第11回 副業・兼業の労働時間管理

労務管理

2020/12/02

前々回、副業・兼業に伴う労災保険の扱いについて説明いたしましたが、今回と次回の2回に渡り、副業・兼業の労務管理、特に労働時間管理にスポットを当てて見たいと思います。

政府が推し進める「働き方改革」の柱のひとつに、「柔軟な働き方がしやすい環境整備」があります。その中で、副業・兼業について、ガイドラインが策定(「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」という)平成30年1月、厚生労働省)されていますが、令和2年9月1日に改正されましたので、その内容について説明いたします。

副業・兼業の労働時間管理の原則

労働者が、事業主を異にする複数の事業場において、「労働基準法に定められた労働時間規制が適用される労働者」に該当する場合に、労働基準法第38条第1項の規定により、それらの複数の事業場における労働時間は通算しなければなりません。また、法定労働時間(労働基準法第32条)についても、その適用において自らの事業場における労働時間及び他の使用者の事業場における労働時間が通算されます。例えば、同じ日にA社の事業場で6時間、B社の事業場で4時間労働した場合は、通算10時間労働したことになります。この場合、法定労働時間を超えて労働した時間の2時間分については法定時間外労働となり、当然に割増賃金が発生することは言うまでもありません。そしてこの場合の原則的なルールとして、その労働者と時間的に後から雇用契約(労働契約)を締結した会社が、割増賃金を支払う義務を負うとされています。

ただし、複数の事業場での労働が、下記の①②に該当する場合はそれぞれの労働時間を通算しないことが、ガイドラインの改定版に明示されました。
①労働基準法が適用されない場合(フリーランス、アドバイザー、顧問、理事、監事等)
②労働基準法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合(管理監督者等)

時間外労働時間の上限規制等との関係

ガイドラインによると、以下のように明記されています。

「時間外労働のうち、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件については、労働者個人の実労働時間に着目し、当該個人を使用する使用者を規制するものであり、その適用において自らの事業場における労働時間及び他の使用者の事業場における労働時間が通算される。

時間外労働の上限規制が適用除外又は適用猶予される業務・事業についても、法定労働時間についてはその適用において自らの事業場における労働時間及び他の使用者の事業場における労働時間が通算される。」(ガイドラインより一部抜粋)

ただし、36協定に特別条項を設ける場合の1年についての延長時間の上限については、個々の事業場における36協定の内容を規制するものであり、それぞれの事業場における延長時間を定めることとなります。また、36協定において定める延長時間が、事業場ごとの時間で定められていることから、それぞれの事業場における時間外労働が36協定に定めた延長時間の範囲内であるか否かについては、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とは通算しなくてよいと明示されています。

休日等の取扱い

「休日」等の取扱いにつきましては、以下の通りガイドラインに明示されています。

「休憩、休日、年次有給休暇については、労働時間に関する規定ではなく、その適用において、自らの事業場における労働時間及び他の使用者の事業場における労働時間は通算されない。」(ガイドラインより一部抜粋)

つまり、「労働時間」については通算するのが原則ですが、今回のガイドライン改定までは見解の分かれていた「休日」等について、「通算されない」と明示された点は、実務運営上、大きな意義をもっていると言えます。

次回は、副業・兼業の確認方法や今回のガイドラインの改定で示された「管理モデル」について説明したいと思います。

筆者紹介

MJS税経システム研究所 客員講師
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/

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