実務経営ニュース2020年2月号巻頭特別企画インタビュー

新たなイノベーションの創出を目指す
ミロク情報サービス

株式会社ミロク情報サービス 代表取締役社長 是枝周樹

2020年2月7日

株式会社ミロク情報サービス(東京都新宿区)は創業44年目を迎える財務・会計システムの老舗ベンダーである。2019年3月期までに8期連続の増収増益を達成し、会計業界にとどまらずその知名度を高めている。2020年3月期も好調を持続し、9期連続の増収増益を見込んでいる。その背景には、会計事務所と中小企業の経営革新を支援するという理念のもと、時代や技術の変化にいち早く対応しながら新たな製品やサービスを開発・提供し続けてきたことがある。今回の取材では、同社の代表取締役社長の是枝周樹氏に、好調持続の要因や最近の取り組み、来期の展望などについてお話を伺った。(撮影 市川法子)

社員が成長の最大のドライバー

―― 株式会社ミロク情報サービス(以下、MJS)は、40年以上の歴史を持つ財務・会計システムの老舗ベンダーです。前期(2019年3月期)までに8期連続の増収増益を達成し、今期(2020年3月期)も好調を持続しています。

本日は、同社の是枝周樹社長にお話を伺います。まずは今期の業績見通しからお聞きします。

是枝9期連続の増収増益、9期連続の最高益を目指し、全社が一丸となって取り組んでいます。上期は、Windows7のサポート終了や消費税アップ前の駆け込み需要などを受け、業績予想を上方修正しました。

また、中堅・中小企業向けの主力のERP製品の販売において、新規のお客様からの引き合いが多くあり、好調に推移しています。

金融機関との協業においては、中小企業の事業承継やシステム連携(API接続)など、さまざまなアライアンス施策があるなかで、各地域の支社が地元の金融機関と販売パートナー契約を結び、そこから紹介されたお客様に製品を販売する流れが形成されています。

―― 金融機関との信頼関係の構築が進んでいるわけですね。
是枝はい。ここ1年で結び付きが大変強くなっており、今後ますます強化されていくと思います。

ちなみに、ご紹介いただいたお客様への製品販売の実績が1年間で1億円に達し、受注や進行中の案件を含めた全体では、それに2億円ほどプラスされます。

その一方で、開発投資や人材強化などの投資も視野に入れ、通期計画の数字は据え置いています。

―― この好調持続の要因はどこにあるのでしょうか。
是枝まず考えられるのは、さまざまなメディアを通じて、当社の認知度を高める活動を地道に続けてきたことです。

テレビCMや雑誌などで「財務・会計、税務のMJS」とうたい続けることにより、10年前に比べて会社の認知度が格段に上がっています。

―― 2014年から、イメージキャラクターとして俳優・タレントを起用したのも、一般企業に向けたブランディング戦略の一環ですね。
是枝はい。6年前ですから、ちょうど増収増益が連続する期間とオーバーラップしています。

知名度の向上は営業上、大きな効果をもたらします。例えば、営業担当者が初めて訪問する会社で経理担当の方にご挨拶するとき、知名度が低いと自社の紹介から始めなければなりません。

これはこれで必要なスキルですが、CMや雑誌広告などをご覧になっている方は、営業担当者が差し出す名刺を見ると、「ああ、MJSか」となり、スムーズに商談に入ることができます。

その結果、多くの新規契約の獲得につながり、企業向けの売上高のうち、30%近くを新規のお客様が占めています。このように、新規のお客様が成長ドライバーのひとつになっています。

また、新規のお客様が増えますと、ソフト保守サービスの収入が積み上がります。増益という観点からは、新規契約分だけサービス収入が増加し利益率が高まるという構造が10年以上続いています。8年間の増収増益を総括すると、このようにいえるでしょう。

―― 8期連続というのは驚異的ですね。
是枝志半ばなもので、実は全く実感がありません。
―― まだ道程にすぎないということですね。
是枝ええ。今期計画は前年対比で20%増ですから、営業部門は大変ですが、多岐にわたる商品・サービスをソリューションとして提案する営業力とコンサルティング能力が、格段に上がっています。

そう考えると、社員が最大の成長のドライバーといえます。会社の財務基盤が安定しているからこそ、製品・サービスや人材育成への投資ができ、お客様満足度の維持・向上が可能になると考えています。

時代の変化はイノベーション創出のチャンス

―― 是枝社長は、昨今のドラスチックなテクノロジーの変化をどのよう受け止めていますか。
是枝一言でいうと、新たなビジネスチャンスと捉えています。

例えば、フィンテック系で実績を上げている振り込み代行サービス「楽たす振込」では、取引量が月間250億円に達しましたので、年換算で3000億円を超えます。今後、さらに増える可能性も十分にあります。

手数料収入のみなので売上は低いのですが、当社を通過する企業間取引の金額が3000億円ということですから、そこに大きなビジネスチャンスが生まれます。

―― どのような形でイノベーションを創出していこうとお考えですか。
是枝重要なのは、会計事務所とウィンウィンの関係を築くことです。そのためには、会計事務所の顧問先企業の顧客満足度をさらに向上させるサービスを提供する必要があります。
―― 差し支えなければ、どのような取り組みをお考えか紹介していただけますか。
是枝まずは、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進です。それにより業務システムの刷新を進め、経営のあり方や働き方の改善を支援したいと考えています。

その取り組みのひとつとして、電子インボイス対応や受発注業務のためのクラウドソリューションの提供があります。2023年から導入されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除の際に必要な手続き要件となりますので、その対応やITによる業務の効率化が必須となります。

そうなると、必然的にペーパーレス、DXも進みますから、会計事務所もそれに合わせた経営や事務所運営が必要になるはずです。テクノロジーを駆使して、会計事務所と顧問先企業の双方にとって有益な仕組みづくりを目指しています。

ただし、スピードや正確性、データの保存期間などによって、オンプレミスとクラウドをうまく使い分ける必要があるでしょう。オンプレミスとクラウドのそれぞれに長所と短所があるからです。その点、われわれは処理スピード、他社システムとの連携なども強みとしています。

AIを活用した製品やサービスの拡大も考えています。例えば、AI監査支援やAIチャットボットのようなものです。

フィンテック分野への挑戦と働き方改革の支援

―― ここからは、現在提供されている製品やサービス、今後力を入れていく取り組みなどについて伺いたいと思います。
是枝まず、企業向けの新システムの開発を加速させています。具体的には、小規模事業者向け会計・給与のクラウドサービス「かんたんクラウド」の認知度を上げていきます。

並行して、ビジネスクラウドプラットホーム「bizsky(ビズスカイ)」を通じて、多彩なクラウドサービスの提供も推進していきます。これらの取り組みは、主として中小企業支援のためのものです。

また、冒頭で申し上げたように金融機関とのネットワーク強化を進め、さまざまなファイナンスサービスを提供したいと考えています。

―― 会計事務所に対する支援についてはいかがでしょう。
是枝私は、顧問先企業の資金管理の分野に会計事務所が関わっていただくことが極めて重要だと考えています。

会計事務所は、顧問先企業の財務状況を熟知されていますので、所長先生や職員さんが顧問先企業のCFO(チーフ・ファイナンシャル・オフィサー)としての役割を果たせるかどうかが大きなポイントになると思います。

―― 会計事務所は、従来の記帳代行サービスや税務申告だけでなく、顧問先企業の経営を支援することが生き残りにつながるということですね。
是枝そのとおりです。
―― 中小企業になかなかCFOは置けませんから、会計事務所がその役割を担い、ファイナンス戦略を支援できれば、大きな付加価値を生む新しい取り組みになりますね。
是枝はい。顧問先企業が安心して本業に打ち込める環境をつくっていく。こうした基本的なことが、小規模事業者にとって最も重要です。
―― 金融機関を持ち、決算書を活用して中小企業金融を行っている会計ベンダーもありますね。
是枝まさに象徴的な取り組みだと思います。われわれは金融機関や会計事務所と連携しながら顧問先企業の資金需要を効率的に満たす仕組みづくりに注力していきます。ここはサービスというよりも、ソリューションとして急激に伸びていく分野になるのではないかと思っています。

もうひとつ、会計事務所も一企業と考えて、事務所内の働き方改革の推進を支援します。

われわれには、他の会計ベンダーが持っていない、ERP製品で培ってきたノウハウがあります。

例えば、20~50人規模の大型事務所の給与明細を完全にデジタル配信したり、出勤時刻を打刻したり勤務超過時にアラートを出したりする製品ラインアップがそろっており、これらを事務所経営にご活用いただきたいと考えています。

労働基準法の改正で時間外労働の規制が強化され、罰則が科せられることになりましたから、会計事務所の経営においてもレピュテーションリスクが高いと思います。それらに対するソリューションを提供しながら、事務所経営の改革、生産性の向上を図り、顧問先との新たな関係づくりも行えるようにします。

―― 最近はだいぶ改善されたものの、繁忙期の会計事務所の労働環境は決してよいとはいえません。本気で働き方改革に取り組むには、貴社が提供するようなテクノロジーをどう活用するかが重要になりますね。
是枝そのとおりです。われわれも会計事務所に対し、しっかりした労働環境も含めて、事務所経営の最適化を提言していくことが第一歩だと考えています。

中小企業のCFOの役割を務めるためのツール

―― 時代は大きな転換期を迎えつつあると思いますが、会計業界にどのような影響を及ぼすとお考えでしょうか。
是枝AIやIoTなどの技術の進化は、さらなるフィンテックの拡大、会計事務所が顧問先に提供する価値の高度化を後押しするでしょう。
―― 先ほどのお話にも出ていましたが、是枝社長は1年前の取材でも、会計事務所が中小企業のCFOとしての役割を担うべきだと仰っていました。そのための環境整備が進むということでしょうか。
是枝はい。とはいえ、中小企業のCFOとしての役割を果たすには、テクノロジーの活用は当然として、お客様との関係性の強化も必要です。自計化を進めることでお客様との関係が薄くなってしまっては本末転倒で、自計化によってさらに親密な関係を築くことが重要だと思います。
―― その観点でいうと、先ほどお話のあった資金管理業務は中小企業のニーズに合致しますし、会計事務所の付加価値業務としても有望だと思います。中小企業にとっては、専門の担当者を置くことで発生する年間数百万円のコストを大幅に減らせますからね。
是枝これをどのようにビジネスとして具現化していくかが、今後の大きなチャレンジといえるでしょう。
―― この取り組みは、冒頭で仰っていた働き方改革にもつながるものですね。
是枝はい。
―― 働き方改革や少子高齢化などの社会的変化に対応するには、業務効率化がキーワードになると思います。
是枝そのとおりです。例えば、先ほど申し上げたDXやインボイス対応は、取引において必須になるでしょう。これらを会計事務所がどのようにサービスとして展開するか、そして中小企業の業務効率化につなげていくかが、極めて重要になります。

業務効率化に役立つサービスとして、当社では「Edge Tracker」や、先ほど申し上げた「かんたんクラウド」を提供しています。

「Edge Tracker」は、PCやスマートフォンでさまざまな業務がどこでも行えるクラウドツールです。

経費精算や勤怠管理など5つの業務について単独もしくは組み合わせて利用でき、当社の財務会計や給与のERPシステムとデータ連携が可能です。

小規模事業者にフォーカスした事業承継支援

―― 一方、中小企業の大きな課題に事業承継があります。データを見ると、黒字なのに後継者がいないため廃業したり閉めたりしている企業があります。これは会計事務所の顧客減少にもつながる問題です。

貴社は6年前に株式会社MJS M&Aパートナーズ(以下、mmap)を設立し、会計事務所と手を携えて中小企業の事業承継支援を行っています。mmapの最近の活動状況を教えていただけますか。

是枝mmapのコンセプトは、大手M&A仲介会社とは異なります。事業承継の問題で最も救いの手を必要としているのは、高額な仲介手数料を払えないような小さな会社です。収益を度外視して、そのような会社の存続を支援することがmmapの基本理念です。

そして、われわれの基本理念に賛同していただける先生方と、地域の小規模事業者を一軒一軒訪ねて回るような、地道な活動を続けています。

―― 仰るとおり、数千万円といわれる仲介料を中小・零細企業が払うのは困難です。会計事務所にとっても、顧客の多くを占める小規模事業者の存続を支援することは、自らの生き残りを左右するともいえますね。
是枝はい。ですから、われわれはITを活用して、小規模事業者クラスの少額案件をこなしていける仕組みづくりを進めています。日本経済全体について真剣に考えるなら、ここをしっかり支えられる仕組みが必要と考えるからです。

ここ数年、この仕組みについて研究を続けてきましたが、そろそろその取り組みが花開くのではないかと期待しています。

また、われわれはM&Aだけでなく、親族内承継やMBO(マネジメントバイアウト)にもスコープしています。事業継続を網羅的、俯瞰的に捉え、本来あるべき姿、すなわち親族内承継が行える体制を整えていく経営指導をすることも重要だと考えています。

理念経営による 企業価値の向上を目指す

―― 最後に、MJSグループの3年後、5年後の展望についてお聞かせください。
是枝最も重要なのは、MJSグループとしての企業価値を継続的に向上させることです。そのために、社員をはじめ株主、お客様、取引先などのステークホルダーに対して、われわれの価値をしっかり還元できる経営を続けていきます。

具体的なビジョンとしては、会計事務所、金融機関と中小企業が、私たちのプラットフォーム上のツールを通して、より強固な信頼関係を築き、それを地域経済の発展につなげていくことです。

一方で、私はこれから企業が生き残るために最も重要となるのは理念ではないかと思います。  分かりやすくいうと、「人気のある会社、信頼される会社になり、人気のある事務所、信頼される事務所、信頼される顧問先をつくる」というイメージです。

そのような価値を生み出すための具体的な方法も考えていきます。

―― ここまで伺ったお話からも、貴社のあらゆる活動が会計事務所とその先にある中小企業の支援という理念に基づいたものだと分かります。
是枝ありがとうございます。

われわれはこれからも、事務所経営の最適化によって「事務所価値」を高められるパラダイムづくりを進めていきます。MJSグループがご支援することで、「あの事務所は顧問先想いで信頼できる素晴らしい事務所」と評価される事務所を増やしていく。それこそがウィンウィンの関係ではないかと思います。

―― 本日は貴重なお話をありがとうございました。MJSグループのますますのご発展を祈念しています。

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