導入事例

ひなた会計事務所/日向雅之税理士事務所

2021年8月17日

ひなた会計事務所(日向雅之税理士事務所)は、宮城県仙台市で開業20年目を迎えた会計事務所である。「無駄な帳簿を廃止して、経理の合理化を支援する」ことをコンセプトに掲げ、そのために必要な仕組みやツールを自ら導入・体験したうえで、顧客にサービスとして提供している。所長の日向雅之氏は、27歳で税理士試験に合格し、30歳で独立。平成14年の開業当初からパソコン会計を導入し、いち早く事務所のホームページを開設して顧問先を拡大してきた。現在も、顧客のさまざまなニーズに対応すべく、積極的にテクノロジーを活用している。本稿では日向氏に、これまでのさまざまな取り組みや今後の展望についてお話を伺った。(撮影 市川法子)

20代で資格を取得し30歳で独立開業

――本日は、ひなた会計事務所(日向雅之税理士事務所)の代表である日向雅之先生にお話を伺います。
まずは、日向先生が税理士を志したきっかけを教えてください。

日向 税理士を目指そうと決心したのは、高校生の頃です。当時の私は自分の進路について、まず大学に進学し、卒業後は就職して働くというイメージを持っていました。そして、どのような働き方をしたいかまで考えてみて、私が出した答えは「とにかく社長になりたい」という漠然としたものでした。
さらに、高校生の浅はかな知識で「どうしたら社長になれるのか」を考えると、「資格を取得すれば、独立開業ができ、小さいながらも社長になれるらしい」ことが分かりました。資格にもさまざまな種類がありますが、私に向いていそうなのは税理士だと感じ、その道を目指すことにしたのです。

――資格の勉強はいつ頃始めたのですか。

日向 本格的に勉強をスタートしたのは、大学生のときです。入学した東京の大学の同じクラスに、たまたま税理士の息子がいました。2代目として事務所を承継することが決まっていた彼は、「今どきは、専門学校に通わなければ税理士になれない」と教えてくれました。
そこで、大学と並行して専門学校に通う「ダブルスクール」を始めたのです。

――大学在学中に税理士試験を受験されたのでしょうか。

日向 はい。在学中は2科目に合格しました。卒業後、半年間はいわゆる受験浪人をして、その年の8月の試験で4科目まで合格することができました。
 「残り1科目であれば、働きながらでもすぐに取れるだろう」と考えた私は、地元の宮城県に戻り、仙台の会計事務所で働き始めました。実際には、それから4年後の27歳のときに、税理士の資格を取得しました。

――資格を取得してすぐに独立されたのですか。

日向 いえ。勤めていた会計事務所の所長への恩返しとして、3年ほどお礼奉公しました。
3年待ったのには、もうひとつ理由があります。私が資格を取得した平成11年当時は、現在のように若い起業家がそれほど多くありませんでした。30歳になれば、周りの経営者も一人前として認めてくれるだろうと考えたのです。

ホームページ開設をきっかけに顧問先を拡大

――開業当初は、どのような戦略をお持ちだったのでしょうか。

日向 独立することで、高校生のときに立てた「社長になる」という目的を達成してしまったので、特に考えていませんでした。
ただ、時間はたくさんあったので、事務所のホームページを作ることにしました。当時、ホームページを持っている会計事務所は極めて少数でした。
東京に比べて、その傾向がさらに強かった仙台において、これは大きな効果がありました。ネット集客のはしりの頃だったこともあり、ホームページがあるだけで集客につながったのです。

―― 問い合わせがたくさん来るようになったのですか。

日向 もちろん、直接お問い合わせを頂いたこともありますが、それよりも大きかったのは、ホームページを起点にメールマガジンを発信し、そこからお客様を獲得するという流れをつくれたことです。

――その手法について、もう少し詳しくお聞かせください。

日向 私は平成15年に、東北地方で初となる資本金が1円の株式会社を設立しました。その登記申請の際に使用した書類一式を、Word文書として無償提供したのです。資料請求の代わりに、メールマガジンのユーザー登録をしていただく形です。
ただ、複雑な書類ですから、テンプレートがあっても自分で申請までできない方は結構いらっしゃいます。そのような方々から、「登記手続きをお願いできますか」と連絡があり、お客様になってくださいました。
私自身が資本金1円で株式会社を設立したロールモデルとなれたこともあり、創業支援のお客様を獲得できる大きなチャンスとなりました。

自ら実践したうえで「経理の合理化」を支援

――ここからは、貴事務所の特徴や強みについて伺います。

日向 私たちは、「無駄な帳簿を廃止して、経理の合理化を支援する」ことを経営ビジョンとして掲げています。
開業した頃は、振替伝票が全盛の時代でした。しかし私は、「会計ソフトも充実しつつあるのに、なぜこのようにアナログな手段を使う必要があるのだろう」と疑問に感じていました。
そのようなとき、児玉尚彦先生が提唱されている「経理合理化プロジェクト」を知り、現金の取り扱いをやめて事後精算方式を取り入れた「経理合理化プラン」の提供を始めたのです。
実際にお客様にサービスとして提供する前に、まずは自事務所に導入したところ、思ったとおりとても便利でした。事務所の合理化を自ら実践して、効果が腹落ちしていますから、お客様にも自信を持ってお薦めすることができました。
このように、お客様に提案する前に、まず自らが実験台となって試すという意識は常に持っています。自分でやってみないと分からないことはどうしてもありますから、私は事務所の経理も担当しています。その実務を通じて便利だと感じたものを、お客様にお薦めしています。

――貴事務所は経営革新等支援機関の認定を受けていますが、その取り組みについてお聞かせください。

日向 正直に申し上げると、仕事が増えるのではないかという意識で登録しました。しかしスタートしてすぐ、ただ待っているだけではお客様は来ないと気づきました。
当初に比べて、経営革新等支援機関を使った制度は徐々に充実してきています。私たちが現在取り組んでいるのは、早期経営改善計画策定支援事業(ポストコロナ持続的発展計画事業)です。具体的には、お客様に「経営計画を作成する初期段階において、補助金も出るので取り組んでみませんか」と提案しています。経画立案にあたっては、事務所の経営計画書を参考にしてもらっています。

顧問先の発展に貢献することで事務所も成長する

――ここまでお話を伺って、日向先生は税務会計だけでなく、顧問先の経営を改善したいという意識が高い印象を受けます。

日向 私たちが成長するには、まずお客様に成長していただかなければなりません。ですから、経営ビジョンとして掲げている「お客様の発展に貢献する」を達成できれば、事務所も成長して職員に高い給与が払えると考えています。
例えば、月次の試算表は7営業日以内に提供しています。できる限り早く作成・提供することで、経営者の判断も早くなるからです。

――スピーディーに試算表を作成するために意識されていることを教えてください。

日向 使えるテクノロジーを惜しみなく活用することです。具体的には、株式会社ミロク情報サービス(以下、MJS)さんの「ACELINK NX-Pro」を事務所の基幹システムとして導入し、同社のさまざまなサービスも利用しています。

――MJSのシステムはいつから利用されているのですか。

日向 開業当初からお付き合いがあります。当時は税務ベンダーが全盛で、まだオフコンが残っているような時代でした。
一方で、Windows向けの会計ソフトも登場し始めていました。私はある程度パソコンを使えたので、Windows上で動く会計ソフトを何社かピックアップして比較した結果、総合的に使いやすいと感じたMJSさんの製品を導入した次第です。

――テクノロジーの活用についても、日向先生ご自身が試して選定されたのですね。

日向 現在は、業務においてソフトを利用するのは職員が中心ですから、まずは職員に使いやすいものを選んでもらっています。その後、自分でも実際に操作して検証するという流れができています。

――平均年齢の高い会計業界において、所長先生がITに強いことはアドバンテージといえそうです。
ちなみに、MJS製品のユーザー事務所で構成される東北ミロク会計人会では、システム開発委員長を務めていらっしゃるそうですね。

日向 はい。ミロク会計人会連合会の顧問先経営支援プロジェクトのメンバーでもあります。
東北はエリアが広く、集まって活動することがなかなか難しいのが実情です。ただ、昨年来のコロナ禍でオンライン会議が一気に広まりました。そのようなツールもうまく取り入れながら、活動していきたいと思います。

顧客のニーズに合わせてサービスを提供

――自計化への取り組みについてはいかがでしょうか。

日向 私たちは、全てのお客様に自計化をお勧めしているわけではありません。お客様のご要望に合わせて、自計化を支援することもあれば、記帳をお受けすることもあります。
ですから、全顧問先のうち自計化しているお客様は3割程度です。それらのお客様には、MJSさんの自計化ソフト「iCompassNX」「ACELINK NX記帳くん」「かんたんクラウド」などを導入していただいています。
一方で、アナログな記帳代行のニーズは今後もずっと残るだろうと思います。とはいえ、記帳代行だけを引き受けるのでは「記帳代行屋さん」にすぎません。
そこで、私たちは経理のバックオフィス業務そのものをアウトソーシングできるサービスを提供しています。そのなかには、記帳代行業務も含まれています。
記帳代行を含めたバックオフィス業務は、月額2万5000円からご利用いただけます。お客様は、自社内に経理の人材を雇用するよりも安価に、バックオフィス業務をアウトソーシングすることができます。特に、中小企業のお客様には親和性が高いと思います。
現在は、領収書1枚から自動で仕訳されるテクノロジーがどんどん実現しています。ただ、自動化の前の段階で差が出ると思います。
私たちにアウトソーシングしていただければ、自社の経理しか扱わない担当者では丸1日かかるような業務を、1時間もかけずに終えることができます。もちろん、人海戦術で対応するのではなく、テクノロジーを活用しています。

コロナ禍における顧客支援と情報発信

――コロナ禍における顧問先支援の取り組みについてお聞かせください。

日向 まず、助成金の申請支援が挙げられます。休業要請や時短要請に対する支援金の支給対象となるのは小規模な事業者が多く、特に飲食店では家族だけで経営していたり、経営者のほかにアルバイトが数名しかいなかったりすることが珍しくありません。そのようなお客様に対し、申請のお手伝いをさせていただきました。
また、申請だけでなく、お客様に情報をお届けする必要性も強く感じています。そもそも支援制度があることすら知らないお客様が、意外にも多いからです。「経営が苦しいのだから自分で見つけるだろう」ではなく、たとえ知っているとしても積極的に情報発信しなければならないと思っています。

――情報発信といえば、コロナ禍で顧客を訪問する機会は減っていますか。

日向 お客様との面談は、直接お会いすることを基本としています。お客様が希望される場合には、ウェブ面談で対応する形をとっています。
やはり、直接お会いして肌感覚でお話ができることは重要だと考えています。一方で、既にしっかりコミュニケーションがとれているお客様であれば、全てウェブ面談に切り替えても問題はないと思っています。
もうひとつ、よい面での変化としては、ウェブで参加できるセミナーが急増していることが挙げられます。
従来は、私が東京で開催されるセミナーに参加し、戻ってから職員に知見を伝えていました。しかし、ウェブセミナーであれば、職員も含めて参加することができるので、職員同士が話し合って業務に生かせるようになっています。

事務所全体で高付加価値サービスを提供

――最後に、貴事務所の今後の展望をお聞かせください。

日向 以前に比べて、当事務所の職員のレベルは確実に上がっています。これまで税金の計算だけしていた職員も、お客様に経営のアドバイスができるようになるでしょう。
経営のアドバイスは不要というお客様に対しては、税金の計算をはじめとしたバックオフィス業務を支援します。この分野については、まず事務所内で徹底した合理化と生産性の向上に取り組みます。
来年4月に新卒の職員が入社すると、当事務所は私を含めて10名体制になります。この10名で、お客様に高付加価値のサービスを提供し、並行して事務所内の業務の効率化を進めていきます。そして、将来的に職員のなかから年収1000万円の職員を2名は出したいと考えています。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

導入事務所様のご紹介

日向雅之(ひなた・まさゆき)

ひなた会計事務所(日向雅之税理士事務所)所長。税理士。東北税理士会常務理事。東北ミロク会計人会システム開発委員長。昭和46年生まれ。宮城県出身。専修大学商学部会計学科卒。大学卒業後、仙台市内の会計事務所に勤務しながら平成11年に税理士資格を取得。平成14年、独立してひなた会計事務所を開業。平成15年、東北で初めて資本金1円の株式会社を設立。

ひなた会計事務所/日向雅之税理士事務所

所在地

宮城県仙台市青葉区中山台1-11-5

代表者 所長 日向雅之
設立 平成14年(独立開業)
構成人数 9名
主な業務 所得税、法人税、開業支援、経理合理化、信託
  • 本事例の掲載内容は取材当時のものです。