第16回 同一労働同一賃金の対応2

2021年5月12日

「同一労働同一賃金」について、前回からの続きです。今回は、退職金、諸手当、休暇制度、休職制度について説明いたします。また、「パートタイム・有期雇用労働法(以下、「パート有期法」といいます)」の14条に規定されている、短時間・有期雇用労働者(以下、「非正規労働者」といいます)に対する説明義務についても触れておこうと思います。

1.退職金

退職金は、長年の勤務に対する功労報償的な性格が一般的で、1、2年程度の期間限定の非正規労働者に対して支払われることはまずありません。この点については、「不合理」とされる心配はほとんどないといえますが、無期契約の非正規労働者や、有期雇用契約でも契約更新が何度も繰り返され、実質的に長年にわたり勤続している非正規労働者は、「長年の勤務」という点では正社員と相違ないと判断される可能性があります。

厚生労働省のガイドライン※(以下、「ガイドライン」といいます)には考え方は明記されていませんが、退職金を正社員にのみ支給する場合は、均衡待遇(パート有期法8条)に照らし合わせて、「職務の内容」や「責任の程度」の違い、会社への貢献度の差や、有能な人材の獲得・定着を図るなど、その目的を明確にしておく必要があります。

※「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」

対応のポイント

  • 正社員の退職金制度を見直し、勤続年数に対してのみ支払われるものから、会社への貢献 度や職務内容などにより金額が変わる仕組みへ変更し、制度を再構築する。
  • 正社員とは別の退職金制度を構築し、非正規労働者も勤続年数に応じて一定の金額を支 給できるようにする。(勤続5年以上で5万円、10年以上で10万円など)

2.役職手当

ガイドラインには、「役職の内容に対して支給するものについて、通常の労働者と同一の内容の役職に就く短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の役職手当を支給しなければならない。また、役職の内容に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた役職手当を支給しなければならない。」と明記されています。

パート・アルバイトであっても、主任やチーフなど役職が付いている場合をよく見かけますが、正社員以外は役職手当が付かないという企業が少なくありません。

対応のポイント

  • 正社員と非正規労働者の役職手当に差がある場合は、その差について合理的に説明ができるように「職務の内容」や「責任の程度」を見直し、場合によっては役職手当の金額も再設定する。

3.家族手当

多くの企業で支給されている家族手当は、一般的に扶養する配偶者や子供の人数に応じて、その家族を養うための生活費補助の意味合いで支給されています。ただし、それは正社員に限ったことであり、非正規労働者に支給している会社はほとんどありません。ガイドラインには「家族手当の考え方」としては明記されていませんが、同一の支給要件を満たす非正規労働者にも家族手当を支給すべきとの判例もあるため、改めて家族手当の対象者や金額について見直す必要があります。

対応のポイント

  • 家族手当の支給意義を改めて考え、長期にわたり勤務することへの期待や人材の定着を図るなどの目的として支給する。非正規労働者も勤続5年以上の者には支給するようにする。
  • 家族手当を廃止し、基本給や他の手当に統合するなど、給与制度自体を見直す。

4.住宅手当

住宅手当に関しても、基本的には家族手当と考え方は同じです。住宅費用の補助を主たる目的としているのであれば、正社員のみならず、非正規労働者にも原則として同様の支給が求められます。ただし、正社員にのみ転勤があり、それによる転居費用や住居費の増加を補填する目的など、前提条件や必要性に明確な違いがある場合は、支給の有無について直ちに不合理とはいえないようです。

対応のポイント

  • 住宅手当の支給目的を、単なる住宅費用の補助のみならず、転居を伴う人事異動の対象となる労働者のみに支給する。
  • 転居を伴う人事異動がない場合、その他、正社員と非正規労働者との間に明確な違いが見当たらない場合は、基本給や他の手当に統合するなど、給与制度自体を見直す。

5.慶弔休暇

産前産後休暇など法定休暇の他、結婚、出産、親族の葬儀を慶弔休暇として有給で付与する企業も少なくありません。

ガイドラインには、「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の慶弔休暇の付与並びに健康診断に伴う勤務免除及び有給の保障を行わなければならない。」と明記されています。

非正規労働者には慶弔休暇を付与していないのであれば、早急に見直しが迫られます。ただし、週2日程度の勤務日数である非正規労働者に対しては、勤務日を振替えることで対応するのは、不合理ではないとされています。

対応のポイント

  • 非正規労働者に慶弔休暇を付与していなかった企業は、その取得可能日数を含めて正社員と同等に付与できるようにする。
  • 週2日勤務程度の非正規労働者に対しては、まずは勤務日の振替対応を促し、それが難しい場合は慶弔休暇を付与するように制度化する。

6.休職制度

休職制度は、業務外のケガや病気でしばらく勤務ができない場合に、企業に在籍のまま、再び勤務可能になるまで就労を免除する制度ですが、非正規労働者には適用しない企業が多いようです。

ガイドラインには、「短時間労働者(有期雇用労働者である場合を除く。)には、通常の労働者と同一の病気休職の取得を認めなければならない。また、有期雇用労働者にも、労働契約が終了するまでの期間を踏まえて、病気休職の取得を認めなければならない。」と明記されています。つまり、パート・アルバイトでも休職を求められた場合、それを認めなければならないということになります。ただし、有期雇用労働者の場合は、労働契約期間満了日までに短縮して与えることは可能です。

対応のポイント

  • 正社員と非正規労働者の「職務の内容」や「責任の程度」の違い、継続的な雇用を確保する必要性などを考慮して、それらの違いに応じて休職期間に差をつける。
  • 有期雇用労働者の場合、有期契約期間より休職期間の方が長くなる場合は、契約期間満了をもって休職期間も終了する旨を就業規則などに規定しておく。

待遇差の説明義務

最後に、パート有期法14条1項、2項で規定されている、待遇差の説明義務についてです。企業は以下の通り、非正規労働者を雇い入れたとき、または非正規労働者から説明の求めがあったときは速やかな説明義務が生じます。

  • 非正規労働者を雇い入れたとき(14条1項)
    賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用、正社員転換などの雇用管理上の措置の内容の説明
  • 非正規労働者から説明の求めがあったとき(14条2項)
    待遇決定に際しての考慮事項・決定基準、待遇差の内容・理由についての説明
    また、説明を求めた労働者に対する不利益取扱いを禁止しています。(14条3項)

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