決算書の読み方 ~「長期的な支払能力」をつかむ固定長期適合率の見方・使い方
2026年10月13日
質問
「長期的に資金繰りが行き詰まりにくい会社かどうか」を見極めるために貸借対照表のデータのどこを見たらいいか」と聞かれたら、次のうちどの回答が最も適切でしょうか?
パターン1
資産の金額が負債の金額を上回っているかどうかを見る。
パターン2
自己資本(純資産)と固定負債の合計額が固定資産の金額を上回っているかどうかを見る。
パターン3
現金の金額が負債の金額を上回っているかどうかを見る。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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「長期的に資金繰りが行き詰まりにくい会社かどうか」という意味は?
「スーパー・ミロク」の二代目社長である弥勒松太郎氏は、大学在学中の3人の息子のうち1人を将来の三代目社長にしようと考えています。自分の後継者を決めるにあたっては、経営センスを最も重要視する方針です。そこで松太郎氏は折に触れて息子たちに試験を課すことにしました。

社長
『倒産』とは、どういう意味だった?
えっ!? 前にやった質問じゃないの?

長男

社長
企業経営や会計の知識は、学校の勉強と違って、試験が終わったら忘れていいという知識ではない。ビジネスをやるうえでは覚えておきなさい。で、どうだ?
企業経営が成り立たなくなり、債務(つまり負債)の支払が困難になる状況だよね

次男

社長
そうだ。だから、短期的な支払能力を判断するためにはどうしたらいいんだ?
流動比率や当座比率を計算すればいいんだよね?

三男

社長
そうだな。そこで、次の質問だ。長期的に資金繰りが行き詰まりにくい会社かどうかを見極めるためには、貸借対照表のデータのどこを見たらいいか、について考えてみなさい。もちろん、貸借対照表だけで未来の資金繰りを全部当てることはできないが、“最初からムリのある資金の使い方”をしていないかは見えてくるからな
『長期的』ってどういう意味かな?

長男
短期的な支払能力が1年以内の債務(負債)を返済できるかどうかだったから、1年を超える返済期限っていうことなんじゃないの?

次男
だとすると、固定負債を返済できるかどうかを検討するのかなぁ?

三男

社長
さあ、どう考える?
質問
「長期的に資金繰りが行き詰まりにくい会社かどうか」を見極めるために貸借対照表のデータのどこを見たらいいか」と聞かれたら、次のうちどの回答が最も適切でしょうか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
資産の金額が負債の金額を上回っているかどうかを見る。
パターン2
自己資本(純資産)と固定負債の合計額が固定資産の金額を上回っているかどうかを見る。
パターン3
現金の金額が負債の金額を上回っているかどうかを見る。
貸借対照表で、資産の金額が負債の金額を上回っているか(=自己資本(純資産)がプラスか)を見るのは、会社の財務的な安全性をざっくり確認する第一歩です。ただし、資産には「すぐ現金にできるもの」と「すぐには現金にできないもの」が混ざっています。例えば、資産の大半が土地・建物などすぐ換金しにくい資産だと、支払いの場面では困ることになります。そのため、資産が負債を上回っているかどうかだけでは、資金繰りが行き詰まりにくいかを判断するには、材料が足りません。
自己資本(純資産)と固定負債の合計額が固定資産の金額を上回っているかどうかを見るのは、長く使う資産(固定資産)を、返済のいらない資金(自己資本(純資産))と返済期限の長い資金(固定負債)でどれくらいまかなえているかを見るためです。固定資産はお金が長期間しばられやすいので、ここを短期借入(短期間に返済が必要なお金)に頼りすぎると、将来の返済や利息の負担が重くなり、資金繰りが苦しくなりやすくなります。逆に、固定資産を純資産と固定負債で十分にまかなえていれば、「長期的に行き詰まりにくい資金の使い方をしている可能性が高い」と考えられます。
まだ現金になっていなくても負債の返済に回せるものはたくさんあります。例えば、売掛金や在庫なども短期間に現金になれば負債の返済に回せます。貸借対照表の日付(期末)の時点で保有する現金の金額だけで債務(負債)の返済が可能かどうかは、判断できません。
ターニングポイントは、「長期的な支払能力」の意味を正しく理解したことだった

社長
貸借対照表のどこを見ればいいか分かったか?
資産の金額が負債の金額を上回っているかどうかを見ればいいんじゃないの?

長男

社長
それは安全性の第一歩だ。資産よりも負債が上回っているのは債務超過といって、負債の返済能力がかなり深刻な状態だ。だが、そこまでの状態でなくても、長期的に資金繰りが行き詰まりやすい(つまり、長期的な支払能力に問題がある)場合がある
債務(つまり負債)の返済を考えると、現金が多いほうがいいから、貸借対照表で現金の金額が負債の金額を上回るかどうかを見ればいいんじゃない?

次男

社長
確かにそれだけの現金があれば負債の返済には困らない。でも、今は現金でない売掛金や在庫だって、短期間に現金になれば負債の返済に回せるだろう? だから、現金の金額を見て負債の全額を返済できるかどうかを検討するのは、判断材料としては適していない
そうだね。長期的って、固定負債を返済できるかどうかがポイントなのかな?

三男

社長
そうだが、それだけではない
あっそうか、流動負債も返済しなくてはならないんだ!

三男

社長
それはそうだが、だったら、どう考える?
やっぱり、資産の金額が負債の金額より多ければいいんじゃないの?

長男

社長
それだと、資産の大部分を換金しなくてはならないだろう。もしそうするなら、商品の在庫だけではなく、土地や店舗や車両や備品を全部売却して現金に換えなくてはならない。そんなことしたら、まともな営業ができなくなってしまうだろう?
だったら、父さんが今いった土地や店舗や車両や備品以外の資産を換金して、その金額で負債を返済できるかどうか見れば、いいんじゃないの?

次男

社長
固定資産は、土地や建物、設備のように、簡単には現金にできず、長く使い続ける資産だな?
うん。だからお金が長く縛られるよね

長男
長期的支払能力を判断する比率 ~固定長期適合率

社長
そうだ。固定資産は長く使うから、資金も“長く使えるお金”で用意したい。純資産だけで足りないなら、短期の借入(流動負債)ではなく、返済期限が長い固定負債で支えられているか──それを点検するのが固定長期適合率だ
固定長期適合率=固定資産/(純資産+固定負債)

社長
固定資産を純資産と固定負債でまかなえていれば、固定長期適合率はどうなる?
100%以下になる!

一同
(例)
固定資産が800万円で、純資産が700万円、固定負債が500万円の場合
固定長期適合率=800÷(700+500)=67%
⇒ 固定資産を純資産(返済のいらない資金)と固定負債(返済期限が長いお金)で十分にまかなえている。

社長
債務(負債)の支払能力の観点からは、固定長期適合率の数値は小さいほどよいとされているんだ
数字で見ると分かりやすいね! でも、固定負債っていずれは返済しないといけないから、固定負債が多いとちょっと心配かも

三男

社長
ああ。より厳密に判断する場合は『固定比率』が参考になる。これも分母が大きいほうがよいので、計算した数値が小さいほうが望ましい
固定比率=固定資産/純資産
なるほど!

一同
今回の試験によって、長期的な支払能力の意味と、それを見極めるために、貸借対照表のどこを検討すればよいかを理解しました。松太郎社長は引続き試験を課すことにしました。
・固定長期適合率
固定長期適合率=固定資産/(純資産+固定負債)
固定資産を、返済のいらない純資産と返済期限の長い固定負債でまかなえているか(まかなえている場合は100%以下となる)を見る指標で、資金構成に無理がないかを確認します。固定長期適合率は、一般的に小さいほうがより望ましいと判断されます。
・固定比率
固定比率=固定資産/純資産
固定比率は、長期的な支払能力を判断する指標です。固定資産で運用する資金が純資産でまかなえているか(まかなえている場合は100%以下となる)を見る指標で、固定長期適合率で無理がないことを確認した上で、より理想的な資本構成かどうかを厳密に判断する場合に参考になります。これも一般的に小さいほうがより望ましいと判断されます。
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