日々の入力により働くの見える化を推進
従業員と管理部門の業務効率化を実現するクラウドサービス
労働基準法大改正の全体像【後編】
厚生労働省の有識者会議「労働基準関係法制研究会」では、労働基準法の大改正に向けて将来の法制度の骨格を形成する極めて重要な内容が検討されています。
今まさに、働き方や労務管理は大きな転機を迎えています。
企業に求められるのは、法改正が確定してから対応する受動的な姿勢ではなく、示された方向性を踏まえて自社の労務管理の在り方を主体的に再設計していく能動的な姿勢です。
本特集では労働基準法の改正について前編と後編の2部に分けてご紹介します。
今回の後編では「検討中の主な改正内容一覧」と「検討中の改正項目それぞれの概要と想定される実務影響」についてお伝えします。
- 本ページは2026年6月10日時点の情報にもとづいており、法改正が確定していない事項が含まれます。
今から知って備える!
約40年ぶりの労働基準法大改正に向けた検討の全体像【前編】
検討中の改正内容
主なポイント一覧
労働基準関係法制研究会報告書にて法制の見直しが検討されている主な項目は次の表のとおりです。
- 各項目の番号部分をクリックすると下の詳細解説へジャンプします。
| 項目 | 概要 | 想定される実務影響・対応のポイント | |
|---|---|---|---|
| 1 | 企業による労働時間の情報開示 | 労働時間の実態を外部に開示し、市場による監視機能を活用する仕組み | 労働時間データの正確性確保、説明資料の整備、部門間の連携体制の強化 |
| 2 | フレックスタイム制の改善およびテレワーク時のみなし労働時間制 | 部分的フレックスの導入、在宅勤務に適したなみなし労働時間制の検討 | 勤務実態の把握、長時間労働の抑制、慎重な制度設計 |
| 3 | 法定労働時間(週44時間)特例の廃止 | 特定業種の週44時間労働の特例を廃止し一律化 | 中小企業での労働時間短縮対応、人員の確保、営業時間の見直し |
| 4 | 連続勤務の上限規制および法定休日の特定義務 | 長時間にわたる連続勤務を制限し、法定休日の事前明確化を義務付け | シフト設計の見直し、休日管理の運用の見直し |
| 5 | 勤務間インターバル制度の義務化 | 終業から次の始業まで一定の休息時間を確保する制度 | 勤務間の時間管理強化、業務スケジュールの再設計、シフト設計の見直し |
| 6 |
副業・兼業の労働時間 通算ルールの見直し |
複数事業場の労働時間管理の合理化 | 副業管理ルールの再構築、過重労働リスク管理 |
| 7 | つながらない権利の導入 | 勤務時間外の業務連絡を制限し、私生活時間を確保 | 社内ルール整備、管理職の意識改革 |
| 8 | 年次有給休暇の賃金算定の原則化 | 有休取得時の賃金算定方法を統一・明確化 | 賃金規程の見直し、給与計算への影響対応 |
\ご状況に合わせて最適な勤怠管理システムをご提案いたします!/
詳細と実務影響
各改正検討項目の背景・内容・実務への影響を項目ごとに詳しく解説します。
1:企業による労働時間の情報開示
改正検討の背景
今回の見直しにおいて最も象徴的な制度転換の一つが「企業による労働時間の情報開示」です。
これは単なる行政対応の強化ではなく、労働市場における透明性を高めることにより、企業行動そのものを変容させようとする政策的意図があります。従来は行政による監督に依存していましたが、人的・時間的制約からすべての企業を網羅的に把握することには限界がありました。
改正検討の内容
企業が平均残業時間や有給休暇取得率、長時間労働者の割合などの情報を正確に把握・開示し、求職者や投資家、取引先といったステークホルダーがその内容を評価することで、企業間競争を通じた労働環境の改善を促すという考え方が示されています。これは、いわば「規制からガバナンスへ」の転換といえます。
想定される実務への影響
開示は単なる数値の提示にとどまらず、算定方法や背景事情、改善に向けた取組みなども含めた説明責任が求められます。打刻漏れやサービス残業はそのまま外部評価の低下につながるリスクを伴います。
情報開示においては「見せ方」も重要で、単に数値の良し悪しを示すだけではなく、業務特性や改善施策もあわせて示すことで説明責任を果たす必要があります。人事部門にとどまらず、経営企画や広報部門との連携が不可欠です。
本制度は「人的資本経営」を強く促すものといえます。
対応のポイントまとめ
- 平均残業時間・有給休暇取得率・長時間労働者の割合等の正確な把握と情報開示が求められる
- 算定方法や背景事情、改善に向けた取組みなどの説明責任が求められる
- 開示情報の「見せ方」の工夫や、人事労務と経営企画・広報の部門間連携による情報発信が必要
2:フレックスタイム制の改善およびテレワーク時のみなし労働時間制
改正検討の背景
フレックスタイム制(図表1)およびテレワークに関する見直しは、「柔軟な働き方」と「労働時間規制」をいかに両立させるかという点で、今回の改正の中核をなす論点です。テレワークは仕事と生活の両立を可能にする働き方として今後も拡大が見込まれる一方で、使用者による直接的な管理が及びにくく、長時間労働や労働時間の把握の困難さといった課題を内包しています。
図表1 フレックスタイム制(イメージ)
- フレキシブルタイムやコアタイムは必ずしも設けなければならないものではありません。
コアタイムを設定しないことによって、労働者が働く日も自由に選択できるようにすることも可能です。
また、フレキシブルタイムの途中で中抜けするなどといったことも可能です。
出典:「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)P3
改正検討内容
研究会では主に二つの方向から制度見直しが検討されています。
第一に、テレワーク日と通常勤務日が混在する場合でも活用しやすいよう、フレックスタイム制の柔軟化を図ることです。日ごとにフレックスタイム制と固定労働時間制を設定できる「部分的フレックス制」の導入などにより、実態に即した運用を可能とする方向が示されています。
第二に、在宅勤務に適した新たなみなし労働時間制の検討です。テレワークでは業務と私生活が混在し中抜けも生じやすいため(図表2)、健康確保措置を前提に、実労働時間の把握を前提としない制度の導入可能性が議論されています。
図表2 テレワーク時の中抜けの取扱い例
出典:「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」(厚生労働省)P8
想定される実務への影響
新たなみなし労働時間制については、長時間労働の助長や健康管理の困難化といった懸念も大きく、本人同意や同意撤回の仕組み、健康管理時間(高度プロフェッショナル制度の対象労働者について、会社内外での実労働時間の合計)の把握など、慎重な制度設計が必要とされています。
現時点では直ちに導入するのではなく、実態把握を踏まえた継続的な検討課題と位置付けられています。
今後の制度設計においては「柔軟性と保護の両立」が一層重要となります。
対応のポイントまとめ
- 「部分フレックス制」や「在宅勤務に適した新たなみなし労働時間制」を必要に応じて検討する
ただし、勤務実態の把握や長時間労働の抑制がよりいっそう重要になる - 本人の同意や同意撤回の仕組み、健康管理時間など、慎重な制度設計や実態把握を踏まえた継続的・段階的な導入が求められる
\ご状況に合わせて最適な勤怠管理システムをご提案いたします!/
3:法定労働時間(週44時間)特例の廃止
改正検討の背景
現行制度では、小売業や飲食業などの特定業種において、常時10人未満の事業場について週44時間までの労働が認められています。この特例は、制度導入当初において小規模事業者の実態に配慮して設けられたものですが、現在ではその合理性は低下していると考えられています。そこで、この特例は廃止の方向で検討が進められています。
改正検討の内容
特例が廃止された場合、これまで週44時間を前提として労働時間を設計していた事業場は、原則である週40時間への移行を迫られることになります。これは単なる時間短縮ではなく、労務管理全体の見直しを伴うものであり、企業経営に直接的な影響を与えます。
想定される実務への影響
特に人手不足が深刻な業種においては、シフトの再設計や人員の追加確保、さらには営業時間の見直しといった対応が求められます。また、単に労働時間を削減するだけではなく、業務効率化や生産性向上といった観点からの抜本的な改善も不可欠となります。
この改正は単なる規制強化ではなく、企業に対して経営改革を促す契機となるものと位置付けるべきです。
対応のポイントまとめ
- 労働時間の短縮に伴い、シフトの再設計や人員の追加確保、さらには営業時間の見直しといった対応が求められる
- 業務効率化や生産性向上など、抜本的な経営改革が必要になる可能性もある
4:連続勤務の上限規制(13日超禁止)および法定休日の特定義務
連続勤務の上限規制
改正検討の背景
現行制度では、4週4休制の活用などにより相当長期間にわたる連続勤務が理論上可能となっています。さらに36協定に休日労働の条項を設ければ、協定の範囲内で理論上無制限に連続勤務させることも可能な状態です。(図表3)
しかし、労災保険における精神障害の認定基準では「2週間以上にわたる休日のない連続勤務」が心理的負荷となる具体的出来事として示されており、近年でもこのような連続勤務が評価要素となって精神障害事案として労災保険の支給決定が行われた事例が生じています。
連続勤務の問題は労働者の生命・健康に直接関わる問題として捉える必要があります。
図表3 法定休日のいわゆる4週4休制(変形週休制(労働基準法第35条2項))
出典:「労働時間法制の具体的課題について」(厚生労働省 労働基準局)P2
改正検討の内容
研究会では、法定休日の本来の趣旨を貫徹する観点から、精神障害の労災認定基準も踏まえ、「13日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を労働基準法上に設けるべきとの方向性が示されています。
ただし、災害復旧等の真にやむを得ない事情がある場合や、顧客・従業員の安全確保のためにやむを得ず必要となる場合については、代替措置を設けた上で労使合意により例外的な取扱いを可能とすることも検討課題とされています。
想定される実務への影響
4週4休制や休日配置によって対応してきた長期間の連続勤務は原則として認められなくなり、特にシフト制を採用する業種では、勤務体制そのものの見直しが不可避となります。
また勤怠管理においては、労働時間管理に加え、連続勤務日数の把握・管理のためのシステムの見直しや管理体制の強化や、就業規則や労使協定も例外的取扱いを含めたルール整備が必要です。
本改正は単なる規制強化ではなく、企業に対し「健康確保を前提とした働き方の再設計」を求めるものであり、早期の実態把握と段階的な見直しが重要となります。
法定休日の特定
改正検討の背景
現行制度では、どの日が法定休日かをあらかじめ法律上特定することまでは求められておらず、実務上は通達により具体的に一定の日を休日と定めるよう指導がされているにとどまります。
1987年の労働基準法改正以降、週休2日制採用企業が増え、法定休日と所定休日が混在することが一般化した結果、どの休日が法定休日にあたるのかが曖昧になり、休日労働に対する割増賃金の計算や労働時間管理の面で混乱を生じさせる要因となっています。
改正検討の内容
研究会は、法定休日は労働者の健康確保および私的生活を尊重するためのものであることから、当事者間でその法律関係が明確に認識されるべきであり、あらかじめ法定休日を特定すべきことを法律上に規定する方向で取り組むべきとしています。
法定休日の振替を行う場合の手続きや振替可能な期間の整理、パートタイム労働者やシフト制労働者への休日特定方法・特定期日・変更方法の明確化も重要な検討課題となります。
想定される実務への影響
法定休日の特定が義務化されれば、休日管理の透明性が高まり、休日労働の割増賃金計算や勤務シフト管理の適正化が進むことが期待されます。
その反面、企業には就業規則の見直しや休日付与ルールの明確化、シフト作成の厳格化が求められることになります。特にシフト制を採用している業種や、パートタイム労働者を多数活用している事業場では、法定休日の指定方法と変更手続きを実務に落とし込む必要があります。
対応のポイントまとめ
- 連続勤務の最大日数(上限13日)に考慮したシフト設計への全面的な見直しが必要
- 法定休日を就業規則等で特定し、法定休日指定時の手続きと変更方法を明確化する
- 法定休日の振替を行う場合の手続きや振替可能な期間を整理する
- パートタイム労働者やシフト制労働者に対して、法定休日の指定方法・変更方法を明確化する
- 勤怠管理システムへの連続勤務日数カウント・アラート機能の追加・整備
\ご状況に合わせて最適な勤怠管理システムをご提案いたします!/
5:勤務間インターバル制度の義務化
改正検討の背景
働き方改革関連法により導入された時間外・休日労働時間の上限規制は月単位での管理ですが、日々の生活の中でワーク・ライフ・バランスを確保するためには、勤務と勤務の間に一定の休息時間を確保することが不可欠です。
欧州諸国では終業から次の始業まで一定時間を空けることを義務付ける勤務間インターバル制度(図表4)が広く導入されています。
我が国でも、労働時間等設定改善法第2条において「健康および福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定」として努力義務が課されていますが、具体的なインターバル時間や詳細な基準は法令上明確に示されていない状況です。
図表4 勤務インターバル制度の概要
出典:「労働時間法制の具体的課題について」(厚生労働省 労働基準局)P14
改正検討の内容
厚生労働省の「勤務間インターバル制度 導入・運用マニュアル」が策定されているものの、2023年1月時点での導入企業割合は全企業のうち6.0%にとどまっており、導入予定も検討もしていない企業の半数以上が「超過勤務の機会が少なく制度導入の必要性を感じない」と回答しています。
研究会は、抜本的な導入促進とともに将来的な義務化も視野に入れた法規制の強化を検討する必要があるとしています。
欧州の制度を参考に原則11時間のインターバル確保が目安として提示されていますが、業種・職種の特性に応じた適用除外や柔軟な運用も設けられる方向です。
想定される実務への影響
勤務間インターバル制度は、すべての業種・業態に一律に適用することは現実的ではないとの指摘もあり、職種や業務の特性に応じた適用除外や、インターバルが確保できなかった場合の代替措置を労使合意により柔軟に定めるという考え方が示されています。
インターバルが確保できなかった場合の対応については、単に健康状態を事後的に把握するだけでは不十分であり、代償休暇の付与など実際に労働から解放される時間を確保する措置が望ましいとされています。
義務化の方法については、労働基準法により強行的に義務化・労働時間等設定改善法による制度導入の義務化・労働基準法において就業規則の記載事項化など複数の選択肢が検討されています。
勤務時間の終了時刻だけでなく、その後の休息時間の確保まで含めた労務管理が求められることになり、シフト設計や業務配分の在り方を含めた抜本的な見直しが必要となる可能性があります。
対応のポイントまとめ
- 原則として一定時間(目安11時間)のインターバルを確保しつつ、職種・業務特性に応じた適用除外・代替措置を労使合意で柔軟に設定する
- 例外的取扱いをより限定的にする制度設計や、経過措置を設けながら段階的に適用範囲を拡大していく進め方を検討する
- 勤務インターバルが確保できなかった場合の代償休暇付与などの事後対応の制度設計が必要
- 勤怠管理システムへのインターバル時間算出・警告機能の整備
6:副業・兼業の労働時間通算ルールの見直し
改正検討の背景
現行制度では、労働基準法第38条の解釈および通達に基づき、事業主を異にする場合でも労働時間を通算し、その合計に応じて割増賃金を支払うこととされています。
厚生労働省のガイドラインでは、労働契約締結の先後順に所定労働時間を通算し次に所定外労働の発生順に通算する方法(図表5)か、あらかじめ各事業場における労働時間の範囲内で労働させる管理モデル(図表6)のいずれかで対応することとされています。
図表5 副業・兼業の所定労働時間の通算のイメージ(原則的な労働時間管理の方法)
出典:「副業・兼業の促進に関する ガイドライン わかりやすい解説」(厚生労働省)P16
図表6 管理モデルのイメージ(簡便な労働時間管理の方法)
- 上図で示している時間外労働の上限規制(月100時間未満、複数月平均80時間以内)は、あくまでも法律上の上限です。実際の副業・兼業によって、労働時間を通算して法定労働時間を超える場合には、長時間の時間外労働とならないようにすることが望ましいです。
- 上図は、Aに所定外労働がない場合のイメージですが、Aが法定労働時間の範囲内で所定外労働の上限を設定するような場合においても、同様の考え方で対応することが可能です。
出典:「副業・兼業の促進に関する ガイドライン わかりやすい解説」(厚生労働省)P18
しかしこの取扱いは実務上極めて複雑であり、割増賃金の計算のために本業先と副業・兼業先の労働時間を日単位で細かく管理する必要があり、企業・労働者双方にとって大きな負担となっています。この複雑さが、企業が雇用型の副業・兼業を許可することや副業・兼業を希望する他社の労働者を雇用することを躊躇させる要因となっているという指摘があります。
欧州の多くの国では、副業・兼業に伴う割増賃金算定は事業主ごとに判断する仕組みが採用されており、フランス・ドイツ・オランダ・イギリスなどでも事業主ごとの判断が原則です。
改正検討の内容
研究会では、副業・兼業においては「賃金計算のための労働時間管理」と「健康確保のための労働時間管理」を区別して考えるべきとの整理が示されています。労働者の健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金の支払いについては通算を要しない仕組みに改める方向で検討することが考えられています。
ただし、同一使用者の命令による複数事業場勤務や出向など実質的に一体として労務提供が行われる場合は、引き続き通算が適当とされています。
想定される実務への影響
割増賃金の通算義務緩和により副業・兼業が促進される一方、労働者の健康確保についてはこれまで以上に実効性のある対応が求められます。労働時間をどのように把握するか、また長時間労働となる場合に、本業先と副業・兼業先のいずれがどのような責任を負うのかの整理が必要です。
また、労働者自身の健康管理意識・リテラシーを高めていくことも重要です。
従来の単一事業場内で完結する労務管理から、複数就業を前提とした労務管理への視点転換が求められます。
対応のポイントまとめ
- 労働時間の通算(健康確保目的)は維持しつつ、割増賃金の支払いについては通算しないルールで、労働時間・賃金を算定することが求められる可能性がある
- 労働時間に関する情報の把握方法の設計と、長時間労働になる場合に本業と副業・兼業先のいずれがどのような責任を負うのかを整理する
- 副業管理ルール(申告ルール・上限時間の設定等)の再構築が必要
\ご状況に合わせて最適な勤怠管理システムをご提案いたします!/
7:「つながらない権利」の導入
改正検討の背景
本来、労働時間外の時間は労働者の自由な生活時間であり、使用者がこれに介入する権利はありません。
しかし現実の職場では、突発的なトラブルへの対応や顧客からの要請を理由として、勤務時間外でも労働者が対応を求められる場面が少なくありません。
私生活と業務の境界が曖昧となる状況が生じていますが、スマートフォンやチャットツールの普及により、時間や場所を問わず連絡可能となったことが、こうした傾向を一層強めています。
改正検討の内容
欧州諸国を中心に「つながらない権利(Right to Disconnect)」の制度化が進んでいます。この権利は勤務時間外に業務上の連絡への対応を強制されないことを保障するもので、具体的な内容は以下になっています。
- 「つながらない権利」行使を理由とする不利益取扱いの禁止
- 使用者が労働者に連絡可能な時間帯の明確化・制限
- 「つながらない」状態を確保するための措置の実施
- こうした措置について労使間の協議を義務付ける仕組み
フランスでは「つながらない権利」が法制化されており、具体的な運用内容は労使交渉で決定される仕組みです。合意に至らない場合には、使用者が「つながらない権利」の行使方法等を定めた憲章を策定することが義務付けられています。
想定される実務への影響
「つながらない権利」を実効的なものとするためには、どのような連絡であれば勤務時間外でも許容されるのか、どのような連絡については労働者が対応を拒否できるのかを、業務内容や事業特性を踏まえて具体的に整理する必要があります。
研究会では、各企業における実態に応じたルール形成を促進することが重要とされており、労使協議を通じた社内ルールの整備を促すガイドラインの策定など、制度導入を支援する施策が検討されています。
本制度は「働いていない時間をいかに守るか」という新たな視点を労務管理に取り入れるものです。
対応のポイントまとめ
- 使用者が労働者に連絡可能な時間帯の明確化・制限を決めて運用する
- 許容される連絡の種類・緊急度の基準を業務内容や事業特性を踏まえて具体的に整理する
- 企業が労使協議を通じて社内ルール(ガイドライン・就業規則)を整備することが求められる
- 管理職を含めた組織全体の意識改革・研修体制を整備する
8:年次有給休暇の賃金算定の原則化
改正検討の背景
年次有給休暇については、働き方改革関連法により年10日以上付与される労働者に対して年5日の取得を使用者が時季指定することが義務付けられ、取得率は一定程度向上しましたが、依然として政府目標には達しておらず、さらなる取得促進が課題とされています。
時季指定義務の日数や時間単位年休については直ちに変更する必要性は高くないとされていますが、半日単位年休の位置付けや長期休暇取得の促進については引き続き検討課題とされています。
育児休業からの復帰者や退職予定者など付与期間が短い労働者への時季指定義務の適用についても整理が求められています。
改正検討の内容
特に重要な論点が年次有給休暇取得時の賃金算定方法の見直しです。
現行制度では、平均賃金・通常の賃金・標準報酬日額のいずれかによる支払いが認められていますが、日給制・時給制の労働者では年休取得時の賃金が通常より低くなる場合があり、これが取得抑制の一因となっていると指摘されています。
研究会では、これらの労働者についても原則として「通常の賃金」による算定へと見直す方向性が示されています。ただし実務上の事情も踏まえ、段階的かつ現実に即した制度設計が求められます。
想定される実務への影響
年次有給休暇制度の見直しは、取得日数の問題にとどまらず、取得しやすい環境整備を通じて制度の実効性を高めることを目的とするものです。特に賃金算定方法の原則化は、労働者が安心して休暇を取得できる環境整備に資する重要な見直しであり、企業には給与制度や就業規則の見直しを含めた対応が求められます。
対応のポイントまとめ
- 日給制・時給制の労働者の有給休暇も原則として「通常の賃金」による算定を行うことになる
- 賃金規程・給与計算システムの見直しと改修対応が必要
- 実務上の実情を踏まえ、段階的かつ現実に即した制度移行計画の策定が求められる
\ご状況に合わせて最適な勤怠管理システムをご提案いたします!/
企業に求められる「変革」
今回の労働基準関係法制の見直しは、「労働時間管理」「働き方の多様化」「労使コミュニケーション」「テクノロジー活用」といった複数の要素を横断する、いわば労務管理のパラダイム転換といえます。
報告書が示す方向性は、短期的に対応すべき制度整備と、中長期的に検討を深めるべき課題を整理した上で、今後の制度設計を労働政策審議会に委ねるという構造となっており、現時点では「確定した法改正」ではないものの、将来の法制度の骨格を形成する極めて重要な指針となっています。
企業に求められるのは、法改正の内容が確定してから対応するという従来型の受動的な姿勢ではなく、示された方向性を踏まえ、自社の働き方や労務管理の在り方を主体的に再設計していく姿勢です。特に、労働時間管理の高度化、就業規則の見直し、IT基盤の整備といった具体的な対応は、もはや将来の課題ではなく、今まさに着手すべき経営課題と位置付ける必要があります。
本改正は労働者保護の強化という側面を有する一方で、企業にとっては人材確保・定着を実現するための戦略的な機会でもあります。働きやすさと生産性の両立を実現できる企業こそが、今後の人材獲得競争において優位性を確立していくことになるでしょう。今後予定される労働基準法大改正は、企業に「適応」を求めるものではなく、「変革」を促すものです。今後の議論の動向を注視しつつも、先行的に準備を進める企業こそが、制度改正後の新たな時代において持続的な成長を実現することができるといえます。
\ご状況に合わせて最適な勤怠管理システムをご提案いたします!/
MJSの勤怠管理ソリューション
今こそ勤怠管理の見直しを!
勤怠管理の見直しは、法令遵守とともに、従業員のパフォーマンスやエンゲージメントの管理など、生産性向上にも役立ちます
クラウド勤怠管理システム
エッジトラッカー キンタイカンリ
PCやスマートフォンを利用して勤怠の打刻や残業などの申請が可能です。勤怠データは自動集計されるので、管理者はいつでも従業員の勤怠状況を確認することができます。異常な勤怠データがあればアラートも出るので、労務コンプライアンスの強化にも役立ちます。
- 財務・会計
- 給与・人事
- 勤怠管理
- SaaS
\ご状況に合わせて最適な勤怠管理システムをご提案いたします!/
筆者紹介
MJS税経システム研究所 客員研究員
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/
Edge Trackerシリーズ
従業員向けクラウドサービス
エッジ トラッカー
電子帳簿保存法対応
インボイス制度対応
リアルタイム、時短、見える化でビジネスを加速化するツール
「いつでも」「すぐに」「かんたんに」利用できるクラウド型業務管理サービスです。「経費精算」「勤怠管理」「給与明細参照」「年末調整申告」「電子請求書」のサービスから、ご希望に合わせてご利用いただけます。
- 経費精算
- 勤怠管理
- 給与明細参照
- 年末調整申告
- 電子請求書
- SaaS
クラウド経費精算システム
エッジトラッカー ケイヒセイサン
電子帳簿保存法対応
インボイス制度対応
「リアルタイム精算」で仕事の効率化を図る
従業員と管理部門の業務効率化を実現するクラウドサービス
PCやスマートフォンを利用して「いつでも」、「どこでも」、経費(交通費・交際費など)の入力や申請が可能です。ICカードやクレジットカードのデータ取込機能や交通費の自動計算機能を使えば入力もラクラク。承認もスムーズに進められます。
- 財務・会計
- 給与・人事
- 経費精算
- SaaS
クラウド勤怠管理システム
エッジトラッカー キンタイカンリ
日々の入力により働くの見える化を推進
従業員と管理部門の業務効率化を実現するクラウドサービス
PCやスマートフォンを利用して勤怠の打刻や残業などの申請が可能です。勤怠データは自動集計されるので、管理者はいつでも従業員の勤怠状況を確認することができます。異常な勤怠データがあればアラートも出るので、労務コンプライアンスの強化にも役立ちます。
- 財務・会計
- 給与・人事
- 勤怠管理
- SaaS
クラウド給与明細参照システム
エッジトラッカー キュウヨメイサイサンショウ
社員の利便性向上とコストダウンを実現
従業員と管理部門の業務効率化を実現するクラウドサービス
PCやスマートフォンを利用して「いつでも」、「どこでも」、給与明細など各種明細書を閲覧することができます。紙で出力する場合に比べて、印刷・封入・配付にかかる手間やコストを大幅に軽減できます。必要に応じて紙での発行にも対応可能です。
- 財務・会計
- 給与・人事
- 給与明細
- SaaS
クラウド年末調整申告システム
エッジトラッカー ネンマツチョウセイシンコク
あわただしい年末調整業務の改善とコストダウンを実現
従業員と管理部門の業務効率化を実現するクラウドサービス
PCやスマートフォンを利用して年末調整における各種申告書を作成することができます。手書きに比べて、各種申告書の配付・記入・回収にかかる手間やコストを大幅に削減できます。PCから用紙の出力が可能です。
- 財務・会計
- 給与・人事
- 年末調整申告
- SaaS
[デジタルインボイス対応] 電子インボイス送受信・インボイス電子化対応サービス
エッジトラッカー デンシセイキュウショ
電子帳簿保存法対応
インボイス制度対応
デジタルインボイスで経理DXは新たな次元へ
MJSの販売管理、請求管理、財務・会計の各システムとシームレスに連携し、受領した電子インボイスのデータをもとにMJSの財務・会計システムで仕訳の自動作成も可能です。
- インボイス
- SaaS


勤務間インターバル制度とは、終業時刻から次の始業時刻の間に一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を確保する仕組み。
この仕組みの導入を事業主の努力義務とすることで、労働者の十分な生活時間や睡眠時間を確保しようとするもの。