固定資産に区分する理由」について学んできましたが、今回は「流動資産と固定資産を区分する基準」に焦点を当てます。

社長
資産を流動資産と固定資産に区分する理由は、買掛金や借入金などの負債を決済するための支払能力を見るためだったな
流動資産と流動負債、そして、固定資産と固定負債を対比して、負債の支払期限に見合った支払能力を見るんだよね

長男

社長
そうだ。そこで、今度は、流動資産と固定資産を区分するのに、どういう基準で区分するのかについての問題だ。別の表現をすると、流動資産と固定資産の定義について考えることにもなるな
定義かぁ。流動資産や固定資産って、どう定義するんだろう?

次男

社長
資産のうち、こういう資産が流動資産で、こういう資産が固定資産だと考えてみるとわかりやすい
固定資産って、固定されてて容易に持ち運びできないから固定資産なんじゃないかな。で、それ以外は流動資産になる

次男
いや、固定資産税ってあるじゃないか! 土地とか建物なんかは保有していると税金を支払うことになるんじゃなかったかな。だから、固定資産税がかかる資産が固定資産だと思うよ

長男
会計学の授業で、基準があるって勉強したよ。確か基準が二つあるんじゃなかったかな。あ、1年で見る基準だったかな……。それと、あとは何だっけ……、えーっと、商品を仕入れて売って代金を回収するまでの期間が関係するんじゃなかったかなぁ……

三男
質問
「貸借対照表の流動資産と固定資産を区分する基準は何か?」と聞かれたら、次のうちどの回答が最も適切でしょうか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
商品を仕入れて売って代金を回収するまでの流れに入る資産は、流動資産になる。それ以外は1年以内に現金になるかどうか等で判断する。
パターン2
容易に持ち運びできないものが固定資産で、それ以外は流動資産になる。
パターン3
保有していると税金がかかる資産が固定資産で、それ以外は流動資産になる。
現在の日本の会計制度では、流動資産と固定資産を区分するにあたり、まず、正常営業循環(つまり、商品を仕入れて売って回収するまでの流れ)に入る資産(棚卸資産、売上債権等)を流動資産とし、正常営業循環に入らない資産のうち、1年以内に現金化できるもの、または前払費用で1年以内に費用となるもの等を流動資産としています。固定資産は流動資産に区分されない資産とします。
固定資産の中には容易に持ち運びできないものも少なからずありますが、容易に持ち運びできるかどうかで流動資産と固定資産を区分するわけではありません。例えば、不動産業で販売するために保有する土地や建物は流動資産ですし、一般の企業が事務処理などで使うパソコンは固定資産です(少額のもので一括費用処理する場合を除く)。
保有している固定資産に税金がかかる場合がありますが、保有することで税金がかかる資産が固定資産となるわけではありません。例えば、ソフトウェアなど、保有していても税金がかからない固定資産もあります。
ターニングポイントは、「正常営業循環基準」と「1年基準」の意味を正しく理解したことだった

社長
実は、流動資産かどうかでまず注目するのは、正常営業循環に入るかどうかなんだ
正常営業循環って何なの?

長男

社長
一言でいうと、会社の本業でお金が回るサイクルっていう意味だ。具体的には、商品を仕入れて、次に、商品を販売して、販売代金(つまり売掛金など)を現金で回収し、その回収した現金でまた商品を仕入れる、というサイクルのことなんだ
そういうことか。で、それが流動資産と固定資産の区分とどんな関係があるの?

長男

社長
このサイクルの中で発生する資産を流動資産として区分する基準が正常営業循環基準なんだ
正常営業循環の中で発生する資産?

次男
商品とか売掛金が該当するってことだよね?

三男

社長
そうだ。商品を仕入れたらお金が商品に変わる、商品を売ったら売掛金に変わる。売掛金を回収したら現金になって戻ってくる。その現金でまた商品を仕入れる。こうしてサイクルが回っているわけだ
会社の本業でお金が一巡する期間って、業種によっても結構違いがあるんじゃない? うちみたいなスーパーとパン屋さん、それから自動車メーカーじゃ、期間が全然違うよね

次男
パン屋さんは短そうだけど、自動車メーカーは結構長そうだよね

長男

社長
そうなんだ。この“会社のサイクル”に入る資産(つまり、商品や売掛金など)は、たとえ1年以上かかっても“流動資産”として扱うんだ。なぜかというと、会社の本業の流れの中で現金に変わるものだからだよ
なるほどー

一同
じゃあ、サイクルに関係ない資産は?

次男

社長
そこがポイントだ。サイクルに関係ない資産は、1年以内に現金になるものや、1年以内に費用になるものは流動資産に、それ以外は固定資産に分けるんだ。たとえば、1年以内に返してもらえる貸付金とか、前払費用や仮払金みたいに“1年以内に費用として使われるもの”も流動資産に入るんだよ
これは業種に関係なく1年という基準で判断するから、1年基準っていうんだよね?

三男

社長
そのとおり!
逆に、土地や建物は?

長男

社長
一般の会社は土地や建物は売るものではなくて使うものだ。“会社の本業のサイクル”に入るものではないし“1年以内に現金になる”にも当てはまらないから、固定資産になるんだ。土地や建物を売る不動産業だったら1年以上保有するものも流動資産の棚卸資産だし、建物などの建築を請け負う建設業も建設に1年以上かかってもその建物は流動資産だけどな
このように、資産の区分は会社の事業内容によって変わることがあるため、「本業のサイクルに入るかどうか」が重要な判断基準となります。不動産業や建設業など、業種によっては本業のサイクルがとても長いものもありますが、こうした業種としては正常なので、そのサイクルが1年を超えても、このサイクルの中で発生する棚卸資産や売上債権等は流動資産になります。
資産の区分はわかったけど、負債の区分も同じ基準なの?

三男

社長
そうだよ。やはり、正常営業循環に入っている負債を流動負債として区分し、それ以外の負債のうち、1年以内に支払期限が来る債務は、『1年基準』により、流動負債として区分する。あ、債務とは、借入金とか未払金などだね。他にも、資産や負債について細かい勘定科目があるけど、それらもすべて正常営業循環基準と1年基準にしたがって、流動資産と固定資産、流動負債と固定負債に区分することになっている
なるほどー

一同

社長
流動資産と固定資産、そして、流動負債と固定負債に、区分する基準は理解できたな。そうすれば、流動資産と流動負債とを比較して、支払能力を見るという意味がわかるはずだ
今回の試験によって、流動資産と固定資産を区分する基準について理解しました。松太郎社長は引続き試験を課すことにしました。
「正常営業循環基準」と「1年基準」
資産を流動資産と固定資産とに、負債を流動負債と固定負債とに区分する基準としては、「正常営業循環基準(normal operating cycle basis)」と「1年基準(one-year rule)」とがあります。この二つの基準で資産または負債を区分するにあたり、まず正常営業循環基準で区分し、次いで1年基準で区分します。
正常営業循環基準とは、正常営業循環(normal operating cycle)において発生する資産または負債を、流動資産または流動負債とします。正常営業循環とは、企業の主な目的の活動のサイクル、つまり、商品や材料を仕入れ、材料を製品に加工し、商品や製品を販売し、売上債権を回収し、再度商品や材料を仕入れる、という一連のプロセスのことです。
1年基準では、正常営業循環基準で流動資産または流動負債として区分しなかった資産または負債のうち、貸借対照表日(決算日のことです)の翌日から起算して「1年以内に現金化できる債権」または「1年以内に支払期限が来る債務」を、それぞれ流動資産または流動負債とします。また、例えば、1年基準では、貸借対照表日の翌日から起算して1年以内に費用となる前払費用などは流動資産とします。
資産または負債のうち、正常営業循環基準および1年基準のどちらによっても流動資産または流動負債として区分しなかったものは、固定資産または固定負債となります。
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