導入事例

税理士法人キャッスルロック・パートナーズ 様

2015年10月19日

税理士法人キャッスルロック・パートナーズ

キャッスルロック・パートナーズ(東京都世田谷区)は、税理士法人、社会保険労務士、司法書士が集まり、ビルの同じフロアに共同オフィスを構えているユニークな士業事務所である。中小企業のニーズが多様化するなか、ワンストップサービスを標榜する会計事務所は増えているが、同社のように同じフロアに独立した士業事務所が集まり、ワンストップサービスを実現しているところは珍しい。同社の税理士部門である税理士法人キャッスルロック・パートナーズは、経営者のよろず相談所という立場を活かし、税務から労務、法務に至るまで、経営者が抱える多様な課題に対応できるワンストップサービスの窓口として大きな役割を果たしている。今回の取材では、税理士法人キャッスルロック・パートナーズ代表の梅田泰宏氏(写真)に、事務所設立の経緯や顧問先支援への取り組みについて伺った。

ワンフロアに3士業が集まったパートナーグループ

―― 梅田先生の事務所は「キャッスルロック」という名称を冠していますが、税理士法人としては珍しいネーミングですね。どのような由来があるのですか。

梅田 スコットランドにあるエジンバラ城が建つ岩山をキャッスルロックといいますが、そこから取りました。城郭の基盤部分というイメージから、縁の下の力持ちとして中小企業を支える土台になろうという思いを込めてつけた名前です。
 この名前は、税理士法人設立の前に、ご縁のあった社労士さん、司法書士さんとグループを作ったときにつけたものです。
 当時、当社のオフィスに余裕があったので、会計、法務、労務をひとつにまとめ、中小企業にサービスを提供するというコンセプトのもと、会計事務所、司法書士事務所、社会保険労務士事務所が集まりました。事務所としてはそれぞれ独立していますが、対外的にグループとしての名前が必要と考え、「キャッスルロック・パートナーズ」としたのです。それを税理士法人の名称に流用しました。

―― 同じフロアに3つの事務所がそろったわけですか。珍しいワンストップサービスの形態ですね。

梅田 確かにあまり見ない形態ですね。中小企業の立場に立てば、とても便利だと思うのですが。
 今日も相続のご相談に来られたお客様がありましたが、同じテーブルで相続登記、相続税申告と、一度で済んでしまいました。
 私たちは来年、ダイヤモンド社から給与・労務関係のビジネス書を出す予定ですが、その内容がまさに、ひとつのテーブルで税務会計の相談を入り口にして、労務の話へと展開していく流れになっています。

―― やはり、中小企業との接点が一番多い会計事務所が窓口になるのですね。

梅田 はい。労務士事務所や司法書士事務所には、ある程度ピンポイントな相談事がないと、足を運びにくい。一方、会計事務所は経営全般というくくりで、相談のハードルも低く、お客様もよろず相談所的感覚で足を向けやすい。入り口としては最も適していると思います。

―― しかし、会計事務所が窓口になることに抵抗を感じる他士業の先生もいらっしゃるでしょう。

梅田 職域として多少かぶる部分はあるかもしれませんが、そこは信頼関係で十分カバーできると思います。私たちも、クライアントから補助金や社会保険などのご相談を受ければ、すぐにパートナーの先生に紹介しますし、役員変更登記、増資、本店移転なども、「全て当社でご案内します」という形で、パートナーの先生に回します。そのほうが私も楽ですし、機能的ですからね。

紹介のみで顧客拡大

―― 梅田先生は監査法人ご出身ということですが、なぜ独立されたのですか。

梅田 私は独立志向が強かったのでしょう。勤務会計士という立場に満足できず、監査法人になじめなかった。せっかく資格を取ったのだから、自分の力を試してみたいという思いが募り、29歳のときに監査法人を辞め、開業しました。
 もちろん、個人事務所で監査の案件が取れるわけもないので、税務を中心に、それこそワンルーム・マンションの一室からスタートしました。

―― 監査と税務は意外に接点がありません。その点で苦労されませんでしたか。

梅田 実家が法人として商売をやっていましたので、そこの申告書作成業務を手始めに、実務に入っていきました。私自身、商売人の家に育ちましたので、そういった中小企業の商売、ビジネスへの抵抗感はありませんでした。

―― 事務所をここまで発展させられた要因は何だとお考えですか。

梅田 最大の要因は開業したタイミング、時代がよかったことだと思います。バブルがあり、そしてITビジネスの起業ブームがありました。
 ITバブル期には、渋谷のビットバレーなどで人脈を広げ、多くの起業家の方々のご相談にも乗りました。監査法人出身の強みを生かし、幅広くご相談に乗っていました。
 当時は、広告に規制が入っていましたから、ご契約は全て人とのつながり、要はご紹介です。
 私も若くてフットワークも軽く、声がかかればどこにでも飛んで行きました。そのやり方は今でも変わらず、ほぼご紹介だけで顧問先は増えています。

―― つまり、それだけお客様に評価されてきたということですね。

梅田 評価していただいているからこそご紹介もいただける。クライアントに対してきちんとした仕事を誠実にこなしてさえいれば、社長に評価され、次のご紹介につながる。そのような信念に基づいてこれまでやってきました。
 ですから、スタッフの手当にしても、新規クライアントの取得数をひとつの目安にしています。

「iCompassNX」を活用した顧問先指導

―― 貴社は自計化率も高いそうですが、会計システムは何をお使いですか。

梅田 ほとんどの顧問先に、株式会社ミロク情報サービスの業務パッケージソフト「iCompassNX」を導入してもらっています。
 これは小規模法人、個人事業者向けのソフトで、会計、給与、販売などのパッケージで構成されています。
 記帳などの会計処理だけでなく、得意先管理や部門別損益計算、給与計算なども簡単にできますので、専任の経理担当者が少ない小規模の法人や、個人事業者に向いていると思います。

―― 「iCompassNX」で入力したデータは、クラウド経由で会計事務所と共有できるそうですね。

梅田 「iCompassNX」は確かにクラウドに対応していますが、当事務所の場合はクラウド経由で共有しているところもあれば、メールでやりとりしているところもあります。クラウド経由か、電子メールによる送受信かを選択できるところは便利ですね。
 そのほかに便利だと思ったのは、インターネット経由で顧問先とパソコンの画面を共有できることですね。ソフトの操作で何か問題が起きたときの早期解決が可能ですし、月次監査や決算処理、年末調整などの作業を効率化することができます。

―― ミロク情報サービスのシステムをかなり活用されているようですが、同社のシステムを導入したのはいつごろだったのですか。

梅田 ミロク情報サービスの営業マンが飛び込みで来られたのが最初で、以来、同社とは30年来のお付き合いになります。
 会計事務所を立ち上げたときに、さまざまなベンダーの営業マンが入れ代わり立ち代わり来られるなか、一番熱心だったのがミロク情報サービスの営業マンだったのです。
 そのような決め方が正しいとはいいませんが、私は性分で、感性が合ってこの人からなら買ってもよいと思える営業マンからつい買ってしまうのです。

―― やはり最終的には人対人だということですね。

梅田 そうですね。それは私たちと顧問先との関係にもいえると思います。相性が合うかどうか。お互いに理解し合えるかどうか。信頼関係が築けるかどうか。そこが仕事上、一番重要だと思っています。

―― 自計化において「iCompassNX」のようなツールを活用する最大のメリットは何でしょうか。

梅田 無駄を省ける点だと思います。結果、サービスの質を高めることができます。
 もちろん、ご要望があれば記帳代行はします。しかし、自社できちんと経理を把握してもらうためにも、顧問先には自計化をお勧めします。
 これはあくまでもお客様の利便性向上が目的です。その結果として事務所の生産性もアップする。それがお客様サービスの向上につながるという流れが理想的です。

セミナーや異業種交流会でクライアント同士の活性化を図る

―― マイナンバー制度や消費税軽減税率の導入などを控え、ますます会計事務所の質が問われる時代になってきました。今後の成長戦略についてはどのようにお考えですか。

梅田 顧問料の不文律が崩れてきている昨今の会計業界を考えると、これは難しい問題です。新規顧客で月額5万円が難しい現状。少し前までは法人5万円、個人3万円という暗黙のルールがありましたが、それがなくなってしまいました。
 試算表の作成や月次管理といった専門業務に対する報酬が1万~2万円というのはいかがなものかと思いますが、日本ではまだソフトの価値に対する認識が甘く、サービスに対する評価が上がりません。
 そのような状況に対応するための戦略は、正直ありません。強いて挙げるなら、先ほど申し上げましたように、クライアントに対して誠心誠意、地道にきちっとしたサービスを提供していくこと。その基本中の基本が、新規顧客の獲得につながる近道だと思います。私たちはその一点に注力します。急成長は望めないかもしれませんが、今あるお客様の満足を確実なものにしていきたいと考えています。

―― 過当競争が進むなかで、中小企業に寄り添い、経営にコミットしていくスタンスは、逆に高い評価を得られると思います。顧問先への経営支援では、どのような取り組みをされていますか。

梅田 不定期ですが、クライアント向けのセミナーを開催しています。先日はマイナンバー制度をテーマに行いました。20~30人の集客を見込んでいましたが、70人もの方々にお集まりいただき、大変驚きました。皆さん、新しい制度に手探り状態で、不安を抱えているのだと実感しました。
 セミナーでは、外部の専門家の方を講師としてお招きすることもあります。先日も商標法が変わった関係で、提携している弁理士さんに頼んで、ブランド構築のための新たな商標登録の仕組みなどについてご講演いただきました。セミナーの後に懇親会を設けることもよくあります。

―― 懇親会はどういった目的で行うのですか。

梅田 セミナーには同業種、異業種のさまざまなお客様がいらっしゃいますから、名刺交換していただきながら、私たちが間に入ってご紹介し、BtoBへとおつなぎすることもあります。
 いうなれば、一種の異業種交流会でもあり、顧問先の活性化が大きな目的だといえます。

―― セミナーや懇親会のほかに取り組まれている顧客支援があれば教えてください。

梅田 最近、多いのは事業承継支援です。
 高度経済成長期から頑張られてきた方々がリタイアを始めています。次世代へ事業を引き継がなければならないのですが、後継ぎがいない。うちでも事業承継が成功するケース、しないケースがあります。
 ご子息が家業とは別の道を歩まれており、創業者である社長から事業承継の相談を受けたケースでは、営業部長に打診し、MBOという形で引き継ぎに成功しました。同様のケースで、株の売買によって全部引き継いだ会社もあります。
 事業承継支援の形はでき上がりつつありますが、いずれにしても売り上げなどの数字が鍵になります。ですから、事業承継の選択肢を経営者に提案するのは、やはり税理士が適任だと思います。

自然体経営とネットワーク化が今後の事務所経営の鍵

―― キャッスルロック・パートナーズの将来像についてお聞きします。

梅田 これも正直にお話ししますが、今のところこれといった将来像はないのです。
 開業以来、流れに身を任せてここまで来ましたから。がむしゃらに働いているうち、いつの間にか顧問先が増え、その数に対応すべくスタッフを増やしていった。人が増えればオフィスが手狭になりますから、広い所に引っ越した。そのような感じです。
 とはいえ、今も顧問先が微増を続けてはいるものの、顧問料は低下傾向で単価としては右肩下がりになっています。これから事務所が大きくなるのか、そうではないのか。両方のパターンを想定し、その時々の状況に応じて臨機応変に対処していかなければならないと思っています。経営に硬直化は禁物ですから。
 顧問先に経営アドバイスをする立場にある私たち自身が、しっかりした計画を持つべきだとも思います。しかし、顧問先の経営状況に100%依存している以上、ある程度フレキシブルさも必要だというのが私の考えです。

―― 梅田先生の経営哲学は、いうなれば自然体の経営ですね。そのような柔軟な経営姿勢が事務所の発展につながったのだと思います。
 最後になりますが、会計事務所が目指すべき方向性について、梅田先生の考えをお聞かせください。

梅田 ずばりネットワーク化でしょう。外部の専門機関と提携し、クライアントのニーズに応えていくことが必要不可欠になると思います。単独で事務所を経営していくのは限界にきているのではないでしょうか。昨今の税制改正にしても、話題にも上らなかった変更が年度末になって突然出てきたりする。知っているか知っていないか、その違いは大きい。ほかの事務所から当社に移られてきたお客様の多くは、前の事務所では何も教えてくれなかったといいます。お客様は情報が欲しいわけです。しかし、ひとりであらゆる情報を仕入れ、発信するのは不可能です。そこはネットワークによって補っていくしかないと思います。

――本日はお忙しいところお話をお聞かせいただきありがとうございました。キャッスルロック・パートナーズのさらなる躍進を祈念しています。

導入事務所様のご紹介

梅田 泰宏(うめだ・やすひろ)

公認会計士。税理士。税理士法人キャッスルロック・パートナーズ 代表。昭和29年生まれ。中央大学商学部卒。昭和53年、監査法人中央会計事務所(現・みすず監査法人)入所。昭和58年、独立。梅田公認会計士事務所を設立。平成16年、社会保険労務士、司法書士との合同事務所「キャッスルロック・パートナーズ」を設立。著書に「これでわかった! 新 会社法で始める独立開業」(大和出版)、「経費で落ちるレシート・落ちないレシート」(日本実業出版社)、「領収書1枚で経理センスが身につく本」(東洋経済新報社)、「これだけは知っておきたい『税金』のしくみとルール」(フォレスト出版)、「会計がわかれば会社のしくみが見える!」(ナツメ社)など多数。

税理士法人キャッスルロック・パートナーズ

所在地 東京都世田谷区池尻2-31-24 信田ビル6階
代表者 梅田 泰宏
設立 平成18年1月
職員数 16名
得意分野 会計監査(公認会計士業務)、公開コンサルティング、短期調査等
URL https://www.sosapo.org/lp/castle_rock/
  • 本事例の掲載内容は取材当時のものです。

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