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- 月刊 - 会計事務所ラボ|第3回:顧問契約が増える紹介ルートの作り方
Introduction
はじめに
前回の記事では、開業初期の営業で大切なのは、やみくもに施策を増やすことではなく、理想の顧問先像を明確にし、選ばれる理由を言葉にし、営業の順番を整えることだとお伝えしました。
その流れで次に考えたいのが、見込み客とどう出会うかです。会計事務所の営業では、広告やWeb施策ももちろん重要ですが、実際には「誰から紹介されるか」が受注率や契約後の質に大きく影響します。
紹介が強い事務所は、ただ人脈が広いわけではありません。紹介が生まれやすい相手を見極め、相手にとって頼みやすい存在になり、紹介後の対応まで丁寧に積み重ねています。この記事では、そうした紹介ルートの作り方を、実務に落とし込みながら見ていきます。
結論
紹介は「待つもの」ではなく「育てるもの」
紹介が多い事務所を見ると、「もともと人脈があるから」「地域で知名度が高いから」と思われがちです。もちろん、それも一因ではあります。ただ、継続的に顧問契約が増えている事務所は、紹介を偶然に任せていません。
紹介元がどんな顧客を抱えているのか、自分の事務所はどんな相談に強いのか、紹介したあと安心して任せてもらえるか。こうした点をひとつずつ整えているからこそ、紹介は少しずつ増えていきます。言い換えれば、紹介営業の本質は「信頼の受け皿づくり」です。
紹介営業の本質
- 誰に紹介してもらいたいのかを具体化する
- 紹介元にとって「つなぎやすい税理士」になる
- 紹介後の対応で期待を裏切らない
- 一度の紹介で終わらず、次につながる関係を育てる
紹介という強み
なぜ会計事務所は紹介ルートが強いのか
会計事務所の顧問契約は、価格だけで決まる買い物ではありません。経営やお金に深く関わるからこそ、「この人なら安心して任せられそうか」という信頼が大きな判断材料になります。だからこそ、最初からある程度の信頼を借りてスタートできる紹介は、非常に強いルートになります。
実際、私の事務所でも紹介元の構成例として、金融機関が約50%、既存顧問先が約25%、士業が約15%、保険募集人が約5%、職員が約5%という比率となりほぼ紹介で新規顧客を獲得しています。もちろんこれは一例ですが、会計事務所の顧客獲得では、紹介チャネルの比重が大きいことがよくわかります。
紹介の良さは、単に成約率が高いことだけではありません。紹介元がある程度の相性や課題感を踏まえてつないでくれるため、契約後のミスマッチも比較的起きにくくなります。開業初期ほど、限られた時間を「つながりやすく、続きやすい顧問先」に使うことが重要です。
紹介の3条件
紹介が増える3つの条件「関係・価値提供・接点頻度」
紹介が増えるかどうかのポイントは「関係」「価値提供」「接点頻度」の3つです。この3つがそろってはじめて、紹介は自然に発生しやすくなります。
まず関係です。顔を知っている程度では、紹介まではつながりません。どんな考え方の税理士で、どんな顧客に向いていて、どんな対応をしてくれるのか。そこまで相手がイメージできて、初めて「この人を紹介しても大丈夫そうだ」と思ってもらえます。
次に価値提供です。紹介営業が続く事務所は、相手から仕事をもらうことばかり考えていません。金融機関にとって役立つ情報を渡す、士業の先生にとってつなぎやすい相談テーマを共有する、顧問先にとって顧問報酬以上の満足を提供する。こうした価値提供があるからこそ、相手の中で優先順位が上がります。
そして接点頻度です。どれだけ印象が良くても、一度会っただけでは忘れられてしまいます。紹介は「たまに思い出してもらう」より、「困ったときに真っ先に思い浮かぶ」状態をつくれるかどうかで差がつきます。定期的に情報交換などの場を持って、見込み客の発掘をすることが大切です。
金融機関との関係
金融機関は「紹介して終わり」ではなく「一緒に顧客を支える相手」
金融機関は、会計事務所の紹介元として非常に相性のよい存在です。特に創業期や成長期の企業は、融資、資金繰り、設備投資、事業計画といったテーマで相談が発生しやすく、その周辺で税理士ニーズも顕在化しやすくなります。実務上は、まず地域の金融機関のうち、創業融資や法人融資を扱う営業担当者複数名と知り合い、誰と、どのテーマで接点を作るのかを見える化しておくと動きやすくなります。一番手っ取り早い方法は、各金融機関から融資を受ける方法です。融資を受けることにより、金融機関にとって会計事務所はお客様になりますし、必然的に営業担当者との接点も増えます。
金融機関との関係づくりを「お客様を紹介してください」で終わらせてしまうと、なかなか関係が続きません。金融機関が求めているのは、単に税務申告をする人ではなく、紹介先企業の経営を安定させ、必要に応じて数字の整理や経営者との対話を支えられる存在です。たとえば、資金繰り表の見方、試算表の読み解き、創業後の数字管理で経営者がつまずきやすい点など、営業担当者が顧客に案内しやすい切り口を用意しておくと、紹介のきっかけを作りやすくなります。
そのため大切なのは、自事務所がどんな企業を支援しやすいのかを具体的に伝えることです。たとえば、創業融資の後に月次伴走しやすい会社なのか、クラウド会計の定着支援が得意なのか、資金繰りや管理会計の視点を持てるのか、相続・事業承継などの高度税務が得意なのか。こうしたペルソナや強みが伝わるほど、金融機関も紹介しやすくなります。実務では、「創業3年以内の法人に強い」「月次の数字共有まで伴走できる」「クラウド会計の立ち上げ支援ができる」など、1分ほどで伝えられる紹介用の言い回しを準備しておくと効果的です。
また、紹介を受けた後の報告も重要です。進捗がどうなっているのか、無事に面談できたのか、成約したのか。こうしたフィードバックがあると、金融機関側も安心し、次の紹介につながりやすくなります。少なくとも初回接触の有無、面談実施の有無、成約の有無の3点は、短くてもよいので連絡する習慣を持っておくと、紹介ルートは安定しやすくなります。
士業とのネットワーク
士業ネットワークは「専門外を補い合える関係」から強くなる
司法書士、社労士、弁護士、行政書士、そして同業の税理士など、士業同士のつながりも大きな紹介ルートになります。これは単に知り合いが増えればよいという話ではなく、それぞれが持つ専門領域の違いがあるからこそ成立する関係です。実務上は、「誰と仲良くなるか」よりも、「どの相談テーマで一緒に動けるか」を先に整理しておくほうが、連携は形になりやすくなります。
たとえば、登記や相続手続き、労務相談、就業規則、補助金、契約書など、経営者の課題は税務だけで完結しません。そうしたときに「この相談ならあの先生が強い」と自然に紹介し合える関係ができていると、顧客にとっても価値が高くなります。たとえば司法書士なら設立や役員変更、社労士なら労務整備や助成金、弁護士なら契約やトラブル対応など、相手の専門と自事務所の支援場面が重なるポイントを言語化しておくと、紹介の精度が上がります。
ここで大事なのは、自分が紹介を受けたい領域だけを見ないことです。相手にどんな案件を返せるのか、どんな場面で役に立てるのかまで考えておくと、関係は長続きしやすくなります。いわゆるギバーズゲインの発想ですが、紹介ルートづくりではとても重要です。名刺交換だけで終わらせず、月に1回近況を共有する、勉強会や共催セミナーで接点を作る、相手に返せる案件例をメモ化しておく、といった小さな継続が実務では効いてきます。
また、士業ネットワークでは「専門性の違い」が紹介理由になります。何でもできます、よりも、例えば資産税に特化していますなど、「この分野なら相談しやすい」という印象のほうが、相手は案件を振りやすくなります。紹介ルートを増やすうえでも、強みの見せ方はやはり大切です。
既存顧問先からの紹介
既存顧問先からの紹介は「満足」だけでなく「伝わりやすさ」が鍵
既存顧問先からの紹介は、信頼度が高く、相性のよい案件につながりやすいルートです。
ただ、ここで誤解しやすいのは、「満足してもらっていれば自然に紹介されるはず」と考えてしまうことです。もちろん満足度は前提ですが、それだけでは紹介に結びつかないことも少なくありません。なぜなら、顧問先が「誰に、どんなときに、この税理士を紹介すればいいか」を明確にイメージできていないことがあるからです。実務では、定期面談の雑談の中で紹介を待つのではなく、「こういう方がいたら気軽に声をかけてください」と具体的な場面を添えて伝えるほうが動いてもらいやすくなります。
たとえば、「創業したばかりの知人で、数字まわりを早めに整えたい人がいたらぜひ」「バックオフィスの効率化に困っている経営者がいたらご紹介下さい」のように、紹介しやすい相手像を言葉にしておくと、顧問先の記憶にも残りやすくなります。
また、紹介してもらいやすいのは、ただ業務をこなす事務所よりも、「この先生に入ってもらって助かった」という実感を持ってもらえている事務所です。月次のちょっとした助言、資金繰りの視点、経営者が不安なときの一言など、小さな価値提供の積み重ねが紹介の土台になります。
その他の紹介ルート
保険代理店・FP・不動産業者・商工会も良い紹介ルートになりうる
紹介ルートというと、金融機関や士業ばかりに目が向きがちですが、それ以外にも相性のよい接点はあります。保険代理店やFPは、法人保険、相続、事業承継などのテーマで経営者と深く関わることが多く、税務との接点も生まれやすい存在です。
不動産業者は、賃貸、投資、相続、法人化などの相談で税務ニーズとつながることがありますし、商工会議所や地域団体は、経営者との接点を持つきっかけとして有効です。コンサルや経営支援会社も、補助金、業務改善、DX支援の流れから顧問ニーズにつながることがあります。
大切なのは、紹介元の数をやみくもに広げることではありません。自分の事務所がどんな相談テーマと相性がよいのかを踏まえ、紹介が生まれやすい相手を見極めることです。相手の業務と自事務所の支援領域が自然につながるほど、紹介は無理なく続きやすくなります。
紹介が続かない理由
紹介が続かない事務所に見られやすいこと
一方で、紹介ルートがなかなか育たない事務所にも共通点があります。たとえば、誰を紹介してほしいのかが曖昧、強みが伝わっていない、紹介後の報告がない、価格だけで勝負している、といった状態です。
特に注意したいのは、安売りを入口にしてしまうことです。紹介元から見ても、価格だけで仕事を取る事務所は、長く安心してつなげられる先にはなりにくいものです。
また、紹介を受けることばかり考えて、自分から価値提供していないケースもあります。相手にとって役立つ情報やお客様の紹介を返せていないと、関係は一方通行になり、紹介も長続きしません。紹介ルートは営業チャネルであると同時に、信頼関係の積み重ねでもあります。
90日ロードマップ
最初の90日で整えたい紹介導線
ここまでの考え方を、実際の90日間でどう動かすかに落とし込むと、次のような順番になります。
| 1〜2週目 | 土台づくり | 紹介してほしい顧客像と、自事務所の強みを一文で説明できるようにし、紹介時に使うひと言も準備する |
|---|---|---|
| 3〜4週目 | 相手の洗い出し | 金融機関、士業、既存顧問先など、優先して関係を深めたい相手を洗い出し、接点を持つ順番を決める |
| 2か月目 | 説明の型化 | 紹介時に伝わりやすい支援内容や相談テーマを整理し、1分で話せる説明と簡単な案内文に落とし込む |
| 2〜3か月目 | フォローの習慣化 | 接点を持った相手への近況共有、情報提供、面談後の報告を習慣化し、紹介後フォローの型を固める |
| 3か月目 | 振り返りと注力 | どの紹介元からどんな相談が来たかを振り返り、紹介につながったテーマや相性のよいルートに注力する |
Summary
まとめ
顧問契約が増える紹介ルートは、特別な人脈がある事務所だけのものではありません。誰に紹介してほしいのかを明確にし、相手にとって頼みやすい存在になり、紹介後の対応まで丁寧に積み重ねていけば、紹介は少しずつ育っていきます。たとえば金融機関であれば、自事務所が支援しやすい企業像や得意なテーマを具体的に伝えておくことが大切です。紹介を受けた後に、面談できたか、どこまで支援が進んだかを簡潔に報告するだけでも、次の紹介のしやすさは変わってきます。
また、司法書士・社労士・弁護士など他士業とのつながりは、ただ名刺交換を増やすだけでは深まりません。相手が抱えやすい相談の中で、自分がどこで役に立てるのか、逆に自分からどんな案件を返せるのかを明確にし、勉強会、情報交換、日々のちょっとした相談対応を通じて「連携しやすい関係」をつくることが重要です。前回の営業戦略の話で整えた「誰に選ばれたいか」「どう選ばれるか」という土台があるからこそ、今回の紹介ルートも生きてきます。次の段階では、こうしてつながった顧客に対して、どう価値を設計し、しっかりとした顧問契約につなげていくかが重要になっていきます。
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