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卸売業

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2017/01/23

質問

売上は順調に推移しているものの、売掛金残高が増え、最近どうも資金繰りが厳しくなりつつある「ミロク産業」。あなたがその経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

営業担当の評価に、売上代金の回収状況を加える。

パターン2

銀行に短期の資金融資を依頼する。

パターン3

回収までの期間が長い、準大口の得意先との契約を縮小する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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余裕ができた資金繰り

「ミロク産業」は、各種検査機器を中心とした専門商社です。検査機器に詳しい技術者や、活用提案力に秀でた営業担当などを擁する同社は、顧客から厚い信頼を得ています。本社を置く東京以外にも、大阪と名古屋に営業所があり、販売先は中小企業ばかりでなく、大手企業にも及びます。各拠点とも営業活動に熱が入っており、販売は順調に推移しています。

ある日のこと、社内では経理担当が若手の営業マンに声をかけています。

経理担当 N工業に対する売掛金300万円、回収はどうなってる?
営業マン はい、今月20日に予定どおり回収済みです!
経理担当 S電子に対する売掛金200万円の方はどうかな?
営業マン 先月末に検収が済み、今月末が回収予定日です。先方もその点は了解済みです!

資金繰りに携わる経理担当者の表情にも余裕が見て取れます。今でこそ、こんな姿が当たり前になりましたが、2年前は違っていました。ちょっとその頃の様子をのぞいてみましょう。

2年前 ~なぜか厳しくなる資金繰り

2年前も販売状況は順調に推移していました。中でも入社5年目の営業マンAさんはまさに脂がのっている状態です。先月初めて訪問した客先からも早速注文をもらってきたようです。今月に入ってから既に6台の検査機器を売り上げ、ここ数カ月はミロク産業の中で営業成績NO.1をキープしています。Aさんの頑張りは他の営業マンにも刺激となり、既存の販売先に加え、新規顧客の開拓も進んでいるようです。

社長も「本年度も売上実績上位者には特別ボーナスを支給するから、頑張って販売していこう!」と営業マンたちを盛り上げます。

ところが、その一方で経理担当から、最近はどうも以前ほど資金繰りに余裕がある状況ではなくなってきているとの話を聞いており、社長も気になり始めていました。
 
ある日、顧問をしてもらっている会計事務所の先生が月次の決算資料を持ってミロク産業にやってきたときのことです。先生は、社長が一番気にしているのは業績の良しあしだということをよく知っているので、損益計算書を参照しながら売上とか利益の状況について分析したことを社長らに説明していきます。思っているとおり順調に推移している業績に社長もご機嫌です。売上実績NO.1のAさんはじめ、営業マンたちが常日頃頑張ってくれている様子を生き生きと先生に話し、「これからも業績の伸びが期待できる」と胸を張っています。

そんな中、そろそろ話も終わりに近づいた頃……

先生 最近何か気になっていることはありませんか?
社長 そういえば、売上は順調なのにどうも資金繰りが厳しくなってきているようで、ちょっと気になっているんですよ
先生 ちょっと待ってください
実はいつも社長があまり興味を示さないこともあって、先生も普段は説明の中で貸借対照表にはほとんどふれないのですが、このときは、右手に損益計算書、左手に貸借対照表を持って、見比べています。しばらくして……
先生 売上高の割にどうも売掛金の残高が多過ぎるような感じがしますねぇ。資金繰りが厳しくなってきた主要因はどうもここにありそうです。御社では売掛金はだいたいどの位の期間で回収していますか?
社長 そうですねぇ、月末締め翌月20日払いのところが結構多いんですよね
先生 だとすると売掛金が多過ぎますよ。どうも私の計算では売ってから2カ月半近くかかっているのではないかと思われるんです
社長 さすがにそんなことはないはずですが……
 

質問

売上は順調に推移しているものの、売掛金残高が増え、最近どうも資金繰りが厳しくなりつつある「ミロク産業」。あなたがその経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

営業担当の評価に、売上代金の回収状況を加える。

パターン2

銀行に短期の資金融資を依頼する。

パターン3

回収までの期間が長い、準大口の得意先との契約を縮小する。

実はミロク産業の社長が選択したのはパターン1でした。当時、売上実績上位者には特別ボーナスを支給するなど、営業マンたちの売上実績は評価して、貢献に報いるようにしていました。売上が順調なので代金回収のことは特に気にしていなかったのですが……

もちろん資金が不足しそうなら、短期で資金融資を受けることも可能です。売上が拡大するとそれに応じて売掛金も増え、必要となる運転資金が増えることもあります。しかし、今回のケースでは資金繰りを厳しくしている原因は別のところにありそうです。根本的な原因に対処しないと今後さらに必要資金が膨らんでしまうおそれがないでしょうか?

得意先の業績が厳しくなって回収期間が長くなっているのなら、このまま取引を続けるのは危険かもしれません。しかし、売上代金の請求をしていなかったとか、先方が検収する前に売上計上をしてしまったといったように、ミロク産業側の問題で回収期間が長くなっている場合には、取引を縮小することには問題がありそうです。

ターニングポイントは貸借対照表にも目を向けたことだった

会計事務所の先生が、ミロク産業の社長と話した際、損益計算書と貸借対照表を見比べていましたが、実はそのとき会計事務所の先生が目を付けたのは、売掛金残高と売上高との関係でした。売掛金残高を売上高で割って算出する「売掛金回転日数」という指標で、売掛金を何日で回収しているのかの目安になります。

これが糸口となって、後日、先生の力も借りながら売掛金の中身を調べていくことになりました。すると、「月末締め翌月20日払いのところが結構多い」という社長の認識とは違って、そのタイミングで回収できているケースはかなり少なかったのです。実は、売り上げてから2~3カ月もたってから回収しているケースが結構あったのです。その中にはAさんが担当している顧客も多く含まれており、Aさんにも状況を確認することになりました。

その結果分かったのは、Aさんの場合、注文を取ることに必死になっていて、売掛金の回収の方はほったらかし状態だったという事実でした。回収条件もあいまいなまま売っていたし、支払いの督促をすることもなかったようです。さらに調べていくと、こうした状況は、Aさんほどではないにしても、他の営業担当にも少なからず見受けられました。

実は当時ミロク産業では、売上をどれだけ上げたかが営業担当を評価する最重要の項目となっていました。「売掛金の回収は経理の仕事」と思っている営業担当、「売掛金の回収も営業の仕事」と思っている経理担当といった具合で、回収責任の所在が不明確だったのです。そのため、営業担当はとにかく売上を上げることに必死で、回収のことには無頓着だったのです。

その後ミロク産業では、まず、売上代金回収までの責任は営業担当が持つことを明確にしました。そして、売上をどれだけ上げたかを最重視していた営業担当の評価基準を見直し、売上代金の回収状況を加えることにしました。ミロク産業はその後も、売上計上・請求・債権残高の管理などに関わるさまざまな業務を見直していきました。もちろん当初は改善していくのにも相当苦労したのですが……。

このとき、貸借対照表にも目を向けたことで、それまで無頓着になりがちだった売掛金にメスが入り、売掛金としてとどまっていた資金が徐々に回り始め、やがて必要以上に銀行融資に頼らなくても済むようになり、資金繰りが楽になっていったのでした。

ワンポイント解説 
「売掛金回転日数」
売掛金回転日数は、次の算式で計算します。
 売掛金回転日数 = 売掛金残高÷(売上高/365日)
この指標を見ることで、売上を計上してから売掛金を回収するまで何日位かかるかが分かります。したがって、一般的に売掛金回転日数は短い方が良いでしょう。
なお、売掛金以外に受取手形などの売上債権がある場合には、上記算式の分子に受取手形等の残高を加えて売上債権回転日数を算出します。
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