株式会社ミロク情報サービス代表取締役社長。昭和39年生まれ。平成6年、株式会社ミロク情報サービス取締役に就任。経営企画室長兼情報システム室担当、営業戦略室長、マーケティング統括副本部長兼営業本部長兼マーケティング本部長などを歴任し、平成16年、代表取締役副社長・最高執行責任者。平成17年、代表取締役社長に就任。
実務経営ニュース2025年2月号巻頭特別企画インタビュー
DXコンサルティングで会計事務所と顧問先企業の成長を支援
人的資本経営によるサービス強化に取り組むミロク情報サービス
株式会社ミロク情報サービス 代表取締役社長 是枝周樹
2025年3月4日
株式会社ミロク情報サービス(東京都新宿区)は、1977年の創業時から日本経済への貢献を目標に掲げ、会計事務所や中堅・中小企業の経営革新を支援する財務・会計システムのベンダーである。近年は時代の要請に合わせ、売り切り型からクラウドやサブスクリプションによるストック型のビジネスモデルへの転換を進めている。昨年5月に発表した「中期経営計画Vision2028」では、これまで同社が注力してきた会計事務所の支援を基盤に、顧問先企業へのコンサルティングサービスを含めた戦略を打ち出し、業界の注目を集めている。
今回の取材では、新中期経営計画における6つの基本戦略や直近一年の取り組み、今後の経営方針について、同社代表取締役社長の是枝周樹氏にお話を伺った。(撮影 市川法子)

会計事務所の価値向上を目指す
―― 本日は、株式会社ミロク情報サービス(以下、MJS)代表取締役社長の是枝周樹氏にお話を伺います。弊誌では毎年恒例のインタビューとなっていますが、今回は同社の2025年のビジョンを中心にお聞きしたいと思います。
まずは、昨年(令和6年)発表された「中期経営計画Vision2028」のうち、会計事務所向けの戦略やサービス展開について伺います。
是枝 近年のインタビューで申し上げてきたとおり、われわれは会計事務所とともに中小企業を継続的に支援していくことを目指しています。その取り組みのひとつとして、会計事務所のDX化を推進し、先生方がより付加価値の高いサービスに注力できる体制づくりをご支援してきました。 昨年5月に発表した「中期経営計画Vision2028」では、6つの基本戦略を掲げました。「会計事務所ネットワークNo.1への戦略」を筆頭に、「中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略」と「統合型DXプラットフォーム戦略」で、会計事務所やその顧問先企業へ向けてのDXコンサルティングや経営支援サービスに注力していきます。
さらに、これらを実現するための社内での取り組みとして、「クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換」、グループ会社とのシナジーを高める「グループ連携強化によるグループ会社の独自成長促進」、そして「戦略実現を加速する人材力・経営基盤強化」を通じて、会計事務所の経営を先生方と一緒に考えながら、解決策を提案できるコンサルタントの育成にも力を入れてまいります。
この6つの戦略により顧問先企業のカスタマーサクセスを実現することによって、会計事務所のさらなる価値向上に貢献したいと考えています。
―― 今お話しいただいた内容には、ここ数年のインタビューで是枝社長が語ってこられた展望が全て詰まっていますね。
その一方で、オフコンの時代から会計事務所や一般企業向けに数多くの製品を提供してきたMJSが、会計事務所の顧問先企業向けのコンサルティングサービスを展開することに、意外性や驚きを感じる読者もいるはずです。あらためて、新戦略の内容や、それらに込められている是枝社長の想いをお聞かせください。
是枝 労働人口の減少による2030年問題を数年後に控えた現在、会計事務所も顧問先も、人材の確保が困難な状況が続いています。デジタル化による業務効率化は、会計事務所だけでなくその顧問先企業においても必須となるでしょう。
さらに、個々の顧問先企業が抱える経営課題は時代とともに多様化しており、単に業務をデジタル化しただけでは解決に至らないケースもあると思います。こうした状況から鑑みて、会計事務所が行う経営支援サービスもまた、より高度な内容が求められる時代に入ったといえます。
今お話ししたとおり、新しい「中期経営計画Vision2028」では、会計事務所だけでなく、その顧問先企業へのご支援にも注力します。イメージとしては、会計事務所から委託を受けたわれわれが、先生や職員様の代わりに顧問先企業様に赴き、当社のIT系の有資格者によるDXコンサルティングを提供します。会計事務所の皆様には、当グループの「Hirameki 7」( 図1) で提供する「経営分析プラス」を活用して経営支援を行っていただければと考えています。
特に「Hirameki 7」は、サービス開始から2年で3万4000社以上の利用実績のあるツールです。昨年、そのコア機能であるマーケティングサービスを進化させ、10月からは低価格の新料金体系をスタートさせました。
「Hirameki 7」を会計事務所とその顧問先企業が活用することで、顧問先企業が利益を拡大し、会計事務所との信頼関係もさらに強固なものとなり、会計事務所の価値向上にも貢献できるのではないかと考えています。
図1 Hirameki 7
(https://www.hirameki7.io/)

―― 顧問先企業の経営の根幹により深くかかわり、支援されていく構想でしょうか。
是枝 仰るとおりです。当社の製品を買う/買わないといったレベルでの話ではなくて、企業が今後も成長、発展を続けていくために何が必要なのかを一緒に考え、これからの経営方針を語り合えるような存在になることを目指しています。
ストック型への転換が進み増収増益を継続
―― 次に、今期(2024年4月~2025年3月)の業績の見通しを伺います。
是枝 上期(4~9月)については、前年度に引き続き増収増益となりました。前年同期と比較して、売上高が7.4%増、営業利益が6.0%増、経常利益が5.8%増となり、連結売上高、営業利益、経常利益のいずれも増加しています。
―― 増収増益の主な要因をお聞かせください。
是枝 会計事務所や中堅・中小企業向けの各種業務システムの販売が好調を維持していることと、クラウドサービスやオンプレミス製品をサブスクリプション型で提供したストック型のサービス収入が15.8%増となったことが挙げられます。
―― 製品の「売り切り型」から、クラウドやサブスクリプションを活用した「ストック型」への転換は、前回の「中期経営計画Vision2025」から継続して進めている取り組みですね。通期業績についてはいかがですか。
是枝 前年度に引き続き、増収増益基調で拡大させながらサブスク型ビジネスモデルへの移行を加速させていきます。
当社は、創業当初から、全国の会計事務所との関係を深めてまいりましたが、これからも会計事務所の先生方と強力にタッグを組み、相互発展を目指してまいります。
AIによる会計事務所の業務効率化を推進
―― ここからは、貴社の2025年度における具体的な取り組みについてお聞きします。
是枝 2025年度の取り組みとして筆頭に掲げるのは、会計事務所の業務効率化のご支援です。
記帳代行を必要とする事務所もあれば、自計化をさらに押し進めたい事務所もあるでしょう。われわれはどちらのニーズにも応えられるように、会計事務所向けERPシステム「ACELINK NX-Pro」( 図2) の機能強化に努めています。
おかげさまで、「ACELINK NXPro」は、申告データの収集から申告まで一気通貫の仕組みを提供していることで大変ご好評をいただいており、繁忙期の会計事務所を強力に支えるシステムであると自負しています(図3)。
さらに近年では、AIを活用した業務効率化の仕組みにも力を入れています。
具体的には、「MJSのトリプルAI」として展開する、「AI-OCR入力」「AI仕訳」「AI監査支援」の機能を提供する形で、紙データの読み取り、電子データ連携による自動入力、帳簿チェックの全てに対応するAIソリューションをご提供します(図4)。
付け加えると、「A I 仕訳」は「Edge Tracker 電子請求書」と連携することでデジタルインボイスの自動仕訳にも対応しており、会計事務所と中小企業の業務効率化をご支援します(図5)。
ありがたいことに、すでに活用している先生方からは、「早く他の事務所にも広まってほしい」とご好評をいただいています。
図2 会計事務所と顧問先企業のDXを支援する会計事務所向けERPシステム「ACELINK NX-Pro」
「ACELINK NX-Pro」は、ミロク情報サービスが提供する会計事務所向けERPシステム。事務所管理システム、会計業務システム、給与業務システム、申告業務システムなどが緊密に連携しているほか、顧問先との連動システムも備えており、会計事務所と顧問先のDX を推進する豊富な機能を備える。ミロク情報サービスのユーザー組織ミロク会計人会が、システム開発委員会を組織して、システムの改善について積極的な提案を行っている。「ACELINK NX-Pro」は会計事務所から寄せられた声を反映し、長年にわたりきめ細かな製品開発を続けてきたことが大きな特長となっている。

図3 会計事務所の電子申告を核とした申告業務を強力に支援する「ACELINK NX-Pro」
「ACELINK NX-Pro」は申告データの収集から申告まで一気通貫の仕組みを提供する。法人決算申告業務、個人決算申告業務のほか、相続税申告書などの突発的に発生する申告業務まで対応できる充実の機能を備える。

―― かつては、仕訳はもちろん、そのチェックも人がしなければなりませんでした。会計スキルを持つ人材が不足するなか、これらの機能は通常業務を大きく助けるものになりますね。
是枝 もちろん、単なる効率化だけでは終わりません。次のステップとして、われわれは効率化によって創出された時間を、会計事務所の武器としてどう活用していくのかを一緒に考えます。顧問先企業の満足度を向上させる、付加価値の高い経営支援サービスに転化するためのコンサルティングをご提案します。
―― 税務顧問を基盤とするからには、税務申告の基礎となる「利益」を生み出すための支援も欠かせませんからね。
是枝 仰るとおりです。顧問先企業の生産性を向上させ、利益を創出できる、継続企業としての強固な基盤をつくり上げることが重要です。そのために、われわれは会計事務所の顧問先企業に対する伴走支援をご提供します。
図4 トリプルAIで業務を効率化し、付加価値業務に取り組める「ACELINK NX-Pro」


「ACELINK NX-Pro」は、3 種類のAI 機能「AI仕訳」「AI-OCR入力」「AI監査支援」を備えている。「AI仕訳」は、デジタルインボイス(Peppol 連携)を含むあらゆる取引サービスの発生データを日々自動取得し、仕訳を自動作成する。「AI-OCR入力」は、スキャンしたレシートや通帳などを取り込み、OCR 解析をして仕訳を自動作成する。「AI監査支援」は、チェックルールやAI エンジンによる仕訳のチェック自動化により、監査時間の短縮や業務の効率化、月次・年次決算の早期化を実現する。会計事務所は「ACELINK NX-Pro」のAI 機能を活用することで業務の効率化を実現し、担当者の時間を創出することができる。それに加えて、「ACELINK NX-Pro」には経営分析、決算予測、利益計画、資金繰り計画などの経営支援オプションが用意されており、担当者は創出した時間を活用し、顧問先の経営援などに取り組むことが可能になる。
図5 「AI仕訳」は「Edge Tracker 電子請求書」との連携でデジタルインボイスの自動仕訳に対応
「AI仕訳」は、ミロク情報サービスが提供するデジタルインボイス送受信・インボイス電子化対応サービス「Edge Tracker 電子請求書」と連携することで、デジタルインボイスの自動仕訳に対応する。わが国におけるデジタルインボイスの標準仕様JP PINT(Peppol ベース)をサポートしており、売り手のシステムから人手を介さずに請求データを直接受け取ることができる。売り手から送られた請求データは、Peppol ネットワーク経由で「Edge Tracker 電子請求書」が受け取り、「AI仕訳」で仕訳が自動作成される。従来、こうした自動処理の仕組みは売り手と買い手の双方が同じシステムを導入する必要があり、中小企業には普及していなかった。Peppol の場合は双方が異なる請求システムを利用していてもやりとりできるため、今後幅広い普及が見込まれている。

有資格者によるコンサルティングサービスに注力
―― 顧問先企業向けの伴走支援は、どのような会計事務所にお勧めできるものでしょうか。
是枝 幅広い会計事務所にご利用いただけると自負しています。例えば、顧問先のDXコンサルティングを専門家に任せたい場合が挙げられます。また、記帳代行と決算業務を行っている事務所などで、これから経営支援サービスを展開したいがノウハウがないケースもあります。ほかにも、年齢などを理由に事業承継やM&A、廃業を検討されている事務所にもメリットがあると考えています。
―― 会計事務所側のメリットとして、具体的にどのようなものがあるか、ぜひお聞かせください。
是枝 まず、顧問先に喜んでもらえることです。われわれは会計事務所から業務委託を受け、会計事務所の先生・職員様に代わり、顧問先企業を訪問してDXコンサルティングを実施します。
その際には、顧問先の業務プロセスを丁寧に分析し、効率化や業務改善できるところを見つけ、システムが必要であれば導入するなど、具体的な解決方法を提案していきます。もちろん、導入するのは当社のシステムでなくてもかまいません。
このDXコンサルティングは、当社が長年培ったノウハウによる、自信をもってお勧めできるサービスです。顧問先企業に与えられるインパクトは、かなり大きいと思います。
―― 顧問先企業にとって、「顧問会計事務所に相談したら、事務所から派遣された専門家が全てサポートしてくれた」となれば、先生方に対する信頼度がいっそう高まりますね。
是枝 そのとおりです。事務所と顧問先の関係がより強固なものとなり、新規顧客の紹介などにもつながると考えています。
―― 先ほど、顧問先企業を支援するコンサルタントは、貴社のIT系の有資格者と仰っていました。
是枝 はい。現在、経済産業省の推奨する資格であるITコーディネータを積極的に取得させています。今年度は63名が有資格者として活動し、2025年度中には100名を超える見込みです。
―― 事業承継やM&Aを検討している事務所におけるメリットは何でしょうか。
是枝 当社のツールをお使いいただいている会計事務所のうち、70歳を超える所長の先生方も一定数おり、これらの事務所の多くが、事業承継やM&A、もしくは廃業を検討されています。私は常々、こうした事務所に対して、何かできることはないかと考えていました。
たとえ売却するにしても、その価値をもっと大きくするための方法を考えたとき、顧問先企業に対し付加価値の高いコンサルティングサービスを提供していれば、収益の増加につながり、その事務所価値を現状よりもさらに上げられるはずです。
売却後も、われわれのサービスはそのまま次の事務所に引き継ぐことができますから、価値が変わることはないと考えています。
―― 例えば、顧問料収入が年間4000万~5000万円の事務所に、コンサルティングの売上として2000万円プラスされれば、その分だけ企業価値が高まり、より高く売却できるということですね。
是枝 そのとおりです。間違いなく価値が上がるはずです。また、30億円から100億円規模の中堅企業のDXコンサルティングや経営支援サービスとなると、通常業務の傍らではなかなか難しいと思いますが、われわれであればそうした規模でも対応可能です。ぜひお任せいただければと思います。
―― 多くの会計事務所にメリットのあるサービスだと感じます。一方で、顧問先企業に赴いて提供するサービスを外注するわけですから、利用を躊躇される先生もいるのではないでしょうか。
是枝 その気持ちはとてもよく理解できます。そこで、まずは先生ご自身にわれわれのサービスを体験していただきたいと思います。
例えば、製品を購入する場合は、実際に触ってみて「いいな」と感じてから購入するでしょう。われわれのサービスも同様に、先生方の事務所で体験していただき、カスタマーエクスペリエンスを持っていただくことで初めて、顧問先様にお勧めするイメージが生まれると思います。
―― まずは会計事務所の先生や職員さんに、実際にサービスを体験してもらうのですね。
是枝 はい。まずは会計事務所に対する支援を行い、われわれのサービスを見て「これはよいな」と評価していただいたうえで、話を進めるべきだと考えています。
人的資本経営で業界唯一無二の会計ベンダーへ
―― 最後に、MJSがこれからどのような企業を目指されるのか、是枝社長の率直なお考えを伺います。
是枝 まずは、拡張性のある商品群の展開を目指します。オンプレミスの時代からこの業界に関わってきましたが、この20年ほどで企業向けのサービスが本当に増えたと感じます。そのなかで、われわれはこれからも会計税務に注力し続けます。
そして、会計というひとつのパッケージをコアに、「どこともつながる、何とでもつながる」何でも解決できる仕組みをつくっていきます。そういった商品群を業界に提供し、「MJSになら何でもある」「価格も安いし、まずは相談してみよう」と思っていただける存在を目指します。
また、コンサルティングサービスの充実に向けて、人的資本経営による業績の向上を重視します。先ほど申し上げた、有資格者のコンサルタントなどの人材によるサービスをひとつのビジネスモデルとして確立することが、今後のMJSの成長を左右する重要なポイントになるでしょう。
製品だけでなく人への投資を行った結果、その人が提供するサービスが収益に連動し、会社の価値を高めることで業績向上を目指していくべきです。
われわれの社是にある、「健全成長を基調とする超一流の専門企業を目指すこと」に立ち返り、一人ひとりを一流のスペシャリストにすることで、他社と圧倒的に違う組織をつくり上げたいと考えています。
ビジネスモデルを変えるには、まずわれわれが物売りの思考から完全に脱却しなければなりません。われわれが活躍できる舞台をどうやって切り拓いていくかを常に思考し、コンサルティングサービスでロイヤリティを高めていける唯一無二のベンダーになることが、次の成長への岐路になるでしょう。
―― 本日は、大変貴重なお話をいただき、ありがとうございました。貴社のさらなるご発展を祈念しています。


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