第1回 70歳定年法

労務管理

2020/02/12

現在、社会は働き方改革の真っ只中。2020年4月1日からいよいよ中小企業にも「時間外労働の上限規制」が適用されます。また、大企業を対象に「同一労働同一賃金」が施行されます(中小企業は2021年4月1日から)。正に、各企業は待ったなしで大きな変革を求められていると言っても過言ではありません。

「人生100年時代」

政府がこの言葉を掲げて、年金改革等を至上命題として取り組んでいるのは周知のとおりです。2019年6月21日に閣議決定された「骨太の方針2019」では、全世代型社会保障への改革として、70歳までの就業機会確保について言及しています。今回は、次の国会に提出される法案、通称「70歳定年法」について述べたいと思います。

現行の高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)では、全ての企業に65歳までの就労機会確保を義務付けています。すなわち、①定年の廃止②定年の延長③継続雇用制度の導入(関連会社等での雇用も可)のいずれかの措置を講じることが義務付けられていますが、その年齢を70歳まで引き上げようというのが、今回の改正案となります。この法案が国会で成立すれば、早ければ2021年4月から実施される見通しです。

この改正案では、企業に求められる具体的な対応として、現行の3つの選択肢以外に、新たに4つの選択肢が加わることになります。

この7つの選択肢は、今までの65歳までの対応策以上に、それぞれの高齢者の特性に応じた働き方を支援できるように配慮されているのが分かります。自社で仕事を与えられないのであれば他社への就職斡旋、雇用ではなくフリーランスとして独立した者との業務委託、起業支援、社会貢献活動に参加する者への資金提供などが新しい選択肢です。

ただし、現行の65歳までの就労機会確保が企業にとって「義務」であるのに対して、70歳までの就労機会確保の改正案では、企業の負担増を考慮して「努力義務」となっています。実際には労使間で話し合いによりいずれかの取り組みを選択することになります。また、労使が合意した一定の条件を定めて、適用除外規定を設けることも可能となるようです。

70歳までの就労機会の確保は、将来的に年金受給開始年齢を70歳とする為のお膳立てのようにも思えますが、深刻な少子高齢化による労働力不足を解消する一つの手段であることは間違いありません。さらに、医療や年金といった社会保障費の支え手としての重要な役割も果たすでしょう。

企業はこの改正を「また負担が増える!」と嘆くのではなく、むしろ積極的に高齢者を活用できる仕組み作りを進めた方が賢明に思えます。

筆者紹介

MJS税経システム研究所 客員講師
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/

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