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- 月刊 - 会計事務所ラボ|第4回:単価を上げるためのサービス設計
Introduction
はじめに
前回は、顧問契約が増える紹介ルートの作り方について、金融機関や他士業、既存顧問先との関係づくりを中心に整理しました。そこで次に出てくるのが、「紹介や問い合わせが増えてきたとして、その案件をどんなサービスでどのような単価として受けるのか」という問題です。
ここが曖昧なままだと、せっかく良い相談が来ても、なんとなく安い顧問料で受けてしまい、忙しいのに利益が残らない状態に戻りやすくなります。単価を上げるために必要なのは、単に高い見積りを出すことではなく、自事務所がどんな価値を、どこまで、どんな形で提供するのかを設計し直すことです。
この記事では、会計事務所が安売り体質から抜け出し、納得感のある単価を実現するためのサービス設計の考え方を、実務に落とし込みながら見ていきます。なお、第5回で扱うのは既存顧客からどう売上を伸ばすかという展開の話です。本記事ではそこに踏み込みすぎず、その前提となる「どんな商品を、どんな相手に、どんな価格で提供するか」という設計そのものに焦点を当てます。
結論
4P分析で整理すると、単価は「サービス設計」で決まる
顧問料やスポット報酬が上がらない事務所を見ると、「値上げを言い出しにくい」「相場より高いと断られそう」という悩みがよくあります。もちろん伝え方や営業力も大切ですが、その前に見直したいのはサービスの設計です。どれだけ交渉を工夫しても、売るものの形が曖昧なままでは、最後は価格だけで比べられやすくなります。
このテーマは、4P分析で整理すると理解しやすくなります。つまり、Productで「何を、誰に、どこまで提供するのか」を明確にし、Priceで「基本料金と追加料金の境界線」を整え、Placeで「工数が膨らみにくい提供方法」を設計し、Promotionで「その価値を営業の場で言葉にする」ことです。この4つがそろってはじめて、適正な単価を説明しやすくなります。
4Pで見直す、サービスの提供方針
- Product:ターゲット、支援範囲、成果を明確にし、「何でも込み」をやめる
- Price:基本サービスと追加サービスを切り分け、料金の根拠を見えるようにする
- Place:クラウド会計やWEB面談などを組み込み、工数が増えすぎない提供方法にする
- Promotion:営業の場で価値を言葉にし、安さだけの比較から外れる
単価が上がらない理由
なぜ単価が上がらないのか
会計事務所が安く案件を受けてしまう理由は、単に営業が弱いからではありません。むしろ多いのは、サービスの境界線が曖昧なまま仕事を受けているケースです。月次監査、記帳、経営相談、資金繰りの話、クラウド会計の設定、急ぎの問い合わせ対応まで、気づけば全部まとめて同じ顧問料で引き受けていると、忙しさだけが増えていきます。さらに、細かい作業をその都度切り出して無料で対応してしまう癖があると、事務所側は頑張っているのに、売上には反映されない状態が固定化しやすくなります。
つまり、料金が高いか安いかは相場表だけでは決めにくく、自事務所がどれだけの時間と人を使っているかを見なければ判断できないということです。
また、開業初期には「まずは契約を増やしたい」という思いから、安めの金額で受けやすくなります。ただ、その入口価格がそのまま長く残ると、あとから見直しづらくなります。単価が上がらない事務所ほど、受注時の価格設定と、その後のサービス追加のルールが曖昧なことが少なくありません。
サービスの切り分け
単価アップの出発点は「値上げ」ではなく「サービスの切り分け」
単価を上げたいとき、最初から「顧問報酬を高くする」だけを考えると、どうしても交渉の話になりがちです。しかし実務では、その前に「そもそも何を基本サービスにし、何を別メニューにするか」を整理するほうが重要です。
たとえば、申告・月次チェック・年末調整・相談対応・クラウド導入支援・資金繰り面談・事業承継の相談、月次経営支援などが全部同じ顧問料の箱に入っていると、顧客から見ても違いがわかりません。これでは、価格の説明もしづらくなります。
そこで有効なのが、「基本サービス」「追加オプション」「スポット支援」の3層で考えることです。基本は毎月・毎年の運用を支える部分、追加オプションは一定の課題解決に伴走する部分、スポット支援は単発テーマに対応する部分、と分けていくと、価格の根拠を伝えやすくなります。特に大事なのは、細かい作業を曖昧な善意で吸収しないことです。何が基本に含まれ、何が別料金なのかを最初から決めておく必要があります。例えば、記帳代行の資料回収一つにしても、紙ベースで提供してもらう場合とデータで提供してもらう場合がありますが、紙だと回収や返却に係る手間や入力の工数がデータの場合よりも多くなるので記帳代行料を上げるなど、細かい部分でも単価の差を付けるべきです。
また、近年はクラウド会計やWEB面談が一般化しており、顧問先の証憑資料や領収書や請求書などの各種データも事務所で見ることができることから、毎月の顧問先への訪問などはオプション料金にしてWEBや来社型にするなども、付加価値の高い業務を行う時間を作り出す有効な手段です。これらはまさに、4P分析でいう「Place(仕組み・提供方法)」の設計にあたります。工数を奪われない提供ルートをあらかじめ作っておくことが、事務所の利益を守る防衛策になります。
キャッシュポイントの設計
自社のキャッシュポイントから逆算してサービスを設計する
サービス設計で最初に決めたいのは、「自社はどこで利益を取るのか」というキャッシュポイントです。ここが曖昧なままでは、対象顧客も、メニューも、価格もぶれやすくなります。たとえば相続・事業承継に係る税務を強い収益源にしたいのであれば、純資産が大きい会社、オーナー一族に承継課題が見え始めている会社、土地を多く持っている地主などを主な対象に据えるほうが自然です。つまり、仮に最初は安い顧問料だったとしても、自事務所が得意なサービス領域に引き込んでバックエンドで顧問先単価を上げるという方法です。
他にも創業支援で取るのか、クラウド会計で取るのか、管理会計の伴走で取るのかなどによって、選ぶべき顧客は変わります。つまり、まず商品を作り、その商品に合う顧客を選ぶという順番が重要です。「誰でも受ける」ではなく、「事務所が価値を出しやすい相手に絞る」ほうが、全体の単価が上がりやすくなります。
そのうえで、「どこまでやるか」「受けたあとに何が変わるか」まで見える形にすると、価格の納得感は高まります。たとえば、事業承継支援なら、現状の試算までなのか、実行ロードマップまで作るのか、対策の実行までやるのかで価格は変わります。キャッシュポイントを決めるとは、単に高い商品を作ることではなく、利益が出る自事務所が得意な支援領域と、その支援が刺さる顧客像を一致させることが大切です。
支援のメニュー化
無料対応を生まないために、メニュー化しておきたい支援
会計事務所が単価を上げやすくするには、「提案できる支援が見える形になっているか」が重要です。すでに頭の中ではやっていることでも、商品として名前がついていなければ、顧客には価値が伝わりにくくなります。逆に言えば、名前がない業務ほど無料対応になりやすく、担当者ごとの善意で吸収されやすくなります。
たとえば、クラウド会計の立ち上げ支援、月次の数字共有ミーティング、資金繰り改善サポート、銀行融資支援、株価算定や贈与税申告などは、単価アップにつながりやすいテーマです。
ここで大切なのは、難しい商品をたくさん並べることではありません。むしろ、「この悩みならこの支援」とすぐ結びつくように、3〜5個程度の主力メニューに絞ったほうが実務では動きやすくなります。また、各メニューごとに初回ヒアリング、資料整理、設定作業、面談頻度、追加質問対応などをどこまで含むかを書き分けておくと、細かい作業だけが無料で増える状態を防ぎやすくなります。
バックオフィス代行
記帳代行の先に、バックオフィス代行という設計もある
最近はクラウド会計や各種AIツールの普及によって、記帳代行は昔に比べて大幅に工数が減りやすくなっています。その一方で、請求書発行、支払管理、給与計算、経費精算、会計データの整理といったバックオフィス全体をまとめて支えてほしいという顧問先の需要は、人手不足によりむしろ高まりやすくなっています。
実際、業界全体で記帳だけで終わらず、経理代行、給与計算、請求・振込、総務まわりまでを一体で支援する形が増えています。会計事務所としても、記帳代行を入口にしつつ、数字の整理にとどまらない業務フロー全体の支援へ広げていくことで、単価の取り方を変えやすくなります。
このとき大切なのは、単に業務範囲を広げることではなく、どこまでをパッケージ化し、どこからを追加料金にするかを先に決めておくことです。たとえば、記帳代行からバックオフィス代行へ広げるのであれば、月次入力だけなのか、請求管理や支払管理まで含むのか、給与計算やクラウド運用支援まで含むのかを明確にしておく必要があります。「記帳代行⇒バックオフィス代行」のように役務の幅を設計できる事務所は、価格の根拠も伝えやすくなります。この時に、「経理の人を1名雇用するとこれくらいの出費になるが、バックオフィス代行であればこの金額でできます」など顧問先のメリットになるような伝え方をすると良いでしょう。
適正価格の提示
営業力のある事務所は、
適正価格を提示し、合わない顧客を断れる
サービス設計が固まってくると、営業の場での見せ方も変わってきます。営業力がある事務所とは、単に話がうまい事務所ではありません。自分たちが提供する価値と対象顧客が明確だからこそ、適正な料金を自信を持って提示でき、合わない価格帯の顧客を無理に取りにいかない事務所です。
たとえば、「月次確認・決算申告・日常的な税務相談」を基本とし、「クラウド導入支援」「資金繰り面談」「補助金申請の事前整理」「事業承継支援」などを別枠にする形です。こうしておくと、新規の相談時にも「この範囲ならこの料金です」「ここから先は別メニューです」と自然に伝えられます。結果として、安い顧問料で何でも求める相手とは無理に契約せず、自社の設計に合う顧客を選びやすくなります。低価格を求める顧客は、そもそも自社で経理体制を整える意識が低い傾向にあります。領収書が数ヶ月分まとめて未整理のまま送られてくる、資料の提出期限を守らない、データに不備が多いのは日常茶飯事です。結果として、会計事務所側の「確認」や「リマインド」の手間が数倍に膨れ上がります。
90日ロードマップ
最初の90日で整えたいサービス設計
ここまでの考え方を、実際の90日間でどう動かすかに落とし込むと、次のような順番になります。
| 1〜2週目 | 現状の棚卸し | 現在のサービスを棚卸しし、基本料金に含んでいる内容を書き出す |
|---|---|---|
| 3〜4週目 | 工数の見える化 | 顧客ごとの工数をざっくり把握し、負荷の高い先・収益性の低い先を見つける |
| 2か月目 | 3層への組み直し | 基本サービス、追加オプション、スポット支援の3層でメニューを組み直す |
| 2〜3か月目 | 主力メニューの決定 | 主力メニューを3〜5個に絞り、対象顧客・提供範囲・成果イメージ・別料金になる作業を一言で説明できるようにする |
| 3か月目 | 提案現場での検証 | 新規相談や初回提案の場で試し、説明しにくい部分や価格の曖昧さを見直す |
Summary
まとめ
単価を上げるためのサービス設計は、4P分析で考えると整理しやすくなります。Productで価値の輪郭を整え、Priceで根拠ある料金体系をつくり、Placeで無理のない提供方法を決め、Promotionでその価値を伝えられる状態にする。この順番で設計できる事務所ほど、安売りに流されず、適正単価で選ばれやすくなります。
前回までで整えてきた「誰に選ばれたいか」「どこから紹介されるか」という流れがあるからこそ、第4回では「どんなサービスとして受けるか」を設計する意味が出てきます。次回の第5回では、この設計を前提に、既存顧客に対してどう売上を伸ばしていくかをテーマとして扱います。
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売上成長ロードマップ一覧
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2026年07月31日第1回会計事務所が売上を伸ばせない本当の理由
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2026年11月公開予定第5回既存顧客から売上を伸ばす方法
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