実務経営ニュース2023年2月号巻頭特別企画インタビュー

時代に即した製品・サービス提供で会計事務所と中小企業を支援

ミロク情報サービスが推進する
新たなビジネスプラットフォーム構築

株式会社ミロク情報サービス 代表取締役社長 是枝周樹

2023年2月1日

株式会社ミロク情報サービス(東京都新宿区)は、1977年の創業時から一貫して日本経済への貢献を目標に掲げ、会計事務所と中小企業の経営革新を支援し続けてきた財務・会計システムの老舗ベンダーである。一昨年からの「中期経営計画Vision2025」ではDXを主軸に据えた統合型プラットフォーム構築を推進しており、コロナ禍による社会・経済構造の激変、宥恕措置期限が迫る改正電子帳簿保存法や開始を控えたインボイス制度に対応した製品やサービスを続々とリリース。2022年度上期は前年比で二桁成長を達成し、通期業績の見込みも上方修正するなど、好調を持続している。今回の取材では、同社の製品開発の根底にある想いや直近1年の活動、強化されたサービスの内容などについて、同社代表取締役社長の是枝周樹氏(写真)にお話を伺った。(撮影 市川法子)

時代の激変に即応したソリューションを創出

―― 財務・会計システムの老舗ベンダーである株式会社ミロク情報サービス(以下、MJS)は、今年で創業47年目を迎えます。同社を中核とするMJSグループでは、2021年からスタートした「中期経営計画Vision2025」の基本戦略に則り、クラウド・サブスクリプション型ビジネスモデルへの転換と、統合型DXプラットフォームの構築を推進しています。
 本日は、同社の代表取締役社長である是枝周樹氏に、この1年間の業況を振り返っていただくとともに、今年(令和5年)の展望や事業戦略をお聞きしたいと思います。
 まずは、コロナ禍の真っただなかにスタートした「中期経営計画Vision2025」の基本方針やその狙いについて、あらためて紹介していただけますか。

是枝 2020年に始まったコロナ禍をきっかけに、経済・社会構造、そして生活様式にまでドラスティックな変化が生じています。ビジネス環境においては、急速なデジタル化へのシフトの流れのなかで、抜本的な企業改革が求められています。
 その代表的なもののひとつが、デジタル・トランスフォーメーション(DX)への対応です。企業はデジタル技術を活用して、お客様のニーズや時代の潮流を的確につかみ、製品やサービス、そしてビジネスモデルを変革することを迫られているのです。
 1977年の創業以来、会計事務所と中堅・中小企業のビジネス基盤のIT化による経営革新や業務改善を支援してきた当社は、45年以上に及ぶ歴史のなかで、時代に応じてビジネスモデルを進化・変革し続けてきました。
 MJSグループでは、このDXをキーワードに、会計事務所との関係性のさらなる強化に加え、グループの総力を挙げて全国の中小企業や小規模事業者への総合コンサルティングとDXソリューションの創出に取り組んでいます。

クラウドや法改正に対応した製品・サービス群

―― 昨年(令和4年)から、世の中はコロナ禍と共存していく方向に進み始めていますが、貴社ではこの1年間に、どのような製品やサービスを展開されたのでしょうか。

是枝 大きく3つに分かれます。まず、デジタル化やDX化、テレワークなどを支援するクラウド型の製品を提供し、他社サービスとの連携強化を進めました。
 次に、さまざまな製品において、改正電子帳簿保存法やインボイス制度などの法改正やデジタル化への対応を進めました。
 そして、毎年の税制改正に加え、グループ通算制度や事業所税に対応する製品をリリースしました。

―― それら3つの分野における具体的な製品・サービスや、その機能も簡単に紹介していただけますか。

是枝 例えば、昨年4月に発売した中堅企業向けERPシステム「Galileopt DX」ではクラウド環境での利用に対応し、閲覧性・操作性の向上や処理速度の改善、他社サービスとのシームレスな連携、マルチブラウザ対応、スマートフォンからの申請・承認機能の搭載などを行っています。
 他社サービスとの連携については、昨年9月にクロノス株式会社の勤怠管理システム「クロノスPerformance」「同クラウド」、勤次郎株式会社の労務管理システム「Universal 勤次郎」、株式会社ラクスの電子請求書発行システム「楽楽明細」、株式会社インフォマートの請求書の受取・発行を電子データ化するクラウドサービス「BtoBプラットフォーム 請求書」とのAPI連携を開始しています。

―― 改正電子帳簿保存法やインボイス制度への対応についてはいかがでしょう。

是枝 昨年6月に、クラウド型電子契約サービス「MJS e-ドキュメントCloudサイン」の提供を開始しました。
 これは、契約書の作成から承認、締結、管理までをオンライン上で完結できるクラウド型電子契約サービスです。アップロードしたデータは、改正電子帳簿保存法に準拠し、国内のデータセンターにおいて安全に管理されます。
 また、「MJS e-ドキュメントCloudキャビネット」とあわせてお使いいただくことで、他社の電子契約サービスで締結された契約書類の保管や、一元的な検索・参照もできるようになります(図1)。
 昨年9月には、インボイスの電子化に対応した「MJS e-Invoice」の提供を開始しています。電子帳簿保存法にも準拠し、今春にはデジタルインボイスの標準仕様「JP PINT」にも準拠する予定です(図2)。

―― 3つ目のグループ通算制度や事業所税への対応についてはいかがですか。

是枝 電子申告・電子納税をサポートする税務システム「MJS税務 DX」において、これら2つに対応した新製品を昨年9月に発売しました。製品ラインアップとして「法人税申告書」をはじめ7システムあるのですが、グループ通算制度と事業所税は「法人税申告書」システムのオプション機能として提供しています。

図1 改正電子帳簿保存法に対応した書類の電子保存と電子契約に対応する「MJS e-ドキュメントCloud」の概念図

図2 デジタルインボイスの発行・受領を行う「MJS e-Invoice」

ミロク情報サービスは、デジタルインボイス推進協議会に設立発起人・幹事法人として参画しており、日本国内で活動する事業者が適格請求書等を発行もしくは受領するにあたり、共通的に利用できるデジタルインボイスの普及と、対応するシステムの提供に取り組んでいる。「MJS e-Invoice」は、日本の事業者向けのデジタルインボイス規格「JP PINT」に準拠した電子インボイスの送受信およびインボイスの電子化に対応するSaaS型クラウドサービス。ミロク情報サービスの販売管理、請求管理、財務・会計の各システムとシームレスに連携する。受領した電子インボイスのデータをもとに、ミロク情報サービスの財務・会計システムで仕訳の自動作成が可能。

2022年度の通期業績予想を上方修正

―― 続いて、今期(2022年4月~2023年3月)の業績について伺います。

是枝 まず上期の業績を振り返ると、連結売上高、営業利益、経常利益のいずれも二桁成長を達成しました。前年同期と比較して、売上高が11.8%、営業利益が31.3%、経常利益が19.1%増えています。

―― 上期の好調の要因をどのように分析されていますか。

是枝 改正電子帳簿保存法やインボイス制度、働き方改革への対応など、業務のデジタル化、DX化に向けたIT投資需要の高まりを背景に、主力ERP製品の販売やサービス収入が好調に推移しました。
 下期に向けては、クラウドサービスの拡販に加え、オンプレミス製品の提供形態を徐々にサブスクリプション型に移行し、ストック型の収益拡大を図っています。

―― 通期業績の見通しについてはいかがでしょうか。

是枝 企業におけるバックオフィスのデジタル化、DX化への高いニーズが続き、下期においてもERP事業が好調に推移するという想定に基づき、昨年10月31日に、2023年3月期通期連結業績予想を上方修正しました。修正後の売上高は408億円、営業利益は58億円、経常利益は56億円、当期純利益が36億円となっています。
 下期業績には、賃金引き上げなどを考慮した従業員還元策の拡充、先行投資となる広告宣伝費の増額、関係会社業績の下振れリスクなどを見込んでいます。

M&Aによりサービス領域をCRM分野にも拡大

―― 貴社が継続されている、M&Aによるグループ経営の多角化の進展についてもお聞かせください。

是枝 昨年の8月に、株式会社BizMagicを子会社化しました。同社は顧客管理・営業支援システム「Biz­Magic」を開発・販売する企業です。これにより、ERPと親和性の高いCRM分野にまでサービス領域の拡大を図ります。
 お客様のニーズが多様化するなか、顧客データを活用した既存顧客との長期的な関係維持、顧客一人ひとりに寄り添ったコミュニケーションの重要性が高まっています。「BizMagic」による日々の顧客情報や案件管理などの業務効率化とスピーディーな情報共有を実現することで、中小企業の生産性の向上と売上拡大を支援していきます。

会計事務所と顧問先向けサービスを拡充

―― 先ほど、昨年リリースされた製品やサービスをいくつかご紹介いただきましたが、製品・サービス開発にあたっての貴社のスタンスや重視している点を、あらためてお聞かせいただけますか。

是枝 冒頭で申し上げた経済・社会構造、生活様式以外にも、会計事務所を取り巻く環境は変化しています。
 ひとつは、税理士法改正により事務所以外の自宅などで税理士のリモートワークが可能となりました。会計事務所、顧問先ともに、働く環境の変化に伴い、業務におけるデジタル化の推進は必要不可欠となっています。
 また、改正電子帳簿保存法とインボイス制度により、会計事務所における記帳代行業務の業務量の大幅な増加が予想されます。例えば、適格請求書の内容の確認、これまで免税事業者だった顧問先が課税事業者となることに伴う消費税の処理などが挙げられます。
 そこで当社は、各種法改正への対応はもちろんのこと、事務所業務の合理化、働き方改革の支援、そして会計事務所が顧問先に提供するサービス品質の向上に貢献すべく、各種製品・サービスを強化しています。
 小規模事業者から中堅・中小企業まで、あらゆる企業規模に対応する製品ラインアップを提供し、会計事務所とその顧問先企業をしっかりサポートできる体制を整えています。

AIによる紙証憑の電子化・自動仕訳で生産性向上へ

―― それでは、貴社が提供している製品とサービスのなかで、近年強化したものや主要なものを紹介していただけますか。

是枝 まず、会計事務所職員のタスクやスケジュール管理を行うツールをスマートフォン対応にした「ACELINK NX-Pro 事務所管理Smart」の提供を開始しました。スマートフォンからスケジュールへの入力・閲覧などが可能になったことで、日々の業務状況がリアルタイムに見える化され、スピーディーに情報共有できるようになりました。これにより、所員の利便性向上と業務効率化の推進につながります。
 次に、仕訳業務の効率化を支援する「AI-OCR」「AI仕訳」が挙げられます。いずれも会計事務所向けERPシステム「ACELINK NX-Pro」の機能で、「AI-OCR」は通帳やレシート、領収書など紙の情報をOCR解析して読み取り、「AI仕訳」とデータ連携します。「AI仕訳」は銀行口座の入出金やクレジットカードなどの取引データも取得し、自動で仕訳します(図3)。今後、AI-OCRの識字率をはじめとしたさらなる機能強化を行います。

図3 会計事務所と顧問先の業務をデジタル化により効率化

会計事務所では記帳代行業務が業務効率化の足かせとなっており、インボイス制度によりこの状況は深刻さを増すことが予想されている。ミロク情報サービスはAI技術を応用したOCRサービスや、自動仕訳・連携サービスの開発に力を入れており、インボイス制度開始後の会計事務所と顧問先の業務負担を大きく軽減する。

電子取引データにタイムスタンプを自動付与・保存

是枝 また、「誰でも簡単に使える」をコンセプトとしたクラウド型サービスである「かんたんクラウド」シリーズにおいて、改正電子帳簿保存法の電子取引に対応しています。
 例えば、電子ファイルをクラウド上に保存・共有できるストレージサービス「かんたんクラウドファイルBOX」では、請求書や領収書、契約書など電子取引に該当するファイルをアップロードし、保存する際にタイムスタンプを自動付与する機能を、新たに標準機能として搭載しました。電子取引ファイルの一覧表示、証憑検索、証憑表示、ダウンロードや、電子的に授受した書類の電子保存にも対応しています(図4)。
 会計・給与サービスである「かんたんクラウド会計 Basic/Plus」「かんたんクラウド給与 Basic/Plus」では、「仕訳明細への証憑ファイル添付」「証憑取込時のタイムスタンプ自動付与」をする機能を新たに標準機能として搭載しました。取り込んだ証憑ファイルは、仕訳情報と紐づけタイムスタンプを自動付与した上で保管されます。日付や金額、取引先などによる検索や、証憑の表示およびダウンロード機能も搭載し、スキャナ保存要件に対応しています。

図4 顧問先とのやりとりを効率化する「かんたんクラウドファイルBOX」

中堅・中小企業を支援するプラットフォーム

―― 今後の中期的な製品・サービス戦略について、差し支えない範囲でお話しいただけますか。

是枝 冒頭でご紹介いただいたとおり、「中期経営計画Vision2025」に沿って、今期もクラウド・サブスクリプション型ビジネスモデルへの転換と、統合型DXプラットフォームの構築を進めます。前者によって顧客メリットの最大化、継続的な関係構築を図りつつ、後者によって会計事務所とその顧問先企業のDX化を推進します。
 MJSグループが提供する統合型DXプラットフォームは、中小企業が抱えるさまざまな経営課題の解決に向けて、日々の業務の効率化から将来を見据えた資金調達に至るまで、お客様をあらゆる面から総合的にサポートします。
 こうした取り組みと並行して、中堅・中小企業のお客様対応を行うソリューション支社を2年で8つ増やし、計15支社体制にしました。これにより、コロナ禍以降の中堅・中小企業を取り巻く社会・経済環境の変化や法改正などに対応した最適なソリューションを迅速にご提案できるようにします。
 そのほかにも、「ACELINK NX-Pro」で管理している顧問先企業の情報を活用した、新たな経営支援サービスのための実証実験(POC)を行っています。「ACELINK NX-Pro」の約50万社の顧問先情報を収集し、そのデータを活用して顧問先満足度の向上、会計事務所の付加価値向上につながるサービスを開発・ご提供します(図5)。
 最後に、MJSグループ各社の連携による総合コンサルティングの提供に加え、それぞれが独自のソリューションを積極的に展開していくことで、個々の成長、ひいてはグループ全体の成長を目指します。
 一例を挙げると、子会社のトライベック株式会社では昨年7月から、中小企業支援プラットフォーム「Hirameki 7」を提供しています(図6)。これは、中小企業が抱えるさまざまな悩みや経営課題をデジタルで解決するための、7つの機能をひとつのプラットフォームに集約したものです。

図5 会計事務所のための新たな価値の創出

ミロク情報サービスは、会計事務所向けの業務システム「ACELINK NX-Pro」で管理している企業情報を活用した新たな経営支援サービスの創出に向け、実証実験(POC)を行っている。会計事務所と顧問先企業のそれぞれに付加価値を提供するクラウドDXサービスの実現を目指しており、会計事務所の収益力と社会的地位向上を目的とした「会計事務所による」経営支援サービスを提供できるようにする予定。それに加えて、会計事務所の顧問先の情報を集約してビックデータを構築し、そのデータを活用した新たなサービスの開発にも取り組んでいる。

図6 「Hirameki 7」(https://www.hirameki7.io/

ウィズコロナ時代における会計事務所のあり方

―― コロナ禍との共存がさらに進むと思われるなか、会計事務所はどのように顧問先と向き合っていけばよいのか、是枝社長のお考えをお聞かせください。

是枝 これから顧問先が直面する経営課題としては、まずゼロゼロ融資の返済開始に伴う短期・中期的な資金繰りの悩みが挙げられます。次に、慢性的な人手不足があります。これは特に、地方において顕著です。
 ほかにも、顧客の価値観の変化や非対面販売などへの対応、デジタル化・DX化への対応、原材料の高騰、競争激化といった課題が山積しています。
 ですから会計事務所には、こうした個々の顧問先の経営課題に合わせた「適切な経営支援サービス」が一層求められるでしょう。
 例えば、資金繰りの問題については顧問先のCFOとしての役割を務めたり、経営力の強化については、経営分析とアドバイス・経営計画の策定支援をしたり、人手不足解消については、IT化・DX化により業務効率化とコスト圧縮を進めたりといったサービスが考えられます。
 ほかにも、M&A仲介などによる事業承継支援、デジタル・マーケティング支援による顧客創造、先ほどご紹介した「Hirameki 7」による売上拡大なども挙げられます。

常に会計事務所と顧問先を全力でサポート

―― 最後に、弊誌の読者である会計人の方々に向けてメッセージを頂けますか。

是枝 MJSグループの想いは、創業時から一貫して変わりません。常に「日本経済の発展に貢献すること」を目標とし、会計事務所や中小企業の皆様の経営課題の解決をサポートしていくことです。
 時代は今、新たな転換期を迎えていますが、当社は今後も変化を恐れることなく、グループ各社と連携しながら持続的な成長を可能とする体制強化に取り組み、積極果敢に挑戦を続けていく所存です。
 顧問先が苦難のときこそ、会計事務所の役割が高まります。顧問先の多種多様な経営課題に対して、会計事務所が適切なサービスを提供できるように、MJSグループが全力でバックアップいたします。

―― 本日は大変貴重なお話をありがとうございました。MJSグループのますますのご発展を祈念しています。

是枝周樹(これえだ・ひろき)

株式会社ミロク情報サービス代表取締役社長。昭和39年生まれ。平成6年、株式会社ミロク情報サービス取締役に就任。経営企画室長兼情報システム室担当、営業戦略室長、マーケティング統括副本部長兼営業本部長兼マーケティング本部長などを歴任し、平成16年、代表取締役副社長・最高執行責任者、平成17年、代表取締役社長に就任。

本件に関するお問い合わせ先

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