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顧客獲得編

最初の顧問先をどう獲得するか

税理士開業道場は、税理士として独立・開業するために準備しておきたいポイントを、6つのテーマに分けて解説する連載企画です。
顧客獲得、業務フロー、システム選定、制度対応、費用・登録手続きについて順を追って解説し、最終回で開業準備の全体像をまとめます。
第一回となる今回は「顧客獲得編」です。最初の顧問先をどのように確保するのか、一緒に考えていきましょう!

この記事のポイント

  • 引き継ぎ顧問先の有無で、集客の動き方は大きく変わる!
  • 紹介・Web・交流会、それぞれに向き・不向きがある!
  • 誰に何を提供する事務所としたいかを先に決めることが、すべての集客の起点

税理士として独立を決めたとき、多くの方が最初に頭を悩ませるのが「顧問先をどうやって獲得するか」という問題ではないでしょうか。
「集客は開業してから考えよう」と後回しにしてしまうと、開業直後に顧問先ゼロという状況に直面しかねません。紹介もWeb集客も、効果が出るまでには一定の時間がかかります。
引き継ぎの有無で変わる集客戦略から、各手段の向き不向き、「誰に何を提供するか」という方針の決め方まで、最初の顧問先を獲得するための準備を一緒に整理していきましょう。

引き継ぎがあるかないかで、最初の動き方は変わる

まず確認しておきたいのが「引き継ぎ顧問先があるかどうか」です。同じ開業でも、前職から顧問先を引き継げる場合と、まったくのゼロからスタートする場合では、動き方が根本的に異なります。

引き継ぎがある場合過信せず、新規集客も進めましょう

前職の税理士法人や会計事務所から一定の顧問先を引き継げる見込みがある方は、スタートラインとして恵まれています。ただし、注意すべきなのは「口約束は数に入れない」という点です。

顧問先との関係がいかに良好でも、実際に顧客として確定するのは開業後であることが多く、口頭では「移る」と言っていた顧問先が、いざとなると判断を保留するケースも少なくありません。開業前から丁寧にコミュニケーションを重ね、意向を確かめておくことが大切です。

また、引き継ぐ顧問先があっても、その顧問先だけに依存せず、新規顧客へのアプローチも積極的に行うようにしましょう。これは長期的に安定した事務所経営を目指すうえでも重要です。

引き継ぎありでも注意したい3つのポイント

  • 口約束の顧問先は確定数に含めない
  • 開業前から定期的に連絡を取り、関係を丁寧に維持しておく
  • 引き継ぎ顧問先だけに依存せず、新規集客も積極的に行う

ゼロスタートの場合開業前から動くことが前提です

引き継ぎ顧問先がなく、ゼロからスタートする場合は、開業前から集客を始めることが大切です。紹介もWebも、効果が出るまでに3〜6カ月はかかります。開業日から顧問先がいる状態を目指すなら、少なくとも3〜6カ月前には動き出す必要があります。

ゼロスタートで最初の一手として最も現実的なのは、知人への声がけです。ただし、「開業したから紹介してほしい」と漠然とお願いするだけではなかなか動いてもらえません。「こういうお客様を中心に支援しています」と具体的に伝えることで、相手が紹介しやすくなります。

ゼロスタートで押さえておきたいポイント

  • 早めの行動が不可欠
  • 開業の3〜6カ月前を目安に、紹介依頼や情報発信などの集客活動を始める

  • 知人への声がけ
  • 学生時代の友人・前職の同僚・家族の知人など、身近なところから「開業した」という事実を伝えるとともに、得意分野のアピールをする

  • 運転資金の確保
  • 開業後3カ月程度は顧問料収入がほぼ入らないこともあるため、生活費に加え、事務所経費の6カ月分程度は用意しておく(資金的な余裕があれば、集客を焦らず進めやすくなります)

集客手段の特徴と、向き不向きを整理する

集客の手段は大きく「紹介」、「Web」、「交流会・SNS」に分けられます。どれか一つが万能なわけではなく、「自分が誰に何を提供するか」という方針によって、優先すべき手段が変わってきます。まずは各手段の特徴を一緒に確認していきましょう。

紹介成約率が最も高く、最初の顧問先になりやすい手段

開業直後に最も効果が出やすいのが「紹介」です。既に信頼関係がある人からの紹介は成約率が高く、顧問契約につながりやすい傾向があります。特に開業初期は、広告や検索からの問い合わせよりも、紹介からの案件の方が圧倒的に多くなります。

また、口コミによる集客も非常に有効です。税理士業はクライアントから信頼してもらえるかどうかが顧客獲得の大きなカギになります。良い評判が口コミで広まり、クライアント経由で新たな顧問先の話をいただけるケースも多いため、それぞれの顧客に真摯に向き合う姿勢を大切にしましょう。

紹介を機能させるために開業前にやっておくこと

  • 紹介をお願いできる人のリストを作成する(前職の同僚・上司、士業仲間、金融機関の担当者など)
  • 開業の連絡と同時に、自分の専門分野と対象顧客を具体的に伝える
  • 司法書士・社会保険労務士・FPなど、他士業との相互紹介関係を構築し始める
  • 顧客に真摯に対応し、口コミによる紹介につなげる

Web 即効性はないが、紹介を補完する重要な役割がある

Webサイトは、SEOを行っても検索で上位表示されるまでに3〜6カ月以上かかるため、開業直後の集客手段としては即効性に欠けます。ただし、紹介された人が調べる場所として非常に重要です。サイトがないと事務所の実態を確認できず、問い合わせをためらわせてしまったり、「どんな事務所なのだろう」と不安にさせてしまったりする可能性もあります。

また、GoogleビジネスプロフィールやGoogleマップのMEO対策は、比較的短期間で効果が出やすく、地域密着型の事務所には特に有効です。Webサイト制作と併せて、開業前に登録しておくことをおすすめします。

交流会・SNS長期的な認知形成に有効

異業種交流会やSNSは即座に顧問先を獲得できるものではありませんが、長期的な認知拡大という観点では有効な手段です。ただし、誰に何を提供したいか、どんな人脈とつながりたいのかが決まっていないと、交流会でも何を話せばよいかわからず、SNSでも発信内容が定まらないという状況になりがちです。

交流会は、自分がターゲットとする顧問先層が集まりやすい場を選ぶことがポイントです。「飲食業の経営者が集まるコミュニティ」、「フリーランスの集まり」など、ターゲットと接点が持てる場を意識して選びましょう。

集客手段の特徴まとめ

集客手段 即効性 コスト 向いているケース 注意点
紹介 ほぼゼロ 開業初期・全般 口約束に依存しない
Web(HP) 制作費が必要 紹介の補完・長期集客 開業前に準備する
交流会 時間コストあり 専門領域が明確な場合 場の選び方が重要
SNS発信 ほぼゼロ 継続的な情報発信 継続力・発信力が求められる

「誰に何を提供するか」を決めることが集客の起点

集客の手段を選ぶ前に、まず決めておかなければならないことがあります。それが「誰に、何を提供する事務所なのか」という方針です。これが定まっていないと、Webサイトに何を書けばいいかわからず、交流会で何を話せばいいかも定まらず、紹介をお願いするときもどんな顧客を紹介してほしいかが伝えられません。逆に言えば、ここが決まれば、集客のすべてが動き始めます。

ターゲットを絞ると、集客が一気に楽になります

「どんな顧問先でも対応します」という事務所は、実は「誰にも刺さらない事務所」になりがちです。一方で、「飲食業の記帳代行に特化しています」、「フリーランスのクリエイターの確定申告を専門に対応しています」という事務所は、紹介された方に「自分のための事務所だ」と感じてもらいやすくなります。

ターゲットの設定に迷ったときは、前職での経験や得意分野を出発点にするのが現実的です。これまでのキャリアの中で、どんな業種・規模の企業を多く担当してきましたか?そこに、あなたの事務所のターゲット像のヒントがあるはずです。

ターゲット設定の例

  • 法人税申告の経験が豊富 ▶ 
    中小企業の法人顧問に特化
  • 相続税の案件を多く担当 ▶ 
    資産税・相続専門の事務所
  • IT企業を中心に担当   ▶ 
    スタートアップ・IT企業向けのクラウド会計事務所
  • 飲食・小売業が多かった ▶ 
    飲食・小売業の記帳代行・税務申告を強みに売り出す

料金体系(顧問料)はターゲットとサービス範囲がセットで決まります

顧問料は、ターゲットと提供サービスの範囲が決まって初めて設定できるもので、ターゲットとする顧問先の属性もそれに応じて変わります。料金体系が明確になることで、紹介をお願いする際にも「こういう規模・業種のお客様にご紹介いただけると助かります」と具体的に伝えられるようになります。

低価格競争に巻き込まれないためには、料金だけを前面に出すのではなく「料金と提供できる価値」をセットで伝えることが重要です。経営の相談もできる、クラウド会計ソフトの操作支援も含むといった付加価値を明示できれば、価格だけで比較されにくくなります。開業前に、顧問契約書のひな形と料金表を整えておきましょう。

なお、料金の設定方法は第五回で詳しく説明します。

Webサイトは開業前から準備しておきましょう

Webサイトも、「誰にどんな税務サービスを提供したいのか」を示すものです。事務所の打ち出すべき方針が決まれば、サイトに書くべき内容は自然と決まってきます。

注意したいのは、開業後にゼロから作り始めると完成まで2〜3カ月かかることが多い点です。その間、紹介された方がサイトを見つけられず、問い合わせをためらってしまうことも実際に起きています。開業前にサイトを完成させておくことで、こうした機会損失を防ぐことができます。

開業前に準備したい営業ツールをチェック!

集客の準備と併せて、営業活動に必要なツールも整えておきましょう。せっかく紹介や問い合わせの機会があっても、受け皿が整っていなければチャンスを逃してしまうかもしれません!

必須開業前に絶対に間に合わせるもの

Webサイト・Googleビジネスプロフィール・名刺・自己紹介資料・法人メールアドレス・料金表・顧問契約書テンプレート・プライバシーポリシー・税務会計ソフト・セキュリティソフトは開業初日から必要です。特にGoogleビジネスプロフィールは登録から検索反映まで数日かかることがあるため、早めに設定しておくことをおすすめします。

推奨開業後1〜3カ月以内に整えるもの

電子契約ツール・Webカレンダー予約・ビジネスチャット・税理士紹介サイトへの掲載・SNSアカウントは、最初から完璧にしなくても困りませんが、顧客が増え始める前に整備しておくとその後の運営がスムーズです。

顧問先獲得のための4つの方向性

開業税理士が顧問先を獲得するための営業活動は、「人脈・紹介」、「デジタル集客」、「地域密着」、「コンテンツ発信」の4つの方向性に整理できます。それぞれに特徴や向き不向きがあり、どれか一つが正解というわけではありません。自分のターゲットや開業時の状況に合わせて優先順位を決め、複数の手法を組み合わせながら取り組むことが重要です。

集客は開業前からの「準備」で決まる!

  • 引き継ぎ顧問先の見通しを把握、口約束には頼らない
  • ゼロスタートなら、開業3〜6カ月前からは集客にむけて動き始める
  • 紹介リストの作成と声がけを、開業前から進めておく
  • 誰に何を提供するかを先に決め、Webサイト・料金表などを整える

最初の顧問先を獲得できるかどうかは、開業後の動き方だけでなく、開業前の準備によって大きく左右されます。まずは自分の得意分野とターゲット像を整理し、紹介をお願いできる人のリストを作るところから始めてみてください。小さな一歩が、開業後の大きな差につながります。

次回は【業務フロー編】「1人でも回る事務所の業務設計」をお届けします。
記帳代行中心の事務所と自計化支援中心の事務所では、月次の業務サイクルが大きく異なります。1人でも無理なく回し続けるための業務設計の考え方や、顧問先との情報共有の型を開業前に作ることの重要性について解説します。お楽しみに!

第二回【業務フロー編】は2026年7月公開予定!

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