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- 月刊 - 会計事務所ラボ|第1回:会計事務所が売上を伸ばせない本当の理由
Introduction
はじめに
会計事務所の売上が伸び悩むとき、多くの所長先生は「営業が足りない」「紹介が減った」「景気が厳しい」といった外部要因に目を向けがちです。しかし実際には、売上が伸びない事務所ほど、内部に共通した構造的な問題を抱えています。
特に開業前後から成長期にかけての事務所では、目の前の顧問対応に追われるあまり、価格設計・商品設計・集客導線・生産性改善・人材育成が後回しになりやすく、結果として「忙しいのに利益が残らない」という状態に陥ります。
本記事では、会計事務所が売上を伸ばせない"本当の理由"を5つに整理したうえで、開業前〜成長期の会計事務所が最初に見直すべき実務ポイントをわかりやすく解説します。
Conclusion
結論:売上停滞の真因は「集客不足」ではなく、経営設計の未整備にある
会計事務所の売上が伸びない背景には、単独の原因ではなく、複数の要因が連鎖しているケースがほとんどです。問い合わせが少ない、単価が低い、採用できない、所長しか提案できない、ITを入れても忙しさが変わらない――これらは別々の問題ではなく、ひとつの経営課題の表れです。
つまり、売上を伸ばすために必要なのは、単発の営業施策ではなく、「誰に・何を・いくらで・どう届けるか」を一体で設計し直すことです。
売上停滞の要因例
- 価格が工数に見合っていない
- 紹介や偶発的な問い合わせに依存している
- 記帳・申告などの定型業務に時間を使いすぎている
- 強みが言語化されておらず、高付加価値業務につながらない
- 人材育成と業務標準化が不十分で、所長依存が強い
理由1
顧問料の据え置きと"安売り体質"
売上が伸びない事務所に共通する典型例が、顧問料の見直しができていないことです。創業時からの顧問先に対して、売上規模や業務量が増えているにもかかわらず料金が据え置きのまま、というケースは珍しくありません。
しかし、物価上昇、人件費上昇、法改正対応、クラウドやAIへの投資を考えれば、過去と同じ価格で同じ品質を維持すること自体が難しくなっています。価格を上げられない事務所ほど、採用に必要な原資も、教育投資の余力も失っていきます。
注意:価格を前面に出した集客は価格競争を招きやすく、安さで選ばれた顧問先は条件比較を優先しやすいため、長期的な収益性が下がりやすくなります。
理由2
紹介任せで、集客の仕組みがない
売上が安定して伸びる事務所は、単に紹介件数が多いのではなく、紹介が生まれる仕組みを持っています。一方で伸び悩む事務所は、既存顧客や金融機関からの紹介を待つだけで、自社から接点を増やす設計が十分ではありません。
いまの顧客は、紹介を受けても必ずホームページや記事を見て比較します。つまり、紹介とWeb発信は分断された施策ではなく、同じ受注導線の中にあります。ホームページで価格ばかりを訴求していたり、専門性や実績の根拠が見えなかったりすると、せっかくの見込み客を逃してしまいます。
『誰向けの事務所か』『何に強いのか』『依頼するとどんな変化があるのか』が伝わる情報設計がない限り、問い合わせは増えても受注率は上がりません。
理由3
定型業務に追われ、高付加価値業務に時間を振り向けられない
会計事務所の売上を伸ばすうえで重要なのは、単に件数を増やすことではなく、顧問先1社あたりの提供価値を高めることです。たとえば、資金繰り支援、管理会計、クラウド導入支援、相続・事業承継などは、比較的高単価で感謝されやすい領域です。
ところが現場では、記帳代行や資料回収、確認連絡、進捗確認といった定型業務が日常を占め、提案のための時間が確保できない事務所が多くあります。これでは、忙しさは増えても売上単価は上がりません。
AIやDXの本当の価値は、単純作業を少し楽にすることではなく、"創出した時間を何に再配分するか"にあります。余白時間を営業、提案、教育、高付加価値業務に振り向ける設計がなければ、効率化は売上増につながりません。
記帳代行業務は近年のクラウド化などにより工数が縮小傾向。適正な報酬を確保できれば、人手不足の企業ニーズを背景に、今も立派な事務所の柱になり得ます。
理由4
属人化した運営が、拡大のボトルネックになる
一定の規模までは、所長先生の力量と気合いで回ることがあります。しかし、売上を一段伸ばしたい局面では、属人化が大きな障害になります。『この顧問先は自分しか分からない』『面談は所長でないと提案できない』『担当者ごとにやり方が違う』という状態では、組織としての再現性が生まれません。
属人化が強い事務所は、採用しても育ちにくく、引き継ぎにも時間がかかります。その結果、所長や一部ベテランに業務が集中し、新しい案件を受けられなくなります。売上が伸びないのではなく、"伸ばせる体制になっていない"のです。
業務フローの標準化、顧客情報・進捗・タスクの一元管理、製販分離や役割分担の見直しは、売上拡大のための地味ですが重要な基盤整備です。
直接顧問先を担当しない社員を1名採用し、所内進捗の統括・新規営業窓口・決算説明などを任せると、組織化は一気に進みます。
理由5
採用・育成を"コスト"として捉えている
人手不足が続くなかで、採用できないことを外部環境のせいだけにしてしまうと、改善の打ち手が見えなくなります。実際には、給与水準、評価制度、育成体制、働きやすさ、事務所の方向性の明確さが、応募数や定着率に大きく影響します。
また、採用できても育成の仕組みが弱ければ、戦力化までに時間がかかり、結局は所長依存から抜け出せません。成長している事務所ほど、教育時間を"未来の売上をつくる投資"として捉え、動画研修、チェックリスト、面談同席、役割ごとの到達基準などを整えています。
売上拡大とは、顧問先の数を増やすことだけではなく、組織として受け皿を広げることでもあります。
Action
まず見直したい5つの実務アクション
- 顧問先ごとの工数・訪問回数・資料回収負荷・追加対応を洗い出し、実態ベースで採算を可視化する
- 料金表とサービス範囲を見直し、無料で抱え込んでいる業務を整理する
- ホームページや記事で、価格ではなく専門性・対象顧客・実績・支援の流れを明確にする
- 記帳・申告以外に提案できる付加価値メニューを3つ決め、提案の型をつくる
- 顧客管理・進捗管理・タスク管理を一元化し、担当者が変わっても回る体制を整える
Case
ケースイメージ
たとえば、月次顧問を中心に運営している事務所が、顧問料の見直しを先送りし、記帳代行の負荷も高いまま、問い合わせ対応も所長だけで行っているとします。この状態では、案件が増えるほど所長の時間が奪われ、既存顧客対応の質も下がり、新規提案の余力もなくなります。
一方で、顧問先ごとの採算を見える化し、低採算先の料金改定または業務範囲の整理を行い、入力業務の標準化と情報共有を進めることで、所長の時間を提案業務に再配分できれば、同じ人数でも売上の伸ばし方は大きく変わります。売上拡大の起点は、新規獲得だけではなく"時間の使い方の再設計"にカギがあるといえます。
Summary
まとめ
会計事務所が売上を伸ばせない本当の理由は、営業力不足だけではありません。安売り、紹介依存、定型業務偏重、属人化、人材育成不足といった課題が重なり、売上が伸びる前に時間と利益が尽きてしまうのです。
逆にいえば、顧問料の最適化、情報発信の再設計、付加価値業務へのシフト、標準化と育成への投資を進めれば、事務所は無理な拡大をしなくても着実に成長できます。
まずは、資料請求特典の「会計事務所 "売上拡大" チェックリスト」を先生方の事務所の問題点の洗い出しに使用して、“忙しいのに伸びない理由”を見える化するところから始めてみてください。