導入事例

大西会計事務所

2016年5月17日

大西会計事務所 様

会計事務所、コンサルティング会社、記帳代行会社、3組織のコンビネーションで、地域中小零細企業の経営を全面的にバックアップする大西会計グループ(和歌山県和歌山市)。経営革新等支援機関(認定支援機関)にも認定されており、PDCA経営サイクルを取り入れたその経営コンサルティング能力は、顧問先のみならず、地域の金融機関からも高く評価されている。近年、MAS監査にも積極的に乗り出し、MASの事業化を視野に、税務部門とコンサルティング部門との連携強化を図っているところである。そこで今回、グループの母体である大西会計事務所 所長の大西省悟氏と副所長の古田倫子氏に、制度会計と管理会計の両輪を軸とした会計事務所の成長戦略についてお話を伺った。

制度会計と管理会計の両面から顧問先を支援

―― 大西先生は長年、税務会計とともに、中小企業の経営支援に力を入れてこられました。最近ではMAS監査にも取り組まれているということで、今日は大西所長と古田副所長のお2人に、税務会計とMAS監査という大西会計グループの2本立て事業戦略についてお話を伺っていきたいと思います。まず、大西会計グループとはどのような組織なのか、簡単にご紹介ください。

大西 会計事務所の開業は平成5年になります。しかし税務だけでなく、中小企業の経営支援もしていきたいということで、その2年後の平成7年、コンサルティング会社の「株式会社シー・エス・マネジメント」を設立しました。しばらくはこの2社体制で顧問先の経営支援を行っていたのですが、やがて「顧問税理士を持つほどの規模ではないけれど、自社で会計はできない」というお客様が出てきまして、そういった会社のニーズにお応えする形で平成14年、記帳代行会社の「有限会社AOC」を設立しました。
現在は、税務会計、経営コンサルティング、記帳代行の3組織で大西会計グループを形成しています。中堅中小企業のニーズは、これで大体カバーできているのではないかと思っています。

――ポイントは税務部門とコンサルティング部門のバランスになると思いますが、そのあたりはどのような仕組みになっていますか。

大西 私がコンサルティング、副所長の古田が税務ということで、きっちりと役割分担をしています。税務部門、いわゆる制度会計は古田に一切を引き受けてもらっていまして、おかげで私はもう2年も税務から遠ざかっています。頭はもはや税理士というより、コンサルタントの回路になってきています。

―― では、古田先生は、大西会計グループ制度会計部門の長というお立場になるわけですね。

古田 そのようなことになります。顧問先の税務会計をしっかり見ていくことが使命です。ですが、それと同時に管理会計(未来会計)のバックヤードとしての自覚もあります。大西が経営コンサルティングに集中できるよう、制度会計を守っていくことも使命と心得ています。
税法は毎年改正されますから、アンテナを張って研鑽を怠らず、常に最新情報をお客様に提供していかなければなりません。その責務は重く受け止めています。

大西 税務は「しゃべる」立場、コンサルティングは「聞く」立場、それぞれの立ち位置で役割が違ってきます。双方がお客様を取り合ったり、業績を競い合ったりするのではなく、協力し合う関係。そのためのコミュニケーションには大変気を使っています。

―― 大西会計グループの理念を教えていただけますか。

大西 一番大事なことはやはり信頼関係だと思っています。共感し合えるということです。そこで、今年から「中小企業の存続と発展をサポートし、社会に貢献する」としていた理念を、「信頼」という一言に変更しました。それまでの理念はそのまま「ミッション」として掲げていますが、そのうえに「信頼」を掲げることにしたのです。
といっても、これは会計事務所とお客様との関係だけを指すのではなく、社員同士の人間関係にも必要不可欠の要素と考えています。むしろ、社員同士が信頼で結ばれていなければ、大西会計グループとしての顔がぶれますから、お客様や金融機関などの外部の方々との信頼関係を築くことはできません。私たちの事業に関わる全ての方々との間に「信頼」があってこそ、成長・発展できるものと考えます。

MAS監査への取り組み

―― 金融機関との信頼関係・連携も、会計事務所の中小企業支援には欠かせませんが、実際にどのような対応をされていますか。

大西 金融機関の信用を得るには何といっても実績です。そこで当事務所では、認定支援機関としての能力を生かし、顧問先のPDCA経営サイクルを回しながら、黒字化を目指しています。いわゆるMAS監査ですが、このMAS監査で成果を出すことができれば金融機関の信頼を得られることは間違いありません。
また、商工会議所や信用保証協会の専門相談員となっており、商工会議所の場合は、銀行が各支店に企業を連れてこられて、そこで相談員としてその企業の相談を受けています。そこで私たちが相談員としてお役に立つことができれば、新たな評価につながります。相談員として、多くの経営者の相談に対応していくなかで、銀行さんからご推薦いただけるような会計事務所になっていきたいと思っています。

―― MAS監査の取り組みについて、もう少し詳しく教えていただけますか。

大西 PDCAのノウハウは、当事務所の強みです。まず、バンクミーティングに参加して経営計画(P)を複数の銀行にプレゼンテーションする。顧問先にそれを実行(D)していただきながら、こちらでモニタリングによる検証(C)、そして改善(A)を施していく。このPDCAをきっちり回すことができれば、銀行との絆を強くしていけるでしょう。
当社では、このPDCAのPを「営業利益改善の日」、Cを「予算実績検討会」、Aを「合意形成会議」とそれぞれ称して、お客様に考える場を提供しています。
「営業利益改善の日」は「あんしん経営をサポートする会」(東京都中野区)の中期5カ年計画立案セミナー「将軍の日」を3カ年計画に変えたものです。

―― なぜ、名称を変えたのですか。

大西 会社にとって一番大事な利益は営業利益です。売上を増やすのも、限界利益率を上げるのも、固定費を減らすのも、全てこの営業利益に集約できる。全てのことに通じるのです。そこで、そのままストレートに分かりやすく「営業利益改善の日」としました。

―― 大西会計さん自身も、このPDCAの経営サイクルを回しているのでしょうか。

大西 そうです。まず自分たちがPDCAを実践して成果を出し、その経験を元にお客様にご提案しているのです。実際、専門機関である日本BIGネットワーク「Ja–BIG」にコンサルティングに入っていただき、MAS監査を体験しました。これによって、当事務所の奥行きは深まったと思います。今まで私と古田にしかできなかったようなことを、ほかの担当者もできるようになってきたのです。経営者からさまざまなお話を聞けるようになり、それに伴い情報量も格段に増えました。要は組織として動けるようになってきたわけです。

顧客のニーズに合わせた、 システムの有効活用

―― ところで顧問先向け会計システムは何をお使いですか。

大西 ミロク情報サービス(以下MJS)の個人事業者・小規模法人向け会計ソフトの「記帳くん」や「iCompassNX」を導入させていただいています。開業前に私が勤めていた会計事務所では、別のベンダーのシステムを使っていたのですが、MJSのシステムのスピード感に圧倒され、開業当初から使わせていただいています。
開業当初はパートさん一人だけでしたので、営業も実務も実質自分一人でやらなければなりませんでした。そのような環境下では「データを待つ」ことがとてもじれったかった。ですから、スピード感あるMJSのソフトはとても魅力的だったのです。即導入を決め、以来、100%MJSを使っています。

古田また、当事務所は顧問先の自計化率が結構高いのですが、「記帳くん」や「iCompassNX」は、自計化のツールとしても使い勝手がよいと思います。導入時の設定は事務所でできますし、お客様のほうでインストールすれば、その日からお使いいただけます。データもそのまま取り込んで、入力から申告業務までスムーズにいくので、とても便利です。

―― 他社のソフトと比較していかがでしょうか。

古田 私自身、MJS以外のソフトを使ったことがないので比較はできませんが、ほかのソフトをお使いになっていたお客様のなかで、MJSに乗り換える方が結構いらっしゃるのも事実です。つい先日も、そのようなお客様がいらっしゃいました。仕訳の修正ひとつとっても、ダブルクリックで簡単にできますし、そういったところに利便性を感じます。個人的には満足しています。

大西 MJSの会計ソフトであれば、当事務所のスタッフは全員が精通していますので、いつでもお電話をいただければご指導できる態勢にあります。ですからシステム面で会計が滞るということはありませんし、資料作りなどにおいてもより有効に活用することができる。そういった利点があるのです。
また、当事務所の特徴のひとつとして、補助元帳の入力を徹底しているという点が挙げられます。これによって、内訳まで全て見ることができますから、その場ですぐアドバイスを差し上げることができます。

―― 制度会計と管理会計(経営コンサルティング)との連携面で、データのやりとりなどはいかがでしょうか。

大西 システム的には、MAS監査には専用のソフト(株式会社MAP経営の「経営シミュレーションソフト」)を使っているのですが、そのデータを会計ソフトの「予算」のところに登録しています。ですから、自社で入れる段階で予実対比までできてしまうという仕組みになっています。
また、当事務所は監査体制が一般の会計事務所さんとは少し違っていて、お客様によって毎月訪問するところもあれば、月1回、2カ月、3カ月、あるいは半年に1回というところもあります。もちろん回数が減るほど顧問料も下がるわけですが、実は顧問先の50%以上は、年1回のお客様なのです。
そのような訪問回数の少ないお客様には、予算を登録していただき、自社で予実対比してもらうようにしています。このようにしてお客様にシステムのメリットを最大限に生かしていただき、低コスト対応をする。これが当事務所の大きな特徴であり、高い利益率を生み出している要因です。

MAS監査と財務会計のコンビネーション

―― そのほか、大西会計さんで特に力を入れているお客様サービスについて教えていただけますか。

大西 特に力を入れているのは、経営者セミナー、実務セミナー、経理セミナーなど、各種セミナーの開催です。年間15本くらいになりますが、全て、前年末に翌年のスケジュールが決まります。
こうしたセミナーの目的は2つ。担当者によってどうしても生じてしまうスキルの差を埋めること、そして、訪問回数の少ないお客様への情報発信です。年に1回訪問のお客様ともなりますと、税制改正などの重要な情報さえ伝わらない恐れも出てきますので、セミナーという形で情報発信することで、全てのお客様にお届けしようというわけです。

―― セミナーは、階層別に対象を決めて企画されているのですか。

大西 経理セミナーは経理担当者向け、実務セミナーは各界で活躍されている方を講師にお招きし、税務以外のあらゆる分野をテーマに企画を組んでいます。経営者セミナーは、経営者や経営幹部を対象にした毎年年末に開催するセミナーで、来年のトレンドに関するお話が中心になります。こちらは私が講師としてお話をさせていただいています。これら3種のセミナーのほか、相続や事業承継など、緊急性・重要性の高い内容をテーマにした特別セミナーも随時、開催しています。

―― そのほか、税務会計部門ではいかがですか。

古田 税務会計のほうで行っている巡回監査では、必ずMJSの「決算予測」を使い、決算が済めば、「決算分析書」をお渡ししています。さらに、決算申告月にはお客様に当事務所に来ていただき、「決算検討会」を実施しています。これが当事務所の流れです。

大西 「決算検討会」では、お客様に結果を提示し、今後の方針を考えていただきます。そしてその場で来年のビジョンを立ててしまいます。経営者の方々はここで、日頃の悩みや、問題点を吐露されたりします。これがお客様との信頼関係の醸成に大変役立っており、好評を博しているところでもあります。
「決算検討会」はMAS部門で行いますが、会計の担当者もこれに参加します。ここで、税務からMAS監査にバトンタッチしていくという仕組みです。この体制を、私たちとしては今後さらに強化していきたいと考えています。

―― MAS監査と財務会計の素晴らしいコンビネーションだと思いますが、その成果のほどはいかがでしょうか。

古田 私が担当しているお客様ですが、5カ年計画を立て、その5年で売上が12億から18億にまで伸びた会社もあります。百万単位だった利益も、千万単位になっています。
そういった実例を目の当たりにしますと、経営計画を立て、モニタリングで改善策を施していくというPDCAの効果は、本当にすごいものがあると実感します。何よりMAS監査をすることによって、経営者の意識が確実に変わっていきます。それはやはり、「決算検討会」などを通して培われた、私たちとお客様との「信頼」があってこそだと思います。

―― 大西会計の今後の未来展望としてどのような戦略をお考えになっているのか、最後にお伺いします。

大西 未来会計、すなわちMAS監査の事業化を考えています。MAS監査に取り組み始めて分かったのですが、税務あってこそのMAS、すなわち税務とMASは車の両輪の関係にあるということです。
最近とみに思うのですが、中小企業は経営資料が整備されていないところが本当に多い。しかし、そこは会計事務所が十分対応できる部分です。というよりむしろ、税務会計でやるべきところでしょう。しっかりした経営資料ができれば、経営の現況がはっきりと見えてきますので、そこでPDCAの経営サイクルを回していく。
そうすることによって税務とMASが両輪として機能していきます。そして、最終目標であるお客様の黒字化の実現に貢献できるようになる。MASの事業化によってお客様の黒字化率を上げていく、これに尽きると思います。

―― 今日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。大西会計事務所のますますのご発展を祈念しています

導入事務所様のご紹介

大西 省悟(おおにし・しょうご)

大西会計事務所所長。株式会社シー・エス・マネジメント代表取締役。税理士・行政書士。M&Aシニアエキスパート。平成5年6月、大西会計事務所を設立。平成7年4月、株式会社シー・エス・マネジメントを設立。和歌山大学非常勤講師。和歌山商工会議所・和歌山県保証協会の派遣専門家。

古田 倫子先生

大西会計事務所 副所長

大西会計事務所

所在地 〒640-8341 和歌山県和歌山市黒田二丁目2-22 SKファーストビル2F
代表者 大西 省悟
創業 平成5年6月3日
スタッフ
14名
  • 本事例の掲載内容は取材当時のものです。

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