ヒット商品を生み出したいステーキ屋。落語家から学んだコツとは??

2017年10月13日

飲食業

  • 飲食業
2017/10/13

質問

新メニューを出し続けているのに、ヒット商品が生まれないステーキ屋。あなたが経営者なら店長にどのような対策を指示しますか?

パターン1

ヒット商品が生まれるまで徹底的に新メニューを出し続けるよう指示する。

パターン2

一度はじめた新メニューは、半年間は変えないよう指示する。

パターン3

新メニューの売れ行きを見ながら、小さな改善を繰り返すよう指示する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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新メニューが大ヒット商品となり、喜ぶ店長

「みろくステーキ」は、都内を中心に数店舗のステーキ屋を展開しています。社長が独自の仕入ルートを持っているため、良い肉を安く仕入れることができます。どの店舗でも毎日、大勢のお客さんでにぎわっています。
 
ある日、みろくステーキの麻布店の店長が社長にうれしそうに報告しました。

店長 社長、やりました! ついに、新メニューの“パクチーもりもりステーキ丼”が、月間売上トップ3に入りました!
社長 そうか! おめでとう! 君のこの半年間の成果だね

大ヒットメニューが生まれたことを喜ぶ店長ですが、半年前までは何度新メニューを出してもうまくいかずに悩んでばかりだったのです。

半年前 ~新メニューを作り続ける店長

みろくステーキの社長は、各店長にメニュー開発や食品サンプルの置き方などをかなり自由に任せていました。店長が一国一城の主として、自分のアイデアでチャレンジを繰り返しながら独立採算の経営をさせることが、店長のモチベーションを最も高める方法であると信じていたからです。

幸いなことに、みろくステーキは独自の仕入ルートで安くて良いお肉を仕入れることができるため、競合店より値段を下げても十分に利益が出る体質でした。そのため店長に好きなように挑戦をさせる余裕があったのです。
 
麻布店の店長は、とにかくアイデアマンです。もともと大学で化学を専攻し、卒業後は食品メーカーの研究所で新メニューの開発などを行っていましたが、消費者に近いところで働きたいと考え、みろくステーキに転職し、ついに店長にまで昇格した人物です。
 
この店長は新しいメニューを考えるのが大好きで、店長になってから2年間、毎日のように新メニューを出してきました。

あるときは、ステーキのうえにハンバーグがのっている新メニューを出したこともありました。またあるときは薄く切ったステーキでご飯を巻いたのり巻きのようなものを作ったこともありました。しかし、何をやっても売上に結び付かず、店長はすぐにその新メニューに見切りをつけて、さらに新メニューを開発し続けてきたのです。
 
あまりに新メニューばかり出すので、いつも麻布店の前を通る学生が楽しんでいます。

学生A ねーねー、今度の新メニューはステーキパスタだって。これも絶対無理がある!
学生B 本当ね。斬新を通り越して意味不明よね。今回は1週間で終わると思うな
学生A 1週間も続かないと思う。3日がいいところじゃないかな
たまたま社長が、その学生たちの会話を耳にし、このままではいけないと考えるようになりました。

質問

新メニューを出し続けているのに、ヒット商品が生まれないステーキ屋。あなたが経営者なら店長にどのような対策を指示しますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

ヒット商品が生まれるまで徹底的に新メニューを出し続けるよう指示する。

パターン2

一度はじめた新メニューは、半年間は変えないよう指示する。

パターン3

新メニューの売れ行きを見ながら、小さな改善を繰り返すよう指示する。

ひたすら新メニューを出し続ければ、いつかヒット商品に巡り合うかもしれません。しかしこの2年間の努力が結果を生み出していない以上、今までのやり方を見直してみる必要がありそうです。

ひとまず、新しい試みはやめて、一つの新メニューがヒットするまでじっくり売り続ける方法もあります。しかし、長く続けさえすればヒット商品になるわけではありません。何か対策が必要でしょう。

実は社長が行ったことはパターン3でした。社長は小さな改善を繰り返すよう指示を出しましたが、その理由とは何だったのでしょうか……
 

真打ちに昇進した落語家から学んだ!ポイントは、改善努力を続けることだった!

その日の夜、社長は妻と一緒に近所の寄席に来ていました。二人は落語が好きで、よく一緒に来るのです。

あら、あなた。この落語家、ついに真打ちに昇進したみたいだわ
社長 おおっ、大したもんだな。何年か前にこの落語家のはなしを聞いたときは、随分下手くそだな~、と思ったけど、頑張って練習したんだろう
やがて、この真打ちに昇進した落語家のはなしがはじまると、二人はすぐに気づきました。その落語は、以前聞いたものだったのです。しかし、前回よりはるかに面白くなっています。会場は笑いの渦に巻き込まれました。

落語が終わり、二人が席を立とうとすると、隣の席の夫婦が話しているのが聞こえました。
隣人A この落語家さん、本当に努力家よね。持ちネタはそれほど多くないけど、どのネタも聞くたびに格段に上手になっていくから、何度聞いても飽きないわ
隣人B 雑誌のインタビュー記事に書いてあったんだけど、会場の盛り上がり具合を見ながら、少しずつはなしを“改善”し続けているらしいよ。だから同じネタでも、いつも前回より面白くなっているわけさ
隣人A さすが、真打ちに昇進できただけのことはある! 何だか自動車メーカーみたいね
隣人B それは“カイゼン”のことだね
これを聞いていた社長はこのとき気付いたのです。 
社長の心の声 <そうか。麻布店の新メニューもこの落語家と同じだ! ただやみくもに新メニューを出し続けるというチャレンジではなく、一つの新メニューを出したら改善し続けるという発想が必要だったんだ>

次の日、社長は麻布店の店長に、こう指示を出しました。

社長 店長、われわれは新メニューを出し続けることが大切だと思っていたが、違ったかもしれない。むしろ、一つのヒットメニューを作るために、やったことの結果を見ながら改善を続けるべきだったんだ
店長 メニュー自体を新しくするのではなく、新メニューをヒット商品にするために、どこがダメだったのかをしっかり振り返って、改良していくということですか?
社長 そうだ。例えば、ハンバーグ定食を新しくメニューに追加したら、そのハンバーグ定食の食品サンプルの盛り付け方や付け合わせを変えてみたり、POPの書き方を変えてみたりするんだ。そして、その改善で注文数が増えたかどうか記録するんだ
店長 例えば……、従業員に味付けを少しずつ変えた新メニューを食べてもらって、味を改良したり、お客さんにアンケートをとって、味やボリュームを少しずつ改善したり、ということですね! まるで研究室で開発をしていたころを思いだします!
その翌日から、店長はまるで店舗で実験でもするかのように、従業員相手に味の改良を続け、食品サンプルの盛り付け方法や付け合わせを変えながら、お客さんの反応をチェックし続けるようになりました。それが、その後の大ヒットメニュー誕生につながったのでした。
 
【ワンポイント解説】

「カイゼン」

製造現場の作業者が自ら継続的に行う改善活動をいいます。トヨタ自動車の改善活動は有名であり、海外でも「kaizen」という名前で普及しています。

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