第5回 雇用保険制度の仕組み

労務管理

2020/06/03

新型コロナウイルスの感染拡大により休業を余儀なくされた企業の多くが「雇用調整助成金」の活用をしています。そもそも助成金(雇用関係助成金)は、「雇用保険被保険者※1」を対象※2として、「雇用保険適用事業所※3」を有する企業が申請することにより審査に通れば受給できるものですが、なぜ「雇用保険被保険者」「雇用保険適用事業所」であることが必要となるのでしょうか?今回は、意外と知られていない「雇用保険制度」の仕組みについて説明したいと思います。

※1 企業に継続的に雇用され、1週間に20時間以上勤務する労働者

※2 新型コロナウイルス感染症対策としての「緊急雇用安定助成金」は、例外的に雇用保険被保険者以外の労働者を対象としています

※3 雇用保険被保険者を1名以上雇用する事業所

雇用保険の目的

雇用保険は、勤めていた会社を失業した場合に受給可能な「失業手当※4」や「育児・介護休業給付金」等、労働者が受給するための保険、という認識が一般的です。しかしながら、他にも重要な目的があります。

※4 正確には「求職者給付(基本手当)」といいます。

雇用保険は「労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ること」(雇用保険法第1条)とされています。つまり、労働者の「失業」のみならず「雇用維持」や「教育訓練」にも手当が給付されるということです。助成金もこれらの目的の上に存在しており、それは、助成金の財源を確認すれば一目瞭然です(図1参照)。

雇用保険料の内、2/3が失業等給付(国庫負担あり)、1/3が助成金等(雇用保険二事業/国庫負担なし)の財源となっており、失業等給付分は労働者と事業主が折半、助成金分は事業主が全額負担しています。雇用保険適用事業所を有する企業は保険料を納めている以上、当然に助成金を受給する権利があるという訳です。

雇用保険も「保険」という観点から考えれば、保険料を納めている労働者の「失業」という「事故」に対して失業等給付、「育児」や「介護」により休暇を取得することで給与が支払われなくなる「事故」に対して育児・介護休業給付、「定年退職後の継続雇用」で給与が大幅ダウンという「事故」に対して高年齢雇用継続給付が行われます。

また同様に、保険料を納めている企業の「労働者を解雇せざるを得ないほどの非常事態」「人材教育が必要な事態」や「緊急雇用が必要な事態」という「事故」に、各種「雇用関係助成金」が助成されます。かつてないほど話題になっている「雇用調整助成金」も、企業が納めている保険料が財源ですから、積極的に活用すべきです。

最後に失業等給付についてもう少し詳しく述べておきます。単に「会社を退職したらもらえるもの」と思っている人が多いのですが、実際にはそうではありません。確かに、受給要件を満たしていれば、自己都合か否かにかかわらず、失業した場合に受給資格が発生します。正確には「失業手当」とはいわず、「求職者給付(基本手当)」といいます。ハローワークにて休職の申し込みを行い、就職の意思と能力があるにもかかわらず、「失業の状態」にあることが受給するための最低条件となり、就職活動を前提としない限り受給できないのです。それが証拠に、自分から会社を退職した「自己都合退職」の場合は、適切に手続きを行ったとしても7日間の待期期間+給付制限期間があり、受給開始までおよそ3か月待たなくてはなりません。「自分で会社を辞めたのだから、まずは1日も早く就職できるように頑張って、それでもなかなか転職先が見つからなければ手当を支給しましょう」という意味のものです。同じ失業でも解雇や雇止め、会社の倒産のような「会社都合退職」の場合は、最低7日間の待期期間のみで受給可能で、最大330日(障害者等の就職困難者は最大360日)受給できる場合があります(自己都合退職の場合は最大150日)。新型コロナウイルス感染症の影響で勤務先の業績が悪化し、退職を余儀なくされた場合などは「会社都合退職」に当たります。

以上のように、雇用保険制度は企業に雇用されている労働者はもちろんのこと、雇用している企業も当然に活用できるものなのです。

筆者紹介

MJS税経システム研究所 客員講師
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/

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