第12回 副業・兼業の労働時間管理2

労務管理

2021/01/06

前回は、副業・兼業の労働時間管理の原則、時間外労働時間の上限規制等との関係、休日等の取扱いについて説明させていただきました。今回は、副業・兼業の確認方法と、令和2年9月1日に改正された「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下、「改定版」という)の大きなポイントでもあります「管理モデル」について説明いたします。

副業・兼業の確認

改定版では、「使用者は、副業・兼業に伴う労務管理を適切に行うため、届出制など副業・兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設けておくことが望ましい」と明記されています。

具体的な方法としては、就業規則、労働契約等に副業・兼業に関する届出制を定め、既に雇い入れている労働者が、新たに副業・兼業を開始する場合の届出や、新たに労働者を雇い入れる際の労働者からの副業・兼業についての届出について、副業許可申請書等の所定の書式を用意する必要があります。

また、労働者から確認する事項としては、以下のものが考えられます。
・副業・兼業先の事業内容
・副業・兼業先で労働者が従事する業務内容
・労働時間通算の対象となるか否かの確認

労働時間通算の対象となる場合には、併せて次の事項について確認し、各々の使用者(会社)と労働者との間で合意しておくことが望ましいです。
・副業・兼業先との労働契約の締結日、期間
・副業・兼業先での所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻
・副業・兼業先での所定労働時間の有無、見込み時間数、最大時間数
・副業・兼業先での実労働時間等の報告の手続き

管理モデル

前回、本業と副業・兼業の労働時間は通算しなければならないとお伝えしましたが、正確な労働時間の申告や通算管理について、本業の会社、副業・兼業の会社、労働者、それぞれに多大な手続き上の負担が伴うことになります。このような状況を少しでも改善するため、改定版では、「労働時間の申告や通算管理における労使双方の手続き上の負担を軽減し、労働基準法に定める最低労働条件が遵守されやすくなる簡便な労働時間管理の方法」(管理モデル)が示されました。

管理モデルは、「副業・兼業の開始前に、副業・兼業を行う労働者と時間的に先に労働契約を締結していた使用者(使用者A)の事業場における法定外労働時間と、時間的に後から労働契約を締結した使用者(使用者B)の事業場における労働時間(所定労働時間及び所定外労働時間)とを合計した時間数が、単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内において、各々の使用者の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定し、各々の使用者がそれぞれその範囲内で労働させることとするものであること。また、使用者Aは自らの事業場における法定外労働時間の労働について、使用者Bは自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ自らの事業場における36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金を支払うこととするものであること。」と示されています。(管理モデル例を参照)

この管理モデルを用いることにより、使用者A及び使用者Bは、副業・兼業の開始後においては、それぞれあらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働させる限り、ほかの使用者の事業場における実労働時間の把握を要することなく労働基準法を遵守することができることになります。

実際に管理モデルを導入するには、使用者A(本業先)が管理モデルにより副業・兼業を行うことを労働者に求め、労働者を通じて使用者B(副業・兼業先)がこれに応じる必要があります。使用者Bは、管理モデルを用いれば労働時間管理を簡便なものとなるメリットを受けることができる一方、使用者Bにおける労働時間は所定内か所定外であるかにかかわらず、すべての時間に割増賃金の支払い義務が生じるというデメリットがあります。

今後、自らの事業場の労働時間のみ管理すればよいので、管理モデルを用いる場合に限り副業・兼業を許可する、という本業先が増えることが予想されますので、副業・兼業先も、管理モデルの導入を受け入れて当該労働者を採用するかどうか、コスト面と合わせて慎重に検討する必要がありそうです。

筆者紹介

MJS税経システム研究所 客員講師
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/

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