第9回 副業・兼業に伴う労災保険の改正事項

労務管理

2020/09/30

ここ数年副業を解禁する大手企業が増加したこともあり、副業を始める人が増えているようです。私の事務所にも、「従業員が副業を希望しているが、認めなければいけないのか?」「労働時間管理はどうすれば良いのか?」「就労中の事故等の場合、労災保険の扱いはどうなるのか?」など、副業・兼業の場合の労務管理に関するお問い合わせが増えています。
労働時間管理については、複数の会社等での労働時間を通算することになっています(労働基準法第38条)が、政府でこのルールの見直しが進められています。
労災保険の扱いについては令和2年9月1日に改正・施行されましたので、今回はこの改正内容について簡単にご説明いたします。

複数の会社等に雇用されている労働者の労災保険給付

令和2年9月1日より「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)」が施行され、複数の会社等に雇用されている労働者の方々への労災保険給付が変わりました。
改正法の施行日(令和2年9月1日)以降に、けがをした労働者の方や病気になった労働者の方、お亡くなりになった労働者のご遺族の方が以下の改正事項1・2の対象となります

※原則としてけがなどをされた時点で、複数の会社で働かれている方が対象です。

<改正事項1 賃金額を合算して保険給付額等を決定>

現行制度・・・
災害が発生した勤務先の賃金額のみを基礎に給付額等を決定
改正後・・・・
すべての勤務先の賃金額を合算した額を基礎に給付額等を決定

(※対象となる給付は、休業(補償)給付、遺族(補償)給付や障害(補償)給付などです。)

改正前までは、けがや病気の原因となる事故や出来事があった会社のみの賃金額を基に保険給付額が決まっていたので、複数の会社等から給与が支払われていたとしても少ない給付額しか受給できませんでした。今回の改正によりすべての賃金の合算額を基に給付額が決まるので、複数の会社等で働く労働者にとっては大きな改正と言えるでしょう。

<改正事項2 労働者への負荷(労働時間やストレス)を総合的に評価>

現行制度・・・
それぞれの勤務先ごとに負荷(労働時間やストレス等)を個別に評価して労災認定できるかどうかを判断
改正後・・・・
それぞれの勤務先ごとに負荷(労働時間やストレス等)を個別に評価して労災認定できない場合は、すべての勤務先の負荷(労働時間やストレス等)を総合的に評価して労災認定できるかどうかを判断

(※対象となる疾病は、脳・心臓疾患や精神障害などです。)

今回の制度改正では、けがをしたときや病気になったときなどに、2つ以上の会社等に雇用されている方や、けがをしたときや病気になったときなどに1つの会社等でのみ雇用されている場合(又はすべての会社等を退職している場合)であっても、そのけがや病気などの原因・要因となるもの(例;長時間労働、強いストレスなど)が、2つ以上の会社等で雇用されている際に存在していたならば、制度改正の対象となります。また、労働者の方だけでなく、特別加入者の方についても今回の制度改正の対象となります。

働き方改革により「柔軟な働き方」が推奨されていることに加えて、新型コロナウイルスの影響で収入が減少してしまい、副業・兼業を余儀なくされている労働者も増加しているようです。使用者としての安全配慮義務の観点からも、今まで以上に従業員の副業・兼業に関する状況を把握しておくことが重要だといえます。
(参考:厚生労働省「労働者災害補償保険法の改正について~複数の会社等で働かれている方への保険給付が変わります~」)

筆者紹介

MJS税経システム研究所 客員講師
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/

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