事務所インタビュー

2018年3月27日現在

中小企業の経営体質強化に取り組む会計事務所の取り組みを探る
地域とともに成長を続ける
税理士法人タックスサポート・イトカズ

国税出身、資産税に強みを持つ会計事務所の地域密着型経営と事業承継 増田税務会計事務所

6つの組織体からなる、沖縄でも屈指のアカウンティングファーム「ITACグループ」。その母体となるのが、税理士法人タックスサポート・イトカズ(沖縄県宜野湾市)だ。沖縄返還後まもなく開業した糸数税理士事務所は、施政権が米国から日本に移るなか、日本の税制を浸透させる役割を負いながら、当時から一貫して「経営サポート業」を掲げる。中小企業の経営体質強化に力を注ぎ、高度経済成長期の波に乗って拡大してきた。現在、税務会計はもちろん、経営診断、相続・資産税、事業承継、ライフプランと幅広く顧客ニーズに対応するとともに、セミナーなどを通じて情報発信を行い、地域の活性化に貢献している。今回の取材では、地域密着型会計事務所の生き残り戦略について、税理士法人タックスサポート・イトカズの那覇事務所所長・糸数弘和氏にお話を伺った。

沖縄における日本税制定着に貢献

―― 本日は、創業40年超の歴史を誇る沖縄の税理士事務所、税理士法人タックスサポート・イトカズの那覇事務所所長である糸数弘和氏に、開業以来中小企業の経営サポートに力を注いできた、その拡大戦略と理念経営について伺っていきたいと思います。まずは、貴社の沿革からお話しください。

糸数当社の創業は昭和50年になります。私の父、糸数哲夫が那覇市で開業し、翌年には宜野湾市に移転しました。当時の沖縄は、日本に返還(昭和47年)された直後で、米軍の施政権下における米国流の税制から日本の制度への移行期にありました。それまでは日本の税制を理解した税理士が少なく、そこに国税が入るということで、国としては日本の税制を周知させていくための協力者が必要だったわけです。父はその一人でした。
 折しも、日本が高度経済成長期に入った時期と重なり、お客様の数も順調に増えていきました。その後、顧客ニーズに合わせて、記帳代行やコンサルティング部門を分社化していき、10年前から、那覇市と宜野湾市の2拠点体制で事業を展開しています。

―― 現在の規模、組織体制について教えてください。

糸数所員数は現在56人です。社労士事務所をグループに加えたことや、那覇事務所での資産税部門創設などを機に社員数が増えてきました。  もっとも、資産税、相続税のニーズ拡大に伴い人員を増強したわけですが、この分野に関しては、平成元年に本社において資産税部門を創設しており、以降20年かけて、顧客開拓をしてきました。沖縄でも最近になって資産税ブームが起きていますが、当社はそのずっと以前から、資産税に取り組んでいたわけです。
 組織体制については、個人法人の資産運用、事業承継、相続対策に関するコンサルティングや決算診断などの株式会社ファイナンシャルリンク、記帳代行やライフプラン支援の株式会社アイ・マネージメント、社会保険労務士事務所サンマネージメントと、税理士法人タックスサポート・イトカズなど、全6組織でITACグループを形成しています。

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沖縄特有の顧客ニーズに対応する地域密着型事務所

―― 社労士事務所では、やはり関与先のバックオフィスとしてのサービスを提供されているのでしょうか。

糸数ワンストップの一環として社労士業務を捉えている事務所さんは多いと思います。当グループの社労士は、社労士業務をソリューション業務と位置づけています。バックオフィス的なルーティンではなく、労使間トラブルなど、非常時の問題解決をメインにサービスを提供しているのです。ルーティン業務はその延長にあるというのが当グループの社労士事務所がとっているスタンスです。

―― 単純な業務委託ではなく、一歩踏み込んでいるということですね。

糸数そうですね。お客様に何かあったときに、即座に対処できる機動力を重視しているのです。これは何も社労士業務に限ったことではなく、ITACグループ全体の方針でもあります。

―― 相続・事業承継について、沖縄での現状をお聞かせいただけますか。

糸数事業承継については、その前提として、沖縄は本土より10年ずれているという背景があります。理由はやはり「戦後」が長引いたということでしょう。そのため、ほとんどの会社は昭和25~30年頃の創業で、100年企業は数社しかありません。戦後直後の混乱期に創業した本土の会社と比べると、創業が約10年遅れているのです。
 ですから、沖縄で事業承継問題が取り沙汰されるようになったのは、ごく最近です。ただ、情報としてそのような問題が発生することは、それ以前から予測できていますから、皆さんの関心は高いと思います。

―― そのような地域性があるのですね。他に沖縄特有の傾向はありますか。

糸数大きな特徴は、サービス業が大半を占めていることです。製造業の会社はほとんどありません。サービス業と製造業では、事業承継に対する構え方が若干異なります。製造業における技術の伝承という重い課題が、サービス業にはないからです。
 基本的にサービス業では、人脈と資金繰りが引き継がれればよいので、事業承継における問題は金銭的なことが中心になりがちです。ですから、資金的な問題がクリアできれば、他人に譲渡、売却、あるいは潔く畳んでしまうお客様も少なくなく、当社では、M&Aサポートなどのサービスもご提供しています。

―― M&Aのマッチングサービスでは、かなりの専門知識が必要になりますが、そのあたりの体制はいかがですか。

糸数M&Aで重要なのは企業評価算定ですが、自社の資産税部門が、簡易評価ではなく本式の株式評価を行っています。  また、ミロク情報サービスの子会社である株式会社MJS M&Aパートナーズ(mmap)にサポートしていただくこともあります。自社の資産税部門でしっかりと企業評価を算定しつつ、状況を見ながら「mmap」を活用するなど、柔軟に対応しています。

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MJSの「ACELINK NX-Pro」を基幹システムとして活用

―― 自計化推進にも積極的に取り組まれているとお聞きしていますが、会計システムは何をお使いですか。

糸数基幹システムとしては、ミロク情報サービス(以下:MJS)のACELINK NX-Proを使っています。MJSのシステムは導入して、かれこれ25年になります。
 自計化で主に活用しているソフトは、iCompass NX会計(小規模法人、個人事業者向け業務パッケージソフト)、iCompass NX会計 Plusです。ただ、基本的にはお客様の判断を仰ぎ、お客様が迷われているようであれば、予算に応じてMJSのソフトをご提案させていただくという形を採っています。

―― MJSのソフトを推奨される理由は何ですか。

糸数やはり、互換性の高さですね。MJSのシステムは広くさまざまなメーカーのソフトに対応できるからです。

―― 自計化率はどれくらいですか。

糸数6割ほどになります。といっても、がむしゃらに自計化推進に取り組んでいるわけではありません。あくまでもわれわれは、お客様の経営サポートに重きを置き、一番有効なシステムをお客様とともに選んでいくということです。

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労働環境の改善が急務

―― 貴社の経営理念・経営方針を教えてください。

糸数中小企業の経営サポート業に徹するが第一です。そのために、①儲けが創れる、②社会貢献ができる、③社会の変化にしなやかに対応する企業づくりを目指しています。
 具体的にどうするのかというと、これまでMJSを中心とした会計システムをうまく活用することで業務効率を高め、ある程度の時短を実現させてきました。しかし、それでもなお残業時間が長すぎます。また、仕事の結果ばかりが重んじられ、過程は評価されない。こういった状況から脱却し、より働きやすい環境をつくるには、インフラ整備が不可欠だと私は考えました。
 そこで現在、当社では3人1組の課をつくっています。その3人で仕事の内容、進捗状況を確認し合い、結果だけでなくプロセスも共有するのです。仕事がうまく進んでいない社員がいたら、3人で話し合って解決していく。あるいは、お互いに声掛けをして極力残業を減らすなど、積極的にコミュニケーションを取らせるよう指導しています。

―― その効果のほどはいかがですか。

糸数最近では、電子申告の普及もあって、残業する社員の数も残業時間もかなり減ってきています。ただ、以前がひどすぎました。徹夜をする社員もいた10年前よりはましになったという程度ですから、まだまだ現状に満足することはできません。
 繁忙期に残業を増やして対応するというやり方は、今や時代遅れとなってきました。効率を上げて規定時間内で対処するという時代なのです。であれば、根本的にやり方を考え直さなければなりません。今、社内でもこの問題について議論しているところです。

―― 技術の進歩による新しいツールの活用も重要になりますね。

糸数そうですね。うちはここ5年ほどで、大きく人が入れ替わりました。
 ちょうど世代交代の時期に当たっていたのです。結果、平均年齢も下がったので、インフラを整備し、新しいツールやシステムを導入するにはちょうどよいタイミングだと思います。
 ただ、最近は要介護の親御さんを抱える社員もいらっしゃるようになったので、そういった家庭の事情を考慮して、インフラの見直しを図っていかなければならないと考えています。家庭と会社との両立を図り、仕事を継続できるような仕組みもつくっていきたいと思っています。

―― 人手不足が特に深刻な業界ですから、なおさら、そういった雇用環境の改善は必要ですね。

増田祐司特に沖縄は、史上最悪の人手不足状態にあるといっても過言ではありません。まずは求職者にこの業界を選んでいただかなければならないのですが、そこでネックになるのが、残業の多さだと思うのです。
 私自身はこの仕事が好きですし、経営者をはじめとする人との出会いも多く、楽しくてやりがいのある職業だと思っていますので、若い人たちにもぜひお勧めしたいと思います。なのに、残業時間が多いことで敬遠されてしまうのであれば、それはとてももったいないことです。そういった問題も含めて、業務の改善は急務だと思っています。

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ITACグループが掲げる 「経営サポート業」とは

―― これからAIの時代が到来するといわれますが、会計事務所に与える影響を、先生はどう考えますか。

糸数ポイントは人間力だと思っています。私たちは長年「お客様の経営サポート業」を掲げてきました。職業柄、経営者の方々と直接お会いする立場にありますから、知識はもちろんのこと、精神的にも幅の広さが求められます。そして、AIの時代こそ、その質がますます問われるようになるのではないでしょうか。精神的に経営者の心の支えになることは、やはり人間でなければできません。ですから、当社としては社員の人間力の醸成についても、サポートしていかなければならないと考えています。

―― 「経営サポート業」について、具体的にどのようなサービスを展開されているのか教えてください。

糸数ひとつは、MJSのACELINK NX-Pro会計大将と連動している決算診断システム「社長の四季」(株式会社プロス)や、ACELINK NX-Pro会計大将のオプションシステムである経営分析ツールを活用した経営サポートがあります。そのほか、セミナーや研修会といった形でのお客様への情報発信や、ライフプランや労務管理リスク、相続資産税といったテーマで、大小織り交ぜて年間15回ほど実施しています。また、金融機関さんや不動産会社さんからご提案いただいて、タイアップで開催するセミナーも、年に数回行っています。

―― そういったセミナーは、顧客獲得の機会にもなっているわけですね。

糸数そうですね。ただ、私たちとしては営業というより、地域活性化のための情報提供というスタンスで臨んでいます。社会貢献はしたいけれども、沖縄という限られたマーケットのなかで顧客を取り合うことは極力避けたいというのが、われわれの本音です。ですから、単純な件数拡大に走るのではなく、既存のお客様も含め、地域との信頼関係をより深めることで、事務所経営の安定・拡大を進めていく。それが「経営サポート業」という看板を長年掲げてきた当社の方針なのです。

―― 「経営サポート業」を掲げ、税務、ファイナンス、労務と、総合支援体制を構築されてきた結果、今のITACグループが形成されたわけですね。

糸数そうです。ただ、それも全て内部で対応するのではなく、外部の専門家の方々と協力しながら、お客様をサポートしていくというスタンスを大事にしています。実は、ITACグループの中には、外部の中小企業診断士、司法書士、弁護士の先生方とつくっている有限責任事業組合ニライ・ネットワークという組合がありまして、こちらでそれぞれの専門性を持ち寄り、協働でお客様の問題に対応しています。

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顧客目線を堅持しつつ 環境の変化に柔軟に対応

―― 会計業界は今や変革の時代です。タックスサポート・イトカズはそれをどう乗り越えていくのでしょうか。最後に中長期的なビジョンをお伺いします。

糸数会計業界も、IT、AIの進歩で新たな時代を迎えつつある電気・自動車産業と同様、今までとは全く違う新たな局面を迎えているという気がします。
 最終的には企業規模の勝負になるのではないでしょうか。インフラに対してどれだけ投資できるかで差がついてくるのではないかと思っています。
 この激動の時代を乗り越えていくには、まずは規模の拡大が必須だろうと思います。そのためには効率化も含め、会社として機動力を高めていかなければなりません。環境の変化に柔軟に対応できる企業体質につくり替えていかなければならないと思います。とはいえ、儲けにばかり固執しては、われわれの経営理念・経営方針に背くことになります。あくまでもお客様の発展が自分たちの利益につながるという観点に立って取り組んでいく。これが当社の戦略の要になると思います。

―― プロダクトアウトではなく、あくまでもマーケットインで臨むということですね。

糸数マーケットイン、お客様目線で考えることが、当事務所の歴史であり、気質です。そして、それは当社の最大の強みだと思いますし、だとすれば、今まさにITACグループの時代が来たといえると思います。
 この先、ツールの進化、環境変化に大きく影響を受けることは間違いないでしょう。われわれとしては、古いものにとらわれずに前に進んでいくつもりですが、ツールはあくまでもツールです。重要なのは、それを人間がどう活用していくか、それが戦略だと思います。そこを乗り越えて初めて、10年先が見通せるようになるのではないかと思っています。

―― 本日は、とても興味深いお話を伺うことができました。今後のタックスサポート・イトカズの発展を祈念いたします。ありがとうございました。

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糸数弘和(いとかず・ひろかず)

所長概要糸数弘和(いとかず・ひろかず)

税理士法人タックスサポート・イトカズ 那覇事務所所長・税理士。医業経営コンサルタント。ファイナンシャルプランナー。

税理士法人タックスサポート・イトカズ

事務所概要税理士法人タックスサポート・イトカズ

所在地 那覇事務所 沖縄県那覇市古島1-4-9
宜野湾事務所 沖縄県宜野湾市我如古446-1
URL http://www.kaikei-home.com/itokazu/
代表社員税理士(総代) 糸数哲夫
創 業 昭和50年
業務内容 税金に関する相談・申告、医業経営コンサルタント、会計業務、決算書分析

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